Andurilは2025年11月「米海軍の無人水上艦計画に参加するため韓国の現代重工業と提携した」「既に韓国で自律型水上艦=ASVのプロトタイプを建造中だ」と発表したが、20日「建造中のASVは年末までに進水する」「現代重工業のグローバルな造船能力と高度な技術的専門性は本戦略の核心だ」と称賛した。
参考:Scaling Autonomous Surface Vessels with the World’s Best Ship Builders for US Navy
参考:Anduril Partners with Kraken Technology Group on Small USVs
参考:Anduril, HD Hyundai expand partnership with first autonomous surface vessel in production
参考:Anduril announces partnership with Kraken for small USVs
高性能な兵器システムと消耗戦向けの兵器システムのどちらが優れているのかを議論するのは無意味、両方揃えておくが正解
米国のAndurilと韓国の現代重工業は2024年4月「米国、韓国、同盟国の海軍力を再構築するため現代重工業と戦略的提携を結ぶことで合意した」と発表、Andurilはプレスリリースの中で「50年以上の経験をもつ現代重工業は商業船舶、軍艦、潜水艦、海洋システムの開発・生産で世界的なリーダーであり、世界の造船能力の半分近くを占める韓国造船界のトップランナーだ」「もはや米国の伝統的な防衛産業基盤は抑止力を維持するのに十分な海軍力を生み出す能力がない」「世界をリードする現代重工業の造船能力とAndurilのAI技術を組み合わせて米国、韓国、同盟国向けの安価で大量生産が可能な自律型海軍システムを追求する」と言及。

出典:Anduril
さらに「今回の戦略的パートナーシップを通じてAndurilはより大きな米防衛市場へのアクセスを現代重工業に、現代重工業はより大きな韓防衛市場へのアクセスをAndurilに提供する」とも述べていたが、Andurilは2025年11月「米海軍の無人水上艦計画に参加するため韓国の現代重工業と提携した」「既に韓国で自律型水上艦艇=ASVのプロトタイプを建造中だ」「同時にASVを国内で建造するための準備を進めている」「閉鎖されたシアトルのフォス造船所を改修するため数千万ドルを投資した」と発表。
Andurilが水上艦艇の製品を発表するのは初めてで、無人水上艦計画向けのASVについて詳しい説明はないものの、プレスリリースに添付された動画によればASVはコンテナ式のセンサーや武器を搭載するプラットフォームで、Andurilは20日「昨年11月に発表したASVは生産段階にあり、我々は世界最高の造船技術を米海軍に提供する道筋を着実に進んでいる」と発表して注目を集めている。

出典:Anduril
“昨年11月、Andurilと現代重工業は自律型水上艦(ASV)の設計・生産計画を共同で発表した。このASVは現代重工業が長年培ってきた造船の伝統的知見と、Andurilの迅速な市場投入力、ソフトウェア定義型の自律技術、そしてミッションシステムの統合技術を融合させたものだ。ASVは既に生産段階に入っており、Andurilは世界最高水準の造船専門技術を米海軍に提供する道筋を着実に進んでいる”
“この提携を後押しする戦略的背景はますます鮮明になってきた。中国は米海軍を3対1の比率で上回るペースで艦艇を建造し続けており、ロシアは北極海や黒海における西側諸国のアクセスを積極的に阻害してきている。高価で洗練された有人プラットフォームだけで商業船舶の防衛や海上優勢の維持を図るのはコスト的に持続不可能なコストであり、もはや現実的ではない。米海軍がこの課題に対する解決策として位置づけているのが、中型無人水上艦(MUSV)プログラムだ”

