Breaking Defenseは関係筋の話に基づいてF-16墜落原因について考察しており、ウクライナ軍がIFFを使用していない点、ミサイルの破片に巻き込まれて4機の戦闘機を失っている点、旧ソ連製戦闘機から西側製戦闘機への移行が口で言うほど容易ではない点を墜落原因に挙げた。
参考:Ukraine’s lost F-16: Debris and a deadly mission
F-16でロシア軍のミサイルや無人機を迎撃するという任務は相当リスクが高い
ウクライナ軍は巡航ミサイルや自爆型無人機の迎撃にF-16を投入し、ゼレンスキー大統領も「F-16は素晴らしい成果をもたらした」「我々はF-16の助けを借りてミサイルや無人機を数機撃墜した」と述べていたが、ウクライナ軍参謀本部は29日「F-16が迎撃任務中に墜落してパイロットが死亡した」と発表し、なぜ手に入れたばかりのF-16を失ったのかに大きな注目が集まっている。

出典:Повітряне командування “Захід” Повітряних Сил ЗС України 死亡したパイロットの葬儀
この件についてBreaking Defenseは20日「実戦に投入すればF-16の喪失は避けられない問題だったが、入手した直後の喪失はあまりもタイミングが悪すぎた」「この事件はゼレンスキー政権にとって注目度が高いため墜落原因に関する情報が封鎖されているものの、判明した幾つかの詳細は謎に包まれた墜落原因のギャップを埋めのに役立った」と報じ、ウクライナ軍の防空部隊も戦闘機もIFFを使用していない点、既に破壊したミサイルの破片に巻き込まれて4機の戦闘機を失っている点、旧ソ連製戦闘機から西側製戦闘機への移行が口で言うほど容易ではない点を挙げた。
“防空部隊やF-16の運用を支援しているウクライナ防衛産業界の関係者は「戦争当初、ウクライナとロシアは同型の航空機を運用していたためIFF=敵味方識別装置の使用に混乱が生じ、味方と敵の航空機を取り違える可能性が懸念されIFFの使用が停止された。この慣行はF-16の運用にも適用(旧ソ連製のレーダーや防空システムの運用に関係があるかもしれない)されてる。つまり戦闘機と防空部隊を同時に使用して巡航ミサイルや自爆型無人機の迎撃を行う場合『非常に綿密な調整』が必要だ」と述べた。複数の関係者やベズガラヤ議員が味方による誤射を主張したのもそのためだ”

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ
“ウクライナ防衛産業界の中で浮上している有力なシナリオは「ロシア軍のミサイルを破壊した際に生じる破片群にF-16が誤って突っ込んだ」というもので、ウクライナ空軍は同じ理由でMiG-29(2022年3月13日と2022年10月12日)とSu-27(2022年6月5日と2023年3月28日)を2機づつ失っているが、高価な西側製戦闘機ではなかった当該機の墜落は全く注目を集めなかった。F-16が同じ理由で墜落した5機目の戦闘機になる可能性は十分あり得る。このリスクを避けるには地上ベースの防空網を十分な広さまで拡張することで、それまでは同様の悲劇に見舞われる可能性がある”
“ウクライナの支持者たちは「米国はウクライナ人パイロットの訓練に時間をかけすぎだ」と不満を口にするが、米国は慌てて訓練を行うことの危険性を繰り返し強調してきた。NATO加盟国のあるパイロットは「ソ連製戦闘機と西側製戦闘機の違いは訓練で学び直すべき困難なハードルを示している」「特にMiG-29やSu-27の操縦経験しかないパイロットにとってフライ・バイ・ワイヤ制御の操縦技術は完全に別物だ。デジタル機器で構成されたパイロット・ビークル・インターフェースの使用方法も、電子機器や搭載兵器の扱い方や作動原理も1から学び直さなければならない」と述べた”

出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Tristan McIntire
IFF未使用に起因した戦闘機と防空部隊の同時運用に致命的な問題が生じたのか、何度も戦闘機を失うことになった要因にF-16も直面したのか、訓練期間の短さがパイロットのミスに繋がったのか、このどれが正解かはまだ分からないもののの、Breaking Defenseは「この損失から最高の教訓が得られるとすれば『本格的な戦争を戦っている軍隊に新しいプラットフォームを統合するには段階的な手順が不可欠』と理解しなければならないという点だろう」と指摘して以下のように述べている。
“ソ連崩壊後、西側製とソ連製の戦闘機を同時運用した国もあるが、ウクライナと決定的に異なるのは段階的な移行手順を踏んだことだ。これらの国はソ連製戦闘機の任務を緩やかに西側製戦闘機に移行させ、決して戦力化を急がなかったことだ。最も広い意味で言えば「F-16は対ロシア戦の特効薬ではない」ということ思い出させるが、これはF-16の失敗を意味するものではない。在欧米空軍のヘッカー大将は7月「F-16を手に入れたからといって直ぐ制空権を握れるといった特効薬にはならない」「長い目で違いが生じるのは米国製の搭載兵器をより効果的に扱えるようになるという部分だろう」と述べたことがある”

出典:Офіс Президента України
まだ運用できる数が少ないためF-16は特筆すべき活躍や成果を残せていないが、一つだけ確かなのは「F-16でロシア軍のミサイルや無人機を迎撃するという任務は相当リスクが高く、出来るなら地上ベースの防空システムに迎撃を1本化させた方いい」という点で、仮にIFFを使用できても破壊したミサイルの破片突っ込むリスクから逃れられない。
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※アイキャッチ画像の出典:Повітряні Сили ЗС України
重箱の隅だがフランカーもフライバイワイヤ制御なんだけどな
確かフルクラムもですよ。
SU-27はアナログFBWなので、アメリカ基準だとFBWと呼ばない。
F-15もアナログFBWだけどFBW機と呼ばないからね。
FBWは厳密に言うとF-16のようなデジタルFBWを搭載したCCV機の事を指す。
要はセンタースティックの機体のパイロットがサイドスティックに慣れるのは時間がかかるということでしょう
センタースティックは引けば引くほど重くなるので舵角を手肌で直感的に把握できますが、サイドスティックはフィードバックがほぼ皆無なので軽く引いたつもりでも機体がひっくり返ってしまいます
慣れればサイドスティックの方が疲れないし、操作も早いですがね
戦時中、すぐに実戦投入ですから、防空部隊+F16の共同訓練をほとんど行えていないでしょうからね。
規格が複数混じると、どの組織もそうですが、現場は混乱しやすくなるでしょうし。
初期不良・不慣れによる事故は、どの分野でも起きやすいものです。
どちらかと言えば、直後に空軍司令官を解任したことが、組織上よくないでしょうね。
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イラクでもホーネットをパトリオットが誤射で撃墜した事件があった
戦時で心理が圧迫されたり、逆に弛緩していると普段は犯さない失敗をしてしまう
F−16専用の空域を用意するしかなさそう。
YouTubeのちゃんねるくららで元空将の人が解説してたんですが、西側の運用では味方機を安全に通過させるために対空迎撃しない空域と時間を予め設定するそうです。
確かにそういうルールを作らないと敵味方識別装置があったとしてもかなり危なそうです。
司令官がいきなり腹を切らされたのはその辺の運用体制がまだ確立してなかったのに、不用意にF-16を防空任務に投入してしまったことを問題視されたのかもしれません。
この記事にあるように必要な機材がないとか色々問題はあったんでしょうけど、F-16が来ることはだいぶん前にわかってたことですからね。そうだとするならこれは使い方のルールさえ用意出来てれば防げた事故だったはずなので残念です。
なるほど。
それにしても、ソ連にも同じようなルールはありそうなものなのに、ウクライナ空軍にはないのが不思議。
で思ったのは、米軍だとパトリオットは陸軍管轄で、自衛隊だと航空自衛隊。ウクライナではどっちの管轄なんだろう?
