米国関連

F-35Cが運用が出来ない建造費1.4兆円の欠陥空母! 米国「フォード級空母」受取り拒否?

米国下院議会の委員会は、2020年度の年次国防政策法案の草案に、最新鋭、ジェラルド・R・フォード級空母(以下、フォード級空母)が、F-35Cの運用能力を獲得しない限り、現在、建造中のフォード級空母2番艦、ジョン・F・ケネディの引き渡しを違法にするべきだという規定を含めた。

参考:Congress Unhappy With Ford-Class Inability to Deploy With F-35 Fighters

フォード級空母がF-35Cの運用能力を獲得できることを海軍長官が保証できるか?

6月3日に米国下院議会、武装サービス委員会所属の小委員会は、就役から2年が経過しても、最新鋭のステルス戦闘機F-35Cを搭載し、運用することが出来ないジェラルド・R・フォード級空母を問題視し、問題が解決されるまで、現在、バージニア州、ニューポート・ニューズ造船所で建造中の、フォード級空母2番艦「ジョン・F・ケネディ」の引き渡しを違法にするべきだという規定を、年次国防政策法案の草案に含めた。

出典:public domain 建設中のジョン・F・ケネディ

空母ジョン・F・ケネディは、既に艦体が90%以上完成し、海軍は2024年までに就役させる予定だ。

年次国防政策法案の草案には「空母ジョン・F・ケネディが海軍に引き渡される前に、フォード級空母がF-35Cの運用能力を獲得できることを海軍長官が保証すること」が盛り込まれているが、これが最終的な年次国防政策法に盛り込まれるか定かではない。

しかし、最も重要なのは、フォード級空母がF-35Cを運用することが全く出来ない事を、年次国防政策法案の草案の中で議会が認めていることだ。

F-35の海軍向けのC型が、初期作戦能力獲得を宣言したのは2019年2月で、2021年頃、ニミッツ級空母の「カール・ヴィンソン」に初めて搭載される予定だが、現時点で、最新鋭のフォード級空母にF-35Cを搭載する目処は全くたっていない。

出典:public domain 空母ニミッツに着艦したF-35C

フォード級空母で、F-35Cの運用を拒絶している犯人は「電磁式航空機発射システム(EMALS)」と「新型着艦制動装置(AAG)」だ。

EMALSは、艦載機を空母から発艦させる際に、蒸気のパワーで射出していた蒸気式カタパルトに取って代わる「電磁式カタパルト」のことで、AAGは、艦載機を空母に着艦させる際に、油圧のパワーで艦載機を減速・制動させていたアレスティング・ワイヤーに取って代わる、水圧タービンとインダクション・モーターを組み合わせた新型のアレスティング・ワイヤーのことだ。

なぜこのシステムが、F-35Cの運用を拒絶しているのか簡単に言えば、EMALSとAAGは、共通した2つの問題を抱えているからだ。

1つ目は、このシステムが未だに完成しておらず、様々な不具合が未だに完治したとは言えないこと。

2つ目は、システムが未完成・不具合があるため、艦載機の発艦時の射出と、着艦時の制動に関するデータ収集が全く進まないこと。

出典:pixabay

意外と知られていないが、空母から艦載機を射出する際、射出する機種、燃料、兵器の搭載量や、搭載位置、飛行甲板上の気温・風速などを細かく計算して、カタパルトに加える蒸気量を調整していて、同じ様に、着艦時も、着艦してくる機種、機体に残っている燃料の量、持ち帰った兵器量などを細かく計算して、アレスティング・ワイヤーに掛かる油圧シリンダーの制動力を調整している。

そのためF-35Cが、燃料を満タンに搭載し、AIM-120を2発、JDAMを装着したMk.84爆弾を2発搭載して発艦・着艦する場合と、ビーストモードで発艦・着艦する場合では、カタパルトやアレスティング・ワイヤーに掛かる力が異なる。

EMALSと、AAGは、空母が搭載する全ての艦載機の、様々なパターンの状態における、最適なパワーバランスの数値を割り出さなくてはいけないが、そのテストが殆ど進んでいない。

現時点で、テストが進んでいるのはF-18E/Fと、EA-18Gのみで、この両機種に関しては2019年中に、必要な全ての情報を入手すると海軍は言っているが、未完成のEMALSとAAGの制御システムは、不具合の度にソフトウェアのパラメーターが更新され、同じテストを1からやり直して、性能を実証しなおさなければならない。

出典:public domain

海軍は通常、テストのために24時間で84回の発艦と着艦を行うことになっているが、海軍は24時間、問題なく84回のテストが行われる可能性は1%未満だと2017年に報告書を提出している。

フォード級空母2番艦「ジョン・F・ケネディ」の進水は2019年中に行われる予定で、その後、艤装が行われるので、恐らく、2022年中には海軍に引き渡されるはずだ。果たして、それまでにF-35Cを、フォード級空母で運用するためのデーターを入手できるのか、誰もが怪しいと感じるはずだ。

これ以外にも、フォード級空母は、ミサイルや爆弾を飛行甲板へ運ぶための11基のエレベーターの内、2基しか作動していない問題も解決しなければならない。

フォード級空母の1番艦である「ジェラルド・R・フォード」は、2年前の2017年7月に就役したにも関わらず、いつになれば実戦任務に投入できるのか目処も立っていないのに、「空母ジョン・F・ケネディが海軍に引き渡される前に、フォード級空母がF-35Cの運用能力を獲得できることを海軍長官が保証すること」を要求したところで、完全に不可能だ。

トランプ大統領が再三、フォード級空母の設計を改め、伝統的な蒸気式カタパルトへ変更すべきだと発言しているのも頷ける。

※アイキャッチ画像の出典:public domain フォード級空母2番艦「ジョン・F・ケネディ」

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 05日

    先日の記事もそうですが近視眼で技術を見過ぎですね
    なぜ急いでフォード級でF-35Cを運用しなければならないのでしょうか?
    艦隊にF-35Cがいき渡るのに10年はかかりますよ
    10年後にはトラブルも解決していると思います

    2
    • 匿名
    • 2019年 6月 05日

    その10年で、中国はあと何隻空母を建造するのでしょう?
    その10年で、ニミッツとドワイト・D・アイゼンハワーは退役するでしょうし、カール・ヴィンソンも退役か退役間近ですね
    米中の空母バランスが、危険なまでに接近する可能性が有ります。戦争が誘発される可能性が高まります
    フォード級が使い物にならなければ、空母勢力の増強は不可能ですし、F-35Cが使えなければ艦載機の能力差も縮まるでしょう
    中国空母と艦載機の能力がどれほどかは未知数かもしれませんが、素人目の勢力差・性能差が縮まるのは、再度言いますが戦争誘発の可能性が高まって非常に危険です(今の中国なら「勝てる戦争何故やらぬ」の世論が強まるのは不可避でしょう)

    5
    • 匿名
    • 2019年 6月 05日

    F35の海洋投棄船と歴史に刻まれないことを祈る

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 06日

    左巻きの願望にっきですかこれ?

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 06日

    なぜ日本みたいに要素技術の開発をしてから建造しないの?
    最近の兵器開発の失敗はほとんどこれ 重要な部品の開発に失敗して全体が駄目になる

    2
    • 匿名
    • 2019年 6月 06日

    アメリカでさえこの有様である、電磁カタパルトの現実はこんなです。中国の建造中の3番目の空母もアメリカからパクった電磁カタパルトを使用する予定だがこりゃ無理だね。蒸気カタパルトは原子力空母じゃないと無理だから。スキージャンプ台必須だね。
    そうなるとあのエンジンではフル装備発進できないし。

      • 匿名
      • 2019年 6月 09日

      > 蒸気カタパルトは原子力空母じゃないと無理だから。
      H-8 「せやな」
      C-11「えっ」

      1
    • 匿名
    • 2019年 6月 06日

    F35B軽空母で良いじゃん(良いじゃん)

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 06日

    ジェラルド・R・フォード級空母は契約の仕方に問題があり、当時から今日のような問題が生じる可能性が心配されてた。
    ジェラルド・R・フォード級空母は、推進プラントにも問題が発覚してるはず。

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