米国関連

Andurilが豪海軍向けに世界で初めて量産化した無人潜水艦、米海軍も採用

無人潜水艦分野の研究・開発は米国、英国、フランス、日本、韓国が先行していたにも関わらず、豪海軍とAndurilは無人潜水艦=Ghost Shark構想を3年で実用化して量産バージョンの生産を開始しており、米海軍もGhost SharkのベースとなったDive-XLを採用した。

参考:DIU and U.S. Navy select Anduril for XL-AUV program
参考:US Navy partners with Anduril to develop XL underwater vessel

豪海軍に続き米海軍がDive-XLを採用すれば、Andurilの無人潜水艦市場における優位性は確実なものになるだろう

西側諸国、ロシア、中国では特大の自律型無人水中機=XLUUV(大型の無人潜水艦)実用化に向けて開発を進めており、米海軍は2017年にXLUUV開発をLockheed MartinとBoeingに発注し、2019年にBoeingの設計案=Echo Voyager(エコーボイジャー)を発展させたOrca(オルカ)開発契約を締結した。

出典:Christine Clark, PMP

この契約に基づきBoeingはフルサイズのプロトタイプを2022年末までに4隻(後に1隻追加され計5隻)、プロトタイプ1号機(XLE0)を2020年12月までに引き渡す予定だったのだが、開発遅延と予算超過を繰り返してプロトタイプ1号機の引き渡しは2023年12月にずれ込み、最近になってOrcaのXLE2が納入されたと確認されたため「米海軍はフルサイズのプロトタイプを3隻(XLE0、XLE1、XLE2)手に入れた」と解釈できるものの、開発遅延を受けて再設定された5隻の引き渡し期限(2025年中)は守られておらず、Orcaの初期作戦能力獲得もXLUUVの実用化もまだまだ先の話だ。

豪海軍も世界のトレンドに追いつくため2022年にGhost Shark(ゴーストシャーク)プログラムを立ち上げ、Andurilと契約を締結して「3年以内=2025年までに3隻のプロトタイプを手に入れる」という野心的なスケジュールを掲げたが、AndurilはGhost Shark開発に使用するプロトタイプ=Dive-LDを契約締結から半年以内に、Ghost Sharkのプロトタイプを2024年4月に引き渡し、Anduril Australiaも「3年で3隻のGhost Sharkを製造するというスケジュールは非常に野心的だったものの、この計画は予算(1.4億豪ドル)超過もなく予定よりも早く進んでいる」と述べた。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith

豪海軍もリムパック2024にGhost Shark(ハワイまではC-17による輸送)を参加させて開発の順調さをアピールしていたが、豪国防省は2025年9月「17億豪ドルを投資して新たなGhost Sharkを取得する」「この投資でAnduril Australiaの雇用(120人)が維持され、新たな雇用(150人以上)も創出される」「Ghost Sharkのサプライチェーンに加わっている豪企業40社でも600人の新規雇用が創出されると見込まれる」「Ghost Sharkはステルス性を維持しながら長距離の情報収集、監視、偵察、攻撃作戦を行える」「Ghost Sharkは水上艦艇と潜水艦の能力ギャップを補完し海中戦闘能力を大幅に向上させるだろう」と発表。

コンロイ国防産業相も「Andurilは予算超過なしに3隻のプロトタイプを予定よりも早く納品した」と順調な開発作業を称賛し、マールズ国防相もシドニーで行われた記者会見で「海軍向けにGhost Sharkを数十隻調達する」「最初の1隻目は2026年1月に納入予定だ」と、Andurilも「未だに世界中の海軍は自律性が海中戦にどのような変革をもたらすかを模索中だが、我々は大型自律型潜水艦=Ghost Shark構想を3年未満でやり遂げた。既にオーストラリアでGhost Sharkの量産は始まっている」と述べた。

出典:Anduril

Andurilは2025年11月「17億豪ドルの契約受注から7週間後の10月31日、シドニーにGhost Sharkの生産施設がオープンし、量産バージョンの初号機が予定よりも早くラインオフした」「この初号機は2026年1月に予定されている豪海軍への納入に向けて受け入れテストを行う」「この7,400㎡の生産施設はGhost Sharkと商用向けのDive-XLを大規模に生産し、豪政府の承認が得られる同盟国やパートナーに無人潜水艦を輸出するため建設された」「Ghost Sharkは低率初期生産が立ち上がったばかりだが2026年にはフルレート生産に移行する」と発表し、コンロイ国防産業相も「これは戦力を迅速に提供するための好例だ」と評価している。

無人潜水艦分野の研究・開発は米国、英国、フランス、日本、韓国の方が先行していたにも関わらず、オーストラリアとAndurilは構想から量産開始までを3年でやり遂げ、コスト超過もなし、全ての工程を予定より早く完了させ、無人潜水艦の輸出市場でポールポジションを獲得し、Andurilは台湾の国家中山科学研究院と自律型無人水中機=Dive-LD(Ghost SharkのベースとなったDive-XLの小型バージョン)や自律型水中エフェクト=Copperhead-Mに関する協定を締結した。

こうした状況下でLockheed Martinも革新的なプラグ・アンド・プレイ型の水中無人機=Lamprey MMAUVを今年2月に公開して「これは今日の紛争の絶えない海洋領域において、米国および同盟国に技術的・戦略的優位性をもたらす」と発表した。この挑戦的な投資は無人潜水艦市場が形成される前にLUUV/XLUUVを自社の製品ポートフォリオに取り込むための取り組みだが、ここからLamprey MMAUVを実用化して量産化するには顧客を見つけなければならないため、Andurilと比べると無人潜水艦分野参入への出遅れ感は否めない。