対地兼対空巡航ミサイルの爆誕である。累計5機も巻き込んでるなら滅多に起きない事象と切り捨てれないわ。
発展させるだけの価値があるように思う。戦闘機での迎撃を阻害するだけでも価値があるし。
破壊されたあとにチャフ的に拡散して空域を汚染する対空ミサイルとかであれば対空防衛任務の戦闘機の脅威となるんですかね…いや後続の攻撃が通りづらくなりますし数と精度に勝ることはありませんか。
レーダー性能の問題で、自爆ドローンを捉えるには極端に接近する必要があるとのことですね、機銃を使うこともあるとか
F-16も供与されてるのは旧式のAPG-66v2仕様ですから似たようなもんでしょう
ミサイルを破壊した破片群に誤ってF-16が突っ込んだってなんなんだ……?
ミサイルにホイホイ落とされたのをそういう言い回ししているようにも聞こえるぞ
1,練度が低すぎて正面から撃墜した後、飛行軌道を変えず破片に突っ込む
2,ミサイルが不足しており機銃で迎撃を行っている
3,ロシア軍の防空網を避けるために低空での迎撃を余儀なくされ、近距離で撃墜せざるを得ない
4,巡航ミサイルだと思ってたらR-37Mで迎撃機に直撃した(地上管制は撃墜した巡航ミサイルの破片に当たったと思い込んでる)
さあどれだ
F-16は後方にいて一番近くでもキーウ上空でロシアの防空圏内ではないから低空で飛ぶ必要はない。
2,でしょ数百万のドローンに数千万のAAM使ってられないでしょうし
あと、被弾すると起爆する巡行ミサイルとか
500kg爆弾クラスならガンの距離だとかなり危ない
斜め後方からアプローチして機銃で撃墜するはずですが、迎撃を焦りすぎて近付きすぎたのかもしれませんね
それか離脱に失敗したのか、安全距離の目算を誤ったか
CM迎撃で自爆ってWW2のV-1ロケット迎撃の英戦闘機でもありましたよね
AAM使ってりゃまず無い事でしょうが撃ち尽くしてなお目の前を自国民の上に落ちるCMが飛んでたらパイとしては危険でもガンキルするんですかね
滑空爆弾を落としてくる航空機は対処できないの?
前線に移動するリスクは相手も同じだと思うが
ミサイルの飛距離が足らないんだろうか
まあ運用体制には問題があった…とは思いますが、それは政府側が早速の成果を欲して強行したからじゃなかろうかと私は思ってます。
それにしても「米国はウクライナ人パイロットの訓練に時間をかけすぎだ」はさすがに無責任すぎる外野の発言ですね…軍事を少しでも齧ったことのある者なら絶対言えないでしょう…
ロシアからしたら嬉しい誤算でしょうね
地上目標の数十倍は高価な目標を破壊できたわけですし
損耗を許容しないなら万全の準備してからの戦線投入ということになります。
大規模な損耗が発生することを前提にしなければ戦えないというのが再認識された現段階では万全を求めるのかあるいは早めの戦線投入をして損耗しつつも戦力化しフィードバックも得るべきか判断が難しい。
ただしF-16はウクライナと西側にとっては極めて重要な資産であって損耗の許容度は小さいため急ぎ過ぎたと評されるのも当然でしょう。
ロシア側でも高価値資産は温存しています。
ただ、航空機は損耗を許容されないという方針では戦術の縛りが大きく、岐路に立っているのでしょう。それが故に損耗を許容するための要素として人的損失を避けられる無人機への期待もあるのでしょう。
F-16一機損失で大騒ぎになったこの現状がこそ反省材料かと思います。
アメリカの在庫でもパトリオットも足りない、F16も足りない、となれば限らたリソースでミサイルや滑空爆弾を阻止するならば
投射してくるロシア軍戦闘機を長射程ミサイルで地上破壊するしか無い
ウクライナ軍がNATOから供与したミサイルでロシア空軍基地を破壊したってプーチンがNATOに核戦争を仕掛けることなんて無いよ。
せいぜいのところ欧米に対して全面的電子ウイルス攻撃と要人暗殺および各種テロ作戦を実施するぐらい
バイデン達が今更何をためらっているのか意味不明だね
この場合、S-300とかがF-16を敵機と認識する危険性があったからIFFを使用しなかったということなんでしょうか?
双方でロシア機を使っているこの戦場の空でIFFには頼れないから人力で目標を決めているんだとすればたまたまF-16だから目立っただけで、相当の友軍誤射が起きていそう。