米国関連

米空軍がF-15EをF-15EXで更新する可能性? どう考えてもノーチャンス

米空軍がF-15EをF-15EXで更新するかもしれないという、ボーイングにとって夢のような話が浮上してきた。

参考:Let’s Talk About The Air Force Potentially Replacing The F-15E With The F-15EX

夢のような話は夢のままで終わる可能性が非常に高い

米空軍はF-15EXを発注するためボーイングに対して最大230億ドル(約2.5兆円)の契約を与えたが、この金額はF-15EXに関する取引の上限金額を示したもので必ず230億ドル分の発注があるわけではない。しかしも米空軍は240機のF-15C(+D型26機)を同数のF-15EXで更新することを計画していないため、恐らく米空軍からの発注数は144機が上限になる可能性が高いと予想されている。

出典:ボーイング

そのため現在ボーイングに正式に発注されているF-15EXは8機分の契約(約12億ドル)だけで、2021会計年度予算案に12機分、2022年から2025年までの予算案で計64機分の調達資金を要求していくと米空軍は述べているが、新型コロナウイルスの影響で国防予算の削減が避けられないため本当に計画通り調達が進むのか誰にも分からない。

現時点の情勢では、ほぼ国防予算の削減は規定路線で問題は「幾ら削減するのか?」に焦点が移っている。

議会やメディアで盛んに取り上げられているのは国防予算の10%削減案で、もしこれが実行されれば約740億ドル(約7.9兆円)も国防予算が削られるため国防総省や一部の議員が強行に反対を叫んでいるが、果たして削減額はどの程度で着地するのか注目される部分だ。

そんな厳しい状況下でも、ボーイングにとって夢のような話が浮上してきた。

出典:Pixabay

米空軍は将来的にF-15EをF-15EXで更新するオプションを残していると語ったため、もしオプションが実行されればF-15EXの調達数は400機近くの膨れ上がることになり、月産最大3機(現在は月産1機で稼働中)の生産ラインをフル稼働させても10年以上の仕事量を確保できるため、まさにボーイングにとっては夢のような話だ。

しかしF-15EはF-15Cと外見上そっくりにでも、機体構造強化のため大幅に設計が改められたので設計上の機体寿命は16,000時間(F-15Eの平均飛行時間は推定8,000~9,000時間)もあり、機体寿命を繰り返し延長(4,000時間→8,000時間→12,000時間)してきたF-15Cとは状況が異なるためF-15Eを直ぐにF-15EXへ更新する必要がない。

さらにF-15EはF-15EXが搭載するAESAレーダー「AN/APG-82(V)1」への換装も進行中なので、アップグレード済みのF-15Eは性能面でF-15EXに大きく見劣りはしないだろう。

そのため予算に余裕があるのなら米空軍のF-15を全てF-15EXに統一するのも悪くはない案だが、上記でも書いたように当面は厳しい財政状況が待ち受けているため、まだ能力的にも機体寿命的にも十分通用するF-15EまでF-15EXで更新するだけの財政的余裕は米空軍にはないはずだ。

以上のことからF-15EをF-15EXで更新するという夢のような話は、夢のままで終わるに違いない。

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング F-15EX

中国製防空システムの欧州進出が成功、セルビアがFK-3を調達前のページ

米陸軍、無人航空機に対する対抗兵器「IM-SHORAD」の評価試験を開始次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    海上からスウォーム攻撃? 米海軍が艦艇搭載型のカミカゼドローン開発に着手

    米海軍はカミカゼドローンと呼ばれる徘徊型無人航空機(UAV)を無人水上…

  2. 米国関連

    バイデン大統領、対中政策の一環としてインドでのF414生産を承認か

    印メディアは「国産戦闘機に搭載するF414の現地生産を米国と交渉中だ」…

  3. 米国関連

    米シンクタンク、国防総省はイノベーションを牽引する立場から転落した

    ランド研究所は昨年「既存技術だけで米軍は中国軍に優位性を確保できる」と…

  4. 米国関連

    米国、6月にM1エイブラムを使用したウクライナ人の訓練をドイツで開始

    米国のオースティン国防長官は「ウクライナ人が訓練に使用するM1エイブラ…

  5. 米国関連

    ホワイトハウスも無視?米海軍の艦隊再編計画「Battle Force 2045」は不評か

    マーク・エスパー国防長官が発表した海軍の艦隊再編計画「Battle F…

  6. 米国関連

    米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表

    バイデン政権は3日に総額21億7,500万ドルのウクライナ支援を発表、…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 03日

