ロシア関連

反プーチンを標榜する3つのロシア人組織が合流、ウクライナ側として戦うと宣言

ロシアは政権打倒を標榜する存在を認めず「ドゥギナ氏殺害はウクライナの仕業だ」と嘯ぶいたが、犯行を主張する国民共和軍は自由ロシアやロシア義勇軍と共同で「プーチン政権からロシアの解放を標榜する組織」を立ち上げた。

参考:російська опозиція оголосила про створення політичного центру збройної боротьби в Україні
参考:Russian ‘anti-Putin groups’ join forces in Ukraine
参考:Bringing Down Putin’s Regime: World’s First Ever Interview with a Leader of Russian NRA

この戦争をウクライナの勝利で終わらせることがロシアの変革に繋がると信じているので、我々はウクライナ側について戦う

ウクライナには現在、投降したロシア軍兵士の中で「プーチンに騙された」と主張する兵士を中心に結成された自由ロシア(Freedom Russia)、ロシアから追われる政治犯を中心に結成されたロシア義勇軍(Russian Voluntary Corps)が存在しており、本当にウクライナ軍の一部としてロシア軍と戦っているのだが、ここにドゥギナ氏殺害を実行してプーチン政権打倒を宣言した国民共和軍(National Republican Army)が合流した。

出典:Головне управління розвідки МО України

FR、RVC、NRAは元ロシア下院議員のポノマリョフ氏と共同で「プーチン政権からロシアの解放を標榜する組織(Political Centre)」を設立することで合意、この組織はウクライナに存在する全ての反プーチン組織の統合を目指しており、国家としてのロシアではなく「プーチン政権のみ」をターゲットに戦うと宣言して「ロシアの野党や国民は全て違いを乗り越え、我々の戦いに参加してほしい」と呼びかけ注目を集めている。

さらにNRAのリーダーを務めるアレクサンドル氏はkyivPostのインタビューに応じており、ドゥギナ氏の殺害した爆破テロは父親のドゥーギン氏(プーチン大統領の世界観に影響を及ぼしたと言われる国家主義思想家でウクライナ侵攻を支持)も含まれていたと明かし「偶然にも娘の車の助手席には別の人物が乗り込んだため父親の排除には失敗したが、ロシアでプロパガンダを量産するドゥギナ氏の排除には成功した」と主張。

出典:euronews

特に興味深いは「暴力的なアプローチでプーチン政権の転覆をNRAは狙っているのか?」というkyivPostの質問で、アレクサンドル氏は「クーデターで政権を転覆させるには状況が成熟していないが、政権の手先として働くイデオローグやメディアへの散発的な攻撃はエリート層に混乱を引き起こす可能性があり、政権を支える内部で分裂が発生するれば連中を自らプーチンを権力の座から引きずり下ろすだろう」と述べ、NRAの支持者は政府、軍、諜報機関、治安部門の中にも沢山いるらしい。

多くの人々がNRAを支持する理由は縁故主義と腐敗だらけの現状に不満を抱いているためで、アレクサンドル氏は「上司のケツを舐める者だけが昇進を勝ち取り、誰も犯罪と本気で戦おうとしない現状に辟易しているが自身が批判に晒されることも恐れている。だからこそ私達は主張するのではなく黙って武器をとることを好む。この戦争をウクライナの勝利で終わらせることがロシアの変革に繋がると信じているので、我々はウクライナ側について戦うのだ」と述べている。

出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0

因みに「プーチンはどのような終焉を迎えると思うか?」という質問にアレクサンドル氏は「政権内のエリートにとって不都合な存在になれば直ぐにプーチンは排除される。この老人は全ての責任を一人で背負わされ首を刎ねられるかもしれないがプーチンのやったことはそれに値するし、彼の取り巻き連中もただでは済まないだろう」と答えており、プーチン政権打倒を標榜する存在を認めず「ドゥギナ氏殺害はウクライナ諜報機関の仕業だ」と嘯ぶいたロシアにとって無視できない展開だろう。

