米国のヘグセス国防長官が待望の調達改革を7日に発表し「スピードと量を優先する考えを共有し、確実に調達品を供給する企業としか契約を締結しない」「(伝統的な防衛企業は)リスク回避の経営方針を改めないと防衛取引から姿を消すことになる」と警告して米防衛産業界に衝撃を与えた。
参考:Hegseth to slash red tape, empower program heads in acquisition revamp
参考:Hegseth presses defense execs to move faster in speech laying out sweeping acquisition changes
あらゆるコストを納税者に負担させようとするのではなく、自らの投資が必要になっていることを認識すべき
ヘグセス国防長官は5月1日「包括的な改革」を陸軍長官に命じ、ドリスコル陸軍長官は「伝統的な防衛産業企業が誤解しているのは大統領や国防長官が改革のため一時的な痛みを容認してる点だ」「伝統的な防衛産業企業は今後数日、数週間、数ヶ月以内に新しい状況へ対応し、変化を始めなければ死が待っていることをに気づき始めるだろう」「我々は彼らを救済するつもりはないので自らの力で成功して欲しい」「数年以内に陸軍へ販売できるシステムは素晴らしいものだけしか残らない」「なぜなら、そうでないシステムを購入するつもりがないからだ」と言及し、ヘグセス国防長官も調達改革全体の内容を発表した。

出典:DoW photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
ヘグセス国防長官は防衛関連の主要企業や新興企業、GoogleやMetaなどのIT企業、SpaceXなどの宇宙企業など34社の最高経営責任者を招待した講演の中で「国防総省の防衛産業政策はリスクを最大限回避する官僚主義が反映され、現在の防衛産業基盤は有事の際に生産規模を拡大できるようになっておらず、さらに『資金供給の正式決定まで動かない』と考えに甘んじ、必要とされている技術の生産に乗り出そうともしない」「これは産業界基盤全体にも言える話だが、最も重要なのは国防総省と取引している大手企業に関係する」「リスク回避の経営方針を改めないと防衛取引から姿を消すことになる」と警告。
この講演では調達改革全体の内容も説明しており、F-35やV-22などの主要プログラムを監督するPEOを「より大きな権限をもったPAE」に再編し、PEOとPAEの大きな違いは「1人の責任者が複数の主要プログラムを管理し、パフォーマンスやスケジュールを考慮して各主要プログラムの資金を移動させることができる」「PAEは主要プログラムの調達に責任を負う唯一の責任者で、時間のかかる承認プロセスに縛られることなく決定を下す権限をもつ」となる。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus
もっとシンプルな言い方だと「PAEは主要プログラムのコスト、スケジュール、性能のトレードオフに関して『部隊配備までの時間と成果』を優先する権限を有し、承認プロセスをスキップできる独自の権限でニーズの特定、入札の実施、契約の締結が可能になる」となり、ヘグセス国防長官は「PEOをPAEに再編することで3年~8年掛っていた調達プログラムを最短1年で完了できるようになる」と説明したが、この変更は調達改革全体のほんの一部に過ぎない。
国防総省は少数の伝統的な防衛企業が支配する調達システム(限られた競争、ベンダーロック、コストプラス契約、厳しい予算、抗議など)を破壊するため、今後は手続きが煩雑な連邦調達規則ではなく「商業ベースの契約」や「代替方式の契約」を、時間のかかる特注品や軍用グレードで構成されるソリューションよりも「迅速に調達可能な商業ソリューションの獲得」を優先し、何よりもスピードと量を優先する考えを共有し、創意工夫で産業基盤を活性化し、確実に調達品を供給する意欲のある企業としか契約を締結しない方針だ。

出典:Shield AI
さらにヘグセス国防長官は「最初から100%の解決策を要求しない」「85%の解決策を購入して軍と企業が共同で100%に近づけることを受け入れる」「スピードを重視するため調達リスクを受け入れる」「契約上の納期を守れたかどうかで企業に対するインセンティブとペナルティを決定する」「今後の調達契約は非常に競争的なものになる」「現状に甘んじて競争を望まない企業は必要ない」「今回の演説内容は時間が経てば忘れ去られるものではない」「これは従来のやり方や官僚主義を変えるための容赦ない攻撃の始まりだ」と述べており、今回の改革が誰を標的にしているのかは誰の目にも分かりきっている。
米国製システムの納入遅延は国内産業力の低下というより「契約を獲得した請負業者がプログラム全体を独占できる慣行」「タイムリーな納品よりも安定した収益を優先する経営判断」に原因があり、さらにAndurilのような新興企業がタイムリーな納品を実現してきているため「伝統的な防衛企業の遅延理由」はもう通用せず、ヘグセス国防長官も「産業界が資本家として十分な利益と収益を確保しなければならないのを理解しているが、あらゆるコストを納税者に負担させようとするのではなく、自らの投資が必要になっていることを認識してほしい」と述べており、変化を拒めば伝統的な防衛企業すら存続が怪しくなるだろう。

出典:Australian Defence Force/Kym Smith
逆にGA-ASI、Anduril、Shield AI、Kratos、CoAspire、Zone5 Technologiesといった新興企業は「積極的な自社投資によるアプローチ」が認められた格好で、今回の方針転換について伝統的な防衛企業に投資している人々はどのように反応するだろうか?
関連記事:GEが垂直離着陸に対応したX-BATにエンジンを独占供給、F-15やF-16と同じF110
関連記事:量産が始まった無人潜水艦、契約締結から7週間で豪海軍向けの1番艦が完成
関連記事:Lockheed Martinが方針転換、受注でホームランを打つため自社投資を強化
関連記事:有望な低コスト巡航ミサイル市場、Lockheed MartinもJASSMのダウングレードに言及
関連記事:スピードこそが勝利をもたらす、M1E3のプロトタイプは年内に登場
関連記事:米陸軍の改革に救済なし、適応できない主要企業が撤退しても構わない
※アイキャッチ画像の出典:DoW photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza





















こう言っちゃあれだが「投資してこれから儲けるぞ!」って時に、冷戦終結→湾岸戦争→イラク戦争と三度もひっくり返したのは政府なんだからそこを保証してあげないと結局保守的になっちゃうと思うんだよね
新興企業も結局はニーズの隙間に上手いこと潜り込んだだけで、主要な装備が大手頼りなのは変わりないでしょう
しかもその過程で当の国防総省が明確に淘汰、統合を促してますからね。
90年代の再編期を知る現場トップはどんな気持ちで聞いてるのやら…
全くだね。
ミサイル、ドローン、無人機などは新興企業でもいけるとは思うけど、駆逐艦とか戦闘機とか、メインを張る重兵器を新興企業が作れるとは思わない。
そして、その重兵器もいつ需要がなくなるか分からないのなら、積極投資もしにくいわな。
ただ、現状でいいとは思わないけど、国営企業にでもしないと、自由経済の元では儲からない物に人や金が行かなくなるのは、まぁそうなるわなー、という感じ。
別に本体でなくとも装備やインテリアの方面でいくらでも食い込める可能性はある。
そうこう言ってる間にSpaceXは民間じゃ無理だと言われていたロケット事業を実現させ需要の大半を掻っ攫っていきましたよね?
NASAや旧来の軍事企業からベンチャーに人材がソックリ流出しているんだから新興企業でも十分やれる
最近ShieldAIが戦闘機エンジン購入する契約結んだり、部品単位で旧来企業から購入して組み上げることだってできる
老舗企業完全消滅とはいかなくても二番手・下請けに成り下がる可能性は十分ある
そのSpaceX社が成功するまでにいくつのベンチャーが出来ては潰れたかご存知でしょうか?
そもそも需要を自社で生み出せるSpaceXと違って軍需産業の需要は政府だけですよ?
それと別の記事にも書いたんですけど、SpaceXはイーロン・マスクっていう宇宙大好きな狂人が利益度外視で個人資金をひたすら投資した外れ値なので正直参考にするべきじゃないです
(むしろマトモに商売する気なら成功しない証明でもある)
「1人の責任者が複数の主要プログラムを管理し、パフォーマンスやスケジュールを考慮して各主要プログラムの資金を移動させることができる」「PAEは主要プログラムの調達に責任を負う唯一の責任者で、時間のかかる承認プロセスに縛られることなく決定を下す権限をもつ」
う~ん1人にこんなに権限持たせて大丈夫か?
