米国関連

KC-46A不具合解消に向けた第一歩、ボーイングが鮮明な空中給油映像を実現

米空軍はKC-46Aの不具合解消について「RVS2.0配備は2028年初頭」と4度目の遅延を発表したばかりだが、ボーイングは4日「鮮明な空中給油映像を実現した」「KC-46のRVS2.0に関する飛行試験の第1段階が完了した」と発表し、RVS2.0に関するポジティブな兆候が初めて登場した。

参考:KC-46’s New Remote Vision System Completes Initial ‘Non-Contact’ Testing

2028年初頭に配備開始予定のRVS2.0、第1段階の完了で認証取得と実用化に向けて前進

KC-46Aの空中給油システムは信頼性が高いKC-10のものを使用するはずだったのだが、米空軍は予備設計後に空中給油システムの制御をアナログからデジタルに変更するよう要求、未検証の技術で構築されたリモートビジョンシステム=RVS1.0は新規設計と呼ぶに相応しいものだったにもかかわらず予備設計審査を簡略化して初期設計に移行し、プロトタイプのテスト中に不具合が報告されたのに問題を軽視して調達を強行した結果、KC-46AはRVS1.0の不具合で空中給油能力が制限される事態に直面。

出典:DoD Photo by U.S. Army Sgt. James K. McCann

この不具合は小手先の修正で何とかなる問題ではなく、米空軍とボーイングはRVS2.0開発を決定して「2024年3月から交換作業に入る」と発表したが、一から作り直すRVS2.0には未検証の新技術(自動空中給油システム導入に向けた拡張要素など)が含まれており、これを標準的な手順で検証すればリリース時期は2026年頃になると予想されていたものの、米空軍とボーイングはスケジュールを守るため予備設計審査を再び簡略化し、米政府説明責任局が「再び同じ失敗を繰り返そうとしている」と警告した通り、RVS2.0のリリース時期は2024年3月→2025年10月→2026年→2027年夏と遅延を繰り返していく。

KC-46AはE-7AやF-15QAへの空中給油も承認されたため28機種以上への空中給油が許可されているものの、空中給油を行う環境条件、空中給油を受ける側の機体構成、特定機種で明確な運用制限が残っており、RVS1.0の構成センサーの1つ=遠赤外線(LWIR)カメラの性能不足で深度知覚やブーム先端の識別困難になるため、暗視画像システムを必要とする夜間空中給油能力は大幅に制限(Category 2=制限運用)され、特にブーム先端が機体表面のステルスコーティングを傷つける恐れがあるためF-22とB-2への夜間空中給油は事実上禁止、F-35は手順制限を守れば夜間空中給油も可能なもののKC-135による空中給油が推奨されている。

出典:Boeing

根本的にRVS1.0のカメラ画像は光量の調整不良、奥行きの歪み、グレア耐性の不足で「KC-135のように窓から直接見るような自然な視界」が得られず、特定の太陽角度、強い日光反射、雲の出入り時の光量変化時にブームオペレーターがブーム先端を識別困難になるため、KC-46Aによる非ステルス機=F-15、F-16、B-52H、B-1B、C-17、C-5への空中給油も基本的にはCategory 2=昼間運用がメインでKC-135併用が推奨され、Category 3=無制限運用が認められているのは主翼下に取り付けられたポッド型空中給油システム=プローブ&ドローグ方式を利用した場合だけだ。

さらにKC-46AはA-10に対する空中給油が制限付きでも許可されておらず、これはRVS1.0の不具合ではなくブーム柔軟性不足=重量が軽いA-10の給油受け口にブームが接続した際、ブーム自体の伸縮制御の柔軟性が不足してブームの接続を維持することが困難なため、KC-46AによるA-10への空中給油はRVS2.0と並行開発されている新型ブームに交換されるまで実現の見込みはない。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Robert Nichols

米空軍は5月12日「ボーイングとKC-46のアップグレードを加速し即応性を大幅向上する計画で合意した」と発表し、この取り組みの3つの柱(初期生産機の再利用、RVS2.0改修の加速、性能ベースロジスティクス協定の導入)を説明する中で「2028年初頭に配備開始予定のRVS2.0は改修作業と整備拠点でのメンテナンスを一括で実施し、さらにRVS2.0キット納入も前倒しすることで全既存機の改修期間を13年間から7年間に圧縮する」と言及し、2027年夏に予定されていた配備予定が2028年初頭に変更されたと「4度目の遅延」を発表した格好だ。