関連記事:本物のナチズムからウクライナ人を守る、元ロシア軍部隊による義勇軍が訓練を開始
関連記事:ウクライナ、ドゥギナ氏の告別式はプーチンへの忠誠心を示すショー

 

※アイキャッチ画像の出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0

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コメント

    • 牛飼いC
    • 2022年 9月 02日

    ロシアってルーシ人だけの国ではなくアジア系やコーカサス系の民族も抱える‘帝国’なので権威主義や腐敗、汚職からは逃れられないと思うんですよね。
    それこそルーシ人たちが他の領土を諦めモスクワ公国に戻らない限りは。

    29
    • L
    • 2022年 9月 02日

    第一感としてテロリズムに訴えかける武装集団を抱え込むのはフェアではないと感じたけど、プーチンがゼレンスキー暗殺を何度も計画してるしフェアとかどうとか言ってる場合ではないんだろうなぁ
    クリーンで正々堂々とした戦争などあるはずもない

    45
    • バーナーキング
    • 2022年 9月 02日

    「敵の敵は味方」ではないのでこの手の動きには期待も支持もしない。
    まあがんばれ。

    23
    • ido
    • 2022年 9月 02日

    ぜひプーチン政権打倒のために頑張ってもらいたいですね。そして政権は治安部門にも内通者はいるのか。内部情報を期待できるな。

    13
    • ボクサー型のスパッツに近い装甲車
    • 2022年 9月 02日

    10月革命あくしろよ
    ロシア帝国に逆戻りされるくらいなら革命起こしてソ連復活させたほうがいいって、はっきりわかんだね

    4
    • あさり
    • 2022年 9月 02日

    ロシアが変革するのって相当難しいと思うんですよね。
    腐っても元強国だしエネルギー輸出国だからクーデターが起きても他国からの干渉でまともに統治できない。

    6
    • 匿名
    • 2022年 9月 02日

    やっとまともなロシア人が登場した。喜ばしい事だ。
    しかし、目的通りにプーチンを排除できるのだろうか?

    6
    • 無無
    • 2022年 9月 02日

    ロシアみたいな情報統制国家で、反政府組織がいかにして連絡をとり合同のやれることか、FSBがそんなにボンクラなのか、
    この話は見えない部分がありすぎて、期待薄

    12
    • NATTO
    • 2022年 9月 02日

    敵の敵は味方で変なやつらを支援すると後始末が大変。
    アルカイダとかボリシェヴィキみたいにならないか心配。

    17
    • sundaycameraman
    • 2022年 9月 02日

    これが表沙汰になれば極右側からの反撃があり、ロシアは更なる強権政治恐怖政治に突き進み、粛清の嵐へと突き進むと想像する。
    まあ、プーチンとしてはそうなると先が読めないため、その手前で留めおきたかったのかもしれないね。

    3
    • K(大文字)
    • 2022年 9月 02日

    クーデターで権力が入れ替わったところで、この国(の、特に対外姿勢)は何も変わらないでしょう。
    それはソ連崩壊で証明済み。
    変わるためには、かつての大日本帝国のようにコテンパンにやられた末に国民がガッツリ精神改造されるくらいしかないのでは。
    しかし大日本帝国とは異なり、ロシアには核兵器があるゆえに負け「られない」。
    また、日本における皇室のようなレジームチェンジに耐え得るためのよすがもない。
    個人的には、ロシアの今後について北朝鮮化は不可避ではなかろうかとかなり悲観的に見ていますね…

    13
      • 月虹
      • 2022年 9月 03日

      >日本における皇室のようなレジームチェンジに耐え得るためのよすがもない

      ロシア帝室であったロマノフ家は、ロシア革命でニコライ二世一家を始め血族の多くがボリシェヴィキにより処刑され残った親族も海外への亡命を余儀なくされました。アレクサンドル二世のひ孫で写真家や政治家としてアメリカで活躍したポール・イリンスキー氏(ロシア語名はパーヴェル・ドミトリエヴィチ・ロマノフ=イリンスキー)は出自からノルウェー王やドイツのオルデンブルク伯の継承権の請求権利があり、スウェーデンの王位継承権も主張できる立場にありましたが、これらの称号を用いることも継承権を請求することも無かったそうです。

      またソ連崩壊後にサンクトペテルブルクから訪れた代表団からロシアに帰国し帝位継承権を主張するように求めたが、これを丁寧に辞退しています。イリンスキーは宏壮な邸宅を営み、正に亡命貴族の暮らしそのものだったといいます。

      イリンスキー氏の死後、ロシア帝位継承を主張するのはウラジミール・アレクサンドロヴィチ(アレクサンドル二世の三男)の玄孫にあたるゲオルギー・ミハイロヴィチ(ゲオルギー・ミハイロヴィチ・ロマノフ)氏のみで、生後間もなく外祖父から「ロシア大公」の称号を与えられましたがロマノフ家協会の総裁だったヴァシーリ・アレクサンドロヴィチ公(アレクサンドル三世の外孫、男子血統ではニコライ一世のひ孫)は「新しく生まれた王子がロシア帝室およびロマノフ家のいずれの成員でないことを宣言する」と声明を出しています(父方がプロイセン王の血統<ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世のひ孫の一人>だった為)。

      ゲオルギー氏は大学卒業後にベルギーの欧州議会で働き、その後にロシアのノリリスク・ニッケル社の補佐職を務めたこともありますが、現在は退社してベルギーの首都・ブリュッセルにRomanoff&PartnersというPRエージェンシーを開いています。

      4
    •  
    • 2022年 9月 02日

    やっとクーデターか?
    偽物でなければ良いんだけど。

    4
    • 無題
    • 2022年 9月 02日

    なにか成し遂げることは期待してないがせいぜいロシアを引っ掻き回してくれ
    それだけで国際社会の助けになるから

    20
    • ブルーピーコック
    • 2022年 9月 02日

    戦後に残ったら残ったで面倒起こす系の武装組織キタコレ。ってかロシアの自作自演じゃなかったのかよ。さしものロシアとて、初手で民間人殺害とか支持されるとは思えんが。

    10
    • 折口
    • 2022年 9月 02日

    大変結構なことではありますが、バアス党政権を排除したらイスラム現尻主義者の群雄割拠になったイラクや、国民党政権を追い詰めれば追い詰めるほど軍閥や飛沫政治結社が隆盛した中国の事例が頭に浮かぶ話ですね。
    上で言ってる人居ますけど、今必要なのは「ロシア人がロシアの世界だと認識している領域を切り刻んで、民族や言語ごとに新しい地図を”第三者が”作る」ことじゃないかと。暴力と抑圧と金権によって形勢されているモスクワ帝国の首領の首だけすげ替えてもいずれ第二第三のプーチンになるだけでしょう。

    15
    • yp2k
    • 2022年 9月 02日

    ツァーリが居なくなっても、また次のツァーリが生まれて専制政治を始めるのはロシアの歴史で証明済
    それはロシアでは権威と実権が一緒だから強権が生まれる。
    いっそのことロマノフ家を元に戻して、象徴の立憲君主制にしたら?とは思うわ
    権威と実権を分離したほうがいい

    20
    • アクアス
    • 2022年 9月 02日

    ウクライナ勝利に必要だった最後のカードが揃ったと思う。
    日露戦争に勝利するために日本が持っていたウルトラレアカードである「明石元二郎」カードに匹敵するカードになり得る。

    3
    • パセリ
    • 2022年 9月 02日

    ロシアに民主化は望んで無いんだよなぁ
    あんな多民族他宗教国家が纏まる分けないし最悪内戦になりそうだし
    昔ならいざ知らず核大量にもってる国家が内戦なんてたまったもんじゃない

    8
    • 鼻毛
    • 2022年 9月 02日

    日本がロシア帝国の反政府勢力であったレーニンに資金援助したらのちのちソ連になっちゃった「明石工作」ってのがありましたが今回の勢力もそのうちもっとやばい勢力になっちゃったりして

    4
      • 名無し
      • 2022年 9月 02日

      中国「我々が」
      イラン「後ろ盾に」
      トルコ「なりまっす!」

      4
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