28日に投票が行われたカナダの総選挙でカーニー氏が率いる自由党が勝利し、New York Timesも「カーニー氏が政治的奇跡を起こして支持率がどん底だった自由党を勝利に導いた」「主要国の中で明確な反トランプを掲げて選挙で選出された最初の指導者になった」と報じた。
参考:Mark Carney Swept Canada, but There Will be No Honeymoon
カナダ国民は「51番目になれ」という発言に相当怒っているため「冗談半分なのだから無視しろ」と言われても簡単に割り切れるものではない
トルドー首相は9年以上も政権運営を担当してきたものの国内の政治課題や移民問題などで国民の不満が高まり、トランプ政権への対応=カナダに対する関税導入でも財務相と意見が対立、フリーランド財務相は昨年12月「米国との対立に備えて費用の掛かる政策を止めて資金を温存する必要があるのに、首相がトランプ大統領の脅しを真剣に受け止めていない」と批判して辞任し、自由党内から「10月に予定されている総選挙前に退陣すべき」と批判されてしまい、今年1月「正式な手続きで次期党首が決まれば党首と首相を辞任する」と発表。

出典:Justin Trudeau / CC BY 3.0
後任党首に選出されたカーニー氏は曖昧な態度を止め「もはや米国は信頼できるパートナーでないのは明らかで安全保障や貿易関係を大幅に見直す」と公言、25ポイント差をひっくり返して選挙で勝利するという大逆転劇を演じ、New York Timesも「カーニー氏が政治的奇跡を起こして支持率がどん底だった自由党を勝利に導いた」「カーニー氏は自身が対米関係の見直しを舵取りする適任者だと国民を納得させた」「カーニー氏はトランプの脅しを選挙の争点に据えることで世界的な反トランプの象徴となった」「主要国の中で明確な反トランプを掲げて選挙で選出された最初の指導者になった」と報じている。
但し、New York Timesは「カーニー氏の激しい政治的レトリックはトランプ大統領との会談で問題になるかもしれない」とも危惧しているのが興味深い。

出典:Mark Carney
“カーニー氏は選挙の勝利を祝うため集まった支持者らに「何度も警告したように米国は我々の土地、資源、水を欲しがっており、トランプ大統領も我々を打ち負かして支配したいと考えているが、絶対にそんなことは起きない」と述べたが、既に両者は電話で話し合い近日中に直接会談することで合意した。カーニー氏の激しい政治的レトリックはトランプ大統領との会談で問題になるかもしれない”
“カーネギー国際平和財団の研究員は「西側諸国には反トランプの人間を自由世界のリーダーに祭りあげたいという思惑があるが、これは非常に危険なアイデアで、メディアが海外の指導者を反トランプの担い手と大々的に喧伝し始めた瞬間、その指導者はトランプ政権の標的にされてしまうだろう」と指摘”

出典:Department of Defense photo by Staff Sgt. Danny Gonzalez
“カーニー氏はトランプ大統領との密室会談では異なるニュアンスでアプローチする可能性が高いものの、カナダ国民は選挙で約束した脅しへの抵抗とカナダの誇りを期待しているはずだ。トランプ大統領が何度も「カナダに関税を課したい」「カナダを51番目の州にしたい」と言及しているのは事実だが、カーニー氏は脅しに執着するのではなく取引に集中すべきだ。どうせトランプ大統領が脅しをかけてきたとしても冗談半分なのだから”
トランプ大統領はTimeとの取材で「2期目の初日に『ウクライナとロシアの戦いを24時間以内に終わらせる』と言ったのは主張を強調するための誇張だった」「勿論、これを聞いた人々も私が冗談で言ったことを知っているはずだ」と述べて自身の発言を有耶無耶にしており、New York Timesが「どうせトランプ大統領が脅しをかけてきたとしても冗談半分なのだから」と指摘したのはコレを意識したものだと思われるが、カナダ国民は「51番目になれ」という発言に相当怒っているため「冗談半分なのだから無視しろ」と言われても簡単に割り切れるものではないだろう。

出典:Mark Carney
因みにNew York Timesは「カーニー氏とトランプ大統領が上手く付き合えるかの試金石は6月のG7だ」「トランプ大統領は自身の発言や政策の影響を受ける同盟国の中に身を置くことになる」「一方のカーニー氏は良好な関係を築いているマクロン大統領、スターマー首相、フォン・デア・ライエン委員長に囲まれながら過ごすことになる」「この様な国際会議は具体的な成果よりもハイレベルな政策調整に重点が置かれるものの、それでも不測事態を招く余地が大きい」「これを防止するためカーニー氏はG7の進行を綿密に演出する必要がある」とも述べており、G7はカナダと米国の関係を試す絶好の機会なのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Mark Carney
ドイツCDU「こっちが先では?」
アメリカさん、日本が離れた困りますよね?
対中国で見ても、日本は米軍基地どころか、民間空港に不時着したり港湾も使いやすいですよ。
日本目線で見れば、アメリカと友好国が揉めているのは日本どころではなくなるため、対米交渉が非常に楽になる要因ですね。
西側同士で分断が進むのはあまり望ましい流れとは思えませんねえ
勿論元を正せばトランプ大統領の発言に不信の原因があるのは明らかですが、反トランプ政権ではあるが反アメリカではないぐらいの繊細なポジションにつけてくれたらと思います
元々支持率で劣っている方が過激な物言いで選挙に勝つもののその後支持率低下してグダグダという流れは勘弁して欲しいです
基本的に反トランプであって反アメリカではないと思うけど、一度でもトランプ@二期での方針転換を目のあたりにしたらカナダ最大の同盟者への返り咲きはなかなか難しいかと
「トランプの妄言だから」で低く見がちだけど、立場を日本と韓国に置き換えたらインパクトの大きさは想像できるかと
> 元々支持率で劣っている方が過激な物言いで選挙に勝つもののその後支持率低下してグダグダという流れは勘弁して欲しいです
トランプ大統領のこと言ってるのかと
カーニーはんって、G20での講演が関西弁で翻訳される人でしたっけ?
カナダも西欧と一緒にアメリカのリベラルと手を組んで反トランプ連合を作って、トランプ政権転覆工作すればいいのに。
西欧リベラル価値観にとって反民主主義的政権を潰す事は世界平和及び人権の為にむしろ推奨される行為でしょう。
アメリカとヨーロッパで『リベラリズム』の意味が同じだと思っている時点で見通しが甘過ぎるんじゃないでしょうか
民主主義という面からは、トランプ政権の共和党の方が言論の自由重視や検閲反対なんです。カーニーの自由党はアメリカの民主党と同じく、検閲の推進(不適切な言論は許さない)とか思想統制(ポリコレ ナチスとか差別的な思想は許さない)の傾向があります。
今回のカナダの選挙は野党の保守党は伸びているのです。新民主党という極左の票が自由党に流れて、自由党が第一党を維持したという感じです。
アメリカの選挙でいうと、投票数や事前投票や郵便投票の多さとか、ちょうど2020年のバイデン勝利の時みたいな感じです。
カナダの今後4年間の政権運営が上手く行けばいいのですが。カナダの自由党はアメリカで言うと共和党でなく民主党的な政権だと思います。そして民主党と同じく自由党はマスコミは味方につけています。
それだけ大それた事をやるだけの計画性があれば、とっくにロシアに勝ってるよ
反ポピュリズムをメディアが過大に支持することで、ポピュリズムのように国民から期待されて選出された指導者は現実的な外交選択肢を難しくするのではないかという指摘、
途中送信失礼
という指摘を、一主要メディアでありながらオピニオンで異見を伝えることが多いNYTが書いているのが面白いですね。
実際、選挙で反〜を示して支持された指導者は、よほど圧勝か厚顔でなければ手のひら返して和解は難しいです。
過去アメリカ含めの紛争激化や戦争の引き金になるよくある事態なので、懸念はかなり正統で理性的な記事に思います。
カナダと合衆国が合併したいならカナダは各州単位で51から63番目の州として加入
米上下院にカナダ各州から米州と同条件で議員を受け入れること
大統領選挙は合併後直ちに直接選挙で行うこと
むやみにトランプ発言の相手をせず
トランプ政権では受け入れ不可な条件をぶつけておくぐらいがいいような気がします。
トランプの放言癖には困ったもんだが
反トランプの結論ありきでもともとタダ乗りしてた国防を更に弱体化させようってのが狂気の沙汰、赤点だね
一昔前にネットミーム化した日本政府の「遺憾の意」ってマシな方の対応だったんだなぁ
他所の記事を読むと。
カナダの一部州(アルバータ州?とか)に分離独立を目指す動きがあるとか。
この場合、米国に編入を望むのかな?。どうなることか。
米国にしてやられるのも剛腹でしょうから、上手く立直って欲しいものです。
1兆円以上減収が、トランプ関税の影響として州財政だけで(!)見込まれてましたね。
カナダ資源輸出の中でも非常に大きく稼いでいまして、既に30%が独立支持という記事を拝見しました。
稼いでいる地域が、よく分からない政策(移民保護・環境保護など)で他地域に搾取されれば怒るのは、古今東西かわらないもので仰る点興味深いですね。
本邦の石破茂もおります
ん~、なんかこう日本で「悪夢の民主党政権」が誕生した時と同じアトモスフィアを感じるのは自分だけ?