問題あったら速攻でクビを飛ばすんだろうけど
株式投資で言えば、防衛産業はディフェンシブ銘柄であり、たばこ・酒・ギャンブルのように『Vice Fund』にくくられてたりもします(ESG投資の逆です)。
景気に左右されにくいため、収益が安定的・高配当な事を求められたりしているわけでして…
ボーイングやロッキードのように、製造・サービスが安定していないのは、投資目線で見れば論外なため株価も冴えないんですよね。
世界的な軍拡で、兵器の納期がどんどん伸びてますからね。
とにかく、何でも足りない。
アメリカの防衛産業に問題がないとは言いませんが、公的資金頼りな割にサービスの質が悪くて納期も遅くて、それなのに在庫を抱えたり改善する努力を嫌う風潮はアメリカの製造業全般の問題な気がします。ビジネスは素人なので何とも言えないですが、ボーイングの施工不良の調査報告でも指摘されていたようなジャック・ウェルチ式経営術(KPIを株価と株主満足度において、余剰資金があれば設備投資や福利厚生よりも株主配当に回して循環する資金を最大化しようとする経営手法)の悪弊が背景にあるんじゃないですかね。トランプ政権は製造業と雇用の復活を最重要課題にしていますから、今までの政権が長らく踏襲してきた投資家最優先の風潮から切り込むべきですよね。
トランプは国内の製造業復活を期してインテルの株を政府所有したわけだが、重大な機密漏洩が発生したとニュースになってる
10年以上勤務していた従業員を解雇したことによる報復とみられるとのこと
ウォール街が研究開発を重視するCEOを辞めさせてリストラCEOを送り込んだ結果がこれ
株主至上主義ってマジでカ ス
まあ、素人の日本人からすると平気で遅延や追加課金してくる米防衛企業は調子こいてるとは思う。
他国としてはライセンス生産の比率拡大して納品安定させて欲しいよね。
さよならボーイング、さよならロッキード・マーティン
台湾にも納期遅れで賠償請求されそうだしダメみたいですね…
でもこの話突き詰めていくとアメリカの製造業自体が…って話になるからね。
防衛企業の体質だけ改善すれば良いわけではない。
確かにAndurilは納品が速いようだが実態は民生品を活用しまくって兵器システム
のようなものを構成してるだけ。
F-35から中国製部品を排除しろみたいな潔癖主義に付き合ってきた従来防衛企業の
生産が遅いのには理由がある。
思うに、米軍は民生品を活用した兵器システムを大いに認めるべきじゃないか。
別に戦闘機でも戦闘艦でも民生品を使いまくれば素早いアップグレードができる。
中国製部品が大量に混じっているだろうけど、市場に溢れた製品なら入手できないという
ことはまず無いだろうし、どの部品がそうなのか分かってる人がいれば最悪いいんじゃないか?
航空機とか半導体は一応民間と同じはずよ
電磁波対策とかしまくってるだけで
これで造船業だけでなく、伝統的な航空機産業も壊滅
なんてことにならなければ良いんだけどな、笑えない
現状は
資本主義による利益追求+独占による低能力(≒社会主義)の
悪いところ欲張りセットになっている気がします
「契約上の納期を守れたかどうかで企業に対するインセンティブとペナルティを決定する」
これ、外資というかアメリカの技術者やプログラマーが一番苦手な話だけど、大丈夫かな?
契約したけど●●だから値上げ、とか●●だから納期遅れるとかよくある話あのに(というかそれを問題視しない社会な気がする)
FMS契約での購入時に上乗せされる開発費の額が減ると良いですよね.
無人機を作ってるメーカーが有人機作れるとは思えない。逆にF-35やF-16の調達が遅れまくってるからといって、じゃあ無人機だけでいいともならない。F-35をオープンソース化して誰でも製造に参入できるようにすればいいけどそういうわけにもいかないだろうし。ヘグゼスの思惑通りいくとは思えないけど。