F-35 Block4の新型レーダーは「2025年製造分=Lot17からの組み込み開始」を予定していたものの、国防総省とLockheed Martinの強引な開発スケジュールが破綻し、Breaking Defenseは19日「秋以降から米軍に納入されるF-35は全てレーダー未搭載の状態で引き渡される」と報じた。
参考:EXCLUSIVE: US poised to accept new F-35s without radars, sources say
AN/APG-85は輸出許可が下りていないため、米国以外の購入国に影響を及ぼさない
F-35 Block4を完成させるには「Block4のソフトウェア」「システムインフラストラクチャーを刷新するTechnology Refresh3」「F135の能力を強化するEngine Core Upgrade」「電力・冷却システムを改良するPower and Thermal Management System」の4要素、さらにAN/APG-85への換装、AN/ASQ-239、EOTS、DASの強化、ウェポンベイへのサイドキック搭載なども必要で、現時点で完成しているのはAN/ASQ-239のアップグレードとサイドキックぐらいしかなく、TR3はLot15から量産機への組み込みが始まっているもののソフトウェアが未完成だ。

出典:Northrop Grumman AN/APG-81
AN/APG-85の存在は米空軍が2022年に提出したウィッシュリスト(空軍予算でカバーできない案件への資金供給を議会に要求する要望書)で初めて存在が確認され、F-35が採用しているAN/APG-81の後継レーダーではないかと予想されていたが、ノースロップ・グラマンは2023年1月「Block4向けの次世代レーダーとしてAN/APG-85を開発中だ」「これは全てのF-35と互換性のある先進的な多機能レーダー」「将来の敵対的な空中の脅威や地上の脅威に対抗する能力を備えている」「利用可能な最新技術を幾つか採用して制空権の確保に貢献する」と発表。
さらにF-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)の担当者も「Lot17(2025年から始まる生産ブロックのこと)からAN/APG-85の組み込みが始まる」と明かし、Breaking Defenseは昨年6月「ノースロップ・グラマンがAN/APG-85のタイトな開発スケジュールに懸念を表明していた」「この懸念はJPOとロッキード・マーティンによって却下された」「両者は出来るだけ早くF-35と新しいレーダーを統合したいと考えていた」「両者はノースロップ・グラマンに圧力をかけてタイトな開発スケジュールを受け入れさせた」と報じていたが、この懸念は的中してしまう。

出典:Lockheed Martin
Breaking Defenseはロッキード・マーティンのジム・タイクレット最高経営責任者がアルヴィン参謀総長に送った2025年3月21日付けの書簡を入手し、この中で「AN/APG-85には遅延のリスクがある」「Lot20生産機に向けて現実的な選択肢を提供するため積極的な措置を講じている」「設計チームは今年1月に新しい機体の設計を開始した」「この作業は8月までに完了する予定だ」「この新しい機体設計は長期にわたる共通の構造を提供する」「これによって生産の最適化と潜在的な遅延のリスク軽減を実現できると記述している」と報じた。
この話を要約すると「Lot17からのAN/APG-85組み込みは絶望的、Lot20からの組み込みにもリスクがある」「そのため両方に対応できる機体設計を開始した」「Lot20に間に合わないリスクを軽減するためLot20向けのAN/APG-81調達を開始した」「もしLot20にAN/APG-85が間に合えば調達したAN/APG-81はスペアパーツに回される」「ノースロップ・グラマンはリスク軽減策にかかる費用の25%を負担している」「この設計がプログラム参加国とFMS調達国に適用されると両レーダー搭載に対応した共通構造になる」「そうなれば将来的にAN/APG-85への換装を希望した際の改修範囲を最小限に抑えることができる」となる。

