米国関連

戦闘機メーカーとして生き残れるか? ボーイング、インドに米空軍が採用したF-15EXを提案

ボーイングは13日、シンガポールで開催中の航空ショーで米空軍が採用を決めた第4.5世代戦闘機F-15EXをインドにも提案すると明らかにした。

参考:Boeing mulls F-15EX offer to India

ボーイング、インドに米空軍が採用したばかりのF-15EXを提案?

インド空軍は過去にフランスの第4.5世代戦闘機ラファールを126機導入を決定したが契約内容で揉め36機まで導入数を削減したため、新たに100機以上の新型戦闘機採用を計画している。このプログラムは当初、単発機に限定されていたためロッキード・マーティンのF-21(F-16Vのインド向け名称)とスウェーデンのグリペンしか参加できなかったが、条件が緩和され双発機の参加も認められることになった。

このプログラムには現在、F-21、F/A-18E/F、ラファール、グリペンE、ユーロファイター・タイフーン、MiG-35、Su-35が名乗りを挙げているが、ここにF-15EXが加わることになる。

ボーイングはすでにF/A-18E/Fを提案しているが、さらにF-15EXを提案するためインド輸出に関するライセンスを米国政府に要求しているらしいが、このプログラムに参加するには提案機をインド企業と共同で現地生産する必要があり、広範囲に及ぶ技術移転もセットで行わなければならないため、どれだけボーイングがインドに魅力(技術移転や現地生産)ある提案が出来るのかが焦点になるだろう。

F-21を提案しているロッキード・マーティンは米国政府の承認を受け、現地生産だけでなくインドが生産したF-21=F16Vを第三国へ輸出することも認めているため条件面だけで見れば突出した存在だが、インド空軍の新型戦闘機調達プログラムはインド海軍の新型艦載戦闘機調達プログラムと密接な関係があると言われており、空母で使用できるF/A-18E/F、ラファール、MiG-35が有利という噂も無くはない。

出典:ボーイング

インド海軍が運用している空母はカタパルトではなくスキージャンプ台を使用しての発艦方式になるため、ボーイングは国防総省と共同でスキージャンプ台からF/A-18E/Fが発艦できることを実証するテストを行う予定で、今回のF-15EX提案と合わせるとインド採用を勝ち取るためには「何でもする」という気迫が伝わってくる。

このような動きは、最近発表された米海軍のF/A-18E/F調達中止と無関係ではない。

F/A-18E/Fのバックオーダーは米海軍とクウェートとから受注した52機分しかなく、提案中のカナダ、フィンランド、ドイツ、スペイン、スイス、インド、マレーシアから受注が取れなければボーイング戦闘機部門に残されのはカタール向けに製造中のF-15QAと米空軍が最大で144機発注するF-15EXの製造だけだ。

補足:純粋な戦闘機ではないが米空軍向けの訓練機T-7Aレッドホーク生産(サーブとの共同生産)を獲得している。

とにかく受注を取りに行かなければボーイングの戦闘機部門が干やがってしまうため、米空軍に提案したばかりのF-15EXを売りに出したのだろう。

ただ米メディアは、F-15EXは8,000万ドルと言われる機体価格がネックとなり海外輸出は難しいだろうと評価しており、恐らくライフサイクルコストまで計算に入れればF-15EXの導入価格は1.6億ドル(約176億円)から2億ドル(約220億円)程度になり、現地生産にかかる費用も含めれば価格はさらに上昇する。

仮に、ロッキード・マーティンのF-21並な条件(第三国へ輸出承認)を提示しても、高価過ぎるインド生産分のF-15EXを欲しがる国は恐らくいないため魅力がない。

果たして、ボーイング必死の売り込みは実を結ぶだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング

韓国防衛産業界、最終量産の「国産戦車K-2」に国産パワーパック採用をゴリ押しする狙い前のページ

共同開発の泥沼から脱出? 第6世代戦闘機「FCAS」プロジェクトが技術実証機製造フェーズに移行次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    アップグレード完了でF-22Aは2060年まで飛行可能、但しラプターの将来は未知数

    米空軍は27日、第5世代戦闘機F-22Aに対する機体構造のアップグレー…

  2. 米国関連

    米空軍の調達打ち切りを免れたMQ-9の余命は1年、後継機は低コスト?ステルス?

    議会の判断で調達打ち切りを免れた無人航空機「MQ-9」の将来は不明瞭で…

  3. 米国関連

    米空軍がE-8C/Joint STARSの早期退役を開始、来年9月まで議会が認めた4機を処分

    米空軍は21日、2022年度の国防権限法で認められた対地版の早期警戒管…

  4. 米国関連

    ウクライナ軍が依存するStarlink、コスト負担の問題でサービス停止の危機

    SpaceXは最近「Starlinkの端末やサービスをウクライナに提供…

  5. 米国関連

    米空軍の次期訓練機T-7A、設計上の問題に対応するためフルレート生産を1年延期

    ボーイングとサーブが共同で開発を進めている米空軍の次期訓練機T-7Aは…

  6. 米国関連

    米軍、運用コスト削減に失敗するとF-35維持に年間1.7兆円もの負担が必要

    米国の政府説明責任局はF-35の運用コスト削減が達成されない場合、20…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 2月 15日

    インドの大型マルチロールはSu-30MKIを絶賛生産中ですからねぇ…まぁ無理でしょうな価格的に…
    F21とグリペンが呼応してるけどグリペンは艦載形も開発してるしスパホも厳しいですね…価格的に

    • 匿名
    • 2020年 2月 15日

    もはやアメリカはマジで戦闘機の設計能力を失った、ボーイングだけでなくロッキードも怪しい。
    だからセンチュリーシリーズで開発力のアップを狙っているのだろうが、議会の方針やら設計者の給料その他が高くなりすぎてしまったからいろいろと苦しいことになっている。
    兵器産業、とりわけ航空機はは先進国の製造業の最後の砦だが、それを失ったアらメリカはどうなってしまうのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 2月 16日

      第1段落と第3段落で矛盾してるんですけど。この短い文章でよくここまで破綻した文書けるな

    • 匿名
    • 2020年 2月 15日

    X35とX32の驚くべき完成度の差や、いろんなニュースに触れる度に、軍需産業としてここまでロッキード・マーティンと差が開いているのかと驚きます。でも、ロッキード・マーティンが強すぎるという方が正しいのかも。

    • 匿名
    • 2020年 2月 15日

    >ラファールを126機導入を決定したが契約内容で揉め36機まで導入数を削減したため、新たに100機以上の新型戦闘機採用を計画している。
    >このプログラムには現在、F-21、F/A-18E/F、ラファール、グリペンE、ユーロファイター・タイフーン、MiG-35、Su-35が名乗りを挙げているが、ここにF-15EXが加わることになる。

    契約問題で揉め、この計画を立案する原因となったラファールも候補に名乗りを上げてるのか。
    厚顔無恥だなぁ。

      • 匿名
      • 2020年 2月 18日

      インドも大概な国だからな。
      あの国とビジネスするのは非常に大変。
      ゴネまくり、無茶言いまくり、厚かましすぎだから。

    • 匿名
    • 2020年 2月 15日

    MRCAは中型戦闘機枠ですから無理矢理過ぎる…

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP