米国関連

カタパルトは不要、F/A-18E/Fは空母から「スキージャンプ方式」で発艦可能

カタパルトを装備していない、スキージャンプ方式の空母からでも、F/A-18E/Fは特別な変更なしに発艦可能だとボーイングは明らかにした。

参考:Coming to India’s Aircraft Carriers: America’s F/A-18 Super Hornet?

スキージャンプ方式でも発艦可能なF/A-18E/F

ボーイングによれば、スキージャンプ方式の空母からF/A-18E/Fは発艦可能かというインド海軍からの質問に回答するため、コンピュターによるシュミレーションを行った結果、機体に特別な変更を加える事無く、発艦可能だと判明したと言う。

インド海軍は、国産の空母「ヴィクラント」などで運用する艦載機の国産化を計画し、国産戦闘機「テジャス」を艦載機に改造したが失敗、その代わりにロシアから西側の電子機器を搭載したMiG-29Kを調達する予定だったが、クリミア侵攻によりロシアへの軍事機器輸出が禁止されたため、インドがロシアの代わりに西側の電子機器を輸入し、自らロシアから調達したMiG-29Kに統合することにした。

出典:Oleg Belyakov / CC BY-SA 3.0 ロシア海軍のMiG-29K

しかし、この方法は上手くいかず、2016年に先行して11機導入されたMiG-29Kのうち、正常に稼働するのは3機しかなく、これは主にロシア製エンジン「RD-33MK」と、フライ・バイ・ワイヤシステムの欠陥によるものだが、インドが自ら行った西側電子機器とMiG-29Kの統合が影響している可能性もある。

そのためインド海軍は現在、MiG-29Kを置き換えるための新型艦載機調達を検討中で、米国のF/A-18E/Fの他に、フランスのラファール、ロシアのMiG-35などが候補に挙がっている。

インド海軍の新型艦載機調達プログラムは、インド空軍の戦闘機調達プログラム(100機以上の戦闘機調達を行う予定)と密接な関係性があり、各国からF-21(インド向けのF-16V仕様バージョン)、F/A-18E/F、ラファール、グリペンE、ユーロファイター・タイフーン、MiG-35、Su-35が提案されており、海軍の新型艦載機候補と被っている3機種は「同一機種採用による運用の効率化」という部分で有利な立場を占めている。

そんな状況を覆したのがロッキード・マーティンだ。

F-16 ブロック70(通称V仕様)を「F-21」と改名して提案し、インド企業と協力して現地に工場を作り、インド向けの生産だけでなく第三国に対し、インドで生産したF-21を輸出を行っていもいいと破格の条件提示を行ったため、条件面で比較した場合、ロッキード・マーティンが頭一つ抜け出している。

インド空海軍が「第4世代」の戦闘機を計150機以上の導入するこのチャンスは、第5世代機を持っていないボーイングにとって、絶対に逃すことは出来ないため、ロッキード・マーティンに続いて、ボーイングもF/A-18E/Fのインド国内生産を提案することになった。

ボーイング曰く、インドと次世代機戦闘機の生産施設建設について話し合いを行っており、F/A-18E/Fはインドが国内で製造できる最も先進的な飛行機らしい。

出典:public domain ラファールM

艦載機に限定して見た場合、インドの国産空母「ヴィクラント」は、フランスの空母「シャルル・ド・ゴール」程度の大きさしかなく、米海軍の空母よりも小さな飛行甲板上での運用性についてはラファールの方が、ロシア系の艦載機を使用してきた実績で言えば、MiG-35の方が有利だ。

国内での製造という経済的なメリット以外に、F/A-18E/Fの有利な点は?

ある意味、米国製兵器の導入実績が少ないインドがF/A-18E/Fを採用すれば、運用のためのインフラを一から構築する必要があり、この部分を考えると米国製という事自体が、もはやデメリットでしかない。

果たして、ボーイングはこの逆境を跳ね返し、F/A-18E/F採用を勝ち取れるだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain F/A-18E

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 16日

    ヴィクラントは小さいし、全長も262.5mと短く、速度も28ktと速くはない(速度と全長だけなら信濃と同等)
    MiG-29Kよりも大型で推力比も小さいF/A-18E/Fでは、発艦は出来ても実用的な兵装/燃料を搭載出来るのかは疑問ですね
    性能だけで見るならばF-35Bが理想的かと思うが、ロシア製装備を有し共同開発まで行っている国にF-35Bを提案するのは機密保持面から問題だし、実現すればトルコが黙っていないだろう

    • 匿名
    • 2019年 8月 16日

    シミュレーション、ね、シュミじゃなくて。

    • 匿名
    • 2019年 8月 17日

    燃料満載で武装満載でも?

    • 匿名
    • 2019年 8月 17日

    カタパルトの有無で戦力投射量の数倍の差を生むので、スキージャンプ式は費用対効果が悪いのではないかという気がしてくる
    財政的に維持費考えるとできるだけ小さな艦が欲しいのだろうが
    スーパーキャリアとスキージャンプ空母はもはや別の艦種なのかもしれない

    • 匿名
    • 2019年 12月 31日

    背中に凧・ハンググライダーをフラップとして付けたら簡単にクリア出来そうなものだ.
    左右翼背にフラップを装置すれば重量が増えてもカタパルト無しでいけると思う。
    もう一つは戦闘機をエンジン全開になるまでワイヤで拘束しておいて解放する。
    これで150m滑走で飛んでいけ!

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