出典:U.S. Navy Photo by Lt.j.g. Cody Davidson
このプログラムは紛争環境下において必要な時間軸、予算、規模で協調作戦を可能とする分散型自律水上艦隊の構築を目指している。Andurilは世界最高の造船パートナーと共にMUSVプログラムへの競争参加に向けて準備を進めており、現代重工業とのパートナーシップは順調に進展している、私たちが現代重工業を選択した理由は同社が世界有数の造船企業としての確固たる実績を持ち、設計から生産への迅速な移行能力に優れている点にある。これまでに同社は世界中で5000隻以上の船舶を建造・引き渡してきた”
“ASVはクリティカルデザイン審査(CDR)の成功を経て、初号艦の建造が現在進行中であり、年末までに進水(実際には今年10月頃)して試験の開始が予定されている。韓国で初号艦の船体が形作られる一方で、Andurilは代替艦艇を用いてASVの自律性、ミッションシステムの自律性、コンテナ化されたペイロードの日常的な海上試験を実施し、多大な運用データを蓄積している。このデータは初号艦引き渡し後、直ちにASV運用に活かされることになっており、この一連の試験は生産から実運用へのスムーズな移行に不可欠だ。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class Robert Zahn
“米海軍が繰り返し強調しているのは「規模の重要性」だ。単一の自律型艦艇では状況を変えることはできない。私たちは大規模生産能力と専門性を兼ね備えた商業造船のトップ企業群と連携している。商業造船企業は信頼性の高い艦艇を効率的かつ期限通りに、かつ厳格な予算管理の下で大量生産する能力を既に有している。現代重工業のグローバルな造船能力と高度な技術的専門性は本戦略の核心であり、提携先に選択した最大の理由だ。
現代重工業は蔚山の造船所でASVを建造するとともに艦艇向けAIソリューション、特に自律航行技術を提供してくれる。同社の子会社であるAvikusは、これまでに約500隻の大規模商船に自律航行システムを供給しており、グローバル海上自律市場におけるリーダー的地位を確立している”

出典:Avikus
“Andurilは大規模艦隊を構築・維持するための生産インフラを着実に整備している。米国で最も経験豊富な造船企業のひとつであるEdison Chouest Offshore(ECO)と提携し、同社の米国造船所でASVを生産する予定だ。これによりECOが保有する数十億ドル規模の国内インフラと6,000人を超える造船所従業員の豊富な労働力を最大限に活用する。ECOは世界中で約300隻の船舶を運用し、米国全土に20以上の造船施設を所有している。この提携により同社が長年培ってきた運用実績と造船ノウハウがASVにもたらされる”
“韓国の現代重工業と米国のECOは、それぞれが持つ独自の産業能力をひとつの共通生産体制に結集させている。この体制は分散型自律水上艦隊の展開に不可欠な「広範性」「強靭性」「迅速性」をもたらし、Andurilは、MUSVプログラムのためにこのような商業造船のオールスターチームを独自にまとめ上げた唯一の企業だ。従来の海軍生産モデルに頼らず、既存のグローバル商業造船基盤を活用することでMUSVに求められる規模、速度、生産量を確実に実現する、それがAndurilの核心的な戦略だ”

出典:Anduril
そしてAndurilは21日「小型無人水上艇で英国のKraken Technology Groupと提携した」と発表。
“近年の紛争は海上戦の常識を根本から変えた。安価で手頃な無人システムこそが勝敗を決する時代で、米海軍が今求めているのは1,000ポンド(約454kg)を超える柔軟なペイロードを搭載し、長期間の作戦を継続可能かつ生産ラインから迅速に出荷可能な小型無人水上艇(USV)だ。しかし現在の国内企業が提供する選択肢はいずれもこの要求に十分に応えられていない。ジョン・フィラン海軍長官が上院軍事委員会で「我々は過去のプラットフォームで未来の戦争に勝つことはできない」「現代戦での成功は空、水上、水中無人システムの迅速かつ大規模な生産・統合にかかっている」と明言した通りだ”
“その答えを具現化するのがKraken Technology Groupだ。Andurilは同社と提携してKrakenが開発した実績豊富な小型で、高性能で、大量生産可能なUSVファミリーを米海軍に投入する。KrakenのUSVは他に類を見ない高い性能を誇る。競技用水上艇の血統を受け継ぎ海上での速度と耐久性の基準を塗り替えてきた。すでに英国の「Project Beehive」プログラムでその実力を証明し、欧州および同盟国向け小型USVのリーダーとして認知されている”
“AndurilとKrakenは手を組み米海軍向けに小型無人水上艇ファミリーを供給する。Andurilは米国国内の施設でK5 KRAKENおよびK7 SABREを建造・運用を支援し、ペイロードの統合と自律型ソフトウェア(防衛OS)=Latticeの搭載を国内で実装し、各艇を米海軍の全任務に対応する形でカスタマイズする。一方で同盟国の需要に対応するためKrakenは並行生産ラインを維持し、独自の船体仕様を設計・生産を継続する。海上優勢の鍵は「規模」だ。KrakenのプラットフォームとAndurilの自律技術と国内製造能力がそれを現実のものにする”
Andurilのプレスリリースは株価を気にする伝統的な防衛企業のものとは異なり「米軍は何を必要としているのか、その能力をどうやって実現するのか、高価で時間のかかる伝統的な防衛産業のアプローチとどう違うのか」を具体的に説明するため読んでいて面白く、特にKrakenはBAE Systems, Kongsberg、L3Harrisと競合した英海軍のProject Beehiveを受注して注目を集めた英企業であり、このプロジェクトは有人艦と無人艦を組み合わせたハイブリッド海軍移行の中でも「最も重要な役割の技術試験」「ハイブリッド海軍移行に必要な機能が搭載されるプラットフォームになる」と言われており、英海軍はK3 SCOUTを20隻調達する見込みだ。
Andurilのポートフォリオには無人水上艦艇が欠けており、現代重工業と共同で設計・生産しているASVは有人艦艇が搭載するサイズのミサイルをコンテナ方式で搭載することができ、Krakenのプラットフォームで開発する米海軍向けの小型USVは全長10m程度(重量は6トン程度)のサイズ感だが、1,000海里=約1,800kmの航続距離や30日間の航続時間を誇り、どちらもLatticeを搭載することで米軍規格の兵器や指揮システムへの統合が短時間で完了する。
要するに「ハードウェアがないなら軍事規格でははなく商用規格で軍の要求に耐えられるものを1から作る」「大量生産が可能な既存のハードウェアがあれば流用する」「どちらにしてもLattice制御による自律能力がシステムの核心」で、既に戦場の優位性はハードウェアではなくソフトウェアによって定義されるようになっており、国防総省も3月「陸軍の進化する作戦上ならびに業務上のニーズを支援する統一されたミッション対応能力にLatticeを統合するためAndurilに総額200億ドル=約3.1兆円の固定価格契約を受注した」と発表したばかりだ。
Andurilが獲得した契約は新規契約というよりも「国防総省がAndurilと個別に契約していた120以上の調達契約を1つの包括契約に統合する」という意味が強いものの、最大の目的はカウンタードローンシステムの相互運用性の確保にあり、AndurilのLatticeを中心としたエコシステムを長期的に採用・活用する枠組みを確立した点が重要だ。

出典:Jake Paul
Bloombergも「この10年契約は国防総省がソフトウェア主導型システムによる軍の近代化において、ベンチャーキャピタルが出資するテクノロジー企業への依存度を高めていることを浮き彫りにしている」と言及しているが、防衛OSはデータ主権の問題に発展する可能性が非常に高く、Krakenも自社向けの小型USVはLatticeに依存していない。
高性能な軍用規格の兵器システムは今後も戦力構成の中で重要な地位を占め続けるが、優れた性能のみで構成された少数精鋭主義は「デュアルユース技術と商業部品で構成された兵器システムによる消耗戦の再来」で否定され「平時における戦力規模の拡大」「有事の際の迅速な補給や再生産が可能な兵器システム」「量を確保するための手頃な価格の兵器システム」が必要で、高性能な軍用規格の武器システムと消耗戦向けの武器システムは競合関係ではなく補完関係だ。

出典:Anduril
つまり「高性能な軍用規格の兵器システム」と「消耗戦向けの兵器システム」のどちらが優れているのかを議論するのは無意味で、両方揃えて置かないと非対称のリスクを抱えることになり、Andurilが米軍に供給するほぼ全ての兵器システムは「量を確保するための消耗戦向けシステム」といえる。
ちなみに「ハイエンドの戦いでデュアルユース技術と商業部品で構成された消耗戦向けの武器システムが役に立つのか」という否定的な意見もあると思うが、逆説的には「消耗戦向けの武器システムを繰り出してくる敵に対して高性能な軍用規格の兵器システムだけで勝利できるのか」という点も証明されておらず、米国が空爆のみで軍事的に圧倒したイラン戦争がそのいい例で、この戦いは高性能な軍用規格の兵器システムで非対称戦に挑み、米国は高価な弾薬を大量消耗したのに「勝利条件=政治的意思を押し付け」に失敗している。
関連記事:米軍がAndurilに最大3.1兆円の契約を授与、戦場の優位性はソフトウェアで決まる
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現代重工業の造船能力、とんでもなく大きくなってますからね。
蔚山造船所(35.517744739909304, 129.43807579474452)、とんでもない規模感だなと感じています。
南側を見ると(35.505720, 129.437697)、韓国海軍と思われる軍艦が1つのドックに2隻入ってたり、別の1隻が停泊しているのも確認できますね。
現代自動車の蔚山工場(年間150万台生産)~蔚山石油化学産業団地など、巨大工場があるため製造業が幅広く集積している街ですので、効率よく建艦できるのかもしれませんね。
追記です。
現代自動車の自動車工場、自動車運搬船(35.524493, 129.389537)および製造車輛と思われるもの
蔚山石油化学産業団地、LGエナジーなど(35.492743, 129.382059)一帯。
追記です。
(35.503853, 129.399344)日韓の造船工場を比較した時に、韓国の造船工場はドッグの配置が整然としてるという指摘があったのですが、これ分かりやすいですね。
これ韓国で進水した奴ってアメリカ本国に持ってくには遠いところでの建造になると思うが、対中用ならグアムか横須賀に直で配備されるのかな?
なら弾薬用のコンテナも韓国で作るのか、それとも日本にも生産に混ざれる余地があるのか気になるな
自動運航船は商用レベルで実用段階に来てますし、センサー関連は以前からCECで共有してますから、.組み合わせてVLS積んでしまえば実用化に支障は無い様に思えます。日中韓三国に限っての話ですけど。
中国に話を持って行く事が出来ない以上はそりゃ韓国ですよね。
装備もメンテナンスフリーなんだろうか?
アメリカは中枢技術を他国に渡したく無いふしが有るので、普通にアメリカで生産して補給艦もしくは軍用輸送機で運ぶのではないでしょうか?
一応、日本だとMk-41のランチャーの生産はしてますけど韓国だとして無いですし、まあどの規模のランチャー(MK 70 ペイロード・デリバリー・システム、VAMPIRE等)よって変わりますが。
有人艦と無人艦の複合に、活路を見出すのは当然と思う
でも、同じ事は中国も考えるわけで…
とにかく「作り続ける」のは本当に大事で、作ることでノウハウが身につき、続ける事で蓄積され設備が洗練されますので、韓国の頑張りは見習いたいです。
無人化は有事の際に兵員補充が難しいかもしれない日本はもっと予算かけても良いような…
無人艇の定期発注で造船業に雇用を生んでくれたら良いですね
日本製鉄の瀬戸内製鉄所呉地区跡地に作られる予定の複合防衛拠点で無人機製造拠点が設置予定なのですがそこでどれくらいの物が造られるかですね。
コンテナランチャーを備える予定の戦闘支援型多目的USVもどれくらい生産予定なのか不明ですし。
多目的USV、ガミラス艦みたいで凄い好きなんですけど、いっぱい作って改良点の拾い出しして欲しいですね。
民間で「MEGURI2040」ってやってるので、応用すれば護衛艦でも「無人航行」は可能かと
でも「戦う」ってなったら無人化のノウハウは無いので、防衛省自身が経験値を貯めるしかないですね
退役する予定の、はやぶさ型の1隻を無人化実験艇にでも改造できないもんですかね
海外じゃ既存の小型艦を改造してテストするってよくやってるんですが
できる限り使い倒すのは良さそうですけど、確かに日本ではあんまり聞きませんね。
意外に場所の問題なのでしょうか。南海フェリー撤退とか航路は減ってるような気がしますが、漁業関連…?
南鳥島とかに核廃棄物処理の話がありましたが、基地化して実験とか出来たらいいなぁと思います。
思うのですが。
将来的に、無人船が遭難信号を発していたらどうするのかな?。
救難信号を受信?するであろう?側は、まあ、迷惑とも思えるのですが。
荒天下の銚子港から緊急出港する巡視船の記録画像を見ると、
その操船は、神技に見えます。
無人船には絶対できないだろうとも思えます。
将来、無人船が実際に使われるようになったら、どうするのかな?。
無人船なんだからそういう緊急性のある用途で使うなら常時1隻は海に出てる様にするんじゃないのかな。
あるいは洋上施設とかを「母港」にするとか。
韓国は台湾有事にはノータッチの政策じゃなかったっけ
このまま協力が進めば巻き込まれるけどいいのか
そこが韓国経済が躍進した理由のひとつで、彼らは売れるところには積極的に売り、問題が起きてから考えるんです。
日本企業は、石橋を叩いて渡る傾向が強いですが、彼らは「落ちなければ渡る」んです。
仰る点、本質ですね。
リスクが高い時期に参入すれば、リターンもそれだけ大きくなります。
リスクが低い時期に参入すれば、リターンもそれだけ小さくなります。
石橋を叩いて渡る頃に、先行企業が成功してあまりにも巨大化してしまっては、後発企業が競争に勝つことは難しいですよね…。
Andurilは、現代重工業、ひいては韓国造船業界を絶賛していますね。羨ましい限りです。
日本造船界は縮小してしまい、世界の造船シェアも「その他」に含まれてしまうほどに落ちぶれたとはいえ、捲土重来を期して欲しいものですが、もはや無理かなぁ。
中国版「霧の艦隊」に立ち向かうのは絶望的だろうか。