出典:Lockheed Martin
さらにDefense Dailyは今年2月「ロッキード・マーティンは昨年6月以降、F-35Aを含む全てのF-35をレーダー未搭載状態で各軍に納入している」「米軍の現場部隊に納入されたF-35はAN/APG-85用のマウントが備わっているもののAN/APG-81とは共通性がない」「レーダー未搭載機は飛行中のバランスを保つため機首に重りを追加する必要がある」「レーダー未搭載機もデータリンクを備えたAN/APG-81搭載機が随伴すれば飛行可能」「この問題は国際顧客には影響を与えていない」と報じた。
War Zoneも「Lot17製造分の機体がレーダー未搭載状態で納入されているという報道を米空軍は否定した」「Lot17製造分のF-35AはAN/APG-81を搭載して納入されている」「一方でJPOはセキュリティ対策の強化を理由に報道内容への回答を拒否した」「依然としてAN/APG-85搭載機にAN/APG-81を一時的に搭載できるのか不明なままだ」「それが可能でも変更作業がどの程度大規模なものになるのか、機体構造にどの程度影響を及ぼすものになるのかは分かっていない」「仮にレーダー未搭載機が納入されていなくてもBlock4が重大な課題に直面している事実に何の変わりもない」と指摘していたが、この話は恐ろしいことになっている。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
Breaking Defenseは19日「米空軍がレーダー未搭載のF-35受け入れ準備を始めている」と報じ、下院軍事委員会の戦術航空・陸上部隊小委員会で委員長を務めるロブ・ウィットマン議員は取材に「現在のところAPG-85搭載機はバラストを積んで生産される予定だ」「これにより当面は戦闘任務に就けない機体を生み出すことになる」と述べ、別の関係筋も「レーダー未搭載の納入を受け入れ続けることが可能だ」「飛行可能な機材として使用できても戦闘任務に適した機材ではない」「そのため制限された訓練にしか使用できない」と明かした。
Breaking Defenseは「秋以降から米軍に納入されるF-35は全てレーダー未搭載の状態で引き渡される」「最も楽観的なシナリオなら来年までにAN/APG-85の準備が整い、この問題の影響を受ける機体はごく少数にとどまる可能性がある」「逆にAN/APG-85の遅れが長期化すればレーダー未搭載の状態で引き渡される機体は100機以上になる」「もし遅れが長期化すればAN/APG-81とAN/APG-85の両方に対応するバルクヘッドが導入される2028年納入=Lot20まで解決策がない」「米海兵隊はLot17からAN/APG-85対応機を発注している」「米空軍と米海軍は秋から始まるLot18からAN/APG-85対応機に切り替える予定だ」と指摘。

出典:Marine Corps photo by Lance Cpl. Joseph E. DeMarcus
要するにLot17生産機の米海兵隊向けF-35B、Lot18生産機の米空軍向けF-35A、米海兵隊向けF-35B、米海軍/米海兵隊向けのF-35CはAN/APG-85対応機で、これを生産するための構成要素は何年も前から各サプライヤーに発注されているため「Lot18生産機をAN/APG-81対応機に変更する」と言って間に合わず、Breaking Defenseの取材に応じた情報筋は「バルクヘッドに関する議論は数年前に終わらせておくべきだった」と、ウィットマン議員は「AN/APG-85遅延の主要原因は認証作業に時間がかかることだ」と述べている。
“ノースロップの功績によって遅延期間はいくらか短縮されたが、AN/APG-85の認証取得に関する問題は依然として残っている。最大の課題はAN/APG-85の認証作業が生産ラインから機体が出てくるペースに追いついていないことだ。認証に必要な厳格さを短縮するにも限界がある。この問題はいずれ解消されると思うが、当面は飛行可能なF-35が多数あっても「戦闘準備が整った機体」がないという状況が続くだろう”

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Eduardo Otero TR2仕様のコックピット
米海兵隊の広報担当者は本問題について「国防総省はBlock4の機能が整う前に機体が完成してしまうリスクを十分理解した上で今回の決定を下した」「各軍の決定は機体がBlock4の機能を受け入れられるようにすることだ」「Block4の機能のために大規模な改修が必要となるBlock3の機体を生産し続けることで生じる手間を省くものだ」と述べたが、最大の問題はBlock4のソフトウェアがいつ完成するのか誰にも分からないことで、米空軍のシュミット中将は2024年4月の公聴会で「Block4で予定されている多くの能力は2030年代まで実現しない」「そのためBlock4自体を再構築することになった」と言及。
政府説明責任局(GAO)は2025年9月に公開した報告書の中で「Block4はF135の改良と熱管理システムの能力向上を必要とせず、2031年までに実現可能な機能(電子戦、兵器、通信、ナビゲーション機能)に重点を置く」「F135の改良と熱管理システムの能力向上に依存する機能の一部は将来のアップグレードまで延期され、戦闘ニーズを満たさなくなった機能も削除される」「国防総省は2025年秋までにBlock4の主要サブシステム調達文書を正式化する計画だ」「この文書には承認されたBlock4の能力リストが含まれる見込みだ」と報告したが、主要サブシステム調達文書は未だに登場してない。

