米国関連

GA-ASIが無人戦闘機「Gambit」シリーズを発表、共通コア採用が目玉

米GA-ASIは共通コアを基づいた設計の無人戦闘機「Gambit(ガンビット)」を20日に発表、米空軍が2024年に開始するかもしれない「無人戦闘機の競争試作」に向けて動きが慌ただしくなってきた。

参考:GA-ASI’s Gambit Series: The Future of Collaborative Combat Aircraft
参考:Gambit Family Of Drones Will Have Different Airframes But A Common Core

ロッキード・マーティン提案するProject Carreraと激突するGA-ASIのGambit

米GA-ASIが発表した無人戦闘機「Gambit(ガンビット)シリーズ」は有人戦闘機の拡張センサーとして機能するGambit1、有人戦闘機の弾薬庫として機能するGambit2、有人戦闘機のトレーナーとして機能するGambit3、高度なISR任務向けにステルスを重視したGambit4で構成されているが、このユニークな4つの機体は全て「Gambit Core」に基いて設計されるらしい。

Gambit Coreとは無人戦闘機の基本的なアビオニクスや降着システムなど重要な機能が集約化された「共通コア」のことで、GA-ASIは「自動車産業からインスピレーションを得た共通コアは各Gambitシリーズのコストの約70%を占める」と説明しており、異なる用途に最適化された無人戦闘機を別々に開発するので各機体の共通性が小さいため、共通コアを軸に各機体を作ることで開発期間の短縮や製造コストの削減など「規模の経済」を提供できるようにするという意味だ。

出典:GA-ASI

Gambit1は有人戦闘機だけなく他の無人航空機に同行し、作戦実施前の目標地域を偵察したり長距離のISR任務を引き受けることを狙っている。GA-ASIは「他のレガシープラットフォームと連携して味方を発見した目標に誘導したり、パッシブセンサーを使用して目標の追尾を支援できる」と述べている。

出典:GA-ASI

Gambit2は有人戦闘機の弾薬庫(空対空ミサイルを搭載)として機能するためGambit1よりも重量が増加し、速度と滞空性能が犠牲になるが「Gambit2の提供する武器ペイロードはそれを補って余りある、3機のGambit2が異なる高度、異なる方角から敵の海岸線に向かっているところを想像してほしい。Gambit2のセンサーは全て赤外線で電波を自ら発するものはなく、敵戦闘機も3の異なる視点から追尾されればステルスは関係なくなる」とGA-ASIは主張。

さらにGambit2はバースト通信(もしくは敵に探知されにくい短時間の通信)で敵戦闘機の位置を有人戦闘機のパイロットに警告したり、AIが自律的に搭載兵器で敵戦闘機を攻撃することも可能になるらしい。

出典:GA-ASI

Gambit3はGambit1やGambit2とは異なり、米空軍の戦闘機パイロットが訓練するためのアグレッサー役や防空システムの訓練に必要なターゲット役を担当し、有人機では不可能な複雑で大規模な敵航空戦術を再現することでき、GA-ASIは「F-35AやF-22Aといったコストの高い飛行時間を短縮することで訓練コストを大幅に下げることが可能だ」と述べている。

出典:GA-ASI

Gambit4は高度なISR任務向けにステルスを重視した設計で、交戦空域の奥深くまで侵入することを目的にしており、Gambit1、Gambit2、Gambit3とは大きく設計に対する要求水準が異なるが、これも共通コアを使用して設計できるらしい。

GA-ASIはGambitシリーズを米空軍が進めている無人戦闘機プログラムに提案するつもりで、ロッキード・マーティンが先に提案したDistributed Team(分散チーム)の概念に基づくProject Carreraと激突し、何れ他の競合(ボーイングやノースロップ・グラマンなど)も同様の提案を発表するはずだ。

出典:Lockheed Martin

因みに米空軍のケンドール長官は「2024年に無人戦闘機の競争試作を開始する可能性がある」と発言している。

関連記事:米LM、MUM-Tの新概念を実用化するためProject Carreraに1億ドルを投資
関連記事:ロッキード・マーティン、独自に有人・無人チーミングの概念を発表

 

アイキャッチ画像の出典:GA-ASI

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コメント

    • 灰色の猫
    • 2022年 9月 23日

    ガンビットとは的を射ておしゃれですね。損耗前提なところが現実味があって好きです。
    世界がグラディウスに追いついてきた。

    3
      • zerotester
      • 2022年 9月 23日

      ビットってガンダムから来てるのかと思ったら、
      Gumbitはチェスの戦術だそうですね。序盤にポーンを1つ犠牲にすることで盤面を有利にすると。なるほど。