    韓国に営業かければ良いんじゃないかな?
    魔法の言葉「日本はすでにやってますよ」を唱えるだけの簡単なお仕事です

    3
      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      マジで通じそうで冗談にならねぇ…

      2
        • 匿名
        • 2020年 8月 03日

        誰か教えてやるといいですよ。

        2
          • 匿名
          • 2020年 8月 04日

          営業担当ならその程度は把握してるだろ

          1
      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      既にF-35導入している韓国にそれが通じるとは思えないが、韓国が現在保有しているF-15KをEX仕様に改修すると言う「裏技」的提案も有るから、あながち無駄とも思えないな

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      韓国メディアはもうすっかりその気。
      リンク

    • 匿名
    • 2020年 8月 03日

    ここはもう
    在留米軍駐留費値上げ、でしょうなぁ
    それこそ日本は”思いやり”(と、おもてなし)好きだし(笑)

      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      韓国から5,000億毟れるのでボーイング大喜び

    • 匿名
    • 2020年 8月 03日

    もうボーイングは整理したほうが
    傷が比較級で浅いうちでないと始末できませんぜ

      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      さすがにロッキード1強は競争原理的にもちょっと…
      それとも無人機の時代になれば新しい対抗馬が出てくるのかな?
      イーロン・マスクがドローン作るとか言い出したりして

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 03日

        イーロンマスクがドローンを作る・・・。
        言い出しそう

        1
        • 匿名
        • 2020年 8月 04日

        ノースロップ・グラマンを忘れないであげて下さい

        1
      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      旅客機はどうするのさ。アメリカの象徴だし実際1強だろうに。
      せいぜい軍用機部門を売り払うぐらいだろうさ

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 04日

        マクドネル・ダグラス復活やね

        1
      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      放っておけばGAFAのどっかが買うんじゃないか。
      リンゴマークのドローンにgoogle787.
      無いと言い切れないのがアメリカのすごいとこだな。

      2
    • 123
    • 2020年 8月 03日

    そういえば南沙諸島で演習してるみたいだけど戦争になる可能性ってあるのかな?

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 03日

    アメリカの場合足りない金は国債を発行するか他所から持て来るので財政難が影響するとは思えない。
    GDPが年率で三割強吹き飛んだが、株式マネーが行き場を失っている事から回復余力は十分に有る。そもそも今のアメリカは国債の大量発行を前提とした経済システムを構築しており、軍事力を担保とした原油価格や国債株式市場で世界経済を牛耳ってる。
    トランプが再選した場合、ほぼ確実にボーイング救済措置に公金を注ぎ込む。勿論国内経済復活の為に色々な産業を財政支援する一環としての投資だが、今頃は票集めの為に支援先の軍産企業を回っている最中だと思う。

      • 匿名
      • 2020年 8月 03日

      ああそうか、コロナ禍で大恐慌だと思っていたら、株式マネー全滅した訳じゃないものな
      尤もコロナ禍が何時終わるんだと言う大問題があるのだけど…下手をすれば終息しないまま世界経済壊滅と言うシナリオも有るだけに

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 03日

        多分アメリカもブラジルの様な経済優先政策に舵を切ると思うぞ。
        どうせ浸透してしまった感染症を完全に封じ込めるなんて出来ないし(あえて中国を見ながら言うと)、日本と違ってアメリカではコロナ治療費は有料なのでアメリカの貧困層は受診できない。
        バタバタと死んでいく連中を幾ら気にしても経済は戻らないので、これからは業績が落ちた企業や業種の支援策を集中的に実行するだけ。トランプの事だからコロナに関係なくアメリカファーストなので国内経済の回復(物価動向指数や失業率)は早いと思う。

          • 匿名
          • 2020年 8月 04日

          尤も今、日本もブラジルの様な経済優先政策に舵を切った結果、コロナ蔓延祭り状態でトンデモない事になっているけどね

    • wyuki
    • 2020年 8月 03日

    ビーストモードのF35よりフル装備のF15EX。
    ビジュアル的には買いですね。
    恰好、宜し過ぎ。
    F22もF35も買えない(買える御金は売る程在っても、米国が売ってくれないが正しい)中東の油資産家の皆様。
    F15EXを買いましょう。
    F15は永遠だ!