出典:U.S. Air Force photos by Jill Pickett
国防総省の立場では「Block3の機体を生産し続けることで生じる手間を省くもの」だが、情報筋の立場では「遅延とコスト超過で悪名高いF-35プログラムが直面しているレーダー問題は、ずさんな計画の新たな一例である」と述べており、もうF-35プログラムは誰が制御してBlock4に導くのか誰にも分からない。
因みにAN/APG-85は輸出許可が下りていないため、F-35プログラム参加国やFMS経由でF-35を購入するパートナー国に影響を及ぼさない。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman





















この話を勘違いして「日本のF-35はレーダーを積んでないポンコツをつかまされた!!」
って騒ぐ困ったさんが出てきそうだ
「最新鋭機はレーダー未搭載」という見出しのインパクトはあるので、露あたりのメディアは嬉々として取り上げそうですね。
逆に考えるんだ。F117みたいにレーダー使用による逆探知を防ぐため高性能赤外線センサーオンリーの新型になりました、とでも言っておけばOK。
遅れているだけとはいえ、実際、今現在はレーダーを積んでいないポンコツなのでは。
他国への納品分を差し替えで、掻っ払いそう。
他国は、納品されたらレーダーが無かったりして。
大丈夫です、安心してください。他国の物からレーダーを抜いたとして、ソフトウェアが完成しないと戦闘が出来ない超高価な訓練機に過ぎないですから
いや新型レーダー搭載前提で作った機体が旧型を積めないから起こった問題なのです。
どっちも積めるよう設計変更したのはいいけど作っちゃったものは重りを付けて飛ぶしかないって話で旧型(現行:輸出仕様)のレーダーが生産のボトルネックになっているわけではないので海外の輸出には関係がないと言ってる。
それにしたってblock4は遅れすぎですが。
使い方としてはレーダー搭載してる機体と組ませるか、E-2D、AWACSからの指示で動くかですかね。
データリンクによる共同交戦能力が高いのがF-35の強みですから、ある意味正しい選択なのかも…。
レーダーを搭載しなければ安く仕上がりますかね
ミラージュ5みたいな使い方するんでしょうか(やけくそ)
もうソースコードをオープンにして各国自由にカスタマイズして下さいにして欲しいですね。
誰も制御出来ない。
そもそも、プログラム構造が、おかしいのでは?
それとも、基本が古いのか?
OSとドライバーとアプリケーションが、キチンと分かれていないのか?
ただのカカシですな
いちいちアイコン差し替えているんですかwww
テメェなんざ怖くねえ!!
レーダーなんか捨ててかかってこい!
練習機みたいなもんなんですかね。
レーダー未搭載。
機載コンピュータ/リンクに問題ないなら。
リンクで他から敵情を共有できます。AWACSなり、日本ならBADGEなり。
レーダーを使わないままで、長距離AAMを運用することは充分に可能では?
接近戦になれば、IRSTを標準装備だから、レーダー無しで戦闘はできるでしょう。
レーダーがあれば、さらに良いのでしょうが。AWACSを部分的に代替できるし。
Su-27「レーダーに映らないとは卑怯なり」
F35「ほらよ、レーダーを外してやったぞ、これでイーブンだな?」
管理人さんの記載だと
・Lot16まで:APG81対応
・Lot17からLot19:アメリカ軍用はAPG85専用、当面はレーダーなし、アメリカ国外向けは不明
・Lot20以降:APG81/APG85両対応
ということですよね。
APG81再対応がLot18から19で間に合う保証がない、となればFMSの納期にも影響しそうですね。
いずれはLot16以前の機体にもAPG85対応が必要となりそうですが、Lot20の設計が知見となりそうです。
Lot16までは全F-35のバルクヘッドはAN/APG-81対応機
Lot17の米海兵隊向けF-35BだけバルクヘッドがAN/APG-85対応機
Lot18から米空軍向けF-35A、米海兵隊向けF-35B、米海軍/米海兵隊向けF-35CのバルクヘッドがAN/APG-85対応機に、プログラム参加国とFMSパートナー向けのバルクヘッドはAN/APG-81対応機
Lot20からAN/APG-81とAN/APG-85の両方に対応したバルクヘッドを適用予定
この新しいバルクヘッドをプログラム参加国とFMSパートナー向けに適用するからは今のところ何も決まっていない。今のところAN/APG-85は輸出許可が降りていない。
こんなところです。
管理人さん、わかりやすい解説をありがとうございます。
Lot17以降でもタイプ(ABC型)・出荷先(軍・国)ごとにレーダー、バルクヘッドが異なるため、FMSでAPG81搭載機を出荷すること自体に問題はない、ということですね。
首なし飛燕みたいなことになってるなぁ
笑い事じゃないけど
まさか輸出向けのAN/APG-81対応バルクヘッドを国内に回すなんてことはしないよな…
航空ファン5月号(最新号)の青木謙知氏の連載記事によれば「米空軍はレーダーが搭載されていないF-35を受領した事を否定し、受領したF-35にはAPG-85が搭載されている」との事です。
それが本当なら凄いことですが…。
それは本当に動作するAPG-85なのでしょうか?
APG-85という名称のバラストではないですよね?
冗談はさておき、本当にAPG-85が搭載されているとしてもソフトウェアは対応しているのでしょうか?
インテグレーションが完了していなければ、結局は使えないのでは…。
私は航空ファンの記事を読んだだけなので、細かい事は判りません
はっきりしているのは、米空軍が「レーダーを積んでいない」という事を否定したという事です
Lot16までは全F-35のバルクヘッドはAN/APG-81対応機
Lot17の米海兵隊向けF-35BだけバルクヘッドがAN/APG-85対応機
Lot18から米空軍向けF-35A、米海兵隊向けF-35B、米海軍/米海兵隊向けF-35CのバルクヘッドがAN/APG-85対応機に、プログラム参加国とFMSパートナー向けのバルクヘッドはAN/APG-81対応機
Lot20からAN/APG-81とAN/APG-85の両方に対応したバルクヘッドを適用予定
米空軍が「レーダーを積んでいない」と否定したのは、現在生産中のLot17から納入されている米空軍向けF-35Aのことです。
米海兵隊は現在生産中のLot17、米空軍と米海軍は秋に始まるLot18からAN/APG-85対応のバルクヘッドを備えた機体調達に切り替えるため、AN/APG-85が間に合わない以上「レーダー未搭載機で納入されるのはほぼ確実」「AN/APG-85対応のバルクヘッドを備えた機体はAN/APG-81を取り付けられない」「バルクヘッドは機体構造の一部なのでAN/APG-81が取り付けられるよう改造するのは非常に困難」となります。
そもそも国防総省は何年も前から米海兵隊はLot17から、米空軍と米海軍はLot18からAN/APG-85対応のバルクヘッドを備えた機体調達に切り替える前提で「主要部品の事前購入(Advanced Procurement)」に資金を供給していた、つまり製造に時間がかかる部品(AN/APG-81の構成部品など)は正式発注の何年も前から調達が始まっているため、仮にAN/APG-85対応のバルクヘッドを改造してAN/APG-81を取り付けられるようになっても「ここに取り付けるAN/APG-81を発注していなかったためモノがない」となり、ノースロップ・グラマンが2025年頃に講じたリスク軽減策は「AN/APG-81とAN/APG-85の両方に対応したバルクヘッドの設計」「これをLot20から適用してAN/APG-81とAN/APG-85を両方製造しておく」となります。
ちなみに、主要部品の事前購入でリードタイムの長い構成部品を先に発注しないと「契約上の納期=F-35の納入順位」を確保できないので、米国だけでなくF-35購入国は正式発注の何年も前から資金供給を始めているのが実情です。