欧州はウクライナ侵攻を受けて陸上長距離火力=多連装ロケットシステムの調達を急いでおり、クロアチアは陸軍近代化のため「HIMARSを調達する」と明かし、ノルウェーはHIMARS、PULS、Chunmooの選択肢から調達機種を検討している。
参考:Croatia plans to order HIMARS this year
参考:Norway inquires about HIMARS purchase from Lockheed Martin
欧州市場で競合するHIMARS、PULS、Chunmoo、クロアチアはHIMARSを選択
欧州ではロシア軍によるウクライナ侵攻を受けて「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識、そのため航空戦力に依存した火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、伝統的な榴弾砲、自走砲、多連装ロケットシステムなどが再評価されている。
ドイツ、フランス、スウェーデン、ポーランド、ノルウェー、スロバキア、セルビアなどは独自の砲兵システムに投資し続けてきたため、自走砲の選択肢(PZH2000、RCH155、Caesar、ARCHER、DANA、Zuzana、Zuzana2、Nora B-52)は多彩だが、欧州諸国は多連装ロケットシステムとロケット弾に米国製(MLRSとM26/M30)を採用したため独自のシステムが存在しない。
そのため欧州市場の多連装ロケットシステムにはLockheed Martin製のHIMARS、Elbit Systems製のPULS、Hanwha Aerospace製のChunmoo、RheinmetallとLockheed MartinがHIMARSの技術を流用して共同開発したGMARS、KNDSとElbit SystemsがPULSの技術を流用して共同開発したEuroPULSが競合する形となり、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、イタリアはHIMARS、オランダ、スペインはPULS、さらにポーランドはHIMARSと平行してChunmooも選択した。
開発済で生産ラインが立ち上がっているHIMARS、PULS、Chunmooには瞬発的な投射火力に大きな違いがあり、PULSとChunmooはMLRSと同等の投射火力(ロケット弾を装填したポッドを2基搭載)を備えているもののHIMARSの投射火力はMLRSの半分しかなく、GMARSはHIMARSの投射火力をMLRSと同じにして生産拠点も欧州に移したモデル、EuroPULSは欧州製の巡航ミサイルなどを統合して生産拠点も欧州に移したモデルで、Chunmooは導入国のポーランドに生産拠点を立ち上げ中なので火力、生産、欧州化の3点において大きな違いは無くなってきている。
まだGMARSとEuroPULSは実用化に至っておらず生産ラインも立ちがっていないため、時間的な余裕がない国はHIMARS、PULS、Chunmooの中から選択するしかなく、ソ連規格=122mmの多連装ロケットシステム更新を検討していたクロアチア陸軍はHIMARSを選択したらしい。
Defense Newsの取材に応じたクロアチア国防省は「陸軍近代化のためHIMARSを調達する計画だ」「年内に米国と政府間協定に署名する予定」と明かし、クロアチア陸軍が保有するBM-21(約30基)が更新対象なので調達量も一桁ではないだろう。
米国務省は8月9日「HIMARSをノルウェーに売却(16基/推定費用5.8億ドル)する可能性を承認して議会に通知した」と発表したが、ノルウェーはDefense Newsの取材に「HIMARSの調達は決定事項ではない」「長距離精密射撃プログラムの検討候補として情報提供を要求しただけ」「まだプログラムは検討段階から調達段階に進むよう正式な指示を受けていない」と回答し、検討候補=潜在的な競合はPULSとChunmooだ。
Hanwha AerospaceもEurosatory 2024で「Chunmooは納期と価格で競合より優位性がある」「Chunmooは固有のプラットフォームに依存しないため顧客の希望する独自のプラットフォームに統合可能だ」「ノルウェーとスウェーデンに輸出機会があると見ている」「システムの95%以上が韓国で生産されているため国際的な部品供給の問題に直面しておらず、これらの国が望んでいる2030年までの引き渡しを確実に実現出来る」と述べ、K9導入国のノルウェーにはチャンスがあると見ている。
関連記事:欧州の多連装ロケットシステム調達、GMARS、EuroPULS、Chunmooが競合
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関連記事:砲兵戦力に回帰する欧州、エルビットとKNDSがEuroPULS生産で合意
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Spc. Devin Klecan
陸自は、対艦ミサイルに全振りし始めているが、大丈夫なのだろうか?
そもそも射程が届かんかったら、HIMARS、PULS、Chunmoo、どれを選んでも意味ないべ
日本は直接上陸さえ防げれば大丈夫って結構幻想な気がするんですよね
本当に幻想に生きてたら、戦車は無いし、機動戦闘車も無いし、高速滑空弾ブロック1で敵車両を撃破
なんて考えないでしょう
日本は制海権と航空優勢がとれたら、大丈夫だと思う。
日本本土(九州を含む4島)に上陸されると言う事はアメリカインド太平洋軍が敗退しているのだろうし、他国と違って予備役軍や民兵組織が無い国ですので(即応予備自衛官があるだろうという突っ込みはあるでしょうが)応戦できる組織が自衛隊しかない現状上陸された時点で多勢に無勢白旗を掲げて終わりでしょうね。
それに戦前の日本人とは価値観が違いますし…
現状は琉球までは中国の領潜在的土らしいので今の自衛隊の南方への展開状況は理に適っていますよね。
日本は「敵の重装備を揚陸させない」、というコンセプトで戦術を構築してますからね。なので大型目標を優先して確実に遠距離から叩く、という方針です。
敵戦車を揚陸させなければなんとかなるだろう,というのは力関係が戦車>歩兵だった頃の感覚ですね。
今や歩兵がFPSドローンを駆使して戦車を狩る時代ですから、それこそゴムボートで潜入するコマンド部隊でも電子戦装備とドローンで橋頭堡を築けてしまい、それをなかなか追い出すことが出来ない、というのはヘルソンでの戦いの一つの教訓です。
それと同時にUAVは「数撃ちゃ当たる」で戦果出してるのも事実だから数十キロという海が横たわってる日本でUAV装備コマンドが赫赫たる戦果を上げれるかというと疑問符が付く
なので結局は敵の大規模な補給能力を脅かす能力を持つというのが回りまわっての対策なんじゃないかな
川を跨いでの補給と、東シナ海を跨いでの補給の違いを無視すれば教訓になりそう。
ゴムボート程度の積載量じゃ陸自で押しつぶせるでしょ、としか
というかウクライナの橋頭堡は重砲でボコボコにされてませんでしたっけ・・・・・
2022年以前の戦争常識ではそうだったんですよ。軽歩兵が上陸したところで、AFVや16式などの装甲車両で素早く足止めして、MBTや重砲で殲滅する。それでよかったんです。
ところが。
歩兵が手持ちで持って来れるFPVドローンにより、装甲車両はただの的となってしまい。そして歩兵自体がドローンにより10キロ単位で戦場を監視出来る索敵能力を持ってしまい。
ゴムボートで侵入して来た1個中隊が今では非常に厄介なんですね。
例えば、ロシアやウクライナ水準の訓練を受けた海兵隊100人でゴムボートで上陸後、滋賀原発占領を目指す作戦をやられた場合。結構高確率で突破されて原発を人質に取られるんじゃないでしょうかね。
ゴムボートって精々十人くらいしか載せられないし、喫水も低くて燃料も大量に載せられ無いから、長距離航行する物では無いですけどね。普通に外洋なんて出たら波で転覆しかねないので艦船からの上陸に使う物なんですけど・・。
最近は潜水艦に特殊部隊を同乗させて敵地に潜入させるのが流行りになってます。
中国の潜水艦が当該性能を備えているとの情報を入手していませんが、旧式のミサイル潜水艦を保有しているため、今後改修して保有する、若しくは大量に建造中の新型潜水艦に保有させることは十分ありえるでしょう。
ですから輸送は揚陸艦で接近して、最後の段階でLCACや各種舟艇に分散して揚陸するわけですが。
陸自のドクトリンとしては,戦車を搭載した大型の舟艇を破壊して歩兵だけにしてしまえば、後は地の利のある陸自の重装甲車両で囲んで殲滅できるという目論見だったんですね。
戦車無しで意味のある戦略的機動など出来ないはずだ、と。
が。
今や、歩兵がランセットを持ち込んで50キロ先の対空ミサイル陣地を潰せる時代なんですね。
歩兵部隊に可能な作戦の幅がとてつもなく拡大しており。陸自がどこまで適応できるのか、不安ですね。
対艦ミサイルの最大射程距離が2000年代くらいまでは、射程距離300kmくらいの射程距離だった物が、現在では1000km〜2000km以上を越える時代にシフトして、離島からだけじゃ無く本州からでも直接基地から出航した艦船を狙う時代になってますし。
ゴムボートから上陸した人員の攻撃と言うと、攻撃と言うより破壊工作ですから、発電所、基地側の警備体制の問題ですし、破壊工作するのはそれなりの経験を詰んだ部隊をほぼ帰り道の無い特攻作戦に使う物ですから割に合わないですけどね。
今回ウクライナ軍が仕掛けましたが、原発を奇襲占領するのは非常に有効な手ですよ。やられたら政治的にチェックメイトです。
空挺部隊の空港占拠と同じようなもので,ハイリスクですがそれはやらない理由にはなりませんね。
「占領した土地に原発が立っていた」ならともかく原発を強襲して軍事拠点化はさすがに割に合わないと思う
一応空港は制圧・拠点化に成功すれば後続の部隊を引き入れるアリの一穴になりうるけど発電所はそういった使い方できないから政治的にも軍事的にも詰み(発展性皆無)な選択肢かと(よほど切羽詰まっての破れかぶれ作戦ならありうるだろうけど)
それに原発占拠に敵をチェックメイトにできるほどの威力があるのならウクライナ軍が早々に諦めた現状の説明がつかないのでは
どう考えても原発をまともな兵力で警備できる体制の方が優先度高いんですけどねえ。
そのゴムボートとやらの母艦が沈められたら、ドローン持った歩兵とやらは手も足も出ないのでは。
普段補給を軽視するなとかあれほど言ってるのになんでまだゴムボートで攻め込むとか補給無視の戦略が出来ると思ってるんだろ
日本の場合ミサイルで補給船叩けば攻める側はどうしょうもなくなる位分かりそうなもんだがな
しかも海の上は隠れる場所ないし船は大きいからトラックで出来るウクライナと違って補給の難易度爆上がりなのになあ
海上で叩くのが色々効率的ではあるので力が入るのは自然かなと。水上艦は最悪第一波で大損害の可能性もあるので陸からの有効打も持ってないと脆弱性と思われたらたまらないですし。
移動目標である艦艇が狙えるなら地上目標も当てられる
離島に多連装ロケット持ち込んでも補給に制約があるので、長射程の対艦ミサイルで本土からカバーする
という考えではないでしょうか?
コスパよい誘導兵器が必要という意見であれば同意です
移動目標である艦艇が狙えるなら地上目標も当てられる
離島に多連装ロケット持ち込んでも補給に制約があるので、長射程の対艦ミサイルで本土からカバーする
という考えではないでしょうか?
コスパよい誘導兵器が必要という意見であれば同意です
日本の位置から言うと射程距離1000kmを越える兵器が必要なんですけど、イスラエルに対してイランが徘徊兵器、巡航ミサイル、弾道ミサイルで同時に使用して攻撃した時に徘徊兵器は全弾撃ち落とされて、迎撃の網から漏れた巡航ミサイル、弾道ミサイルは着弾してたので、一定以上の能力はいるんですよね。
12式地対艦ミサイルでもたぶん地対地攻撃できるし、予算の取れる地対艦ミサイルで取得した方がまだいいだろう。
あと日本で弾を生産できるという点もある。ただし日本しか生産してないので、国外から調達できないという欠点もある。
MRLS、HIMARSが日本で復権するにはオタワ条約脱退くらいしか方法がないのでは?