国防総省の国防イノベーションユニット(DIU)も昨年4月、競合環境における作戦の有効性を最大化する新たな無人潜水艦(Combat Autonomous Maritime Platform=CAMP)の調達を発表し、GPSが使用不能な環境下でも1,000海里以上の航行が可能で、任務中には水深200メートル以上まで潜航し、想定される任務の一つには「海底への様々なペイロード投下」が含まれ、Andurilは12日「DIUと米海軍はCAMP調達先として当社を選定した」「Andurilの自律型海中無人機は、これまでに42,355km以上、6,752時間以上の任務時間を蓄積しており、分散型海上作戦に不可欠な成熟度、信頼性、および長期滞洋能力を証明している」と発表。

“Andurilは契約締結から4ヶ月以内にDive-XLの長期間にわたる実戦を想定したデモンストレーションを完了させる予定だ。Andurilは米国内で複数のDive-XLを運用しており、米海軍にとってCAMPは実用的な規模でのXL-AUVの実験を可能にし、広範な導入と実戦配備に向けた計画的な道筋を確立するのに重要な前進だ”

“AndurilがDive-XLを納入できる能力はオーストラリアおよび米国の双方における成功実績に根ざしている。Andurilは2025年にGhost Sharkに関するオーストラリア海軍の正式プログラムを受注し、従来の開発計画では到底及ばないスケジュールで超大型自律型海中無人機と専用の生産施設を引き渡した。その実績は同社のアプローチがリスクを軽減しながら納入を加速させることを実証した。現在、AndurilはオーストラリアのシドニーでDive-XLを生産しており、ロードアイランド州クォンセット・ポイントにも年間数十隻のDive-XLと数百隻のDive-LDを納入するために設計された専用施設を構えている”

Defense Newsも「Dive-XLはCAMPの募集要項に記された要求仕様の多くを満たしている」「Dive-XLは完全な電動式で推進するため、海面に浮上することなく深海を高速で航行することが可能であり、2,000海里以上を移動することができる」「Dive-XLは偵察など様々な任務タイプに合わせて変更可能な非常に柔軟な設計を採用し、一度に最大3つのペイロード・モジュールを搭載することができる」「このペイロード・モジュールには小型の無人潜水機(UUV)を搭載することも可能で、Dive-XLは海中で監視や攻撃を行う小型UUVのための母艦として機能する」「Dive-XLも民間の貨物コンテナに収まるため列車やトラックで輸送も可能だ」と指摘。

米海軍とDIUが取り組んでいるCAMPが大規模なDive-XL採用に繋がるかは不明で、この用途に使用されるはずだったOrcaの将来も不確かになっているが、Ghost SharkとDive-XLは「ほぼ同一プラットホーム」で豪海軍に続き米海軍がDive-XLを本格採用すれば、Andurilの無人潜水艦市場における優位性は確固たるものになるかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Anduril

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コメント

  • コメント (9)

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    • 無印
    • 2026年 3月 15日

    オルカの開発は続けるけど、一番手に入りやすい「量産型無人潜水艦」を手にして、運用のノウハウを身につける感じでしょうか
    しかしボーイング、こっちでも遅延なのか…
    アンドリルの存在は既存のメーカーにとっては劇薬やね、無人兵器でうかうかしてたらみんな持って行かれる

    17
    • たむごん
    • 2026年 3月 15日

    無人潜水艦、水深200m以上・GPSなし約1800km(1000海里以上)の要件クリア、2000海里以上の航続距離とは本当に凄い…。

    日本のEEZ・領海は、世界有数の広さなうえに長いですから、無人潜水艦を導入できれば、かなり効率的な防衛力向上に繋がりそうですね。

    21
    • 戦車
    • 2026年 3月 15日

    日本も長期運用型UUV全長10 m、追加モジュールを組み込むと全長15.6 mになるUUVを2027年ロールアウト予定ですけどどうなりますかね。

    9
    • アンゴラ
    • 2026年 3月 15日

    わあ、駆逐イ級にそっくり
    とうとう現実がSFに追い付いてしまいましたか……

    4
    • コロ
    • 2026年 3月 15日

    初歩的な疑問。海の中にいるものをどうやって操作するの?
    画像や音響なんかのデータを潜水艦側も送るだろうけど、電波発信したら哨戒ヘリなんかに嗅ぎ付けられちゃうんじゃ?

    3
      • まめ
      • 2026年 3月 16日

      基本的には自律航行だと思います。
      事前に命令を与えておくか、定期的に通信を試みるか。
      即時性のある運用ではないと思います。

      2
    • AKI
    • 2026年 3月 15日

    自衛隊に納入された水中防衛用小型UUVは
    「自衛隊員の安全を確保するため遠隔管制により目標海域に進出し、その場において我が国に侵攻する相手方艦艇を阻止する能力を有するUUV」
    とあるので、おそらく自爆攻撃が可能なUUVかと思いますが、小型ですし長大な航続距離は無いでしょう。

    広範囲の索敵は、開発中のモジュール形式大型UUVに期待。

    12
    • 58式素人
    • 2026年 3月 16日

    行動範囲が広がったら。
    潜水艦母艦?が必要になるのでは?
    本土沿海域ならば基地に戻れば良いのだけれど、
    出先?ではそうもいかないのでは?。
    充電だけでなく、整備も必要だろうし。
    昔のLSTの形を基にして、スロープで船内に
    UUVを引き込む形でどうか、と思います。
    水中での作業は大変だろうし。

    2
    • ハナー
    • 2026年 3月 16日

    この手の無人兵器は鹵獲される可能性があるけど、どんな対策をしているのだろう?

    5

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