米国関連

Boeingが2026年度予算で大勝利を収める可能性、KC-46A追加調達の動き

米空軍は予算要求の中で「KC-46Aを最も経済的な要件基準としてKC-135後継機調達に用いる」と言及、Aviation WeekやBreaking Defenseは「この変更によってKC-46A追加調達の可能性が高まった」と報じ、BoeingはF-47と空軍の手厚い配慮で大復活を遂げつつある。

参考:USAF Tanker Plans Shift Again, KC-46 Provides Base For Next Program
参考:Air Force again changes course on tankers, plans new ‘production extension’ program
参考:KC-135 Tankers Set To Get Drone Launchers

BoeingはF-47と空軍の手厚い配慮で大復活を遂げつつあり、好調だったLockheed Martinの先行きは雲行きが怪しくなってきた

米空軍の空中給油能力は計450機以上のKC-10とKC-135で構成され、これを近代化するためKC-10の退役とKC-46Aの導入が進み、現在は空中給油能力はKC-135とKC-46Aで構成されているものの「KC-135の後継機」に関しては何度も方針(KC-Y、Bridge Tanker、KC-135 Recapitalizationなど)が入れ替わり、専用設計でステルスを追求したKC-Z=NGAS計画を前倒しして「KC-135の後継機」をスキップする計画も浮上し、もはや空中給油機の将来は「新しい計画が毎年登場する状況」と言っても過言ではない。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Joshua Hastings

2026会計年度予算案でも「KC-135の後継機」について新たな計画=Tanker Production Extensionが登場し、これは「KC-46Aの調達契約が完了後、TPE計画に基づいて追加の空中給油機を調達する」「KC-46Aを最も経済的な要件基準としてTPE計画に用いる」と言うもので、Aviation WeekやBreaking Defenseは「この変更によってKC-46A追加調達の可能性が高まった」と報じ、もし2026会計年度予算案の内容が修正なく承認されればBoeingの航空部門は大勝利を収めるだろう。

BoeingはF-47研究開発資金として35億ドル=約5,000億円、F-15EXを21機調達するための資金として31億ドル=4,450億円、T-7Aを14機調達するための資金として3.6億ドル=510億円を獲得する可能性があり、F-15EXの最大調達数も98機から129機に引き上げられ、計画が中止されたAGM-183Aも3.8億ドルの資金配分を受けて復活、ここにKC-46A追加調達(75機~150機)を示唆するTPE計画まで承認されれば、E-7調達中止によるネガティブなイメージは吹き飛ぶはずだ。

出典:Photo by Giancarlo Casem

Northrop GrummanもB-21の研究開発・製造資金として103億ドル=1.4兆円、次期ICBMに研究開発資金として42億ドル=6,000億円を受け取る予定だが、Lockheed MartinだけはF-35A調達削減の影響で空軍から受け取る資金が減少する。

議会が原案通り空軍の要求額を承認するかどうかは不明だが、Northrop GrummanはB-21への資金配分増で将来を安定的なものにし、BoeingはF-47と空軍の手厚い配慮で大復活を遂げつつあり、好調だったLockheed Martinの先行きは雲行きが怪しくなってきた。

追記:米空軍はKC-135から小型ドローンを100機発射する手段を検討中で、これは空中給油機の生存性やISR能力を向上させることを目的にしており、CLTと呼ばれる共通発射管(ソノブイ投射器に似た構造)を機体に取り付けることを想定しているらしい。

米空軍が空中給油機にどのような小型ドローンを搭載したいのかは不明だが、現時点でCLTに対応した小型ドローンにはRaytheonのCoyoteやAndurilのALTIUS-600などがある。

関連記事:国防総省がE-7調達中止、A-10全機退役、F-35Aの大幅な調達削減を発表
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※アイキャッチ画像の出典:出典:U.S. Air Force photo

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コメント

  • コメント (21)

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    • SB
    • 2025年 7月 02日

    既に試験機が飛行済みとは言えそれなりにリスクのあるF-47と違って、KC-46Aは現状でも運用自体はそこまで問題がないし老朽化したKC-135使うくらいならそうなるよな
    個人的にはステルス型のKC-Z早く見てたいわ

    9
    • 神田明(仮名)
    • 2025年 7月 02日

    空中給油機(タンカー)は無くせないという事なのでしょう。

    2
      • John Smith
      • 2025年 7月 02日

      燃料と武装または貨物はトレードオフなので、軍用機は空中給油で補充すればいいやと武装、貨物をギリギリまでのせる。
      また、飛行が長引いたりして燃料が足りなくなったら、民間機は最寄りの空港に着陸すればいいけど、軍用機はできない場合も多い。

      だから空中給油機は無くせない。

      7
    • 空軍万能論
    • 2025年 7月 02日

    イランをボッコボコにして本気の西側の空軍力を見せつけた上にボーイングも大復活となりゃ、ロシアとか北とかもさぞビビるだろうな
    やはり最強はアメリカなのだということでみんな米国に擦り寄るようになるかもな

    4
    • 黒丸
    • 2025年 7月 02日

    最近 P-1に中国の空母艦載機が張り付く事例があったから
    ソノブイランチャーから発射できるドローンがあれば牽制にならないかな

    4
      • 神田明(仮名)
      • 2025年 7月 02日

      ドローンよりもAAM-4の発射管制機能を追加した方が良いのでは?

      2
      • nachteule
      • 2025年 7月 03日

       ぶっちゃけ牽制して何の意味があるのか?機動力のある航空機に対しての抑止なら低速で数十キロしか飛行できないドローンなんて意味無いでしょう。
       そうなるとコンパクトで高性能な物が必要でコストがバカ高くなるし機関砲の警告射撃と違い威嚇の為にそんな物を放出する時点でかなりややこしい事態になりかかねない。

       相手は近付かずとも各種センサーで監視は出来るしレーダー照射で威嚇も出来るでしょう。仮に貼りつきを阻止したとしても鈍重な機体を撃墜しようと思えば長距離ミサイルを撃てば良いだけです。導入するメリットは有りますか?

      4
    • のー
    • 2025年 7月 02日

    事情が良く分かってませんが、
    LMはF-35で独占状態なのを良いことに、好き勝手やり過ぎて反発を食らって
    その反動でボーイングに受注が回ってきたということでしょうか?

    2
      • そら
      • 2025年 7月 02日

      別にロキドマが図に乗ったとかではなく、F-35block4に関する進捗が悪すぎた事が原因だろうね
      結局現場がメーカーに求めるのは、カタログスペックをそのまま直ぐに使える状態で買うことだから

      18
      • 神田明(仮名)
      • 2025年 7月 02日

      LMには空中給油機(タンカー)のベースになるような航空機が無かっただけでは?

      3
      • 匿名希望係
      • 2025年 7月 03日

      純粋に手が足らんからだろうなぁ

      2
    • たむごん
    • 2025年 7月 02日

    空中給油機450機以上あることに、びっくりしました。

    イラン攻撃(ライジングライオン作戦・ミッドナイトハンマー作戦)により、空中給油機の有効性を証明しましたから、今後の動向に注目でしょうね。

    1
      • 匿名希望係
      • 2025年 7月 02日

      F-15だけでKC-767で10機これにCFTをつけたらどんぶり勘定で5機前後しか給油できないことになるしね。

      2
        • たむごん
        • 2025年 7月 03日

        ロジスティクスの重要性を感じますね。

        ライジングライオン作戦にF-15も参加してましたので、どのように運用していたのか、いつ詳細でてくるのか気になっています。

    • p-tra
    • 2025年 7月 02日

    中国も大型機から1000機のFPVが~みたいなPVを出してたけど…
    あんまり役に立つアイディアだとは思えないな。
    Group1,2のUAV、いわゆるドローンが強力なのはあくまで陸戦兵器としてだと思う。
    個人が携行する対戦車ミサイル・対空ミサイルが画期的だったことと同じ様に、
    歩兵に上空からの認識と攻撃をお手軽に可能にするから強いのであって、バカでかい
    滑走路とか大型機の存在を前提にするようにしたら台無しだろう。
    滑走路が利用できるなら戦闘機が飛べばいいし、大型機はミサイルを撃てばいいし。
    実際イスラエルは戦闘機を滑走路から飛ばして爆撃し潜入したスパイが近距離から
    FPVで攻撃した…このシンプル使い分けが一番いいだろ。
    根本的に小さいから強い、という兵器を大型機に載せようというアイディアは平時に
    考え出された実戦とかけ離れた思想、としか言いようがないと思う。

    1
    • そら
    • 2025年 7月 02日

    ブームの欠点も現状は解消されたみたいだし、導入してる日本としても、kc-46aの安定した保全パーツの確保に繋がるからいいニュース

    23
    • ras
    • 2025年 7月 02日

    やはりボーイングの政治力は今なおアメリカ一…

    6
    • DEEPBLUE
    • 2025年 7月 03日

    政治力はともかくそんな技術で大丈夫か?

    9
    • 匿名
    • 2025年 7月 03日

    ボーイング焼け太りしてて草

    4
    • Takeshi
    • 2025年 7月 03日

    ボーイングの不祥事続きでアメリカの船舶衰退の
    次は航空機かとさえ思われる、
    そんな状況だったから政府のテコ入れが
    効いてるのですね。
    このままコケなければボーイング再起になるか?

    2
    • takeshi
    • 2025年 7月 03日

    アメリカの産業が自動車、船舶に続き航空産業もボーイングの度重なる不祥事で危機感を感じた政府がテコ入れしてる感じでしょうね。
    ここで踏ん張れるのだろうか?

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