      5
    • 名無し
    • 2022年 9月 23日

    ステルス戦闘機はどうしても搭載量犠牲になるからミサイルキャリアーの無人機はいいよねえ。

    11
    • TA
    • 2022年 9月 23日

    この開発者絶対オタクだろw

    5
    • ウツボ
    • 2022年 9月 23日

    日経によると無人戦闘機の分野で日米が技術交流をするとあるので、用途別に異なるタイプの無人機を使用するコンセプトは日本にも影響を与えるかも。後、無人戦闘機の話ではないけれど防衛省が2023年度からスウォーム技術の実証研究に乗り出すそうな。

    12
      • ブルーピーコック
      • 2022年 9月 23日

      23年度予算には高出力レーザーやマイクロ波を利用したスウォーム攻撃への迎撃能力向上も盛り込まれています。スウォーム技術の予算は2億円、スウォーム迎撃の方は予算の明示は無し。
      予算の明示が無い理由は分かりませんが、できれば「多額の予算を投入するから」であってほしい(願望)

      7
    • トクメイキボウ=サン
    • 2022年 9月 23日

    なんか最近の無人戦闘機ってどこもかしこも似たり寄ったりでつまらないな、F-15EXとかF-16Vなんかの格闘戦にも優れた戦闘機を無人化して大量のミサイル搭載して突っ込ませるとかそういうのってないのかな、いや戦争とか兵器にロマンとか面白さを求めてはいけないってのはわかるよ、けどさ、つまらないよね、俺だけかも知んないけど

      • バーナーキング
      • 2022年 9月 23日

      申し訳ないが「格闘戦にも優れた(既存有人)戦闘機を無人化して大量のミサイル搭載して突っ込ませる」はあまりにも荒唐無稽でロマンも面白みも全く感じない。せめて「突っ込ませて格闘戦」か「大量のミサイル」のどちらかには絞った方がいいかと。

      てか各国・各企業の無人機、似てるのはパッと見だけでちゃんと見れば運用構想から機体の特性までかなりバリエーション豊かだと思うけどな。

      10
        • kilay
        • 2022年 9月 23日

        無知で関心もないものは全て同じに見えますからね。最近の若者は〜理論です。
        私には有人戦闘機もかっこいいなー(小並感)くらいの認識で、違いがよくわかりません。

        1
      • 無印
      • 2022年 9月 23日

      私もマクロスの「ゴーストX9」みたいなのが出てくると思ってましたが、実際出てきたのは
      撃墜されても財布にやさしい多用途低コスト機、人間には耐えられないほどの長時間飛べる無人偵察機
      でショボーンとしてます

      5
    • トーリスガーリン
    • 2022年 9月 23日

    ガンビット無人戦闘機、なぜかXなGダムが脳裏を過るのは気のせいだろうか…
    G4とかかなりの航続距離とそれなりの積載量(機内搭載)を求められてる筈だし、GANBITシリーズって結構機体規模大きそうだな
    有人戦闘機に匹敵するくらいのサイズ感かな?

    1
    • ブルーピーコック
    • 2022年 9月 23日

    次に出てくる機体名は「ウルヴァリン」とか「クイックシルバー」かな

    1
      • エニグマ軍曹
      • 2022年 9月 23日

      そりゃあアメリカなんだからガンダムじゃなくてマーベルですよね!

      2
    • 野戦先輩
    • 2022年 9月 23日

    共通プラットフォームによるコスト削減…理屈の上ではコストは節約できるし、現に自動車業界は躍起になって取り組んでいるね。
    確かに高級車も庶民車も同一プラットフォームを使う事で、車の出来が上から下まで均質化されて、トータルでの性能向上には間違いなく貢献してるけど、車種毎の最適化で結局かなりコストがかかるから、コスト削減という意味では効果が出るかはまちまちだったりする(トヨタのTNGAは現状では旧来よりコスト増)。

    F-35が共通フレームでABC開発してコスト削減を狙ったらフレームに足引っ張られたBCが炎上したように、共用に無理がないのか精査した上で作らないと失敗する可能性もあるよね。

    5
    • 2022年 9月 23日

    こうしてみるとLMのDistributed Teamの将来性の高さが良く分かりますね
    ボーイングとGA-ASIのプランは随伴機としての性格が強く、有人機の能力向上を主眼としているのに対してLMのプランは無人機の特性毎に最適な作戦行動を行わせて有人機がそれを活用させる事で部隊の能力向上を目指してる
    どこが採用されるか楽しみです

    1
      • お腹がポンポコリン
      • 2022年 9月 23日

      分かりやすい解説ありがとう。おいちゃんにはちんぷんかんぷんなので。

    • L
    • 2022年 9月 23日

    エースコンバットの世界だぁ

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