あの時は、自分の足元を破壊するような、口先だけの絵空事言ってる奴を政権につけてどうすんだよ?と絶望したけど。
西側世界が何かイデオロギーで自家中毒起こしてその毒で思考力を喪失し、色々とアカン方面に次々と舵を切り出しているようで、ちょっと恐ろしい。
ヤバい!となったときに、エストニアのロシア系のように弾圧していくのか?下手したら内戦という話しになりますからね。
ムハンマドが、イギリス新生児の名前1位になってしまいましたから、仰る点どうするつもりなのか興味深いなと…
どっちかというと今のアメリカが「悪夢の民主党政権」状態かと
産業を強くするぞ!と息巻いて政権とったのに円高放置&TPP(時期的にTPPはあまり関係ないが)で製造業流出させ逆の結果をもたらしたり、腹案があります!(辺野古の基地移転問題)と意気揚々と言ってたのに見込み外れで同盟関係に傷つけただけに終わったり、補助金や助成金で成り立ってた学術や産業を無駄としてカットしたりと、今のトランプ政権との類似点が多い
日本と諸外国との力関係や通商・同盟関係の浅さで対外的なダメージは限られたけど、アメリカの影響力でアレやったら・・ね
カナダには欧州以上に防衛能力はないし、それでいて国民は多くなく、資源が豊富。
狙われないのはアメリカと友好的かつ隣接し、NATOの一員である、これに尽きる。
アメリカと距離を置き、さらにNATOからアメリカが距離を置こうものなら、ならずもの国家との最前線に立たされるのはカナダと言える。ただでさえ移民でだいぶナショナリズムが下火になっている国。
状況はだいぶ違うが、
ロシアと欧州の間でポジションどりしようとしていたウクライナ
アメリカと中国の間でポジションどりしようとしていたカナダ
今まで安全だったのは軍事大国の影によるものであることを忘れてはいけない。もちろん日本も。
もしその大国から離れるのであれば、電撃的に核兵器の保有や同盟の確立、サプライチェーンの構築を成し遂げるという、
もはや奇襲戦争に突入するような覚悟が必要。
個人的にはトルドー政権が崩壊して自由党としてはまだマシなカーニー政権に交代したのは悪くはないんじゃないかと。
まぁトランプ派からすれば、保守党に交代しなかったのは残念だろうが保守党は永らく貧弱だし仕方ない。脅されたらキレるのは世の常だし。
ただリベラル派の言う所の勝利なのかと。「アメリカに対抗する余裕を捻出するため」に環境規制もかなぐり捨てて、大幅な後退以外の何物にも見えんが反トランプなら何でも良いのか?
「米国との対決姿勢」だが、文字通りカナダ軍を増強するのか、トランプに喧嘩売りつつ何もしない馬鹿外交のどちらを取るのか?ガスを売れば予算は幾らでも捻出出来るかもしれんが、あの反炭素で凝り固まった欧州首脳陣と協調出来るのか?