米海軍はアーレイ・バーク級駆逐艦フライトIIIを1隻調達するコストで次期フリゲート艦「FFG(X)」を2隻調達できると主張しているが、これまで海軍に散々騙されてきた議会が根拠を示せと言い出した。
絶対に失敗できない次期フリゲート艦「FFG(X)」プログラム
米海軍は次期フリゲート艦「FFG(X)」にイタリアの防衛産業企業フィンカンティエリが提案したFREMM案を採用する決定を下したが、そもそもこの計画は冷戦終結後にニーズが急増した非対称戦や大規模な戦争以外の戦闘任務に適した「沿海域戦闘艦(LCS)」の後継艦調達プログラムだ。
残念ながら沿海域戦闘艦として開発したフリーダム級やインディペンデンス級は設計当初のコンセプトと異なる戦場環境(=中国やロシアとの大規模戦争)の出現によって活躍の場が消滅してしまったため、次期フリゲート艦「FFG(X)」プログラムに沿海域戦闘艦のコンセプトは引き継がれていない。
因みに海軍が次期フリゲート艦「FFG(X)」に求めているの能力は以下の通りだ。
- 空母に随伴可能なこと
- 敵潜水艦を検出できること
- 護送船を守れること
- 複数の小型ボートによる攻撃から身を守れること
- 水平線下の水上艦を破壊できること
- センサーのネットワーク化に対応していること
さらに付け加えれば「徹底的なリスク排除」と「調達価格10億ドル未満」という目標も達成する必要がある。
海軍はズムウォルト級ミサイル駆逐艦やジェラルド・R・フォード級空母といった新規艦艇調達プログラムで失敗を重ねたため議会の信用を失っており、この次期フリゲート艦「FFG(X)」プログラムだけは絶対に失敗することが出来ないのだ。もし今回も議会を裏切る結果(予算超過や要求性能未達等)となれば海軍から装備調達の自由を取り上げるかもしれない。
そのため海軍は失敗を避けるためにFFG(X)専用のシステムや装置の開発を諦め、戦闘システムにはイージスシステム(ベースライン10)を搭載レーダーにはAN/SPY-6の派生型「EASR(AN/SPY-6(V)3)」を、武装にはMk.41垂直発射装置、RIM-116RAM、Mk.110 57mm砲を採用することにした。
はっきり言えばFFG(X)の中身はアーレイ・バーク級駆逐艦フライトIII用に類似した構成で革新的な要素は0に近いが、船体の設計には工夫の跡が見られる。
海軍が採用を決めたFREMM案では船体に切り刻んだり穴を開けなくても主要な搭載機器やエンジンギアの交換を行うことができ、将来、指向性エネルギー兵器に対応する際に要求される発電能力強化も簡単に行う事ができるよう予め配慮さており、アップグレードを行う際のコスト削減に効果的な設計が施されている。
議会はなぜ、FFG(X)がコスト超過に陥ると言っているのか?
前置きが長くなってしまったが本題はここからだ。
海軍はFFG(X)1番艦の最終的な建造コストは12億8,000万ドル(約1,380億円)だと明らかにしたが、これはFFG(X)を建造するために必要な設備の調達費が含まれており最終的には8億ドル(約850億円)から9億ドル(約960億円)で調達できるようになると説明している。
要するに海軍はアーレイ・バーク級駆逐艦フライトIII(約20億ドル)に近い構成のFFG(X)を半値で調達すると言っているのだ。
ここまでの話を総合すると確かに次期フリゲート艦「FFG(X)」プログラムはこれまでの失敗で学んだ教訓が生かされており手堅い設計プランだと言えるだろう。しかし海軍に何度も騙されてきた議会は次期フリゲート艦「FFG(X)」プログラムを信用しておらず、今回も再びコスト超過に陥るかもしれないと言い出したのだ。
では、議会はなぜコスト超過に陥ると言っているのか?
FFG(X)の基準排水量は7,600トンで、アーレイ・バーク級駆逐艦フライトIIIの基準排水量は9,300トンだ。FFG(X)はフライトIIIの3/4で同じような搭載品を採用しているにも関わらず、なぜコストだけが1/2になるのか納得できないと言っているのだ。議会はフライトIIIのトン当たりコストでFFG(X)のコストを試算すると14.7億ドルになると主張しており、海軍の見積もりよりも56%コストが増加すると警告している。
そのため議会は海軍に対し「なぜコストが1/2になるのか海軍は根拠を示せ」と言い始めた。
確かにFFG(X)はアーレイ・バーク級駆逐艦フライトIIIとよく似たものを搭載するが、FFG(X)は弾道弾迎撃用のSM-3を統合する予定はないため同じイージスシステムでもBMD機能が削除されている可能性が高く、フライトIIIが搭載するAN/SPY-6とFFG(X)が搭載するEASR(AN/SPY-6(V)3)とではアンテナの大きさや機能が異なり、Mk.41垂直発射装置の搭載セル数も異なるため議会のコスト算出方法は乱暴かもしれない。
果たしてどちらの言い分が正しいのか?海軍は議会にコストの根拠を示せるのか?色んな意味で注目される。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy graphic/Released 米海軍が発表した次期フリゲート艦「FFG(X)」の完成予想イメージ
詳細がわからないから議会の言う理屈もわからないではないな。
日本のFFMが1隻500億と言われてるけど、そう考えるとやっぱイージスシステムってお高いのね……
こんごう型が基準排水7200トンで1200億円だったのでFFG(X)の基準排水量が7600トンなら同程度の金額になるのでは?
当時とは物価が違うと思うが?
ズムウォルトやジェラルドRフォード、結局高く付いたバージニアの件もあるし
まあ議会がツッコミたくなるのはよくわかる
ようわからんが、イタリアが水面下で中国と繫がってることを懸念してはいないのけ?
俺だったらまったく信用できないと思うんだが
つか非対称戦の時代でもあり中国が覇権に挑戦してくる時代でもあるっていうのは10年前には分かってた話だと思うんだけど 両方に対応するのはちょっとこれからのアメリカには無理になってくるかなあ
それと非対称戦に備えてステルスに振り切ったバカ高い艦型にするっていうのもよくわからない話で、ここの主がけっこう文脈読めてないよなあと
自衛隊のFFMで事足りると思うけどな、フリゲード艦にイージスシステム積まずにネットワーク化を強化して
浮いた金でVSL増設と127mm砲搭載に資金を回せばいいのに
これからもごたごたが続きそうだな
そもそも、空母に随伴とか、護送船の護衛とか言うなら……それこそ、駆逐艦の仕事な訳で。アーレイ・バーク級を張り付けておけば良い話で。
フリゲート名目で、安価な劣化駆逐艦を多数揃える意味って?に、成る訳だけれど……。
21世紀版O.H.ペリー級かと思ったけど、違うのかな?
軍事の何たるかが分かってない議会がバカなこと言ってんのかと思ったら
至極真っ当なご意見だったでゴザル…我が国の財務省とは違いますな
退役軍人とかも議員やってるんで当たり前っちゃあたりまえか
米海軍みたいに失敗続きだったら、日本の野党や財務省でも、まともな突っ込みをするかも。
失敗しようにもまず開発予算が財務省から降りないけどね
WW2時代の米陸軍第442連隊出身で大統領第3位継承権をもつ上院仮議長だった故ダニエル・イノウエ上院議員もいましたから、米国議会には軍出身の議員もいてリテラシーは高いでしょうね。
アメリカでは軍人、退役軍人との挨拶は「Thank you for your service.」で始まるくらい敬意を払われていますし、退役しても何らかの形で政治に関わる議員やスタッフも多いでしょう。
金出すほうも変に出し渋ったり後になって横から口を出すから
ゆがんで失敗しやすくなる事を自覚するべきなのでは?
むしろ制限ある予算で絶対完璧にいく事が当然だと思っているのかと
考え足らずの軍縮って歪みすごいんだな
制限のある予算のなかで「完璧にできた。できなかったこれは不測の事態で」と説明できない組織にも責任があります。できないことをできないということも含めて。
金があることが当たり前の先軍政治じゃないんですから
フォード級やズムウォルト級の開発に関して議会は金出し渋ってなどいないんですが
しかしフォード級では、何故事前の地上検証を怠ったのだろう?
何だか目先の金を惜しんで大損した風ですよね。
ズムウォルト級は、建造費用(建造数)そのものを削られた気が……。アレって確か、建造費用の一部を開発費用にしていた計画だったから、しわ寄せで1隻あたりの費用が馬鹿高く成ってしまった側面もあったと思うんですけれど?
まだまだ揉めると予言しとく
本質的には、オーストラリアがオセアニアの盟主としての立ち位置を、米中のはざまで定めかねてることが背景にあるから
つまり政治的な駆け引きが背後でうごめいてると見るべき
>オーストラリアがオセアニアの盟主としての立ち位置を、米中のはざまで定めかねてることが背景にある
まるで意味が分からない。
米議会は米海軍に「見積もりが甘いんじゃないか?具体的な根拠を示せ。」って言ってる訳で、それがどうやったら「オセアニアの盟主」云々と結びつくのか?
「米中のはざまで定めかねて」いなければ、予算超過や要求性能未達の問題が消えてなくなるのか?
もう少し詳しい解説を頼む。