米国関連

ボーイング、稼働率40%台のE-3を更新するため米空軍は2022年にE-7Aを発注する

ドバイ航空ショーの開幕を控えた記者会見の席でボーイングのマナジール副社長は「2022年度予算で米空軍はE-7Aを発注するだろう」と語り注目を集めている。

参考:US Air Force will buy E-7 Wedgetail in 2022, Boeing exec claims

時代遅れのスペアパーツの入手性が悪化しているためE-3の稼働率は40%台という悲惨な状況に陥っている

2014年に開始されたアップグレードによってE-3は2030年代まで運用することが出来ると言われていたが、米太平洋空軍司令官のウィルズバック大将は「ボーイング707ベースのE-3は機体が古すぎて2030年代まで飛行可能な状態を維持するのは挑戦に等しい」と語り、米空軍航空戦闘軍団のマーク・ケリー大将も「情報収集・監視・偵察戦力のプラットフォームは古く、特に民間での運用が終了した707のサプライチェーンは撤退するか737などの他機に転身を図ったため全く残っておらず707ベース機の運用維持は危機的状況にある」とE-3やE-8の問題を訴えていた。

出典:U.S. Air Force photo/Senior Airman Brett Clashman

当初E-7A導入に否定的だったブラウン参謀総長も考えを改め「空軍内部で検討を行っているE-7はE-3よりも新しく韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍で運用実績がある優れたプラットフォームだ」と語り、ケンドール空軍長官も「E-7は米空軍に必要な航空機かもしれない」と言い出したためE-3更新への機運が高まっていたが、ついに米空軍は今年10月に「E-3交換用航空機の研究と分析」という契約に関する文書を発行。

この契約は「現行のE-7Aを調査して米空軍仕様に変更するための必要な追加作業を特定する」と書かれているため英国のジェーンズは「米空軍が正式にE-3をE-7に更新するための取り組みを開始した」と報じており、早ければ2022年度の予算編成にE-7Aの調達が含まれる可能性も出来てきたが、ボーイングのマナジール副社長は「2022年度予算で空軍はE-7Aを発注するだろう」と語り注目を集めている。

ドバイ航空ショーの開幕を控えた記者会見の席でマナジール副社長は「E-3の後継機にE-7Aが選択されることに自信を持っており、空軍は2022年中にE-7A調達を正式に発表するだろう」と語り、現在ボーイングはE-7Aについて空軍関係者と緊密な協議を行っていると明かした。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. James Richardson オーストラリア空軍のE-7Aウェッジテイル

このニュースを報じたDreaking DefenseはE-3について「時代遅れのスペアパーツの入手性が悪化しているため同機の稼働率は40%台という悲惨な状況に陥っている」と指摘しており、E-3の後継機候補も新規開発を除外するとE-7A以外に見当たらないため事実上「空軍のE-3更新はE-7Aで確定している」と言っても過言ではない。

商業部門では737MAX問題の影響が完全に立ち直れておらず、防衛部門では自社の資金を溶かし続けるKC-46A問題が今後も収益性を悪化させる潜在的な要因に挙げられるなど厳しい状況が続くため、ボーイングにとってE-7Aの大量発注(1対1で更新なら30機程度)は大きなビジネスチャンスであり、マナジール副社長の発言は「あらゆる営業力(+政治力)を駆使して2022年中に契約を決めに行く」という決意の現れとも受け取ることができるの非常に興味深い動きと言える。

関連記事:米空軍がE-3更新のための取り組みを正式に開始、E-7Aを米空軍仕様に変更

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Chris Massey

米国によるインドへの制裁発動が目前、ロシアがインドへのS-400引き渡しを開始前のページ

ロシア、第5世代戦闘機「チェックメイト」の海外デビューに合わせて新しい情報を解禁次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    コンステレーション級に期待する米海軍、開発中の技術を土台にした艦艇開発から脱却