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      なんか正気を失ってる

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 05日

      うんうん、F-15はかっこいいですよね。

      3
    • 匿名
    • 2020年 8月 03日

    俺にはF-15しかないんだ!
    だからこれが一番いい戦闘機なんだ!111!

    B-52は百年使うそうですが戦闘機は新規に製造してもそういう芸当はちょっと

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    日本のJSI改修くらいじゃボーイングの経営には焼け石に水らしいが
    いったいどのくらい受注取れば経営がまともになるんだか

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    昔はいくらでも新型機を開発できた米国、昔簡単にクリアできたゲームが年取ってなかなか先に進めなくなるようなもんかな。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      昔と違って、今のハイテク機はソフトウェアの開発工数がアホみたいに増加してる。
      各種スマート兵器の運用能力とか、フライ・バイ・ワイヤ、データリンクやらとソフトのおばけだから。
      旅客機すらフライ・バイ・ワイヤの関係で同じくソフトウェアの開発工数が増えてるからね。

      ボーイングは737MAXのやらかし具合から見るに、この辺りの管理がうまく機能してるかは怪しい気がする。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    アメリカ大国の贅沢な悩みですね。日本もF35を147機導入するようですが、30機減らして、それをF15EXを新規に購入にあてて、対中国向けスクランブル対応で沖縄に配備すれば長期運用で見れば役立ちそうな感じがします。日本も98機をex仕様に改造らしいですが、スクランブルで疲弊している機体をさらに数十年仕様するのは、
    本当に有事の時、稼働するのか心配です。F35も今後部品の供給も支障でそうで、もう一つ当てにならないので、
    原型は古いですが、安定感のあるF15シリーズの新型入れてほしいです。次期ステレス完成するまでの10数年は確実に役立つと思います。

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      >日本も98機をex仕様に改造
      それ、EX仕様じゃなくてJSIね
      因みに、今度JSI仕様に改修されるF-15J・J-MSIPは米軍のF-15C規格ベースの機体だが、導入年度が米軍よりも新しい(1985~99年に掛けて納入)し、耐用時間がF-15Cのデータから類推して1万飛行時間まで有る様だから、幾らスクランブルが多くてもあと20年近く使えると思う
      F-35については今後部品供給管理システムが作り直されるから、将来的に問題解決が出来ると思う
      何れにしても今後、ステルス機を大量配備する見通しの中国空軍相手にF-15EX導入なんて、先のF-Xにタイフーンを導入しようと言ったのと同じ位の悪手としか言いようが無い

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 04日

        まだPre-MSIPをレストア・オーバーホールして近代化改修した方が安いと思うの

        1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    今日の更新はまだですか?

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    タイトルがノリ突っ込みになっている
    管理人さんは関西人か?

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    私が思うに、F15EXよりF35の方がピンチになると思う。第一にコロナ禍による軍事費削減で海外発注分のキャンセルが発生するリスクがある。それが一機辺りの価格高騰を引き起こして、維持費の高騰問題と合わせて最大の発注元の米空軍のキャンセルを誘発する可能性が高い。そもそも、国際共同生産という概念自体が色褪せて来てる。トルコの脱落の例を出せばリスクは明らかで、それが納期遅延と価格高騰を齎す事になる。それをトランプが言うようにすべて国内で製造するとなると、更に価格高騰を招く事になる。
    そもそもF35は維持費が計画の三倍な時点で最大のカスタマーの米空軍が予定通り全機採用する可能性が危ぶまれてる。兵装が少ないステルス機を採用削減をして、トータルコストが安価なF15EXに鞍替えする可能性は充分に有ると思う。

    • 匿名
    • 2020年 8月 08日

    疫病恐慌で需要がごりっと減っているわけだから、その穴を埋めるように政府支出の拡大しないといけない状況だけど、
    1979年辺りから主導権を握るようになった経済学や経済学者的にはあり得ない選択肢なんだよなと…。
    2007年の金融危機以降影響力がじわじわ落ちてきているのが幸いだけど、国内はまだだいぶ時間がかかりそうで悲しみ。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP