ロシア関連

ロシア、ポーランド領に着弾したミサイル疑惑は状況を深刻化させる意図的な挑発

ポーランド領プシェボドゥフに着弾したミサイル問題についてロシア国防省は「状況をエスカレーションさせるための意図的な(ポーランドによる)挑発で、ウクライナとポーランドの国境地域にある目標にロシアの武器が命中した事実はない」と発表した。

参考:Dwie rosyjskie rakiety spadły na miejscowość Przewodów przy granicy z Ukrainą
参考:Минобороны назвало заявления о “российских ракетах” в Польше провокацией
参考:В Польше могли упасть ракеты украинской С-300, считает военный эксперт

ロシア側は「ウクライナ軍の使用するS-300の迎撃弾がポーランド領プシェボドゥフに着弾した可能性が高い」と主張し始めた

ロシア軍は15日に100発以上の巡航ミサイルや自爆型無人機でウクライナのインフラを攻撃したが、ウクライナ国境に近いポーランド領プシェボドゥフに着弾して2名が死亡、これ受けてモラヴィエツキ首相は安全保障問題と防衛問題を議論するため緊急閣僚会議を召集しているが、現時点でプシェボドゥフに着弾したミサイルがロシア軍のものだと断定されていない。

出典:Telegram経由

しかしAP通信は「ロシア軍の巡航ミサイルがNATO加盟国の領空に侵入してポーランド領プシェボドゥフに着弾したと米諜報機関が認めた」と報じており、状況的にはウクライナ西部を狙ったロシア軍が巡航ミサイルがポーランド領プシェボドゥフに着弾した可能性が高く、ロシア軍のものだと断定されればNATO第5条の発動条件を満たす格好だが、ロシア国防省は「状況のエスカレーションを目的にした挑発だ」と声明を発表した。

ロシア国防省は「ポーランド領プシェボドゥフに『ロシアのミサイル』が着弾したという疑惑は、現在の状況をエスカレーションさせるための意図的な挑発で、ウクライナとポーランドの国境地域にある目標にロシアの武器が命中した事実はない」と主張、現地メディアが熱心に報道しているミサイルの残骸についても「ロシアの兵器とは無関係だ」と付け加えている。

何度も繰り返すが現時点でポーランド政府も米国防総省も「着弾したミサイルがロシア軍もの」と断定しておらず、もし「ロシア軍の仕業」と断定され外交手段による問題解決をロシアが拒否すればポーランドは第5条発動をNATOに要請することが出来るため、この問題は非常にデリケートなものになるだろう。

追記:ロシア側は「ウクライナ軍の使用するS-300の迎撃弾がポーランド領プシェボドゥフに着弾した可能性が高い」と主張し始めた。

関連記事:ポーランド領にミサイル2発が着弾、モラヴィエツキ首相が緊急閣僚会議を召集中

 

※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru/CC BY 4.0

ポーランド領にミサイル2発が着弾、モラヴィエツキ首相が緊急閣僚会議を召集中前のページ

バイデン政権、ウクライナ支援に必要な377億ドルを下院に緊急要請次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    未知の無人機による攻撃か、Tu-95が配備されたロシア軍基地で爆発

    Tu-95やTu-160を装備したロシア空軍の第121親衛重爆撃機航空…

  2. ロシア関連

    巡航ミサイルの不足? ロシア軍が地上目標の攻撃にS-300を使用か

    ムィコラーイウ州知事のキム氏は9日「高価な巡航ミサイルの不足を補うため…

  3. ロシア関連

    ロシア軍による輸送車輌の防御力強化、マッドマックスバージョンが登場

    ロシア軍の職人達は手に入る資材で輸送車輌の防御力強化に取り組んでおり、…

  4. ロシア関連

    ロシアの斬新な言い訳、特別軍事作戦の失敗はソ連崩壊後の生き方に由来

    国営メディアに寄稿したコラムの中でロシア人アナリストは「特別軍事作戦で…

  5. ロシア関連

    ロシア国防省、国産UCAV「オリオン」を使用した攻撃シーンを公開

    ウクライナ軍がトルコ製UCAV「バイラクタルTB2」による攻撃シーンを…

  6. ロシア関連

    ロシア軍の装備損失が4,000を突破、戦車や装甲車輌の損失は2,080輌

    軍事アナリストが運営するOryxはウクライナ侵攻でロシア軍が被った装備…

コメント

    • 幽霊
    • 2022年 11月 16日

    当然ロシアは否定しますよね
    実際にミサイルが着弾してるなら破片からウクライナかロシアどちらの物か分かりる情報が出てくるまでどれくらいかかるでしょうか。

    18
    • 無能
    • 2022年 11月 16日

    1本当に誤射した
    2兵站妨害を狙った
    3NATOのレッドラインを探るチキンレースを始めた
    4幹部の誰かに責任を取らせて処分したいから誤射に見せかけた
    5プーチンを引きずり下ろせないからNATOを利用したい

    骨董市みたいなボロ装備のロシア軍なら1の可能性が高いけど

    19
      • 名無し
      • 2022年 11月 16日

      1や3の派生かな?
      ベラルーシ方面からポーランドを掠めてリヴィウを狙った巡航ミサイルが、
      経路の途中で迎撃されてポーランド領のプシェボドゥフに墜ちちゃった、と予想。
      そんなギリギリの経路を選んだのは、ポーランドへの牽制を兼ねて、かな。
      ポーランドを直接狙いはしないだろうけど、
      迎撃されたミサイルがポーランドに墜ちても構わないと、未必の故意な類いだとも見ています。

      2
    • 名無しさん
    • 2022年 11月 16日

    この無駄に長引いている戦争を最速で終わらせる方法はNATO参戦以外にはないのですが
    NATOにとっては長引いても自国への被害を抑えたいか判断が分かれるところですね。
    一番、NATOに被害が少ない方法を模索するなら、航空機の支援だと思うのですが
    それも散々揉めた経緯がありますからね。

    14
    • 折口
    • 2022年 11月 16日

    ウクライナの防空用S-300が其れて落ちたケースも可能性としてはあると思うんですよね。目標喪失後の自己破壊機能は無いのとか爆発が大きいとか色々気になる部分はありますが、ロシアの巡航ミサイル、それも慣性航法モードで飛んで固定座標を狙っていただけのミサイルが国境を超えるほど逸れてしまうのもよく分からないです(迎撃によって制御を失ったミサイルが地面に当たるまで数十キロも余計に飛んだという可能性もあるとは思いますが)。
    S-300には対地攻撃モードのある型も存在しますが、現場に最も近いベラルーシから撃っても射程外らしいので、S-300の弾体破片が確認されたのであればウクライナの防空戦闘の流れ弾ということになるんでしょう。
    そういう背景を考えると報道各社の論調がロシアの攻撃という表現になっているのは、その先にあるものを含めると気になります。やはり詳しい調査に期待というところかなと。

    27
      • samo
      • 2022年 11月 16日

      >最も近いベラルーシから撃っても射程外らしいので
      S-300の飛翔距離は200kmなのでギリギリリビウを狙うと仮定した場合足りないように見えるが、
      対地攻撃に使用した場合は、上昇エネルギー一辺倒の対空迎撃と違い、落下エネルギーを推進力に転換できるため、対空迎撃の射程よりは長くなるため、飛翔距離的にはほぼ間違いなく届く。

      落下場所もベラルーシとリビウの間で落下しているため、
      ミサイルロケットや翼の不具合などで盛業不能に陥り、意図しない場所に失速落下する可能性はいくらでもありえる
      他にも現場の暴走で、支援を続けるポーランドに嫌がらせをしたいと考えて狙った馬鹿ガイル可能性だってある。
      もちろん、ウクライナ側の迎撃弾が流れ弾として落ちる可能性も。
      本来なら迎撃目標をロストした場合は、空中で炸裂するはずだろうが、タイマーの不具合などで不発弾として落下してしまう可能性もある

      15
      • samo
      • 2022年 11月 16日

      今出回っている、S-3005V55でも、今回落下した場所までは届く可能性が高い

      8
    • hiroさん
    • 2022年 11月 16日

    >追記:ロシア側は「ウクライナ軍の使用するS-300の迎撃弾がポーランド領プシェボドゥフに着弾した可能性が高い」と主張し始めた。

    ということはロシアは今回のミサイル攻撃に、高価なS-300を使用したということですね。
    ウクライナも保有しているから強弁しきるのでしょう。

    11
    • h4
    • 2022年 11月 16日

    ロシアくんも流石にNATOが本格参戦したら、少なくとも通常兵器であれば一瞬で終わることは分かってるわな。今でさえウクライナ軍相手に苦戦してるのに、桁一つ多い数の2世代新しい兵器に出てこられたら何もできず蹂躙される。
    5条発動されないためにはポーランドに土下座謝罪するしかないのだが、それをやるとロシア世論の下らないプライドのせいで政治的に終わる。
    すっとぼけで誤魔化そうとしているが、すっとぼけを認めるかどうかの決定権はロシアにはない。

    27
    • ななし
    • 2022年 11月 16日

    対地ミサイルに転用しているロシア軍のS300が目標を外れたのか、
    それを迎撃するためにウクライナ軍が発射したS300がたまたまポーランド領内に落ちたのか。
    どちらにしても第三国に被害が及びうる戦域でドンパチやった結果なのでロシアは責任を免れられないであろう。

    13
    • 伸縮性のあるボクサー型のスパッツに近い装甲車
    • 2022年 11月 16日

    最新の映像だとどうも破片じゃなくてミサイルが落ちたっぽく見えるんですよね…

    ゼレンスキー大統領も公式に自軍のミサイルではないと否定してたし(ここでポーランドに嘘を浮くメリットもないし)

    ネットだとS-300 5V55説が有力ですね

    いずれにしろ今回の事件がポーランド・ロシアの2カ国協議でケリがつかなければNATOの介入は不可避ですし かといって断固たる対応を躊躇うとロシアに「攻撃しても報復はない」とナメられるのでかなり瀬戸際な状況ですね… キューバ危機以来の緊張感を感じてやべぇよ…やべぇよ…

    17
      • samo
      • 2022年 11月 16日

      榴散弾が見当たらないため、S-300じゃないっていう話も出回っているが
      どうなんだろうね。
      S-300じゃなかったら、確定でロシアのミサイルになる

      10
    • ダヴ
    • 2022年 11月 16日

    どうせ今まで通りNATO参戦しないのわかってるから武器を追加で送って♡
    まだ残ってるT-72全部送ってくれポーランド

    2
      • かな
      • 2022年 11月 16日

      他ならぬNATOが戦争に極めて後ろ向きなんで戦争は起こらないでしょうが
      制裁は強まるでしょうね

      5
    • ミリオタの猫
    • 2022年 11月 16日

    外野としては、ロシア側が「誤射でした。御免なさい」で済めば終わったと思うのですが、それを挑発だのウクライナ軍が撃ったS-300だのと言った時点で「何か有る」としか言い様が無いですね
    もしかすると、これをネタにNATOを挑発して核戦争へ持って行く腹なのでしょうか?
    既に、ロシア側メディアが「この戦争の相手はウクライナでは無くNATOだ」と言っていますし、ここでNATOへの挑発をしてもおかしくは無いんですよね

    14
    • アゼルバイジャン
    • 2022年 11月 16日

    ウクライナ側の迎撃ミサイルの誤作動、誤爆の可能性が高いのかな?と思いました
    ロシアのS300だとすると射程の関係で無理がありますし
    被害が熱源であるトラックにあることを考えると迎撃の際に誤作動を起こしてしまったと考えるのが妥当なところではないでしょうか

    5
      • samo
      • 2022年 11月 16日

      S-3005V55だと仮定しても、この射程の対空迎撃射程は約90kmだけれど、
      対地モードで使用した場合、落下エネルギーを推進力に転換できるため、砲弾のように放物線を描くような弾道であればもっと飛ぶはずだよ。

      例えば、ベラルーシ領内から、ウクライナ北西部国境沿いの補給路や送電施設を目標に攻撃しようとしたけれど、
      ロケットモーターの暴走で目標を通り過ぎてしまって、そのままその先にあるポーランド領内に侵入落下してしまった
      といったケースもありえる

      8
        • アゼルバイジャン
        • 2022年 11月 16日

        ベラルーシの場合、被害に遭った地点がベラルーシ国境ギリギリから発射して直線距離で140-150kmの地点です。
        可能性で言えば0ではないでしょうが余りにも非現実的です。
        S-300といえばロシア側の誤作動、誤爆がこの戦争中にも映像として記録されてるように信頼性がそこまで高くない兵器でもありますし。。。