    米海軍は狂った艦艇調達を正常な軌道に戻すためコンステレーション級フリゲ…

  2. 米国関連

    TB3に対抗? GA-ASIが強襲揚陸艦で運用可能なMQ-9B STOLを発表

    米ジェネラル・アトミックス(GA-ASI)は10日、強襲揚陸艦で運用可…

  3. 米国関連

    米陸軍、パトリオットのギャップを埋める新しい防空システムに「AIM-9Xインターセプター」を採用

    米陸軍はパトリオットシステムのギャップを埋めるため新しい防空システムに…

  4. 米国関連

    米陸軍がERCA開発を中止、市場で入手可能な自走砲導入に方針を転換

    米陸軍は2025年度予算案の中で「拡大射程砲(Extended Ran…

  5. 米国関連

    米国、ウクライナに提供する航空機向け精密誘導弾薬はJDAMではなくJDAM-ERか

    米国がウクライナに提供する航空機向け精密誘導弾薬についてBloombe…

  6. 米国関連

    米空軍がE-3更新のための取り組みを正式に開始、E-7Aを米空軍仕様に変更

    一部の米空軍上層部は繰り返し「運用維持が困難で能力的にも時代遅れな早期…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    B52はなんだかんだあっても飛んでるのにな。
    商業機ベースのほうが先にメンテできなくなるとは。

    7
      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

       B-52って、ほとんど飛ばずに基地に飾ってあるので飛行時間が極端に短いらしく、初期のように滞空退避運用をしていたらとっくの昔にお釈迦だそうだ。

      12
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    E-767では、ダメなのか?

      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

      日本しか使ってないE-767より世界中で使われているE-7Aの方がメリットがあるからじゃないですか?

      8
      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

      E-767はもう製造ライン残ってないんでしょう。

      16
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      AWACSのキモのレーダーや管制能力でみればE-3=E-767ですから現場は移行訓練とか楽かもしれない。でも、そのキモの部分で比べて、E-3よりE-7の方が米空軍がメリットありと思ってるならE-7を選ぶかな(レーダーがパッシブとか弱点も指摘され始めてるし。
      あと767ベースにしても、いまから造るならKC-46Aと共通化したいだろうから、それをすると開発や試験でまたお金が、、、って可能性でE-7の方がいいやって思ってる可能性も。

      6
        • 匿名
        • 2021年 11月 15日

        キモはレーダーじゃなくなるだろ
        これからはセンサーネットワークが重要になってくるから、
        今回導入されたE-7Aも、20年後ぐらいの近代化改修の時には、背負ってるレーダーを取り払うまでありえるぞ

          • 匿名
          • 2021年 11月 15日

          それは将来的な話では?
          今開発中の新技術をのっけてE-3を更新するって話じゃ無くて、E-3の航空機としての部分がもう限界だからどうにかしようって話だろうし。
          中身(キモ)の話なら、米軍が現状のE-3とE-7のレーダーやシステム、どっちを使いたいか(将来性があるか)で判断するだろう。
          センサーネットワークが作戦能力を獲得するレベルに出来上がったら、全然別の航空機が必要とされる可能性もあるし。

          12
            • 匿名
            • 2021年 11月 15日

            だから、E-7Aはその将来の話を想定してるって話でしょ

              • 匿名
              • 2021年 11月 16日

              あなた、少し前にC-2は絶対にアフガンには降りないっれ言ってたヒト?
              なんか自分の主張は100%正しいって匂いが…

              2
                • 匿名
                • 2021年 11月 16日

                何の話だよ
                E-7Aの将来の話をしたら、将来の話だろって突っ込んできて何がしたいの?

