ロシア関連

謎に包まれたロシアの防空システムS-550、テストをパスして運用を開始

ロシアのショイグ国防相は防空システム「S-550」の存在を今年11月に明かし注目を集めていたが、国営メディアのイタルタス通信は29日「S-550が国の試験をパスして戦闘任務に就いた」と報じている。

参考:First S-550 air defense systems enter service in Russia

既に実戦部隊に配備され運用が始まったロシアの新型防空システムS-550、ただし能力の詳細については今だに不明

ロシアの防空システムはS-300の発展型でパトリオットシステム(米国製)よりも優れた広域防空能力を提供するS-400が有名だが、弾道ミサイル、地球低軌道上の衛星、極超音速兵器、戦線よりも後方に位置する早期警戒機や空中給油機といった価値の高い空中目標の迎撃に特化したS-500の量産・引き渡しが始まっており、一部の専門家の間でS-500は「宇宙空間における弾道ミサイルの迎撃や極超音速兵器に対応できる第1世代の防空システム」と評価されているのだが、このラインナップに突然登場したのが謎に包まれているS-550だ。

ショイグ国防相は今年11月の国防省公式動画の中で「プーチン大統領が防空システムS-350、S-500、S-550を軍に供給するための重要性を説いた」と明かしたが、この時点でS-550という防空システムは確認されておらず複数の海外メディアは「基本機能を絞ったS-500の廉価モデルではないか」と予想、しかし国営メディアのRIAノーボスチは防衛産業関係者の証言に基づいて「S-550は大陸間弾道ミサイルをミッドコース・フェイズで迎撃可能な移動式防空システムだ」と報じており、今のところどちらが正しいのか分かってない。

この謎に包まれた防空システムについて国営メディアのイタルタス通信は29日「S-550が国の試験をパスして同システムを装備した部隊が戦闘任務に就いた」と報じており、これが事実ならS-550は開発中のシステムではなく開発が完了したシステムで既に実戦部隊での運用が始まっているという意味だ。

出典:UMKH77R / CC BY-SA 2.5 パーンツィリ

参考:Зенитной системе “Панцирь” увеличили зону поражения

余談だがロシアは近距離防空システム向けに世界でも類を見ない電子光学シーカーを搭載した対空ミサイルを開発中(2022年中に完成予定)だと報じられており、ロシア防空軍の司令官は「現存するあらゆる妨害システム(開発中を含む)の干渉を受けることなく目標を破壊することが可能だ」と主張、この新型対空ミサイルは現在開発中の「パーンツィリSM-SV」に採用されるらしい。

関連記事:ロシア、S-550はS-500の廉価モデルではなく世界初の移動式ICBM迎撃システム
関連記事:S-500の廉価モデル? ロシアが新しい防空システム「S-550」の存在に初めて言及

 

※アイキャッチ画像の出典:vitaly kuzmin / CC BY-SA 4.0 S-400

シンガポール、超音速飛行に対応した無人航空機「アロー」の初飛行を来年実施か前のページ

中東・アフリカ仕様? 米国が対外有償軍事援助向けにF-35カスタムバージョンを開発次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    ロシア軍がナゴルノ・カラバフ紛争から学ぶべき教訓とは?

    露メディア「Взгляд」は16日、ナゴルノ・カラバフ紛争はロシア軍の…

  2. ロシア関連

    ロシアの新型戦闘機「LTS」はステルスと安価な運用コストを両立したマルチロール機

    ロシアのプーチン大統領はMAKS国際航空ショーの会場を訪れ、スホーイ設…

  3. ロシア関連

    ロシアが占領下のウクライナ地域で国民投票を実施、総動員に向けた布石?

    露国営メディアは20日、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ロシ…

  4. ロシア関連

    今度はベルゴロドで保安庁や内務省の建物が爆発、ドローン攻撃の可能性

    ロシア領ベルゴロド州に侵入した「ロシア義勇軍」や「自由ロシア軍」との交…

  5. ロシア関連

    ロシアの新型戦闘機「チェックメイト」は最初の顧客を獲得済み、推定需要は300機前後

    ロシアのユーリー・ボリソフ副首相は「新型戦闘機チェックメイトはローンチ…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 12月 29日

    S-550が噂どおりの高性能だとしたら、値段も相当高いはず。ロシア政府とて財政に限界があるはずなので、数多く配備することはできないでしょう。米軍同様、ロシア軍も万能もではないはずです。必ず弱点があるはずです。ロシア軍が一方的に勝ち続けることはないでしょう。

    6
      • 無無
      • 2021年 12月 29日

      広大すぎるロシアは、もとから全土のミサイル防衛は諦めてて、限られた拠点配備を想定してますよ。
      それにしても、ミサイル、ステルス戦闘機、ステルス爆撃機、UAVに電子戦、
      いったいどこから開発費が湧いてくるのか
      あるいは西側の開発プロセスこそ不必要な無駄が多いのかと疑問にすら思える

      11
    • 無無
    • 2021年 12月 29日

    広大すぎるロシアは、もとから全土のミサイル防衛は諦めてて、限られた拠点配備を想定してますよ。
    それにしても、ミサイル、ステルス戦闘機、ステルス爆撃機、UAVに電子戦、
    いったいどこから開発費が湧いてくるのか
    あるいは西側の開発プロセスこそ不必要な無駄が多いのかと疑問にすら思える

    1
    • 折口
    • 2021年 12月 29日

    電子光学シーカーというと、可視光域波長の映像で誘導する方式ですかね。とはいえ雲や夜間に役に立たなくなる可視光で「現存するあらゆる~」とまで放言するかというと(ロシア人ならしそうだけど)うーん。

    仮に可視光系だったとして、ぱっと思いつくのは91式A型のTV画像誘導方式ですけど、当時から映像処理技術が飛躍的に発展していることを踏まえると悪い方法ではないような。

    4
      • F-774
      • 2021年 12月 29日

      そういやキヤノンさんが超性能の光学センサを発表してますたねw

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP