ロシア関連

ウクライナは長距離攻撃の優位を維持、ロシアは契約軍人の供給数が大幅減

ロシアメディアのКоммерсантъは25日「6月もウクライナ製無人機9,700機が国内で撃墜された」と報じ、ウクライナは発射した自爆型無人機の数でロシア(5,438機)を4ヶ月連続で上回ったことになり、さらにロシア側は「ウクライナで戦う契約軍人の供給数が1/4減少した」と報告している。

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ウクライナ軍の長距離攻撃が激しさを増して「この戦争がすぐに終結する見込みはない」とロシア人も悟ったらしい

ウクライナとロシアの長距離攻撃能力には当初「絶対的な差」が存在していたが、ウクライナ製の自爆型無人機(FP-1、FP-2、UJ-22、UJ-25、UJ-26、Lyutyi、パリアニツィアなど)や巡航ミサイル(FP-5や対地攻撃用のネプチューン)の量産が軌道に乗り始めるとロシア領内への長距離攻撃が徐々に増加し、2025年7月からは月間攻撃数が1,000機を下回ることがなくなり、2025年12月には月間攻撃数が5,000機を超えて長距離攻撃能力の格差が急速に縮まった。

2026年1月から2026年6月まで両軍が発射した自爆型無人機の数
ウクライナ軍発射数ロシア軍発射数
1月推定1,000機~2,000機4,442機
2月推定1,500機~3,000機5,059機
3月7,347機6,462機
4月9,372機6,583機
5月8,973機8,150機
6月9,700機5,438機

2026年3月から3ヶ月連続でウクライナが発射した自爆型無人機の数がロシアを上回り、ロシアメディアのКоммерсантъ=コメルサントも25日「ロシア国防省は防空システムの運用状況に関する日報を公表している。2026年初頭以降、ロシア国内51地域で3万9,000機以上のウクライナ製無人機が迎撃もしくは破壊されており、これは月平均6,000機に相当する。6月も25日時点で9,700機のドローンが撃墜された」と報じ、これに対してロシア軍は6月に5,438機しか発射しておらず、これが事実ならウクライナが発射した自爆型無人機の数は4ヶ月連続でロシアを上回ったことになる。

ウクライナ軍の長距離攻撃がロシア経済にどれだけの影響を与えているのか具体的な数字で示すのは不可能だが、ロシア人ミルブロガーや独立系のロシアメディアは酷く怒っており、代表的なロシア人ミルブロガーのДва майора(Two Majors)は「ウクライナの忌々しいフラミンゴ(FP-5のこと)が成功しているのは敵の狡猾さや河川に沿った超低空飛行による運用成果ではない。切れ目のない多層的な防空網が欠如していた結果にすぎない。フラミンゴの危険性は本格量産に移行した場合、我が国の防空網が現在のドローン攻撃と同じように飽和状態に陥ってしまうことにある」と指摘。

出典:Кирилл Фёдоров / Война История Оружие

ロシア人ミルブロガーの中でも影響力が大きいRYBARも「クリミア知事とセヴァストポリ市長が非常事態体制の導入を発表した。非常事態体制の適用期間中は人や車両の移動に対する一時的な制限の導入、当該地域への特別な立ち入り手順の設定、そして事態収拾に向けた追加部隊や資機材の投入が可能となる。また後日の補償を条件として市民や組織からの一時的な財産徴用も可能である。ここ数週間のクリミア半島における情勢は、本措置を取るに至る状況にあった。燃料問題が発生し、電力供給に深刻な障害が生じており、水供給の問題も引き起こしている」と報告。

独立系のロシアメディア=Вёрсткаも「この1週間で複数の州や地域のガソリン価格が25%も上昇した」「クリミアではガソリンが公務員にしか提供されていない」「78の地域で燃料問題が発生し、そのうち29の地域で当局が正式に制限を導入している」と報告し、プーチン大統領も「国内のガソリン供給は大丈夫だ」と強調した上で「ガソリンスタンドには行列ができており、必要なグレードのガソリンが常に手に入るとは限らない」「現在のクリミアには数日分のガソリン備蓄しかない」「陸路と海路の両方で供給を増やすことでこの課題は解決されると信じている」と公の場で発言している。

ウクライナで交戦するロシア軍が燃料不足に陥ることはないと思われるものの、ウクライナ軍の長距離攻撃は「ロシア国内のガソリン供給」に大きな混乱を引き起こしているのは確実で、さらに興味深い変化は特別軍事作戦=ウクライナ侵攻作戦に自発的に参加するロシア人の数が急減していることで、Вёрсткаは24日「国防省と契約を結び特別軍事作戦に赴くロシア人の数は減少し続けている。これは我々が入手したデータによって裏付けており、例えばモスクワでは2026年春の新規流入が2025年の同期比で3分の1減少した」と報告した。