ボーイングは4日「鮮明な空中給油映像を実現した」「KC-46のRVS2.0に関する飛行試験の第1段階が完了した」「実際の飛行条件下でKC-46に搭載されたRVS2.0の構成要素=アップグレードされたカメラ、制御装置、処理ハードウェアの性能が検証・確認された」と発表、Air&Space Forces Magazineも「RVS2.0を搭載した試験機は2025年11月に初飛行を行い数ヶ月にわたる検証試験が開始されている。飛行試験の第1段階は非接触試験で、試験機に搭載されたRVS2.0を用いた他の航空機への接触は行われていない」「第1段階の完了でRVS2.0は認証取得と実用化に向けて前進した」と報じている。

KC-46の不具合に関連した今回の発表はネガティブなものではなく、初めてと言っていいかもしれないポジティブなもので、2028年初頭に予定されているRVS2.0配備に向けて追い風となるだろう。

米空軍は最大75機の追加調達を2028年に予定しているが「カテゴリー1の欠陥が解決されるまで新たな契約は結ばない」とも述べているため、逆説的には「2028年までに全て問題が解消すると見込んでいる」となり、KC-46Aの不具合を追いかけてきた管理人からすると色んな意味で胸熱な展開だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Boeing Defense

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コメント

  • コメント (11)

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    • ブルーピーコック
    • 2026年 6月 05日

    かっこよさげなBGMの動画を作ったところに言い方悪いが、実態は手動でしたとかは止めてくれよ。

    7
      • SB
      • 2026年 6月 05日

      まあぶっちゃけ空中給油に限らず自動化って技術は人間様が機械をどこまで頼るか?の問題であって、技術的にはそんなに難しくないんで…

      4
      • ヘイワード枝
      • 2026年 6月 05日

      kc46は選定の段階から、エアバスとボーイングで揉めており、それゆえkc46に対する批判が多い
      特に、不具合を強調し、逆にkc45になる筈だったA330MRTTの順調ぶりや受注増加を称賛する傾向がある
      しかし、kc46は2025年のイラン空爆の際にB2ステルス爆撃機などにも無難に任務をこなしていたとの報道もある
      実戦の動向と兵器の評価や期待値がズレることはこれまでもよくある事だった

      12
    • せい
    • 2026年 6月 05日

    全ての問題が解決され、持てる性能が確実に発揮される目処が立ったんならこれ以上無い朗報
    領空が広い日本としても生命線レベルの機体何だから、期待せざるを得ないね

    15
    • 朴秀
    • 2026年 6月 05日

    大丈夫?
    ボーイングの製品だよ?

    11
      • 匿名
      • 2026年 6月 06日

      F-15 「呼んだ~?」

      あ、設計はMDか。w

      4
    • ドゥ素人
    • 2026年 6月 05日

    本件に関しては、ここで記事を見てきた私たちからすれば本当に「胸熱」ですが、なにせボーイングさんなので油断できないですね。
    日本向けも含めて移行完了するのと、GCAP とどちらが速いか競争ですね…

    17
    • 匿名希望係
    • 2026年 6月 05日

    懐疑的な目しか出来ねぇーな

    12
    • SB
    • 2026年 6月 05日

    結構前からここのコメント欄でもKC-46Aを擁護してる人はそこそこいたよね
    欠陥があるのは間違いないけど、巷で言われるほどじゃない、時間や運用で解決する問題って

    3
      • 通りすがり
      • 2026年 6月 06日

      KC-46の数々の欠陥は否定のしようがないけど、本邦においてKC-46の導入を継続する以外の選択肢はあり得ないと今でも信じてる。
      A330MRTTは大きすぎて地方空港に不向きなのと国内に整備基盤が無いという特大の欠陥があるのが痛い。

      17
    • TOW
    • 2026年 6月 06日

    運用上の小回りが利き製造もノースロップグラマン社というエンブラエルKC-390の採用を秘かに期待していますが、KC-46の問題解決が早まれば追加生産になるでしょうし残念ですと兵器オタは思ってしまいます。
    しかし空自用KC-46にも同じく改修必要なだけに早くRVS2.0がモノに居なると良いですね。

    4

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