      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      後継をE-8やRC-135と合わせて767ベースで開発しようとしたが予算が付かず頓挫した。

      4
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    どうも理解できないんだが、E-3のような大型のAWACSはロシアの長距離ミサイルで撃墜される危険性があるから、今後のアメリカ空軍は、長距離センサーを搭載した小型のビジネスジェットを多数飛ばしてネットワークで連接させることで、大型AWACSと同等の機能を実現しようと計画しているはず。
    それなのに、E-7Aのようなやや大型のAWACSを導入してしまったら、E-7Aもロシアの長距離ミサイルで撃墜されてしまう危険性があるので、根本的な解決になっていないのではないかな。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

      代替システム実用化までの繋ぎなのでE-7AはE-3ほどは酷使されずに引退でしょうね

      21
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      E-7Aは無人機によるセンサー群の母機として使うから問題ないよ
      英豪に提案されたE-7Aアップデート案でボーイングが発表してる
      無人機以外にも友軍のセンサーを連接、地上ネットワーク管制のバックアップとしての一翼も担う
      E-2Dも同様

      5
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    ASM-3が仮に射程500kmで対空にも誘導が効いたとすると
    マッハ3で500km先のAWACSまで8分
    8分間800km/hで逃げられる距離は100km

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      E-7Aは無人機や友軍機のセンサーネットワーク運用を想定されてる
      よって、そんな距離計算に意味ない

      4
      • 匿名
      • 2021年 11月 16日

      その計算だと逃げられちゃうんじゃ…
      最低でも400kmまで近寄ってから発射しないと。

      4
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    その新しいタイプが直ぐに手に入るなら更新する意味は薄いですがそうではないでしょう。
    まだまだ基礎研究の段階で今のAWACSの更新には間に合わないと判断したからE-7Aを導入する事を決めたのでは?

    6
      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

      ミスです
      二つ上に対するコメントです。

      2
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    E-3の運用が終わるとなると同じレーダー使ってる空自のE-767のサポートがいつまでになるか気になりますね。まああれも20年以上前に導入だから後継機って話になってもおかしくはないですが。

    10
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      まあ後継機って話になっても、あと10~20年は使うでしょう
      改修したばかりだし、B767の生産自体はまだまだ続くから、機体面の保守体制に問題はない
      後継機ってなっても20年近く先の話だから、空自がE-7Aを導入する可能性はないかな
      B-21みたいなステルス管制機を後継機にって時勢になってると思う

      7
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      とはいっても、E-767の相対的な陳腐化は避けられないかな。それも急激な
      性能的な寿命はかなり早まったでしょ

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 17日

        E-7Aの能力をE-767にも噛ませばいいのでは?余裕あるのはB-767の方だし
        なんでE-767も改修されるだろう、という可能性を意図的にスルーするのか

        1
          • 匿名
          • 2021年 11月 18日

          >E-7Aの能力をE-767にも噛ませばいいのでは?
          どうやって?
          E-3やE-767にマルチスタッティックレーダーを実装する予定も構想もないし、
          大元のレーダーシステムや戦術システムの設計そのものが古いし、E-2Cのときみたいに戦術システムを刷新する予定もないから、現状無理だと思うぞ
          規模的にアップデートで解決できる問題とも思えないし、同型式機でも新造機で更新するぐらいじゃないと無理だと思う

          1
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    お皿が載ってて欲しいです・・・。

    17
    • 匿名
    • 2021年 11月 14日

    ボーイング的には737NGの生産が続くのはどうなんだろ?
    P-8とかE-7のためだけに生産ラインを残すのは負担になる、この際737MAXベースの軍用機も検討した方がいい気がする。
    MCASがなくても安全には飛べるらしいし、既に安全は確保されたはず。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      最近同じようなこと、KC-767A/JとKC-46Aでやって大炎上してるけど、、、
      (まぁあれは飛行機の部分じゃ無いけど

      空軍も海軍と同じで、手堅くいこーぜに方針転換してるんじゃ

      7
        • 匿名
        • 2021年 11月 16日

        現物があるものって信頼性がやっぱあるよね
        ボーイングもE-7の将来展望もだしてるし、今導入しても陳腐化するリスクは少ない
        E-3は部品のB707部品の供給もそうだけど、将来性の無さも置き換え理由の一つだろうし

      • 匿名
      • 2021年 11月 15日

      MCAS無しでは安全には飛べませんよ。
      B737-200時代の細いエンジンの機体に、小手先だけの変更で最新の太いエンジンを搭載しているので、上昇時に勝手にピッチが上がるという、飛行特性の悪い機体に仕上がっている。
      それをセンサー+ソフトで強引に下を向かせるのがMCAS。
      本来はB737NGの時に機体を再設計すべきだったのに小手先変更でしのぎ、B737MAXでまた小手先変更でしのごうとして失敗して2機も墜落させた。
      今更機体の再設計なんてできないので、MCAS のソフト変更でしのいでいるのが今です。

      5
        • 匿名
        • 2021年 11月 15日

        安全性向上というよりは737NGの飛行特性に近づけるためにMCASをいじった、そしてそのMCASに欠陥があった。少しの訓練で737NGから移行できるのが売りだったから、737NGと飛行特性が違う(たとえ安全な範囲内でも)のは致命的。追加で訓練が必要なら違約金もあり得るし、セールスポイントが消える。

        抜粋”We also pushed the aircraft to its limits during flight tests, assessed the behaviour of the aircraft in failure scenarios, and could confirm that the aircraft is stable and has no tendency to pitch-up even without the MCAS.”

        リンク

        1
        • 匿名
        • 2021年 11月 16日

        >MCAS無しでは安全には飛べませんよ。

        それが本当ならMCASなしで手動操縦で運行していたサウスウェストのパイロットは天才超人集団か何か?

        >737 MAX、サウスウエスト航空でも類似不具合 手動操縦で回避
        >墜落が相次いだボーイング737 MAXについて、米国のサウスウエスト航空(SWA/WN)でも類似のシステムトラブルが8件起きていたことが、関係者への取材でわかった。いずれもパイロットが手動操縦に切り替えて問題を回避し、事故には至らなかった。
        >関係者によると、サウスウエスト航空の737 MAX 8でも、MCASが原因とみられる不具合が8件発生。8件とも、パイロットがオートパイロット(自動操縦)を解除し、手動操縦で不具合を回避したという。
        >ボーイングによると、サウスウエスト航空は2月末時点で737 MAXを280機発注しており、31機が引き渡されている。サウスウエスト航空の社内では、MCASの不具合は運航時の注意事項として回避策が共有されているという。

        2
      • 匿名
      • 2021年 11月 16日

      次世代システムまでの繋ぎに20年程度運用するだけならわざわざ新造しなくても、10年以内に退役するサウスウェストの500機の737-700から20から30機程度を選って改造すればボーイングの生産ラインの負担にはならない。現にイギリスのE7も中古機をイギリスで改造している。

      中古機改造は新造機より高くなる論者は既に閉じている737-700の生産ラインを再開させるべきと言うかも知らんけど。

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 15日

    日本の管制機の軸足はよりE-2Dに移っていくだろうな

    7
    • 匿名
    • 2021年 11月 15日

    う~ん、機体は持っても中身の部品の生産とかになったらE-767が使えなくなるわな。
    さりとて日本で穴埋めにようにアメリカ様に魔改造を認めさせないと、早晩張子の虎になるのでは?

    2
      • 匿名
      • 2021年 11月 17日

      中身の生産って、その中身更新したばかりなんですがそれは…?

      1
    • 匿名
    • 2021年 11月 17日

    E-767のような大型機は陳腐化~というが
    大型AWACSが陳腐化するのなら、そこそこ大型のE-7Aだって陳腐化するだろうに
    なんでE-767だけ陳腐化陳腐化と言われるのか訳がわからん

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 18日

      リモート管制化によって、大人数を乗せる必要がないから
      だからE-767サイズはいらない
      E-7Aはリモート管制の過渡期に導入されるもので、いわば橋渡し的な役割に近い
      将来的には、パイロットいれても3、4人以下で管制機を運用できるようになるだろうけども、それは20年とか30年先の話で、
      緩やかに人員削減をしていく中では、E-7Aぐらいのサイズが調度良いって話なんだろう

      あと、E-7Aはそこそこ大型っていっても、E-767と比較すると必要要員には倍以上の差があるから、全然違うよ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
PAGE TOP