米国関連

圧倒的なコスパを示すF-35A、スイスに次いでフィンランドでも他候補を圧倒か

米国務省は9日、フィンランドの次期戦闘機HXプログラムに提案されてる米国製戦闘機F-35AとF/A-18E/FをFMS(対外有償軍事援助)方式で販売することを承認した発表した。

参考:FINLAND – F-35 JOINT STRIKE FIGHTER AIRCRAFT WITH AIR-TO-AIR MISSILES AND AIR-TO-GROUND PRECISION GUIDED MUNITIONS
参考:FINLAND – F/A-18E/F SUPER HORNET AIRCRAFT AND WEAPONS

やはりF-35Aのコストパフォーマンスは第4.5世代戦闘機と比較すると頭一つ抜けている

現在、フィンランドの次期戦闘機HXプログラムにはロッキード・マーティンのF-35A、ボーイングのF/A-18E/F、ダッソーのラファール、エアバスのタイフーン、サーブのグリペンが提案されており、今年2月に実機を使用した評価試験も終了しているため各社は2021年の結果発表を待つだけの状態だが、米国務省はフィンランドに対してF-35AやF/A-18E/FをFMS(対外有償軍事援助)方式で販売することを承認したと発表した。

出典:Airwolfhound / CC BY-SA 2.0 フィンランド空軍のF/A-18C

米国務省が発表したF-35A 64機が含まれる販売パッケージの推定契約金額は約125億ドル(1兆3,200億円)で、単座型のF/A-18E 50機、複座型のF/A-18F 8機、電子戦機のEA-18G 14機が含まれる販売パッケージの推定契約金額は約147億ドル(1兆5,500億円)だ。

この2種類の販売パッケージにはパイロットや整備チームの訓練費用、スペアパーツ、保守サービス、500発のGBU-53/B、150発のAIM-9X、200発のAGM-158 JASSM、200発のAGM-154 JSOW、200発分のJDAMキッド等が共通して含まれており、F/A-18販売パッケージのみに照準ポッドAN/AAQ-33、前方監視赤外線ポッドAN/ASQ-228、EA-18Gに装備する電子攻撃用ポッドなどが追加で含まれている。

因みに、この販売パッケージは米国務省がフィンランドに対して販売可能な数量を示したものに過ぎないため、仮にフィンランドがF-35AかF/A-18を選択しても米国務省が今回承認した販売パッケージをそのまま契約することはない(=数量や金額が変動するという意味)ので注意が必要だが、幾つのか興味深い点がある。

出典:Public Domain 米海軍のEA-18G

1つ目はF/A-18の販売パッケージに電子戦機のEA-18Gが含まれている点だ。

これはフィンランド側が要求したものではなく、ボーイング側が独自に提案したもので「次期戦闘機HXの要求事項を満たすにはF/A-18E/FとEA-18Gを組み合わせて運用するのが最適だ」と主張しているのだが、逆を言えばF-35Aは専用の電子戦機並な能力を初めから備えているため、F/A-18E/Fだけでは分が悪いとボーイングは考えているのだろう。

補足:ドイツ空軍も過去、トーネード(IDS/ECR/RECCE)の後継機選定時に攻撃、偵察、敵防空網制圧の3つの任務に対応したF-35Aがトーネードの後継機に最適だと主張(F-35Aを後継機候補から除外したためF/A-18E/F、EA-18G、タイフーンの3機種を同時導入する予定)していたことがある。

2つ目はスイスの次期戦闘機向けに米国務省が販売を承認したF-35AとF/A-18E/Fの販売パッケージと同じく、F-35Aの方が安価な点だ。

今回発表された推定契約金額を元に1機あたりの導入費用を単純計算するとF-35Aは約1.9億ドル(約200億円)、F/A-18E/Fは約2.1億ドル(約220億円)となるため、やはりスイスの場合と同じように第5世代戦闘機F-35Aの方がコストパフォーマンスで第4.5世代戦闘機F/A-18E/Fを上回っていることが伺える。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman James Kennedy

恐らくF-35AとF/A-18の販売パッケージに含まれる装備品に多少違いがあるものの、1機あたり約20億円の差の大半は機体単価に原因があると見て間違いないだろう。

F-35Aは基本的に同一仕様・同一機体単価(7,790万ドル:ロット14発注時)で提供されるため64機のF-35Aを取得するのに必要なコストは約49億8,500万ドルで、残り約75億ドルが関連費用となる。仮にF-35AとF/A-18の関連費用が同一だと仮定した場合F/A-18を72機(F/A-18E、F/A-18F、EA-18G)取得するのに必要な費用は約72億ドルで、1機あたりの機体単価は約1億ドルとなりスイス向けに提示された予想機体単価(約9,000万ドル)と似たような数字になる。