“モスクワが4月に前線へ送り出した契約軍人の数は1,708名、5月は1,378名だった。これは昨年と比べて1,000名近く少なく、国防省との契約に数百万ルーブルの報酬金が導入されていなかった2024年と同水準だ。モスクワの採用担当者も「ここでは全てが悪化している。やって来る人間の数が足りず、モチベーションの高い人間はさらに少ないが私たちは諦めない。なぜならモスクワの状況は全国的に見ればまだ最悪ではないからだ」という。さらに深刻なのはドローンを運用する精鋭部隊=ルビコンへの人員供給で十分な能力がある人間の応募が減っている。地方ではモスクワ以上に契約を締結してくれる人間が減少し続けている”

“ロシア当局はすでに前線での失態と兵士確保の困難さを公然と認めている。そして解決策の模索を進めており、その中には新たな動員の実施という選択肢も含まれている。契約軍人の供給数は減少し、モスクワで採用ペースが前年と比較して1/3、全国規模で見ても1/4減少し、最低でも国内4つの地域の情報筋が契約軍人の減少に言及している。契約軍人の質も同様に低下し続けており、我々が取材した軍関係者は「2026年に採用した契約軍人の多くは戦闘能力を欠いている」「刑務所や連れてこられる者、路上で拾われてくる者もおり、文字通りのホームレスだ」「犯罪者上がりで足元がおぼつかないほどの年齢と持病を抱えている者もいる」という”

“当局は状況を少しでも打開するため紹介報酬を増額して「後方で過ごせる」という文句で契約に誘い込み、宣伝部隊を全国の各地域に派遣している。さらに8人の情報筋は「予備役のローテーションや新たな動員といったより抜本的な措置も議論されている」「10月以降、軍は演習場において数万人規模の短期集中訓練を受け入れる態勢を整えており、まとまった単位で現役部隊に人員を供給していく予定だ。ウクライナの前線からは常に深刻な人員不足の不満が寄せられており、この補充要求に急いで応じなければならない状況だ」という”

出典:Минобороны России

ロシアが過去4年以上自爆型無人機、巡航ミサイル、弾道ミサイルでウクライナの後方地域を攻撃しても、ウクライナの軍事や経済が崩壊することはなかったため、ウクライナの自爆型無人機による攻撃量がロシアを上回ったとしても「ロシアの軍事や経済が崩壊する」というセンセーショナルな結果は起こらないが、長距離攻撃能力の格差が急速に縮まったということは「ウクライナに強いてきた迎撃コストの負担をロシアも強いられるようになった」となる。

さらに契約を締結して特別軍事作戦に参加する人間の数が大幅に減ったのは「早期休戦への期待感や戦闘が停止する前にひと稼ぎしたいという人間の減少」が挙げられており、ウクライナ軍の長距離攻撃が激しさを増して「この戦争がすぐに終結する見込みはない」とロシア人も悟ったらしい。

出典:President of Ukraine

前線でのロシア軍は昨年までの勢いを完全に失っているが、これは「ウクライナ軍がロシア軍を国境近くまで押し返せる」という意味ではなく、プーチン大統領は兵士不足が決定的になってくれば強制動員を再び実施してくるだろう。ただし、強制動員は特別軍事作戦やプーチン大統領に対する支持とのトレードオフになるため気軽に切れるカードではなく、ウクライナも国内外に数々の問題を抱えているため、両国とも現在の膠着状態を打開するような特効薬は持っていないだろう。

それでも長距離攻撃でウクライナとの違いを作り出せなくなったため、ロシアの全体的な優位性は失われつつあり、前線はより濃厚な膠着状態にハマりつつある。

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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России

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コメント

  • コメント (30)

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    • ルイ16世
    • 2026年 6月 30日

    2026年のウクライナの軍事費は970億ドルの予測、ロシアは1570億ドルで物価の差も考慮すればそれほど両者に差は無くなって来ました。2025年はウクライナは614億ドル、ロシアは1600億ドルを超えていたので大分拮抗して来ましたね。

    18
    • 病まんと
    • 2026年 6月 30日

    本来ならばある程度ウクライナに妥協してでも戦争止めるべきなくらい物的にも人的にも金銭的にもあらゆるリソースを無意味に溶かし続けているんですが中々ロシアも引き下がりませんね
    ロシア国家・民族にとって余りにも大きい損失の筈ですが、独ソ戦のような絶滅戦争を仕掛けられたわけでもないのに一体何がクレムリンをここまで突き動かすのか……

