ノルウェーのKONGSBERGは低コスト巡航ミサイルを製品ポートフォリオに加えるため米Zone 5を買収、Divergentの3Dプリンティング技術は低コスト巡航ミサイルだけなくトマホークの中央胴体生産にも採用され、国防総省のニーズに応じて「年間3万発以上のミサイル構造物」を生産できる。
参考:KONGSBERG completes acquisition of Zone 5
参考:3D printing company Divergent to produce Tomahawk structure at new factory, CEO says
KONGSBERGによるZone 5買収は低コスト巡航ミサイルを手に入れるためのもの、Divergentの3Dプリンティング技術はトマホーク生産にも採用される
米空軍はウクライナ戦争勃発後「長距離精密誘導ミサイルの慢性的な備蓄不足」を問題視し、専門チームを立ち上げて検討した結果「JASSM-ERに代表されるような従来型兵器の複数年契約では不十分」という結論に至り、米空軍研究所は2024年1月「AFWERX(イノベーションを促進する空軍プログラム)が先端兵器の技術開発を目的にしたデザインスプリント・アンド・チャレンジイニシアチブを開始した」「最初の目標は将来の低コスト巡航ミサイルに関するプロトタイプ設計だ」と明かし、射程926km、亜音速飛行、目標コスト15万ドル(大量発注による1発あたりの取得コスト)といった課題を掲げた。

出典:Defense Innovation Unit
この取り組みがどうなったかは不明だが、米空軍と防衛イノベーションユニット(DIU)は2024年6月「既存の入手可能な部品や材料を使用し、迅速かつ高効率で生産可能なエンタープライズ試験機= Enterprise Test Vehicleを開発する」「2024年後半の飛行試験向けプロトタイプソリューションの開発契約をAnduril、IS4S、Dynetics、Zone 5が獲得した」「この4社は100を超える応募の中から選ばれた」と発表、ここからウクライナ向けの長距離攻撃兵器=Extended Range Attack Munition(ERAM)に発展し、2026会計年度予算で低コスト大量生産型ミサイルファミリー=Family of Affordable Mass Missiles(FAMM)が登場。
FAMMの登場は「低コスト巡航ミサイルの開発・調達が正式プログラム化された」という意味で、現在は「懸架ラグ付きの空中発射バージョン=FAMM-L」「輸送機から投下するパレタイズド弾薬バージョン=FAMM-P」の開発が進められている最中で、将来の発展型として1,800km以上の射程距離を目指すFAMM-BARも検討されているが、FAMM-Lは実質的にERAMの米空軍バージョンだ。

出典:Eglin Air Force Base
ERAMとFAMM-Lに採用されたのはCoAspire製のRAACM(ラアックム)、Zone5製のRusty Dagger(ラスティ・ダガー)、Anduril製のBarracuda-500M(バラクーダ-500M)、Leidos製のBlack Arrow(ブラックアロー)で、ラスティ・ダガーはAGM-188A、バラクーダ-500MはAGM-189A、ブラックアローはAGM-190Aに指定されており、ERAMにしか採用されていないラアックムは正式な指定がない。
国防総省が今年5月「米軍の攻撃能力を積極的に拡張するため、革新的なイノベーションをもたらす新規参入企業や民間の革新的企業との間で新たな枠組み合意を締結した。Anduril、CoAspire、Leidos、Zone 5との合意によりLow-Cost Containerized Missiles=低コストコンテナ化ミサイル(LCCM)計画が開始される」と発表したが、LCCMは米空軍ではなく米陸軍の取り組みだ。

出典:Leidos
Andurilは地上・水上発射型バラクーダ-500M、CoAspireは3Dプリンティング技術で製造するGHOST、LeidosはAGM-190Aを2倍に拡大したLCCM、Zone 5はAGM-188Aで培った実績に基づくRusty Daggerを提供予定で、ノルウェーのKONGSBERGは6月10日「米規制当局の承認を受けてZone 5買収を完了した」「近年の紛争は大量生産が可能な防衛能力が極めて重要だと浮き彫りにし、これこそ欧州が必要としている能力だ」「Zone 5は我々の製品ポートフォリオに独自の能力、迅速な生産、高い拡張性、そして手頃な価格のミサイルという実績をもたらしてくれる」と発表し、高性能なNSMやJSMのラインナップにAGM-188Aが加わる格好だ。
そしてCoAspireがRAACMのエアフレーム製造に採用しているDivergentの3Dプリンティング技術にも新たな動きが登場した。Divergentを共同創業した31歳のルーカス・ツィンガー社長兼最高執行責任者は「米国は飛躍的な技術(リープフロッグ・テクノロジー)を導入することで世界トップの製造基盤を構築するチャンスがある」「一部の人々がすでに気づいていた現実に今や誰もが目覚めた」「今日、明日ではなく今すぐ大規模な弾薬の確保が必要であるというコンセンサスが国防総省内に形成され、それが我々のビジネスを加速させているのだ」と言及。
DivergentのAIで制御された3Dプリンターは、アルミニウムと独自の特殊合金を積層して巡航ミサイルのエアフレームを製造でき、この技術で製造した新世代の巡航ミサイルは従来の巡航ミサイルの1/10の価格(20万ドルから50万ドル)を実現し、しかもDivergentの3Dプリンター1台で年間数百発分のエアフレームを製造できるという。
ヘグセス国防長官もDivergentの工場を訪れて「この国を愛する愛国者として、君たちがここで成功を収めなければ我々の兵士たちが勝利することはない」「革新、競争、規模、スピード、そして費用対効果、これらの全てが現代の戦場で勝つために我々が必要としているものだ」と述べていたが、Breaking Defenseの取材に対してDivergentは「2027年上半期までにカリフォルニア州ロングビーチに新たな生産施設をオープンさせ、来年からトマホークの中央胴体を3Dプリンティング技術で生産する予定だ」と明かし、Divergentは複数の企業からFAMM向けやLCCM向けのミサイル主要部品生産契約も獲得しているらしい。
Welcome to the new industrial age.
Today, we are proud to announce that we have built America’s most advanced industrial metal 3D printer and are officially opening our second factory, a 430,000 sq. ft. facility in Long Beach, CA.
Our laser powder bed fusion printer, named the… pic.twitter.com/nwNU3hbVT0
— Divergent (@Divergent3D) June 16, 2026
Divergentがカリフォルニア州ロングビーチにオープンさせた新生産施設=Factory 2は国防総省のニーズに応じて「年間3万発以上のミサイル構造物」もしくは「6万発以上の弾頭ケース」を製造でき、Divergentは「今回の生産能力の増強によって防衛・民生両分野の顧客向けに年間生産量を8倍に拡大できる」と述べている。
KONGSBERGによるZone 5買収は低コスト巡航ミサイルを製品ポートフォリオに加えるためのもので、Divergentの3Dプリンティング技術は低コスト巡航ミサイルだけでなく高価で高性能な巡航ミサイル=トマホーク生産にも採用され、この分野の動きは非常に活発でダイナミックだ。

出典:Anduril
ちなみに、米空軍はFAMM計画に5年間で120億ドル以上を投資して約28,000発(FY2026=3,010発、FY2027=1,000発、FY2028=5,300発、FY2029=5,920発、FY2030=7,700発、FY2031=7,990発)の低コスト巡航ミサイルを、米陸軍はLCCM計画を通じて3年間で10,000発以上のコンテナ化された低コスト巡航ミサイルを確保する予定で、計画通り行けば米軍の長距離攻撃弾薬は相当増加するだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jonathan Sunderman/Released





















そのうち補給艦とかに3Dプリンターが整備されて、地産地消の戦場インフラが作られたりするのかもなぁ
米軍は艦上での検証を経て限定的な運用をしていて、海上自衛隊では模索が始まっているようです。(モノクエ『海上自衛隊、3Dプリンターでスペアパーツ製造を模索』より)
陸自はSPEE3Dを導入していますが、ウクライナのようにドローンの部品を3Dプリンターで作っているような運用ではなさそうなので、そっちも順次進めてほしいですね。
ちょっと誤解を招くような書き方ですね、ウクライナだって主にフレームとかのガワやプロペラとかがメインです。ネジとかなんかプリントするより大量生産品使用した方がマシだし、モーターやベアリングを3Dプリントをする訳にもいかないでしょう。何でも出来るから無理矢理でもするべきだとは思わないし、適材適所レベルの使用に留まるのが良いと思いますね。
確かにドローンそのものを3Dプリンターで作っているかのように読めますね。外装部分ときちんと書くべきでした。申し訳ありません
3Dプリンターの世界シェアベスト5は、アメリカ企業が4社のようですね。
Andurilのような新興防衛企業が登場しているわけですから、コスト面の技術革新がどのように進んでいくのか興味深く感じます。
3Dプリント技術によってシンプルな構造な物は安く早く作れて、より性能を高める為に複雑な排気構造や効率の良い翼を持つ物は従来のような高コストで納期が長い状態にはならずに選択肢として現実的なレベルになる感じがする。
三菱重工は工場ラインの自動搬送の徹底的見直しやAI活用でミサイルのリードタイム従来の1/3に出来たんだし、ここに最先端の金属3Dプリント技術が加われば更なる低コストと短納期も狙えそう。ただ、それ以外のサプライチェーンがボトルネックになってそこまでの改善は無理だろうけれども。
ほならね、トマホークを早くジャンジャン作りまくって納期遅れを取り戻しておくんなまし
低コスト化には繋がるだろうし職人絡まない分品質も安定するだろうけど、ボトルネックはセンサーとかだからトマホークの迅速化に繋がらない気が…。
ドローンや低コストミサイルはデュアルユースでの市場調達力だし。
バラクーダ500mがあがってるけどたしかに射程は長いが、弾頭は50kgとかだったり相応に火力が低いんだよな…
数と精密誘導でどうにかなるって発送なのかな?