米国関連

米国の第6世代戦闘機開発、空軍の「F-X」は迷走し海軍の「F/A-XX」は開発費不足

米空軍の次世代戦闘機「F-X」は未だ行く道が定まらず、米海軍の次世代戦闘機「F/A-XX」は空母不要論に予算獲得を阻まれ、本格的な開発は当分先になる見込みだ。

関連技術の研究や開発に取り組んでいるものの、いまだ実像が見えてこない米国の第6世代戦闘機

米国では第5世代戦闘機「F-35 ライトニングⅡ」を空軍と海軍(海兵隊を含む)が共同調達を行っているが、第6世代戦闘機とよばれる次世代戦闘機については別々に調達する方向で研究開発が進んでいる。

これは空軍と海軍が次世代戦闘機に求める能力や運用方法が異なるためだ。

米空軍は次世代戦闘機「F-X」に敵が厳重に守りを固めた空域を貫通できる高度なステルス性能を求めていると言われているが、米空軍も第5世代戦闘機F-35を開発したロッキード・マーティンも欧州が開発している第6世代戦闘機程度の能力(ネットワーク化された戦闘対応・無人機の制御・指向性エネルギー兵器搭載等)なら現在開発中のブロック4にアップグレードしたF-35である程度実現できるとみているため、米空軍が次世代戦闘機でどのようなブレイクスルーを起こそうとしているのか謎に包まれたままだ。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Heather R. Redman

ある米空軍関係者は、そもそも次世代航空支配プログラム「Next-Generation Air Dominance(NGAD)」に新しい戦闘機は必要としていないと語っているため、もしかしたら米空軍は第5世代戦闘機や第6世代戦闘機といった特定の機体に依存した戦いから脱却することを考えているのかもしれない。

補足:米空軍が進めている次世代航空支配プログラムはF-22やF-35のような特定の機体に依存したものではなく、空対空ミサイルを搭載したステルス爆撃機B-21とステルス無人戦闘機が連携して航空支配を達成する戦い方ことが第6世代=次世代戦闘のあるべき姿かもしれないと語っている。

さらに米空軍内から「デジタル・センチュリーシリーズ」と呼ばれる構想も飛び出してきた。

これは用途の被る航空機を共通化することで開発機種を絞った結果、ひとつの機種に詰め込まなければならない機能は膨れ上がり開発から実用化まで時間がかかりすぎて役に立たない=要するに量産機が完成する頃には開発当初に想定していた戦場環境が変化してしまい、これに適応させるため直ぐにアップグレードが必要になる状況は中国が台頭しロシアが復活した情勢下では受け入れがたいという意味だ。

出典:Public Domain センチュリーシリーズの1つF-102 デルタダガー

そこで1950年代に革新的な戦闘機が次々と登場したセンチュリーシリーズの状況を再現して中国やロシアの対応能力を飽和させようというのがデジタル・センチュリーシリーズの趣旨で、そのためには機能を絞った異なるコンセプトの戦闘機開発を5年以内で複数同時に行う必要があり、これが実現可能なのか非常に怪しい。

一方の米海軍はF-18E/Fを更新するための次世代戦闘機「F/A-XX」に米空軍が求めているほどのステルス性能は不要だと考えており、それよりも空母を中国やロシアから守るため作戦半径の大きな要撃能力に優れた戦闘機を希望している。

米海軍は冷戦期、ソ連の空対艦ミサイルを搭載した航空戦力から空母を守るため長射程の空対空ミサイル「AIM-54 フィニックス」を搭載する戦闘機F-14を開発して運用していたのだが、ソ連消滅で空母を正面から脅かす存在がいなくなり後継機を開発しないままF-14を退役させてしまった。

出典:public domain AIM-54を発射するF-14

しかし中国やロシアが極超音速ミサイルで空母を脅かすようになっため、再び専用の要撃能力に優れた戦闘機が必要だという結論になったのだ。

ただし「F(Fighter)/A(Attack)-XX」と表記されているためF-14のように純粋な制空戦闘機として開発されるわけではなく、ある程度の対地/対艦攻撃能力も付与される可能性が高い。

このように米海軍の次期戦闘機のコンセプトは米空軍の次期戦闘機よりもシンプルなので開発難易度は低いかもしれないが、議会が空母不要論を唱え始めたため次世代戦闘機「F/A-XX」開発費獲得が難しく米海軍は手持ちの予算から開発費を捻出するためF/A-18E/F BlockⅢの調達を24機で打ち切る方針を明らかにした。

ただ、この措置で捻出できる金額は約48億ドル(約5,100億円)程度なので一時しのぎに過ぎず、結局は議会を説得して開発費を支給してもらわなければ次世代戦闘機「F/A-XX」の開発は進まない。

以上のように米空軍の次世代戦闘機「F-X」は未だ行く道が定まらず、米海軍の次世代戦闘機「F/A-XX」は空母不要論に予算獲得を阻まれ、本格的な開発は当分先になる見込みだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:米空軍研究所 次世代戦闘機コンセプトアート

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    なんだかんだアメリカはとうに第6世代戦闘機の要素研究は終わってる気がするんだよな

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      第6世代、というのがF-3やFCASやテンペストを指すのであれば多分その通りで、それらの様子見て後追いでF-35あるいはF-22を近代化改修すれば十分追従できると思ってるんでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    目先のお金が大事なトランプ政権が開発にかかるお金を出し渋るのはありそうな話だけど、それ以上に議会が軍を猜疑の目で見てるのかもしれんね

    F-35の遅延や高騰、相次ぐ無人機の開発中止、ズムウォルトやフリーダム、ジェラルド・R・フォードの惨状……その挙げ句に出てくるのがデジタル・センチュリー構想って、そらキレるやろ……

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    敵方の新戦法がプロパガンダ丸出しの眉唾物しか出てないからねぇ
    ○○構想とかまだ早いんでないの。基礎研究だけやっとけば段階でしょう

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    中露がアクセス拒否戦術でF-22やF-35との正面対決を避けてる間は新型は必要では無いって所でしょうか。

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    そもそも米軍自身が今後の作戦構想や戦術教義を固めきれていない状況で、無理に新型戦闘機の開発が出来る訳ないからね。
    下手をすると、次期戦略爆撃機のB-21が戦闘機の替わりに成りかねない上に海軍の原子力空母は削減されるかも知れないし。
    これは冗談の範疇だけど、米空軍が我が空自のNGF(F-3)をF-Xの繋ぎとして採用すると言い出しても俺は驚かないわ。

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      NGFをボーイングがラ国したりしたらもう大笑いですなw
      イヤガラセに烈風とか名付けて欲しいわ

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      どう贔屓目に見てもないから
      いい加減に韓国人みたいなバカな思考から抜けなよ

        • 匿名
        • 2020年 5月 05日

        そのままは無いかもしれませんが、要素技術を持っていくならやるでしょう。
        アメリカはF-3開発をデジタルセンチュリーシリーズのひとつとして考えているならば。
        アメリカが今ひとつ態度をハッキリさせていないのはあっちこっちの良いとこ取りを考えているからなのかもしれません。
        >烈風とか名付けて欲しい
        良いですねー。
        夢が広がりますね。

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      F-3を米軍が採用するとか本当に面白い事を言うなw

      • 匿名
      • 2020年 5月 05日

      戦闘機は無いにしても日本が射程と命中率を飛躍的に改善した空対空ミサイルを開発とかしたら技術は持っていくだろうなあ。

        • 匿名
        • 2020年 5月 05日

        JNAAMに研究中の低RCS対処ミサイル誘導制御技術を適用したら、該当するミサイルが出来上がりそう。
        日本単独ではなく日英共同開発だから、米国が持ち逃げするのはハードル高いかも?

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    日本相手にウハウハだったアメリカはどこいったんだ
    人のこと言えた身ではないが連中大丈夫か

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    >どう贔屓目に見てもないから
    いい加減に韓国人みたいなバカな思考から抜けなよ

    だから、頭に「これは冗談の範疇だけど」と書いたのだけど、読んでいなかったのか?
    冗談が分からない奴はこれだから困るよ

    >NGFをボーイングがラ国したりしたらもう大笑いですなw
    イヤガラセに烈風とか名付けて欲しいわ

    これには同感!
    こう言う返しを書いてくれる方を待っておりました

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      冗談だと言って保険をかけても本心はそう思ってることを見透かされてるからじゃないかなw

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      正直ダサいっス

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      >米空軍が我が空自のNGF(F-3)をF-Xの繋ぎとして採用
      確定事項を冗談として扱うのはNGです

      (輸出するかは別として)米軍以外はF-3を採用しない、または米軍がF-3を「繋ぎ」としてしか採用しない、というのが冗談だったら申し訳ありません

        • 匿名
        • 2020年 5月 04日

        ていうかね
        本当に日本の金(と技術)を利用しようとするのが1番手っ取り早い
        ツナギなら尚更
        共同開発という美名衆目でさらっと持っていきそうな
        ’80の国産FS-X関連技術は何処へ流れたっけか

          • 匿名
          • 2020年 5月 04日

          対等なパートナーとしてどこまで日本の権利をねじ込めるか要注目

    • 匿名
    • 2020年 5月 04日

    >F-3を米軍が採用するとか本当に面白い事を言うなw
    >冗談だと言って保険をかけても本心はそう思ってることを見透かされてるからじゃないかなw

    いや、本気で笑いを取るつもりで書いたのだが……

    >>確定事項を冗談として扱うのはNGです
    (輸出するかは別として)米軍以外はF-3を採用しない、または米軍がF-3を「繋ぎ」としてしか採用しない、というのが冗談だったら申し訳ありません

    確定事項でも何でもなく、只の冗談ですが(大汗)

    • 匿名
    • 2020年 5月 04日

    F/A-XXがF-3で決定だな。
    後は空自が飲むかだけの話。
    飲めば海自に”クイーンエリザベス”級以上の空母導入の目になるが、予算で自衛隊そのものが破綻するだろうな。

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      自動化が進めば少しは維持費安くなりますかね、、正規空母

      • 匿名
      • 2020年 5月 04日

      「艦載機の陸上運用」ならまだしも「陸上機の艦載機化」なんてほとんど新規開発と変わんないと思いますけどね。
      F-3の様なハイアスペクトの大型機を艦載機運用しようとすれば構造強化と重量増加で補強ダルマ化する可能性が高いですし。
      かといって「最初からそのつもりで設計」すればF-111やF-35の轍を踏む事になりかねません。
      天下の米国がF-111の経験を踏まえて尚F-35で大苦戦しているという事実を軽く見るべきではありません。
      ※まあ「米国は割と懲りずに同じ過ちを繰り返すぞ」という意見もあるかもしれませんが…

    • 匿名
    • 2020年 5月 05日

    アメリカ海軍の欲しいFA-XXに近い戦闘機の形って、Su-57に近い気がする
    というかSu-57がF-14の構成に近い気がする。特にエンジンレイアウトとペイロードのレイアウトがそっくり

      • 匿名
      • 2020年 5月 06日

      そこまでいくとA-5 ヴィジランティも範疇に入らんかな?

      まぁロ助はSu-25 Tu-160 ブラン とゴロゴロあるが

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