    68
      • リンゴ
      • 2026年 7月 01日

      日本人が大好きなスパイト行動の応酬を国家規模でやってるのがこの戦争だ

      5
    • nton
    • 2026年 6月 30日

    「切れ目のない多層的な防空網」ってまさにロシアが得意としていたはずのものなんですけど、消耗と前線への貼り付けで自国内すら守れないくらいにボロボロですね

    22
    • たむごん
    • 2026年 6月 30日

    戦争5年目と考えれば、本当に長いものだなあと…。

    W杯を見ていて感じたのですが、ウクライナ戦争初期は国際大会などでの連帯を見聞きしましたが、W杯ではウクライナが負けたこともあり見かけないなあと。

    ウクライナ戦争あまりにも常態化したり(長くなりすぎたり)、イラン戦争によるホルムズ海峡封鎖で足下に火がつくなどしたため、国際的な関心も低下しているのでしょうね。

    12
      • あるまじろ
      • 2026年 6月 30日

      国際的な関心度合が下がっても軍事援助や政府支援は減ってない訳で…。

      一時的なブームによらず、ウクライナ支援や西側諸国の軍備増強、対露制裁が常態化しつつある今の方が、ロシアは嫌なんじゃないでしょうか。

      正直なところ、支援疲れで西側諸国は崩れると思ったんですが…。

      48
        • NHG
        • 2026年 6月 30日

        そう簡単には崩れないよ
        ドイツが軍拡に舵をきるほど前提が大きく変わったからね(ロシアが怖いの、みんな)

        41
        • Ard
        • 2026年 6月 30日

        残念ながら支援疲れなんかで倒れるならアメリカちゃんもベトナム戦争で負けないし、ソ連ちゃんもアフガン侵攻大失敗なんてしないんですよね

        35
        • たむごん
        • 2026年 6月 30日

        それは、仰る通りですね。

        世論の関心度が高ければ、政権の政治的な得点になるのかなとも思っていまして。

        英独仏の政権、政権支持率があまりにも低いですから、今後どうなっていくのかなというのも見守っていきたいなと思っています。

        5
          • mikan
          • 2026年 6月 30日

          全然親露じゃないが。ゲラシモフ過大評価し過ぎていたわ。戦争前までは中央銀行の総裁とともにスゲー奴だと思っていました。

          3
            • たむごん
            • 2026年 7月 04日

            国家間の大規模全面戦争となると、地域紛争とは別の難しさがあるのでしょうね…(中央銀行総裁、とんでもなく優秀ですね)。

            キーウ防衛のために河川氾濫作戦(大渋滞を引き起こした要因)・アントノフ国際空港の攻防・防衛のための破壊作戦などありましたが、この結果次第ではどうなっていたのか分からないなと感じていたりもしています。

            河川氾濫・橋梁破壊ですが、ウクライナ人ボランティアが協力したため限られた時間で実行できたという話しも見かけまして、ウクライナの方々お見事だったなと個人的には思っています。

            1
        • 名無し
        • 2026年 6月 30日

        敵国を金出すだけで崩壊させられるんだから疲れるとか最初から意味不明だなと思ってたな
        台湾有事で米国は介入しない論も同じだけど

        17
    • paxai
    • 2026年 6月 30日

    不思議なことにゲラシモフは最前線での前進にしか発言しないんだよね。
    自国深部への打撃やドローン戦や燃料に関しての発言が見当たらない。恐らく興味が無いんだと思う。
    こんなのが総大将でええんか・・・?

    19
    • YF
    • 2026年 6月 30日

    この不毛な戦争が続けば続くほどロシアはどんどん中国寄りになって行きますからね。最近では台湾侵攻に協力するなんて言ってますし。ウクライナ戦争が東アジアの安全保障にも大きな影を落とし始めています。
    ロシアも完全に中国に取り込まれる前に、いい加減この戦争終わらせて国力回復させて欲しいですね。

    14
      • 病まんと
      • 2026年 7月 01日

      別にロシアが国力回復するのと東アジアに関わらなくなる事への因果関係はありませんし……強いロシアは台湾侵攻に関与するかは誰にも分かりませんが弱いロシアにはそんな余裕はなくなるでしょうし
      寧ろ徹底的に弱体化してもらった方が中国のお荷物になるかもしれません

      45
    • せい
    • 2026年 6月 30日

    ドローンの生産量に格差が出来るのは何でなんだろ?
    ロシアの方が人も金も軍備に注ぎ込んでるのに

    4
      • NHG
      • 2026年 6月 30日

      社会の革新というか新陳代謝がウクライナのほうが進んで効率的になったんじゃない?
      この5年間で深部攻撃もほとんど経験せず、総動員もしないまま特殊軍事作戦を続けてたロシア
      開戦この方、ずっと官民の総力をあげて国家存亡のために戦い続けてたウクライナ

      48
      • nimo
      • 2026年 7月 01日

      インフラ攻撃されて電力不足で工場の稼働率が下がるという話があったのに意外

      6
      • 古銭
      • 2026年 7月 01日

      ポーランド、中国、チェコ(技術面では台湾)あたりからの航空部品輸入額が右肩上がりなのも大きそうですね。

      6
      • 名無し3
      • 2026年 7月 02日

      実際西側に対抗するパートナーとしてのロシアが弱体化することは中国も望んでいない
      そしてロシアが弱体化すればロシアとは協力的であるが中国には敵対的な国を日本側に取り込む好機となる

      2
        • 名無し3
        • 2026年 7月 02日

        レスするとこ間違えたすまん

    • Mr.R
    • 2026年 6月 30日

    フラミンゴが防空網を貫通してるのは色々と理由があるんだろうけど、フラミンゴの本格投入前に長距離無人機で各種防空システムを狩りまくったから、ってのも大きな理由の1つだと思います。

    20
      • 航空太郎
      • 2026年 7月 01日

      ロシアのAWACS(A-50)を2機撃墜しているのがかなり効いている気がします。高度200m程度を飛行する超大型無人機と言えるフラミンゴ巡航ミサイル(全長12m、RCSは気にしないV1現代版と言える設計)が巡航速度600㎞/h程度で1時間以上かけて目標に向かって飛んでいくのは、ルックダウンレーダーがあれば簡単に見つかると思うので。

      14
    • 山田さん
    • 2026年 6月 30日

    この短期間で、ロシアの主要都市におけるガソリン価格が25%あがったと、報道されてるね。
    ただでさえ高金利、高インフレで内政が弱ってるのに、物流費の高騰まで重なってくると、普通は戦争している場合じゃないんだけど。
    なんというか、国家の未来を急速に使いつぶしてるなと、感じちゃいますね。

    25
    • 名無し
    • 2026年 6月 30日

    ウクライナが負けてるとき散々ウクライナ軍はゼレンスキーを倒して停戦しろとか言われてたけどロシアに対してロシア軍はプーチンを倒せとか言わないのかな

    35
    • yamabuki
    • 2026年 6月 30日

    ただ、難癖つける意図で書くわけではないけど、コンスタンチノフカとかどうなんですかね…。ちょっとウクライナ側とロシア側で情報が違いすぎて、評価しづらいところではありますが、この前の共同通信の記事読んでも、依然として地上戦では楽観出来ないと感じたのですが。

    19
      • ケン
      • 2026年 7月 01日

      コンスタンチノフカはAMK Mappingが7月に陥落するのではないかと予想しているように状況はよくはなさそうです。しかしながら、ドローンで兵站の妨害が容易になっている現況でコンスタンチノフカの陥落は少なくとも軍事的インパクトは限定的なので、あまり話題にもなっていないように思えます。
      それとは別に人的資源の損耗は懸念でしょうね。相変わらず滑空爆弾でのダメージは大きそうです。

      11
      • 中村
      • 2026年 7月 01日

       ロシア軍がドンバスを完全制圧したところで、講和条件が気に入らなければ撃ち続けるだけでしょう、彼らは。意味の無い目標です。

       ネプチューンは開戦前から有った訳ですから、実際は戦争初期から意味の無い目標だったとも言えます。

       戦場ては味方の死傷者を最低にし敵の死傷者を最大にする工夫以外に意味はなく、ウクライナはソレに成功しつつ有ります。

       この点に関してロシア側は前進を諦める以外の具体的な解決策はなく、戦線はねっとり膠着するでしょう。

       要約するとロシアは前進しているから負けてます。

      12
        • SB
        • 2026年 7月 01日

        ウクライナ軍が膨大な犠牲を払いながらドネツク州とザポリージャ州をロシアに完全に明け渡さなかった成果でしょうね(特にドネツク)
        序盤で2州を抑えられていたら、今のロシアとウクライナの状況は逆転していたでしょう

        6
    • kitty
    • 2026年 7月 01日

    「強制動員」って「歴史戦」・「認知戦」用語で好きじゃないんだけどな。
    ウクライナ占領地での徴兵はForced Mobilizationとして非難していいとは思うけど。

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