台湾有事に連鎖して、第2次朝鮮戦争が起き、陸戦で韓国が敗北し、中国軍が朝鮮占領する可能性もある。
韓国の釜山の中国陸軍や海軍、済州島の海軍をHIMARSで狙えるか。杞憂すぎるかな。
ライセンス生産できるならいいけど、そうでないと兵站を米国・韓国に依存してしまう
それを回避するためのEuroPULS開発なのに未だにまともに動いてるものが出てこない
大丈夫なのかこれで
戦争が始まる前に数を揃えておくもの。
日本みたいに戦車の生産能力があっても月1両では。
ないよりはマシだけど。
ウクライナ戦争を見るに現代でも正規戦となれば「生産力」は極めて重要であるように思います
作ったものを維持管理するのにも金がかかるのですから、平時予算で保管しておける程度のリソースでは結局有事に対応できない
EuroPULS計画は去年動き出したばかりだし内容からして時間がかかりそう
このサイトの2023.09.15[砲兵戦力に回帰する欧州、エルビットとKNDSがEuroPULS生産で合意]の記事だと
”PULS向けのロケット弾だけじゃなく巡航ミサイル、弾道ミサイル、JFS-M(地対地巡航ミサイル/射程300km以上)、コングスベルグ製のNSM(地対艦ミサイル/射程250km)、エルビット製のSkyStriker(徘徊型弾薬/5kg弾頭を搭載した場合の滞空時間は2時間)、ロッキード・マーティン製のGMLRSやGMLRS-ER、対戦車地雷の散布にも対応”
という感じで対地対艦で短距離の物はなんでも撃てますっていう他とは毛色が違う感じだし
実車がちゃんとできれば値段次第だけど普通に売れそう
ポーランドは韓国兵器の見本市のよう状態ですし、玄武ミサイルの普及でヨーロッパでますます高品質で低価格な韓国兵器の存在感が増しますね。アメリカにべったりのどこかの島国とは対照的です。
また当て擦りみたいなコメントしてるが、日本は国産兵器率高いし、次の戦闘機も英伊との共同開発。的外れなんだよ。
半分冗談/願望で。以前に書いたことがありますが。
MLRSの車台を、装軌式から8×4くらいの装輪式に変更できる改造キットを作っては?。
駆動部分は第1軸と第2軸として、車に例えればFF式?で?。サスは外付けで?。
ステアリングはスキッド式で。後2軸はダブルタイヤにして。
結果的に今のMLRSが道路上を時速90km/hで900kmくらい移動できれば、
問題解決とも思えるのですが。
似た例として、フランスのAMX10PとAMX10RCみたいな関係で。
誰か作らないかな(笑)。
MLRSは車体幅が、3mをわずかに下回るので、通行もあまり邪魔にならない?かな。
ほぼ作り直しに等しい手間がかかるからちょっとそれは。
逆は楽なんですけどね。装輪車両の後部駆動輪周りを履帯に換装してハーフトラック化。
うん、ハーフトラックタイプの車両復活しないかな。
”ハーフトラックタイプの車両復活しないかな。”同意します。
トランスミッションに近い側で履帯を駆動すれば、
長いドライブシャフト/他は不要で、荷台の容積を増やせます。
当然のこととして、悪路踏破性能が上がります。
マウルティアタイプのハーフトラックですね。
あるいはRSOでヒトラーが命じたみたいに、
ロードクリアランスを大きく取れます。
人も原資も限られているのですから、「無いとどうしようにも無い」装備が優先されるのではないでしょうか。
それが欧州では多連装ロケットであり、日本であれば長距離誘導弾かと。
日本でのFPVドローン装備については、比較的安価かつ事が起きてからの入手性(国内での生産性)も悪くは無い事。
現時点でウクライナ紛争での客観的な評価が下ってはいない事。
平時での社会浸透も順調に進んでいる事。(基本的な保守/運用方法の確立)
上記より、必要な装備ではあるけど、現時点では不可欠な物では無いと言う判断と考えます。
ポーランドの兵器爆買いがすごいと思うのだけど、懐事情は大丈夫なんだろうか。。
陸自もハイマースをNAで1個大隊だけでも運用すると北海道防衛の自己完結性は圧倒的に高まるというのに二の足踏んでますな。
高速滑空弾大隊2個と長射程誘導弾大隊2個の内の半分が北海道配備としてもこれらハイコスト火力を道内防衛戦で消耗する想定はあまりに非現実的です。ウクライナ供与の1個大隊のハイマース部隊がのべ何発を要したかを考えればそんなのすぐ分かります。どうあがいても事前準備の国産ミサイルで所要数を満たせない。
北海道で潤沢に地上戦をするに足る縦深打撃の地対地火力を僅かハイマース1個大隊の輸入で得られるというのにこれをしない意味が分かりません。ハイマースの残存性の高さは既に証明もされてます。1個大隊で済むのです。1個大隊で北海道は安泰なのです。(戦時の弾薬融通は米国頼みとして)
南西部島嶼向けの火力構築に全力なのは分かりますが、じゃあ南西部転用は実質不可能な7Dは今後一体どうすんの?っていう話にもなる。7D以外の機動運用化で逆に7Dは置き去りですからね。
現状日本が目指してる射程距離2000kmのミサイルを配備した場合、東京に配備してても樺太島全域が射程距離内なので北海道に置いてスカスカの防空網のばしょで攻撃されるリスク取るより、防空網の整ってる本州に発射機置く方が安全ですから。