米国関連

F-35はいよいよ成熟段階に突入か? 米国、カテゴリー1Aの欠陥を全て修正完了

F-35を操縦するパイロットの生命を危険に晒す「カテゴリー1A」に分類された全ての欠陥修正が完了したとブルームバーグが報じている。

参考:F-35’s Image as $428 Billion Bundle of Flaws Improved by Fixes

111件あったカテゴリー1の欠陥が3件まで減ったF-35は成熟段階に突入か?

F-35は飛行の安全性やミッション達成を阻害する「カテゴリー1」に分類された欠陥が計111件(2018年1月時点)あったのだが現在は8件にまで減っている。しかもパイロットの生命を危険に晒すカテゴリー1Aに分類された欠陥は全て修正が完了した状態で、残る8件は全てミッション達成に重大な影響を与えるカテゴリー1Bに分類されている欠陥だ。

F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)によればカテゴリー1Bに分類された残り8件の欠陥の内、5件については今年中に修正が完了して検証が行われる見込みだと話している。

では残り3件の欠陥は何なのか?

ブルームバーグによればF-35に残された残り3件のカテゴリー1Bに分類された欠陥は、パイロットの鼓膜にダメージを与える可能性のあるコックピット内の気圧変化問題、特定条件下で暗視装置の画像がぼやける問題、搭載レーダーの海面探索能力の制限問題で、最初の2つに関しては2021年中に最後の1つに関しては2024年までに問題が解決できるだろうと言っている。

出典:US Air Force Photo by Chad Bellay

ただ以前として緊急の対応を必要としない問題に分類される「カテゴリー2」の欠陥が何百件も未解決のまま残されているので全く問題はないということにはならないが、この何百というF-35の欠陥の中には複数回に再現テストで同じ事象を確認すること出来なかった再現性が異常に低い1度きりの問題や、欠陥が確認できてもさほど影響がないものが多数含まれているため、どこまでF-35の運用に影響があるのかは不明だ。

そもそも軍用機の欠陥は全て修正されることは殆どないと言ってよく、あれだけ量産されたF-16にさえ今だに欠陥がのこされまま運用が続けられている上、F/A-18E/Fが装備している着艦フックの欠陥は最近になってようやく対応が完了するなど重要度やコストの関係で制限を設けなどの対応で対処するケースも少なくない。

しかしF-35の設計や機体、主要コンポーネントに関係する重大な欠陥は出尽くした感があり、軍用機によくある不具合連発の初期段階は脱したのだろう。今後F-35は機体やシステムが成熟段階に入っていき残された問題も修正するのか制限を設けてるなどして放置するのか欠陥の整理が進みカテゴリー2の問題も減っていくだろうと予想される。

果たして日本のメディアは今回の不具合解消をどのように伝えるだろうか?

まだ3件もカテゴリー1の欠陥が残っておりカテゴリー2の欠陥は何百件も未解決のまま残されていると報じるのか?111件もあったカテゴリー1の欠陥が残り3件まで減ったと報じるだろうか?どちらの伝え方も捉え方の違いであり情報としては全く間違っていない。

ちなみに問題の多いF-35物流情報システム「ALIS」や後継システムの「ODIN」は問題山積なので触れないでおく・・・

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by J.M. Eddins Jr.

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コメント

    • ハヤタ
    • 2020年 5月 13日

    完成されたモノなど、ほぼないはず

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    寧ろALISやODINの問題の方が深刻な気がする

      • 匿名
      • 2020年 5月 13日

      現実問題、現場は当てにせずに使ってないだろうから無問題では?

        • 匿名
        • 2020年 5月 13日

        中途半端に使うから数が合わない問題が発生するから余計に信用されない負の連鎖が発生しそう

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    メディアはこの問題自体報道しないだろう。興味が無いし、また反対運動があれば残りの不具合から欠陥機!!アメリカの言いなりで買わされたーと騒ぐんじゃないかな

      • 匿名
      • 2020年 5月 13日

      メディアは技術的な事は理解できませんからね。

      未だに軍艦と戦艦を混同してますし。

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    欠陥を理由にF35を批判してた左翼たち息してる?

    2
      • 匿名
      • 2020年 5月 13日

      もう忘れてるでしょう。

      1
      • 匿名
      • 2020年 5月 13日

      そうでしたっけ?うふふ…

      2
    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    日本のメディアの多くは、カテゴリー1・2の相違が分からないかも?
    もしくは、説明聞いても知らない振り、とか。

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    「パトカーに追跡されていた車が事故を起こした」と「パトカーから逃走していた車が事故を起こした」
    日常でたまにあるニュースでも伝え方によって印象はかわりますよねぇ。
    さてメディアがどう伝えるか?
    特に半田滋の記事に期待w

    2
    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    は?海面探索能力に制限あるの?

      • 匿名
      • 2020年 5月 13日

      しかも解決が最後の予定ですよね。
      そこまで長引くのは意外です。
      フィルタリングや信号処理で対処する分野だと思っていましたが、今までと何が違うのかな?

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    C-2開発の時も酷かったけれど、これF-3開発なんてなったひには
    不具合の度に欠陥機だの大合唱とか、今から想像するだけでもゲンナリする
    ホント、ものづくりって大変だな(白目むく)

    3
      • 匿名
      • 2020年 5月 15日

      だからNGF開発なんてサッサと中止にするのが利口なんですよ
      どうせ今後20年の経済はコロナ渦の影響から抜け出せないのだから

        • 匿名
        • 2020年 5月 15日

        そんなこと言っていたら何も出来ないよ。

        2
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