勿論、上記の数字は関連費用が同一でF/A-18E、F/A-18F、EA-18Gをひとまとめにして計算しているため実際の機体単価とは必ず異なると思うが、F-35AよりもF/A-18の方が高価なのは十中八九間違い。

果たしてダッソーのラファール、エアバスのタイフーン、サーブのグリペンはフィンランドの次期戦闘機HXプログラムに、どの程度の金額を提示しているのか非常に興味深い。因みに管理人的には64機調達でラファールが約165億ドル+弾薬購入費用、タイフーンが約170億ドル+弾薬購入費用、グリペンが約90億ドル+弾薬購入費用を提示してくるのでないかと予想している。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Brandon Shapiro

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    我が国のF-35導入を一部メディアがひどく叩いてた様な記憶があるが、彼らの感想を聞きたい。

    23
      • 匿名
      • 2020年 10月 10日

      チートすぎるほど凄いがために狙い撃ちされやすいのですね。
      裏を返せば導入して欲しくないということなのでしょう。

      6
        • 匿名
        • 2020年 10月 10日

        つまり例の人たちは、日本の防衛力の弱体化を企図していた可能性あり。

        9
          • 匿名
          • 2020年 10月 10日

          オスプレイについてはアサヒが叩いていたので察してたが

          F-35に関しては保守の産経新聞が結構導入に反対してたから
          必ずしもそうとは言えないと思う(F-22やF-15増勢推してた)

          2010年代初頭のF-35は開発や費用にかなり問題抱えてたからね
          本当なら2010年頃には開発が完了してた筈だったから

          8
            • 匿名
            • 2020年 10月 11日

            ただ、2019年以降に「アベがトランプに爆買いさせられた!」などと書いてた一部の連中は…

            9
      • 匿名
      • 2020年 10月 10日

      激しく同意。

      まぁそんな事はすっかり忘れているだろうけど。

      4
    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    F-35の驚異的なコスパを見ると、西側=F-35となりそうだね。

    親米だがイスラエルの近隣諸国であるGCCやエジプトは、イスラエルがゴネねアメリカに対し売るなと圧力かけてきそうだね。

    アメリカは結構売る相手選ぶタイプだから、F35買えない国はタイフーン、ラファール、グリペン、F-16を買うんだろうね。インドネシアや先ほど挙げたGCCやエジプトとかはまさにそうだろう。

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      アメリカの完全管理下にあるF-35なんて、イスラエルに何の脅威にもならないのだが、何が不安なんだろう。

      6
    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    ソシャゲ風に言うと21世紀中盤の人権戦闘機になりつつある気がする

    10
    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    機体単価さげてサポートで金とる形式だったりしないだろうか…
    ライフサイクルコストって判明してるんですかね

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      判明してるよ
      このサイトの過去記事漁ってみな

      あと、そういう商法はロシアの十八番

      9
    • 匿名
    • 2020年 10月 10日

    見物人としてはつまんない
    右みても左を見ても同じじゃあね

    5
      • 匿名
      • 2020年 10月 10日

      個人的にはベトナム戦争時代が好き

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    またポンコツのF-35を押し売りするのか。属国の日本だけじゃなくフィンランドのような小国にまで。。アメリカは最低な国だな

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      この世にフィンランドなる国家は存在しない、イイネ?

      1
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      こういう屁の役にも立たない無価値なコメントも削除すべきだよね。

      18
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    フィンランドの国防費って40億ドルくらいなのに戦闘機だけで125億ドルとか147億ドルとか無理だろ。こういう国こそ自律型自爆ドローンを自国開発して量産すべきだと思う。北欧諸国はITに強いしイスラエル辺りと協力して共同開発できないだろうか。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      まとめて買うわけではなく年に数機程度買う契約。

      4
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    F35売りすぎじゃねぇの?
    F22を機密保持で日本に売らなかった割には、最新鋭のF35は売りまくりってなんかおかしいですよカテジナさん

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      無断コピー・盗用されないような
      ブラックボックス技術が発達してるんだろうな

      ハード的にもソフト的にも

      7
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      武器輸出が盛んなアメリカやロシアは本国仕様と輸出仕様で異なった部品構成で設計して組み立てている。そもそも量産型の戦闘機は既存技術で造らないと物凄く高額になる。F35の値段が安いのは装備や機器を簡略化した輸出仕様に設計変更し、尚且つ大量生産用の製造ラインを構築したから。当然本国仕様と比べ弱体化しているし、もしかしたら未だに中国製の電子機器を搭載しているかもしれない。

      記事には電子戦能力が内蔵してあると書いてあるが、現状本国仕様の電子戦能力はグロウラーの上位互換に位置する代物ではない未完成品水準。記憶が正しいならDASシステムだか何だか含め今だ開発中なので、輸出仕様に高度な電子戦能力(電子妨害や電波解析)を求めるなら専用機を買った方が合理的。
      もっとも今後開発される本国仕様のF35装備類を「古着」の様な方法で輸出仕様に「着せ替える」裏取引があったのなら別だが、安全保障上の理由で米国議会が許可するとは思えない。

      1
        • 匿名
        • 2020年 10月 11日

        F-35の仕様は米国向けの海外向けの同一仕様ですよ。あとF-35の電子攻撃能力はソフトウエア的には完成して実装済みで、Block4でAARGM-ERベースの対レーダーミサイルが統合される予定です。

        リンク

        5
          • 匿名
          • 2020年 10月 11日

          コメント主だ。情報提供ありがとう。 英語は解らないから自動翻訳させたのを張っておく。

          国防総省は6月1日にロッキードマーティンに2670万ドルの契約を交わし、F-35打撃戦闘機の構造変更を開発して、敵の防空能力の抑制/破壊(SEAD / DEAD)を改善しました。改造設計は、ロット14と15の米国と外国のF-35の両方に適用され、2022年8月までに完成する予定です。

          正直に感想を言うと、「米国と外国のF35」と言う表現があやふやで「米国と外国」のF35が統一された同一製品(オリジナル)なのかオリジナルと複製品(劣化コピー品)なのか物凄く気になった。

          とりあえず22年8月までに完成すると期待しておく。

        • 匿名
        • 2020年 10月 11日

        現行のEO-DAS光学センサーシステムはノースロップ・グラマン製ですが、2023年調達分からレイセオンに切り替え予定ですね。
        ブロック4の調達に合わせてEO-DASもアップグレードする予定です。

        F-35Aはイスラエル仕様のF-35I以外は本国と同一仕様ですね。
        F-35Iはイスラエル軍の戦術情報システムと直接リンクできるようにF-35のコンピュータシステム上でイスラエル軍のソフトウェアを動作させていると言われています。

        3
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      F-35はMRO&U拠点とALGSで維持管理が行われるシステムだから全て米のコントロール下にある。
      米と同等レベルの総合的技術力を持つ国でないと独自の維持管理は無理でしょう。
      F-35を友好国に売りまくるのは軍事的影響力を拡大強化するという戦略だと思いますよ。

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    EA18Gを14機はすごいな。電子戦ガチってんじゃん

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 26日

      F35Aなら電子線専用機無しで指定のミッションをこなせるってことだね。マジか。

    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    もうちょいしたらここにSu-57が並んで更にしばらくするとテンペストとかの第6世代が殴り込みにくるのか

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    個人的にF35の事よりも
    EA18Gを14機も販売承認していることの方が驚く
    日本にも売ってほしい
    変なのが湧いているから無理なんだろうな

    4
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      自衛隊からそういう要望があったっけ(笑)

      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      F-35にE/A-18G並みの電子戦能力がある事が凄い。
      世界中の軽空母が、こういう作戦が可能になるということか。

      9
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    やたらとコストパフォーマンスを連呼する奴はコストしか見ていなくてパフォーマンスの方は考えてないというのが通り相場だが
    コストだけ考慮でも競合を上回っている例は珍しい

    3
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    フィンランドと言えば確かロシアと陸続きの国だよな。そんなところにF35を送っても大丈夫か。正面戦力ではなく前線と後方の間で運用するつもりなのだろうか。

    それとFMSである以上提示された金額に手数料が発生する。F35もF16の様に関連機材で儲けるなら未完成品を送って後々改修させるつもりなのだろうか? 仮に契約が今年中に成立したとして、フィンランドに契約分が配備されるのは20年くらい先の話になりそう。

    2
      • 匿名
      • 2020年 10月 11日

      それは日本がF-35を導入するにあたり同じ感情を抱かれても仕方ないと言っているのと同じでは・・・。
      フィンランドからすると大きなお世話ですよ。

      4
      • 匿名
      • 2020年 10月 12日

      まずフィンランドの歴史を知ろうな
      かなり失礼な書き込み

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    F-35の電子線能力に制限は無いのかな?

    • 匿名
    • 2020年 10月 11日

    >F-35AよりもF/A-18の方が高価なのは十中八九間違い。

    タイトルと記事の趣旨からして、「F-35AよりもF/A-18の方が高価なのは十中八九間違いない。」の誤記なのでは?

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