米国関連

主翼を備えた155mm砲弾が登場、標準的な39口径で150km先を攻撃可能

米ジェネラル・アトミックスがSea Air Space 2023で「Long Range Maneuvering Projectile=LRMP」を披露、この主翼付き砲弾を使用すると「標準的な39口径155mm榴弾砲」から150km先の目標を攻撃できるようになる。

参考:Video: Day 2 At Sea Air Space 2023

安価な地上プラットホーム=榴弾砲・自走砲や多連装ロケットランチャーを活用した火力投射距離の延長

米ジェネラル・アトミックス(GA-EMS)は米陸軍協会(AUSA)の年次総会で「ラムジェット砲弾と同じ射程距離を実現する主翼付き155mm砲弾=Long Range Maneuvering Projectile(LRMP)を開発中だ」と予告していたが、Sea Air Space 2023でLRMPの概要を公開した。

標準的な155mm砲弾は毎秒約200回転の速度で砲身から飛び出すが、LRMPは小型の制御フィンで猛烈なスピンを毎秒約20回転まで減速して主翼を展開、目標まで飛行コースを操縦することが可能で、最大150km先の固定目標や移動目標に精密攻撃を行うことができるらしい。

ボーイングとナムモが開発を進めているラムジェット砲弾(155MM HE-ExR)は「52口径155mm榴弾砲」と組み合わせで最大150kmの射程を実現させる予定だが、LRMPは「標準的な39口径155mm榴弾砲」との組み合わせ同じ射程を実現させることができ、GA-EMSは艦艇砲向けのLRMP(127mm砲弾バージョン/155mm砲弾バージョンより主翼が短くなるので空中での操作性と射程が劣るものの50km~100kmの射程を狙っている)も開発する予定だ。

出典:SAAB GLSDB

要するにLRMPはHIMARSやMLRSで運用可能なGLSDB(地上発射型小口径爆弾=滑腔爆弾のSDBとロケットモーターの組み合わせ)の榴弾砲バージョンと呼べる存在で、ウクライナでの経験に基づき「高価なプラットホーム=航空機や弾道ミサイル・巡航ミサイル」ではなく「安価な地上プラットホーム=榴弾砲・自走砲や多連装ロケットランチャー」を活用した火力投射距離の延長に関心が集まっており、この分野は今後大きな成長を見せるかもしれない。

関連記事:台湾もGLSDB購入を打診、ウクライナ向けを優先するため早くても3年後
関連記事:米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Sgt. Jerod Hathaway

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コメント

    • 通りすがり
    • 2023年 4月 11日

    確かに安価なプラットフォームが再評価されたけど
    同時に弾薬やミサイルも生産性がよいこと、コストが低いことが大事という認識もされた気がするな
    あまり工夫をしてしまうとそっちに反しそう

    29
      •  
      • 2023年 4月 11日

      本末転倒ですよね

      11
      • nachteule
      • 2023年 4月 11日

       砲弾の価格が100倍以上になろうがロングレンジで命中率が高いという付加価値ってのは重要だと思うけどね、そこはコストだけでは計れない。安価な通常弾が100発有ろうが出来ない事をするのがスペシャルな装備な訳だし。味方兵站への負荷低減、砲身寿命延長出来て、敵に遠距離攻撃対応の手間を取らせて高価値目標を数千万レベルで潰せるならまだコスパは良くないか。

       本州のどの都府県だろうがそこの中心に配置出来れば届かない場所はないし、佐世保からだって対馬の半分くらいは射程に入る。1門でカバー出来る範囲の増大、無理して敵の攻撃範囲に入る必要も無く一方的に叩ける為のメリットを考えたら安いって計算する軍隊がいても不思議じゃ無いと思う。

      11
        • 2023年 4月 12日

        高価な砲弾ではなく、安価なミサイルと考えれば、かなり有用そうですね。

    • AH-X
    • 2023年 4月 11日

    これいいですね。対艦ミサイルほどの炸薬量ではないでしょうが、圧倒的に安価なはずですし。今の水上艦なら電子装備にダメージ与えるだけで無力化できます。
    FH-70や99式用に日本も導入するか国内開発を!

    21
    • 58式素人
    • 2023年 4月 11日

    こんな砲弾を撃つ砲は、施錠砲である必要があるのかな。
    それとも、普段は通常弾を撃っていて、たまに使うのかな。
    何だか、今の滑腔戦車砲を大口径化して、仰角60°くらいで撃つものが出てきそうな気もします。
    そうだとすると、安価なシステムではなさそうな気が。
    精密誘導をするそうだけれど、誘導方法は、今ならGPSかレーザーと思いますが、
    150km先のものを撃つとして、撃った先で誘導が効く範囲はどのくらいでしょう。
    途中まではGPS誘導で良いとして、展開した部隊に損害を与えるためには、今の技術では、
    いちいちレーザーを当てないと、部隊全体に損害を与えることができない様にも思えます。

      • ASDF
      • 2023年 4月 11日

      こういった砲弾は通常砲弾と比べて高価なので通常砲弾と同じように使うのは予算的に無理がある
      だから遠距離目標を狙うときだけ使うと思われる

      高価になる理由
      ・制御装置と翼を動かす駆動装置が必要
      ・ミサイルと違って砲弾には発射時に非常に強い衝撃がかかるので非常に高い耐衝撃性能が必要
      ・砲弾の大きさが決まっているのでその中にすべてを収められるように組み込む装置の小型化が必要
      ・遠くを狙うときだけのように使用数量が少ないので(比較的)少量生産になる

      14
        • 58式素人
        • 2023年 4月 11日

        概ねそのようになるのでは、と想像します。
        後は、野砲の大きさ(口径、口径長、運用重量)との相談でしょうか。
        大口径滑腔砲身野砲をMLRSやHIMARSと混ぜて使うかも、でしょうか。
        MLRSやHIMARSの方が、使い勝手が良いように思えますが。

        5
          • 戦略眼
          • 2023年 4月 11日

          ミサイルより大幅に安くないと、意味が無いよね。

          5
            • 58式素人
            • 2023年 4月 12日

            そうですね。
            WW1の時に、性能が似た例で、パリ砲がありましたね。
            これは、射程130kmと引き換えに、
            WW2の時にグスタフが出来るまで、
            世界一大きな砲兵設備でしたしね。
            結局、飛行機の爆弾に比べてコスパが悪いとされていましたね。
            今回は、弾に翼を付けて、既に存在する誘導方法を使うので、
            思ったよりは安いかもですね。
            エクスカリバーと値段があまり違わなければ、価値があるかも、ですね。

    • 無印
    • 2023年 4月 11日

    今までは、こういった兵器の標的(イメージ)はロシア艦艇が定番でしたが、新型砲弾の標的(イメージ)が中国の056型になってますね
    中国はこういう所やたら神経質だから、そのうち中国製兵器見本市の標的イメージに、アメリカ艦艇やアメリカ兵器の画像が使われるようになるんでしょうか(もしかしてもう使ってる?)

    8
    • もり
    • 2023年 4月 11日

    この手の兵器は90~00年代にも計画されては費用対効果が悪いとポシャって来たがウクライナ戦争でガラッと様相が変わったね

    11
    • 黒丸
    • 2023年 4月 11日

    これが実用化されればズムウォルト級の活用も可能になるのかな?

    それとも もう手遅れ・・・

    5
      • A
      • 2023年 4月 11日

      おぼろげながらズムウォルトは大砲降ろして弾道弾迎撃用のミサイルを積むとかなんとか言ってませんでしたっけ?

      8
        • 戦略眼
        • 2023年 4月 11日

        下ろすの止めるかも。

    • 2023年 4月 11日

    レーザーで片翼が焼けるだけで途端に空力的なバランスが崩れて当たらなくなるのでは・・・

    2
      • バーナーキング
      • 2023年 4月 11日

      おそらく亜音速で突っ込んで来る砲弾の翼を正面から焼き切るのはなかなか大変だと思うよ。
      機首や翼の前縁は発射直後の超音速による空力加熱に耐えられる造りになってる上に航空機以上に正面からの投影面積に対して表面積が大きいからレーザーがどうしても散っちゃう。

      6
        • ブルーピーコック
        • 2023年 4月 11日

        アメリカ国防省の「Directed Energy Roadmap」では
        ・100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能

        ・300kwで巡航ミサイルに対処可能
        (DefenseNewsより)

        とのこと。昨年末に試射が成功したらしいイギリスのDragonFireが50kwクラスらしいので、300kw級の『動かせる』レーザー防衛システムが開発できるのはまだまだ先でしょうけども。前線で使おうとなると更に難易度ががが

        2
          • バーナーキング
          • 2023年 4月 11日

          亜音速で展開翼備えて軌道をかなり自由に変えられるんだから対処難易度は巡行ミサイル並みと考えて良いのでは?
          一方で推進力のないこいつはおそらく並みの巡航ミサイルよりは安価。
          てか「(今はまだない高出力の)レーザーで片翼焼き切れば…」なんて仮定、意味薄くないです?
          そりゃ実現すれば「有力な対抗手段の一つ」にはなるだろうけどそれだけでしょう。

          3
    • ブルーピーコック
    • 2023年 4月 11日

    飛翔物体をより遠くに飛ばしたい?なら羽根を付ければ良いじゃない。
    爆弾を魚雷化するキットもそうだけど、こういう既存の武器を拡張化するのは増えていきそう。うまく行くか&通用するかは別として。

    2
    • すっかり暖かくなりました
    • 2023年 4月 11日

    誘導砲弾登場時は航空支援よりリアクションタイム短縮の面で効果が得られる程度ぐらいにしか思ってませんでしたが今時の戦争とISRが長足の進歩を遂げてからはSAMレーダー覆域への火力投入手段として再認識されたって感じですね
    開発するかどうかは分かりませんが本邦では先端のごく小さな翼で操舵するタイプの誘導砲弾研究してた筈ですから先行研究活用するならラムジェット砲弾になるのかな…

    2
    • ジエチルエーテル
    • 2023年 4月 11日

    こういうコスパの良いのが増えていくに連れてレールガンの存在意義が薄れていくような…
    そもそもレールガンで本当に極超音速兵器等を迎撃可能なのか分からんし
    防衛省はどうするつもりなんだろう…

      • ブルーピーコック
      • 2023年 4月 11日

      艦載砲や個艦・基地防衛が目的のレールガンと、自走砲や火砲の射程延伸を目的としたコレは比較対象として不適切なのでは。
      レールガン自体が物にならなかったとしても、ローンチリング方式のマスドライバーに使えるかもしれませんし。

      4
    • かず
    • 2023年 4月 11日

    肝心なのは値段、安くて数が揃えられないと結局調達中止になる

    5
      • きっど
      • 2023年 4月 12日

      一番気に入ってるのは、値段だ

    • TA
    • 2023年 4月 11日

    ここまでレッドブルなしw

    3
    • 名無しパン
    • 2023年 4月 11日

    滑腔砲を使った方がいいのでは。どうせ弾長が長すぎるから再開発になるんだし砲身だって寿命が来れば交換できるようにしてるんだろう。砲弾を誘導できるのが一般化したんだからライフリングの集弾性なんて不要ではないか。

    1
    • ななし
    • 2023年 4月 14日

    ガンタンクかな?(射程 240km ないし 260km)

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