        3
          • samo
          • 2022年 11月 16日

          一度上空に上がってしまえば、滑空状態で落ちていくから届くと思うよ
          小さいながらも翼もついて揚力もえられるし

          5
          • samo
          • 2022年 11月 16日

          それと5V55Uは射程150kmなんで余裕で届くと思われます。

          あとついでに言わせてもらうと、落ちてきたミサイルの機種だけで、どちらの軍隊が誤爆したものかどうかを特定するのは不可能に近い。
          互いに兵器を鹵獲しあっている状態ですしね

          2
          • バーナーキング
          • 2022年 11月 16日

          非現実的、って何を根拠に?
          90km先の高度1万m飛んでる標的撃墜できるならそのまま惰性で飛んでもそこから単純計算で70km以上は飛べるんだけど(5V55Rの1700m/sとして)。
          空気抵抗考慮しても150kmは十分可能な距離だと思いますよ。

    • 名無しさん
    • 2022年 11月 16日

    ロシアからのミサイル攻撃であれば南から北へ飛び、ウクライナからの迎撃弾であれば北から南へ飛ぶ。
    どう考えてもリヴィウの北に着弾したのであればロシアからの攻撃だと思うのですけどね。

    これがベラルーシから来たのであれば、ポーランド領内に着弾する可能性はあります。
    ポーランドはこれをベラルーシの仕業だと決めつけて、ロシアではなくベラルーシに進軍する可能性はありませんかね?
    ロシアが同盟国を見捨てるのはアルメニアで証明済みですけどね。

    8
    • 匿名
    • 2022年 11月 16日

    来週の欧州議会で、「ロシアをテロ国家として承認する検討が行われる」と、つい昨日報道されたばかりだと言うのに、ポーランド領に巡航ミサイル直撃ですか。
    何故ロシアは結果として自滅に繋がる様な事をするのでしょうかね。

    5
    • K(大文字)
    • 2022年 11月 16日

    >ロシア側は「ウクライナ軍の使用するS-300の迎撃弾がポーランド領プシェボドゥフに着弾した可能性が高い」

    ポーランド・NATOだって予測不能なエスカレーションは避けたいだろうに、そりゃ悪手でしょうロシアくん。
    普通に認めて遺憾表明でもしとけば、まぁ何らかの賠償は負うことになろうが恐らくそれで終わりだったろうに、ここで開き直られたらNATOとしても何らかの措置を取る必要が出てきてしまう。
    むろん、ロシアの言う通りウクライナ側のミサイルである確率は「ゼロではない」けれど、限りなく低いでしょう。
    今のウクライナの台所事情からして、NATOの心証を損ねるような対応は絶対にしないはずだから。
    一方で、ロシアは開戦前から今までずっと嘘ばかりついて来た「実績」がある訳で…

    ロシアには、そういう相手の境遇や、自国が周囲からどのように評価されているかを考えて察する想像力が絶望的に欠けている。
    安保理常任理事国の特権と軍事力ですべてを解決して来て、外交・コミュニケーションの力を軽視してきたツケなんだろうなぁ。
    力の信奉者の末路。

    17
    • 2022年 11月 16日

    世界がウクライナでの戦争に慣れかかっているときにロシアはさあ…。ルシタニア号事件かよ
    もうロシア軍のものかどうかより、NATOがどうしたいかだと思います。介入の口実を欲していたのなら、どこかの段階でロシア軍の仕業と断定するでしょう。ポーランドを含む西側数カ国で、状況をどのようにすべきか話し合われているのでは

    8
    • samo
    • 2022年 11月 16日

    着弾したミサイルは2発あったみたいな話もあるけれどどうなんだろうか。
    情報が錯綜している。
    二発ともロシアのものなのか、ウクライナの物なのか。
    それともロシアのミサイルを迎撃しようとしたウクライナ側のミサイルが追いかける形で一緒に着弾したということなのか。

    続報がない限りは、可能性がありすぎてなんとも言えない

    6
    • 名前
    • 2022年 11月 16日

    ロシアのミサイルをウクライナが迎撃したが、モルドバに破片が落下したケースが最近あった。
    リンク
    だから、今回ウクライナの迎撃弾である可能性は否定できないが、一方でモルドバが本件への抗議でロシア外交官を追放したように、ロシアがポーランド国境にミサイルを撃ち込んだ責めを負うべきなのは変わらない。

    8
    • 2022年 11月 16日

    5条は武力に限定してないやん
    せいぜい批判の声明ぐらいでポーランドは泣き寝入りだね
    ロシアはセーフ

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP