米国関連

米軍兵士が中東地域の基地損害をリーク、これは国民に伝えられていない

国防総省監察総監室は対イラン作戦の報告書を議会に提出したが「米軍施設の損害状況」には触れておらず、現役兵士が匿名で損害状況の写真をCBSニュースに提供し「これは国民に伝えられていない基地の被害だ」「我々は目をつぶって立たされたまま顔面を殴られているような状態だ」と語った。

参考:Operation Epic Fury (OEF)
参考:New photos show widespread damage at U.S. positions caused by Iranian missile, drone attacks
参考:PATRIOT Air and Missile Defense System for Ukraine

高度な防空システムが空からの攻撃を完璧に近い形で防いでくれると期待しないほうがいい

国防総省監察総監室(DoD OIG)は対イラン作戦=エピック・フューリー作戦に関する初めての報告書を議会に提出し、この中で「6月29日までに費やした戦費は334億ドル=約5.1兆円で、ここには消費した弾薬費用223億ドル、装備損失額37億ドル、米中央軍の通常作戦経費を超過した費用74億ドルが含まれる」「イランとその代理勢⼒は地域諸国、商船、米軍基地及び艦艇に対して数千発のミサイルと自爆型無人機を発射し、6⽉30⽇までに兵士14人が死亡し、417人が負傷した」「さらに7月の戦闘で兵士4人が死亡した」と報告した。

出典:Department of War Office of Inspector General

米軍が被った損害についても公式に「F-15E×3機が友軍からの誤射で破壊され、もう1機が敵の攻撃で破壊された」「F-35A×1機がイラン上空での敵の攻撃で損傷した」「A-10×1機が戦闘捜索救難任務からの帰還中に損傷して機体を投棄した」「KC-135×2機がイラク上空で衝突して1機が損傷し、もう1機は墜落した」「KC-135×5機がサウジアラビアでイランの攻撃により損傷した」「E-3×1機がサウジアラビアでイランの攻撃により損傷した」「HH-60W×1機が戦闘捜索救難任務で損傷した」「MQ-4C×1機が墜落した」「AH-6×4機が戦闘捜索救難任務中に回収不可能と判断して自ら破壊した」「AH-64×1機がホルムズ海峡上空で撃墜された」「MH-60×1機がアラビア海上空で墜落した」「MQ-9×最大30機が様々な状況下において破壊された」と報告。

さらに報告書は「中東地域の外交施設(イラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)に対する攻撃で推定1億8,400万ドルの物的損害を被った」と言及しているが、中東地域の米軍施設の損害状況には触れておらず、6月29日までに費やした戦費334億ドルには米軍施設の損傷額は含まれていない。

国防総省監察総監室(DoD OIG)が報告書を公開した翌日の15日、CBSニュースは「独自に入手した写真により、イランのミサイルやドローンの攻撃を受けた中東各地の米軍拠点の損傷と破壊が初めて明らかになった」「これらの画像は軍の厳格なメディア規制を理由に匿名の現役兵士から提供されたものだ」「兵士はCBSニュースの取材に『これは国民に伝えられていない我々の基地に対する重大な被害だ』『我々は目をつぶって立たされたまま顔面を殴られているような状態だ』と語った」と報じた。

CBSニュースが入手した写真は「サウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地で撮影されたE-3、建物、兵舎」「クウェートのキャンプ・ブーリングで撮影された物資集積地、トレーラー、車両、建物」で、写真を提供した兵士は「これは防空シールドをすり抜けてきた『撃ち漏らし』ではない」と述べたらしい。

出典:Lockheed Martin

積極的なマーケティングの影響で「高度な防空システムは空からの攻撃を完璧に近い形で防いでくれる」とイメージしがちだが、マコンヴィル陸軍参謀総長は2022年「高度な防空システムを隙間のない壁のようにイメージして『脅威はこれをすり抜けることが出来ない』と考えるかもしれないが、実際にはこれを回避する方法もあるし突破する戦術もある」と述べ、米ディフェンスメディアも「防空システムはあらゆる高度を飛行する目標を確実に検出できる訳ではない」「全ての空域を完全にカバーすることは不可能だ」「24時間以上も戦場をうろつくことができる無人機は脆弱な部分から侵入してインパクトを十分残せる」と指摘したことがある。

つまり写真を提供した兵士が「これは防空シールドをすり抜けてきた『撃ち漏らし』ではない」と述べたのは「米軍やパトリオットシステムが無能だ」という意味ではなく「パトリオットシステムで保護できる範囲や対処できる脅威は限定的で、攻撃側は様々な大きさ、高度、速度、飛行ルートでパトリオットシステムの保護を突破してくる」という話であり、これが防空システムの現実で「優秀な自衛隊や国産防空システムならこんなことにはならない」と受け止めるのはロマンチストのやることだ。

出典:PATRIOT Air and Missile Defense System for Ukraine

ちなみに米議会調査局は2023年1月に作成したレポート(PATRIOT Air and Missile Defense System for Ukraine)の中でパトリオットシステム PAC-3形態の保護範囲について「⾶来する弾道ミサイルに対して約15〜20kmの範囲しか保護できない」と言及しており、この数字はPAC-3の射程ではなくDefended Footprint=防護フットプリント(パトリオットシステムが地上のどの範囲を実際に守れるかの範囲)の話で、PAC-3 MSEの場合はもう少し広くなると予想される。

日本はPAC-3対応のパトリオットシステムを28セット保有しているため、約15〜20kmの保護範囲で単純計算するとパトリオットシステム1セットでカバーできる範囲は約700km²〜1,260km²、つまり28セットで約2万km²〜3.5万km²の範囲を⾶来する弾道ミサイルから保護できる可能性があるものの、日本の国土面積で28セットの保護範囲を見れば数%〜10%弱となり、実際には原発などの重要インフラ、首都機能、自衛隊の重要拠点以外では⾶来する弾道ミサイルから保護は期待できない。

出典:Missile Defense Agency Photo by Ralph Scott

SM-3は中間段階の迎撃ミサイルなので保護範囲は広いものの、米軍が2025年12月時点で保有していたSM-3は414発に過ぎないため自衛隊のSM-3の保有数はしれており、高度な防空システムが空からの攻撃を完璧に近い形で防いでくれると期待しないほうがいい。

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※アイキャッチ画像の出典:匿名の現役兵士がCBSニュースに提供したもの

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コメント

  • コメント (25)

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    • 名無
    • 2026年 9月 16日

    防空システムは破壊し尽くされるのを防ぐのではなく遅らせるための物で、稼いだ時間内に敵を破壊し尽くさないといけない

    40
      • 幽霊
      • 2026年 9月 16日

      まあそんな事は実際にはほぼ不可能でしょうね
      ただ自国は核兵器を保有しているけど相手は保有していないという状況なら核攻撃を行う事で可能かもしれません。

      64
    • 山田さん
    • 2026年 9月 16日

    現代は完全に攻撃側有利の時代だし、ウクライナがやってるみたいに、自身が致命傷を負う前に相手に致命傷を負わせるアプローチをとるしかないよね。
    いや、ウクライナの抗戦能力は海外支援によって成り立っているわけで、致命傷を負っていないかというと微妙ではあるけど。

    66
    • SB
    • 2026年 9月 16日

    パトリオットの防護面積と日本の面積を比べるの意味無くない?
    数値”だけ”で比較するなら、可住地面積の時点で10万km²だから20~30%カバーしてるし、人口集中地区に至っては13000km²だから全域カバーできることなるけど

    31
      • 他人事では無い
      • 2026年 9月 16日

      逆にパトリオットで防げる面積が多いことに驚いた。
      旧軍の4個高射師団でも、そこまで広範囲にカバーできない。

      日本のイージス艦で、どれくらい保つのだろうか?

      14
        • すえすえ
        • 2026年 9月 17日

        うーん確かにカバーそれなりにできるんだけど問題は弾数よね。。。

        もうもう防御だけでは抑止にならないんだろうなぁ

        28
    • たむごん
    • 2026年 9月 16日

    日本全域の防空、物理的に無理なんですよね。

    敵基地攻撃能力が不可欠というのが、自然な流れだと思います。

    44
      • 朴秀
      • 2026年 9月 16日

      迎撃にリソース割かせる効果がありますからね
      結果的に攻撃に回せる資源が減りますし

      22
        • たむごん
        • 2026年 9月 16日

        仰る通りです。

        リソースを割かせることで、防衛する難しさを感じさせられるわけですから、抑止力が生まれるのでしょうね。

        13
      • ふむ
      • 2026年 9月 16日

      ただ敵基地攻撃能力は誤認でこちらが先制攻撃仕掛けちゃうパターンが怖いんですよね

      個人的には地下化と地雷と鉄条網とで泥啜って戦うのが専守防衛の形じゃないかと思ってます
      これなら挑発要素・攻撃要素を極限まで低めつつ抑止要素を持てるので
      ベトナムもアフガニスタンも相手本国狙えずとも追い返している訳ですしね

      13
        • たむごん
        • 2026年 9月 17日

        震災・物不足がイメージしやすいと思いますが、物流は厳しい面があるんですよね。

        港湾機能・高速道路網・鉄道網が、複数地域で破壊されれば、都市部は割とあっさり詰みだよなあと…。

        9
          • ふむ
          • 2026年 9月 17日

          都市の破綻はもう、どの形態で戦争しようと遅かれ早かれでしょうね…
          敵基地攻撃能力持った大日本帝国もズタズタになりましたし、対イランでの米軍基地見るに現代の軍事技術バランス上も地上は守れませんでしたし

          集団疎開で都市の食糧需要と自給量のギャップを減らして、運送能力の低下を補う事になりますかね

          6
            • たむごん
            • 2026年 9月 18日

            ほんと難しいですよね…。

            米軍はもちろんイラン側も、バンダレ・アッバース港の衛星写真がSNSで話題になりましたが、(当然ですが)コンテナがスカスカになったのを見ると考えさせられるものがあります。

            日本目線で考えれば、輸入穀物などのサイロも海岸に多いですし、化学肥料が海外輸入ですから悩ましいなと感じています。
            やはり、戦争は割に合わないなあと。

            5
      • YF
      • 2026年 9月 17日

      そもそも日本全域の防空が必要かどうか。中国だって無限にミサイルを持ってるわけではないですし、台湾侵攻であれば、その大部分は台湾に使われるはずです。
      ウクライナ戦争やイラン戦争を見てわかる通り、自国のミサイルの保有分や生産分だけでこの手の大規模な戦争は終わりません。どこまで日本の攻撃に割けるかは未知数です。
      開戦劈頭に在日米軍基地及び自衛隊基地の攻撃はありえますが、その場合中国自ら日米を戦争に招き入れる形になるので、その決断を中国側が出来るかですね。国際的にも戦争を吹っ掛けた側になるわけで台湾侵攻を国内問題だからという言い訳が出来なくなります。

      12
        • たむごん
        • 2026年 9月 17日

        日本目線で言えば、米軍備蓄は残しておいて欲しかったんですよね…。

        極東情勢ですが、米軍の弾薬備蓄とんでもなく激減(ウクライナ戦争・イラン戦争など)していますから、リスクは上がってるなあと感じています。

        14
    • RM
    • 2026年 9月 16日

    そういえばTPY-2が破壊された画像の真偽ってはっきりしたんですかね…

    2
    • 通りすがり
    • 2026年 9月 16日

    しばらく小国やテロ国家相手のワンサイドゲームをしていたから忘れていただけで、本来の戦争ってこれぐらいの損害は付き物じゃないのか?

    63
    • 黒丸
    • 2026年 9月 16日

    対空レーザーとレールガンが実用化されれば
    低高度の防空が改善出来て多少は防御側に有利になるかな

    1
    • YF
    • 2026年 9月 17日

    日本の防衛の場合。原発と首都防衛に関しては除外して良いと思います。原発の場合核攻撃と一緒です。相手に報復のフリーハンドを与えて平気なのは北朝鮮ぐらいで中国だって自国の沿岸部の原発防衛を完璧に出来ないです。首都防衛についても中国が本気で日本を滅ぼそうとして東京に核攻撃するなら有効ですが、台湾有事、尖閣有事で嫌がらせ程度の弾道ミサイル攻撃に意味はありません。ジェノサイドとして国際的な評判落とすだけです。
    日本が防衛に集中しなければいけないのは、在日米基地、自衛隊基地、港湾、空港、石油精製施設ぐらいじゃないでしょうか。
    これだけ絞っても完璧な防衛には程遠い状況ですが。

    そもそも中国が現状保有してる弾道ミサイルや巡航ミサイルだけで台湾侵攻を完遂出来る保障などどこにもありません。日本の軍事的重要施設以外を攻撃してる余裕はないと思います。

    10
    • こげ
    • 2026年 9月 17日

    政権が変わるまではホントの死傷者は公表されないんだろな。

    18
    • 中村
    • 2026年 9月 17日

     防衛と言うサービスを提供する以上は面積的には人口密集地をカバーしなければならないとは思います。全部防げるかと言えば、河川氾濫の死者を全て公共工事で防げ並みの理不尽だと考えます。

     戦死14人ですか?、余りに甚大な被害に愕然としますね。

    5
      • 暇な人
      • 2026年 9月 17日

      負傷者800人で戦死者14人はかなり不自然な数字と言わざるをえない
      だいたい戦死と負傷者は1,3の割合に収束する

      前線で戦っているわけじゃないし、イランが何どもダブルタップしてくるわけじゃないから、この基本に数値になるとは言わないけどさ

      12
    • あうあうあー
    • 2026年 9月 17日

    やはり避難シェルターの普及は急務
    防衛予算拡大するのだし、実現するべき

    1
    • L
    • 2026年 9月 17日

    地上兵力を出さない限り増える一方の死者と物的被害と戦費。出口戦略などないMAGA最高〜

    3
    • おるか
    • 2026年 9月 18日

    慢心させたいわけじゃないけど、中SAM改への改修と迎撃弾の増強も進んでるから防空体制、巡航ミサイル対処能力はもちっと高いよ。
    完璧なシステムが存在しないからこそ、日本は敵基地攻撃能力を育てて、迎撃ドローンを早期導入したりして不足を少しでも埋めていっている、その過程にいるんだと思います。

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