米陸軍協会の年次総会が14日に開幕し、Leonardoは消耗型アクティブRFデコイ=BriteCloudを発展させたBriteStormを発表した。これを搭載したウイングマンや徘徊型弾薬を使用すれば第4世代機の生存性が大きく向上し、ステルスに頼らなくても敵防空シールドを突破できるようになる。
参考:BriteStorm Miniature Electronic Warfare System Can Allow Small Drones To Create Big Ghost Formations
参考:Norway edges closer to long-range precision fires selection
参考:Shooting for the moon: Army’s 2025 budget to reflect artillery revamp
ウイングマンや空中発射式の徘徊型弾薬の実用化に合わせて登場してきたBriteStormに大きな注目が集まっている
西側諸国の軍事関係者や防衛企業が一堂に会する米陸軍協会年次総会・展示会(AUSA=Association of the United States Army)が14日に開幕し、中々興味深い発表や発言が沢山報じられているが、その中でも最大級の注目を集めているのはLeonardoが発表したBriteStormだ。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Zachary Rufus
敵防空システムが作動する空域への侵入には「レーダーによって検出される可能性」を引き下げる必要があり、米国は機体形状や素材を工夫してレーダーパルスを照射元とは別の方向に反らしたり、これを吸収して熱に変換して敵レーダーの探知距離を縮めるアプローチを選択したが、欧州は第5世代機の開発・製造で出遅れたため電子戦システムの開発に力を入れ、ミサイル接近警報システム、レーダー警報受信機、フレア・チャフディスペンサー、ダミーデコイを統合した次世代の保護能力をデジタルステルスと呼ぶことがある。
このデジタルステルスで電子戦システムと共に重要な役割を果たすのが、デジタル無線周波数メモリ(DRFM)技術を使用したデコイで、Leonardoが開発した消耗型アクティブRF(Radio Frequency)デコイ=BriteCloudは敵の航空機、艦艇、地上配備型防空システム、ミサイルに搭載されたアクティブ・レーダー誘導システム等からのレーダーパルスを検出し、これを模倣して偽の標的信号をばら撒き認識力を混乱させることで敵の迎撃から対象を保護することが可能だ。
BriteCloudは英空軍のトルネードGR.4やタイフーン、米空軍州兵が運用するF-16にAN/ALQ-260(V)1として採用され、英空軍はF-35BやSPEAR-EWへの搭載を検討しており、米海軍航空システム・コマンドも7月「消耗型アクティブデコイの供給契約(年間1,000基~2,000基)をLeonardoと締結した」と発表、要求要件がBriteCloudの能力に一致する上「F-35に対するサポート」も契約に含まれているため「F-35へのBriteCloud配備が確定的だ」と噂されており、LeonardoがAUSAで発表したBriteStormもBriteCloudを発展させたものだが、これはフレアディスペンサーから投射するタイプではない。
BriteStormは有人機に随伴する無人機=ウイングマン(米空軍はCollaborative Combat Aircraft=CCAと呼んでいる)や徘徊型弾薬に搭載するタイプで、有人機よりも先行して敵防空システムが作動する空域に侵入し、レーダーパルスの反射を模倣した偽信号をばら撒いて敵の認識を混乱させ迎撃能力を著しく低下させることが出来るらしい。つまり機体形状や素材によるステルスに頼らなくても敵の防空シールドを突破できる=迎撃から対象を保護できるという意味だ。
これに電子戦システムやステルスを併用すれば戦場での生存性は更に高まり、ウイングマンや空中発射式の徘徊型弾薬の実用化に合わせて登場してきたBriteStormに大きな注目が集まっている。
因みにElbit Systemsも使い捨てのアクティブRF(Radio Frequency)デコイ=Nano SPEARを最近発表しており、西側戦闘機に搭載されている標準的なフレアディスペンサーから投射でき、EWシステムと連携して敵レーダー、地対空ミサイル、空対空ミサイルの脅威に対して強力な防護シールドを提供するとアピール中だ。
HIMARSの対抗馬はHanwha AerospaceのK239 Chunmoo
ノルウェーは退役したM270MLRSの代替システム取得のため長距離精密射撃プログラムを進めており、米国務省は8月9日「HIMARSをノルウェーに売却(16基/推定費用5.8億ドル)する可能性を承認して議会に通知した」と発表したが、ノルウェーはDefense Newsの取材に「HIMARSの調達は決定事項ではない」「長距離精密射撃プログラムの検討候補として情報提供を要求しただけ」「まだプログラムは検討段階から調達段階に進むよう正式な指示を受けていない」と回答、さらにAUSAに出席したノルウェー陸軍参謀総長も「来年の夏までに何を調達するか決定する」と明かした。
米陸軍協会の年次総会・展示会(AUSA=Annual Meeting and Exposition)に出席したレルヴィク陸軍参謀総長は「各企業から価格、納期、能力に関する提案を受けている最中で、出来れば来年の夏までに何を調達するか決定する」「生産にかかる現実的な時間を考慮すれば2027年~2028年頃に実戦配備できるだろう」と述べ、HIMARSの潜在的な競合はGMARS、PULS/EuroPULS、Chunmooになる。
HIMARSの競合は全てM270MLRSと同等の投射火力(ロケット弾を装填したポッドを2基搭載)を発揮できるものの、GMARSとEuroPULSは開発中で生産ラインが立ち上がっておらず、Defense Newsは「HIMARSの対抗馬はHanwha AerospaceのK239 Chunmooだ」と報じている。
米陸軍採用というビックチャンスを巡って各企業の戦いは始まっている
米陸軍は2025年度予算案の中で「拡大射程砲(Extended Range Cannon Artillery=ERCA)に関する取り組みを停止した」と明かし、ブッシュ陸軍次官補は「(ERCAの代わりに)市場を通じて入手可能な自走砲をテストして購入する」と述べていたが、AUSAに出席したブッシュ次官補は「市場で入手可能な自走砲によるデモンストレーションを実施する」「このデモの参加者としてRheinmetall、BAE Systems、Hanwha、General Dynamics、Elbit Systemsを選定した」と明かした。

出典:Photo by Lance Cpl. Katherine Cottingham
デモに参加する自走砲の種類については言及がなかったものの、RheinmetallならPzH2000とRCH155、BAE SystemsならARCHER、HanwhaならK9、Elbit SystemsならATMOSが参加する可能性が高く、ブッシュ次官補は「このデモによって各自走砲が陸軍の要求要件を満たしているのか、それとも手を加える必要があるのか判明するだろう」「結果は2026会計年度予算の計画=2027年のプログラム要件に反映される」「調達が決まれば入札に関心のある海外企業に門戸が開かれる」と述べている。
因みにAUSAにはARCHERとK9が、さらにBAEはM109A7改良の取り組みとしてRheinmetall製L52を搭載したM109-52を展示しており、米陸軍採用というビックチャンスを巡って各企業の戦いは始まっている可能性が高い。
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※アイキャッチ画像の出展:Leonardo
アクティブRFデコイヤバいですね、これ積んだ無人機に高価な防空ミサイル全部持ってかれちゃいます。地上レーダーだけに頼らず無人でも良いから迎撃機上げて確認しないとですね
仮にK9がアメリカ軍に採用されたらお笑い韓国軍なんて言えなくなりますね。
韓国としてはアメリカ軍が採用しなくてもアメリカ軍による評価が高ければそれだけでもセールス時のアピールポイントになるでしょうから、かなり力を入れそうですね。
ステルス機は塗料の塗り直しとか保守コストも高いですからね…
非ステルス機がデコイ運良くして迎撃対象を飽和させる方が主流になるかも知れませんね
古来より語り継がれてきた矛盾が行き着くところまで行き着けば、絶対に(相手から)見えない矛VS絶対に(相手を)見つけだす盾との戦いに辿り着くのでしょう。その内、量子技術を応用して、相手に対する攻撃の意思が示されると同時に攻撃対象が破壊される「量子テレポーテーション攻撃システム」VS相手の攻撃の意思を察知すると同時に防御態勢を敷く「量子テレポーテーション防衛システム」という究極の矛盾も視野に入ってきそうです。すでに東芝辺りには各国から正体不明のエージェントが接触を図っていそうです。
少年マガジンで連載されていたドクターKの時代には臓器移植がテーマになっていたのに、K2の時代には万能細胞の出現により臓器移植のテーマが乗り越えられていたのを思い出しますね。
ガンダムシリーズのようにMSの中にパイロットが乗っているような時代は遙か遠くに過ぎ去りました。
平日の午前から妄想を書き記してしまいすみません。『航空万能論』様のブログと、そこで闊達な意見を交換されている方々にはいつも勉強させていただいております。ありがとうございます。打たれ弱い身でございますので、余りこの妄想に過ぎないコメントをたたかないでいただけると助かります。
そんなあなたには「創世記機械」がオススメ。今はKindleで入手できます。
中学生の時にテンソルの概念をこの小説で知って、一生懸命、数学を勉強しましたっけ。
>ガンダムシリーズのようにMSの中にパイロットが乗っているような時代は遙か遠くに過ぎ去りました。
現実がそうなったらミノフスキー粒子に量子テレポーテーションを阻害する効果が後付け追加されますのでご安心を。
まだまだ改造されまくるM109…
