米陸軍は2026会計年度予算案の中で「全戦闘車輌の上部を保護する追加装甲」を要求、War Zoneも「米陸軍は戦闘車輌をドローン攻撃から保護するためコープケージのような追加装甲を望んでいる」と指摘しており、既存の戦闘車輌にコープケージを追加する動きが加速している。
参考:Army Wants Cope Cage-Like Armor To Protect From Drone Attacks On Its Tanks
戦闘車輌に求められてきた「車高の低さ」はドローンの普及に伴って「最優先」ではなくなったのだろう
ロシアで2021年6月に実施された演習に「見慣れない保護装置を取り付けたT-72B3」が目撃され、露メディアは「対戦車ミサイルや徘徊型弾薬が意図的に狙ってくるトップアタックを防ぐためのもので、乗員の間ではサンシェードと呼ばれている」と報じ、ロシア国防省も「近いうちに他のT-72にも同様の保護装置が導入されるだろう」と述べていたが、ウクライナとの国境沿いに集結したロシア軍部隊の中にもサンシェードを取り付けたT-80が確認され、ウクライナ軍もジャベリンの試射を通じて「サンシェード(ウ軍はコープケージと呼んでいる)を貫通できる」とアピールした。

出典:Минобороны России
ウクライナ侵攻が開始されるとサンシェード装備の戦車が対戦車ミサイルの餌食になったため「効果がない」と考えられていたが、商用ドローンによる小型爆弾の投下=車体上部の開口部を狙った攻撃を防ぐのには効果があると見込まれ、ロシア軍はサンシェードの改良と採用範囲を徐々に拡大させ、現地部隊でも独自のサンシェードが考案され、2023年前半には爆発反応装甲が取り付けられたサンシェードが登場。
米ディフェンスメディアは爆発反応装甲が取り付けられたサンシェードについて「効果的な保護能力を提供できるかどうかは不明だが、この1年半の間に登場したサンシェードの進化と普及には目を見張るものがあり、この手の研究は今後も続いて行くだろう」と指摘していたが、2023年後半にウクライナ軍がFPVドローンの本格投入を開始するとサンシェードと爆発反応装甲による車体上部の保護は「生存性を向上させる最も重要なアプローチ」と再評価され、ロシア軍も直ぐにFPVドローンを大量投入してきたためウクライナ軍も同じアプローチを導入している。

出典:Минобороны России
ガザ地区に侵攻したイスラエル軍もAPSを搭載したメルカバにコープケージを装着していたが、米陸軍もSEPv4を中止してM1E3の開発を発表し、ノーマン准将は「FPVドローンの脅威は全ての戦闘車輌にとって現実的な問題だ」「エイブラムスは敵戦車等の直接攻撃に対して非常に高い防御力を備えているもの、上からの攻撃を防ぐように設計されていない」「M1E3はトップアタック・プロテクションを強化する」「このトップアタック・プロテクションにはアクティブ防護システム(APS)が含まれる」と述べていたが、米陸軍もコープケージの正式採用を計画しているようだ。
米陸軍は2026会計年度予算案の中でTop Attack Protection add-on armor systemsの資金を要求しており、War Zoneの取材に応じたエイブラムスとブラッドレーの元能力開発担当者は「トップアタックを効果的に防ぐ装甲をもった現代の戦車は1つもない」「M1E3のような将来戦車は上部装甲の強化やAPSを採用してくるだろうが、当面は砲塔上部に装甲を追加したり、コープケージや爆発反応装甲を採用することになるだろう」と述べ、米陸軍も「TAPは全ての戦闘車輌に搭載することを想定している」と述べている。

出典:Daniel Hagari
米陸軍はTAPを1,528輌の戦闘車輌に導入する資金として9,200万ドルしか要求しておらず、2026年4月に締結する契約の納入開始を「2027年11月」と想定しているため「TAPは非常に安価な取り組みで戦闘車輌への追加も簡単だ」と示唆しており、War Zoneも「米陸軍は戦闘車輌をドローン攻撃から保護するためコープケージのような追加装甲を望んでいる」と指摘しているのが興味深い。
因みに陸自でも90式や10式戦車へのコープケージ追加をテスト中で、戦闘車輌に求められてきた「車高の低さ」はドローンの普及に伴って「最優先」ではなくなったのだろう。
試作ではありますが、装備品展示でコープケージを装着した戦車を見ることができるとは思いませんでした。はるばる北海道まで来た甲斐がありました。#東千歳駐屯地 pic.twitter.com/GYYVF7UPhw
— アユザック (@Ayuzak17) May 25, 2025
自衛隊の戦車でもコープケージ付きを見る事になるとは時代の変化を感じる。
そしてやはりどうしても高さ増すので目立つなと。これは稜線射撃時に不利になるかもだけどそれは乗ってる隊員さんも100も承知で、今後色々と運用を考えていくのだろうなと。 pic.twitter.com/YcgtNc5Pnw— Hound @C106 17日(日)_東6_キ-52a (@Hound_7) May 26, 2025
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo by 1st Sgt. Luisito Brooks
ゲームチェンジャーとか空想の物に縋るのでは無く、こういった地味で地道な努力が必要だと再認識させてくれますね。
費用対効果考えると改善の余地あれど必須装備になりそうですかね。
東側の戦車は車内容積を犠牲にして車高を抑えることに苦心し続けてたけど、結局意味がなかったってことなのね
想定した時代と環境が違うから、それは少し意地悪じゃなかろうか。
ヨーロッパ平原でスチームローラやるにはベストだったんだよ。当時は。
後出しと言えばそれまでではありますが、今後低車高追及したソビエト時代の設計思想が廃れるのは間違いない事実かと
低車高のために拡張性や居住性等犠牲にしてきた側面があり、それが否定されたとなると将来的に未来はないとして改修よりも新規設計優先でその系譜が途絶える可能性はありそう
T-14で一応脱却したんですけどね。
この戦争で唯の高いだけの戦車になってしまったからアルマータ計画も一旦ストップか。
Sタンク「僕はいま、非常に冷静さを欠こうとしています」
コープケージなんか付ける位なら、装甲の薄い所全体にモジュール装甲を付けて、近接信管付き砲弾が打てるRWSを上面に付けて、外見がヤークトパンター化すればいいじゃない。重量とサイズの問題から駆逐戦車の時代が再来するかも?という事??
前面投影面積の減少による被弾率・発見率の低下の恩恵が、ドローンによる戦場認識能力の爆上がりでオジャンになっちゃいましたからねえ。
コープゲージで高さが増えても、正面からのバイタルゾーンへの被弾率は変わらないので、それだけが慰めか。
そもそも現主力のT-90に至るまで惰性でT-34のコンセプト引張っているようなもんだし苦心と言うより怠惰では?
昔ながらの大量の戦車で従来型の兵器相手に蹂躙みたいなコンセプトでなら多少なりとも通用はしたかも知れないがT-54辺りでも西側MBTの主砲が命中すれば貫通して撃破出来るのは分かっていた。
61式戦車でも格上T-62を相手にする時は稜線射撃を主として徹甲弾で車体は抜ける、HEATなら2kmでも全周抜けて発射速度も高いから何とかなるやろみたいな想定していた。
西側は照準・発射速度・砲弾の性能と地形でカバーしようとしていたので被弾率を下げられる+高威力の主砲でアウトレンジ攻撃出来る+敵の攻撃はある程度耐えられる装甲を持つとか何かしらの優位がないと有効に機能しないコンセプトのような気はする。
もちろん日本の戦車だって似通ったコンセプトにあるから防御にステータスをある程度振らない事には同じ運命でしょう。
中国軍は既にコープケージを導入しており、各戦車の砲塔に合わせた全面防御のコープケージを作っておりますな。
中国はウクライナ戦争の戦訓を迅速に取り入れています。
戦車の被弾回数・破壊の主因などについて、もうデータがでているでしょうが、ドローン・無人機による被弾が多いのでしょう。
対戦車戦闘、戦車同士が接敵して砲撃し合うことを想定した設計も、変化していく必要があるかもしれませんね。
10式の後継はいったいどうなるんだ……
日本で運用する場合、地形的な問題で上部に物付けると運用に支障でそうだけどどうだろね?
そんな重量物ではないだろうけど、単純に木に引っかかったりとかしそうで何も考えずにマネしたらエラい目に遭いそう
10式戦車の非常に低姿勢に作られた車体の上に無惨に取り付けられた
ケージを見ると涙が出そうになる。
この車高に各種システムを詰め込むために捧げられた税金も全部ムダ
だって訳だ、国家が有効な戦力に投資することが如何に難しいか良く分かる。
また戦車無用論かよって言われるだろうけど、この局面で一旦戦車を作らない
ことにするというのはありだと思う。
正直ドローンがいる戦場で有効な戦車の形態は何なのか良く分からない。
電波垂れ流し+1基数億円のAPSがドローンを無効化するってホントか?って
気がするし、かと言ってケージつけるのもやっぱり限界だ。
誰かが実戦の中で有効な形態を考え出すまで待った方がいいんじゃないか?
10式戦車を開発した際、戦車を作ったことがある開発メンバーはほとんどいなかった
と聞く、じゃあまた一から作ることも出来るだろう…
YouTubeで攻殻機動隊の再放送配信やってるんで毎週見てるんだけど、あれに出てくる「思考戦車」は対戦車ミサイルの90%をソフトキルできる設定になっていました。
ミサイルまではともかくドローンはソフトキルできる電子戦能力が未来の戦車には必須になるのかもしれませんね。
10式戦車は姿勢が低いだけではなくて、車体の全長が短過ぎるので、元々拡張性が皆無。
車体の全長の短縮は軽量化に効果的だけれども、拡張性と接地圧の増加でオフロードでの機動性が悪化するので中長期的な運用を考えるとよろしくない。
途中で前提が変わってしまったとはいえ、本州で戦車を運用しないのならば、90式の近代化でコストを抑えて、余ったリソースで他の装甲車両の近代化に注ぎ込んだほうがよかったね。
>元々拡張性が皆無
能力向上の計画が進んでいるのに?
「本州で運用するには輸送時に40トンまで軽量化が必要!」ということで計画された戦車で、トン単位の重量を増やしたら本州で輸送できなくなるのでは。
増加装甲を最大で付けたら48tになるんで数トン増えたところで輸送は変わらないのでは?多分取り外し可能型になると思うし別々で輸送すれば大丈夫なはず。
「90式の近代化で…」90式の小ささ舐めすぎ
あの小ささじゃ10式と同等にしようとしても各種機器を搭載できるスペースなんてほとんどないし、90年代の自衛隊装備品で発展性が念頭に置かれてる装備なんて皆無等しい
アップグレードしたとて、時代遅れの駄作が出来上がるのは確定してる
上に本体よりはるかに軽いケージが乗ってるだけで、被弾率や重心等本体が低いことの(低被視認性以外の)価値が失われた訳じゃないでしょう。
次世代以降の戦車の本体の全高が劇的に高くなるとも思わないし。
防衛装備庁で「無人戦闘車両システムの研究」というのを来年度までの予定[所内試験は令和10年度まで]でやっているので、無人車両で迎撃するとか、何かしらの対応を取ると思って良いと思いますが?どうでしょうか??戦車大型化しても、ドローン等の対策が出来るとも思えないのですが・・それどころか、当てやすくしてしまう可能性もあるので、標的を分散して、光学迷彩などで無人車両を戦車に誤認させて、分身の術使いにしてしまった方が良さそう
コープケージが最初に出てきた時は馬鹿にされていたけど時代は変わるもんですね。
あの当時は西側のトップアタックATM(スタンドオフ距離数メートル)に対してコープケージでは不十分だと思われたからで、実際にほぼ効果はなかったわけですが
その後に主流となったマルチコプタードローンが運搬する小さくて軽い弾頭に対する防御としては悪くない方法なんですよ
鳥籠やサンシェードは意味あるのかと当初は思ったが、戦訓やら改良で実用的になったか。なっちゃったかあ。
まあ見た目だけでは爆発物は防げないから仕方ないんだけど、脳内でパットン将軍が金切り声を上げてる。
あくまでもワンチャンドローン命中してもって程度でジャベリン筆頭にATMには無力ではありますので……カミカゼドローンにしても1機限りな筈もなく、革新的な装備というよりはお祈りする御守りが一つ増えたって所が実態なのでは
2次大戦中のドイツ軍が「シュルツェンは金網でも十分効果がある」と結論付けてるし、生存性にリソース割いてるイスラエルのナグマホンあたりもケージ状のモノつけてるしで、あの手の物は地味に費用対効果は抜群なんです。
ロシアが鳥籠つけた時に笑われてたのは、単にロシアがなにかすると昔からバカにされる傾向が強かったのと、みんながウクライナサイド視点だったからです。
一定の効果はある鳥籠ですが、ウクライナは数機のドローンで囲んでまず覆われていないエンジンの上に爆弾を落として相手の足を止め、動けなくなったところを鳥籠をくぐるように次弾をぶつけるというような対策をとっている映像が見受けられます。
とりあえず追加装備でなんとかしようとしてるけどこれはドローン駆逐戦車とかの専用設計が始まっていそうよね
日本の戦車にはカラフルなパラソルでも搭載するか・・・
じょーだんですが
真面目に戻ると10式とかにも屋根つけるしかないかもね脱着できる屋根にしとけばいいか(´・ω・`)