どうなのでしょう。
相手のPPIスコープを真っ白にする代わりに
ゴースト編隊を表示させるということかな?。
放出したデコイの数のn倍の数ということで。
当然、複数の周波数帯にまたがったゴーストを作ると思うのだけど。
電波の発信源を手繰られて一挙に無効化されることはないのかな?。
ステルスだけに頼るのも不安だけれども、また、この技術だけに
頼るのもどうかな?、と想像します。
同時にミサイル/ ドローンによる飽和攻撃も必要では?、などと想像します。
ここまでデコイが高性能になってしまうと、レーダーに頼る防空体制というものを根本から見直さないとダメかもしれませんね
非現実的ですが、該当空域にEMPパラージを起こしてデコイもろとも敵性航空機の電子機器を焼き切るとかになるんですかね
AN/ALE-50、ADM-141の発展型なんでそんなに難しい技術では無いですからね。例えばAN/ALE-50だとデコイから電波シグナルを放射して、敵ミサイル自身が追尾用のレーダー波を発している場合でも、敵航空機がレーダー波を発してミサイルを誘導している場合でも、これらの誘導用レーダー波に対して本来の反射波より強い電波を放射し反射波として偽装することで、母機の位置を欺瞞し敵ミサイルを誤った位置に誘導する、と言う方法を取られてますし。
その辺だと基本「なりすまし系」の文字通り「(アクティブ)デコイ」でしょう。
前身のBriteCloudだと確かにその辺と同種の技術で、そこまで難しくない上に実際に発振源が物理的にそこにある分効果性も高いでしょう。
ただその代わりこの手のデコイは使い捨てになりますし、迫り来るミサイルから本体を護ることはできてもその前段、敵の統合防空の網から逃れたい場合、100mやそこらの曳航式では全く役に立たず、滑空/滞空タイプでは結局は母機の位置を推定する材料を与えるし、ADM-160の様な自力飛行タイプでは母機のペイロードを奪う割に結局使い捨てになるので大型高価値機の自衛用とか以外だとあまりコスパがよくありません。
BriteStormは一部の現行スタンドオフ電子戦機の様に「ゴースト(防護対象の母機とも自機(デコイ)とも異なる航跡)」を作り出す機能を容易に携行可能で使い捨て可能な機材重量サイズコスト電力で実現した…、とレオナルドが言ってる様に見えますのでその言を信じるなら少し次元が違う技術かと。
第四世代機の能力向上が進めばいずれ第五世代機はただ空力性能に劣る制限の大きい機体になるかもしれませんね
仮想的に大編隊を作り出す都合上、奇襲性の低下は否めませんが
これならステルス化にコストのかかりすぎるAWACSや戦略爆撃機など大型機でも低コストで生存性を向上できます
消耗を前提とした大規模正規戦向けの、どちらかというとロシアが好みそうな質実剛健の方法論でいいですね
レーダー反射の巨大な大型機を隠してやるにはそれだけデコイもデカい信号を出さねばなりませんから容易ではないでしょう
翻って、親機のレーダー反射が小さければ、それだけデコイの欺瞞も効きやすくなりますので、やはり形状ステルスは大事です
例えばレーダーに使用する電波を工夫するだけで回避できそうな気がしますけどね
対ステルスレーダーの方式の一つに発振と受信に複数のアンテナを使用するマイモレーダーというのを日本が研究中ですけど
おそらくどのアンテナが発振した電波かを識別するために何らかの識別情報を電波に添付してると思うんですよね
その複数ある識別情報を全てコピーできるのかどうかというとあやしい気がします
なんか中国はパワーで押し切って機体表面じゃなく内部まで透過するレーダーを開発してるみたいですけど
航空機のデコイは、デコイ自体が強力な電波を飛ばしまくって発射されたミサイルをデコイに誘導するのが一般的なんで、ミサイル自体にその能力が入りますね。
現状のAN/ALE-50でもF-16で四機、F/A-18E/Fで三機、B-1で八機運用可能ですし。
MIMO(次期警戒管制レーダー)は研究中じゃなくて開発が済んで実用試験とか配置検討とかの段階に入ってますね。
仰る通りでマルチインの全てを発生源の位置を正確に把握して整合とってマルチアウトを全てピンポイントで返す、とかまでやらないとかえって位置バレするだけな気がします。
この手の装備は前線手前から対地ミサイルやら滑空爆弾やらで近接支援する時の生存性をできるだけ高めるとか、本命のステルス機が浸透する時に別方面で撹乱して探知に負荷掛けるとかが目的で、これに紛れて第4世代機が「フハハハハ、どれが本物か分かるまいwww」つーてドヤ顔で敵防空体制の奥まで浸透…なんつーことはしないのでは。
「素人がパッと思いつくことを果たして専門家が見逃しているだろうか?」という疑問は全てにおいて大事だと思いますね
これってスペクトラム拡散(周波数ホッピング, 直接拡散)を利用するレーダーにも通用するんですかね?
ご存知の方も多いとは思いますが、現在日本では国際航空宇宙展が行われており、軍事関連出展が大変活況でした
NATOの宇宙部門の参謀が来て講演したり、三菱からGCAPの最新情報がもたらされます
日曜日まで東京ビッグサイトでやっているので、興味があれば是非!
確か航空宇宙業界でなくとも19日は入れたはずです