米GA-ASIは共通コアを基づいた設計の無人戦闘機「Gambit(ガンビット)」を昨年9月に発表していたが、米空軍研究所(AFRL)が主導するOBSSプログラム下でGambitのプロトタイプ製造とテストを行うらしい。
参考:GA-ASI Selected to Build OBSS for AFRL
個人的には「チーミング可能な有人機の随伴機」という説明だけで無人戦闘機を表現するのは難しくなっていると感じている
米GA-ASI(GA)が発表した無人戦闘機「Gambit(ガンビット)シリーズ」は有人戦闘機の拡張センサーとして機能するGambit1、有人戦闘機の弾薬庫として機能するGambit2、有人戦闘機のトレーナーとして機能するGambit3、高度なISR任務向けにステルスを重視したGambit4で構成されているが、このユニークな4つの機体は全て「Gambit Core」に基いて設計される。
Gambit Coreとは無人戦闘機の基本的なアビオニクスや降着システムなど重要な機能が集約化された「共通コア」のことで、GA-ASIは「自動車産業からインスピレーションを得た共通コアは各Gambitシリーズのコストの約70%を占める」と説明しており、異なる用途に最適化された無人戦闘機を別々に開発するので各機体の共通性が小さいため、共通コアを軸に各機体を作ることで開発期間の短縮や製造コストの削減など「規模の経済」を提供できるようにするという意味だ。
ただGAのGambitは飽くまでコンセプトの提案であり、これを実用化するためには自己資金で開発を進めるか外部から資金を引っ張ってくる必要があるのだが、このコンセプトが米空軍研究所(AFRL)の目に止まりOBSSプログラムの下でGambitのプロトタイプ製造とテストを行うらしい。
AFRLはLow Cost Attritable Strike Demonstrator(低コスト攻撃機実証機:LCAS)プログラムで消耗可能な無人戦闘機「XQ-58A(Kratos製)」を開発したが、新たに立ち上げたOff-Board Sensing StationでもGAとKratosと契約を与えていたもののOBSSの詳細は謎に包まれている。
OBSSは有人機の空対空任務やセンサー拡張の役割を担う無人機コンセプトの開発ではないかと予想されており、KratosはOBSS向けにXQ-58Aとは異なる無人戦闘機のコンセプトを発表していたが、GAは特に動きがなくGambitがOBSSのコンセプトに採用されたという意味になり、ここからどのような発展を遂げるのかに注目したい。
因みに管理人も全てを把握している訳ではないが、米軍(国防総省)が進めている無人戦闘機開発は大まかに米空軍主導、米空軍研究所主導、国防高等研究計画局主導、米海軍主導に分かれており、この複数の計画が同時進行で進んでいるものの完全に別々の計画として独立しているという訳でもなく、互いの計画は技術的な部分でリンクしている場合もあるため本当に分かりづらく、米空軍が主導しているスカイボーグ・プログラムは実用タイプの無人戦闘機開発ではなく2024年に新たな開発プログラムを立ち上げる予定だ。
米空軍研究所と国防高等研究計画局が主導する無人戦闘機開発は実験・研究要素が濃いプログラムが多く、米海軍の無人戦闘機開発は謎に包まれており「2023年にAFRLのLCASプログラムで開発されたXQ-58Aを何機か購入する」という以外に動きがない。
ここに伝統的な防衛産業企業=ロッキード・マーティンが提唱する多層レイヤーで構築された分散チームの概念を体現する無人機群、ボーイングが提唱するロイヤル・ウィングマンの概念の体現するMQ-28A、ノースロップ・グラマンが発表したModel437などが加わってくるため、もはや米軍・米企業が開発している無人機開発を全てを理解するのは不可能だ。
そう言えば米空軍は第5世代戦闘機の訓練効率を高めるためステルス・アドバーサリー・ドローンと呼ばれる「レッド・ミディアム/Red Medium」や「第5世代空中ターゲット(5GAT)」も開発中で、ある程度の収斂を見せないと体系的に無人戦闘機を語るの難しい。
個人的には「チーミング可能な有人機の随伴機」という説明だけで無人戦闘機を表現するのは難しくなっていると感じている。
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※アイキャッチ画像の出典:GA-ASI
ガンビット、、、
どこかで聞いた覚えが。
データストームが検知されたらGUND-ARMだ
他の軍種も模倣しよう
アーセナルシップ、、、
うっ、頭が
全翼と普通の尾翼付きを共通部品で開発しようってのはずいぶん野心的だな
素人目には1~3はコアとは言わず、センサー、エンジン、ハードポイント以外共通で作れそうに見える
要求が違いすぎて4だけ別で開発した方がいいのではと感じる(遅れに遅れたF-35Cの例もあるし)
まあ資金調達のための方便を多分に含んでいるのだろうけど
正直「有人機とチーミング可能な無人随伴機」ってコンセプトばかりが先走って戦術的な有効性とか何も検証されてないんだよな。現在活躍している無人機は単独運用が主だし、有人機と編隊を組んでしまったらパイロットの省人化以外の効果が得られない。将来は無人攻撃機が自律して群衆を組むLAWSが台頭するだろうから、この「ヒトドローンコンビネーション」構想はその時代への過渡期になるんだと思う。
4種いずれも “70% Gambit Coar, 30% Variant” となっているので、共通コア(エンジン含む)に用途に最適化した飛行性能と機器・機能を備えたガワを被せるというコンセプトのように思えます。
機体形状から受けるイメージですが、Gambit1は滞空性能重視、Gambit2は速度性能重視、Gambit3は1と2の折衷、Gambit4は高ステルス滞空型、といったところです。
(訂正)
2と3は逆でした。
チェスが語源ならギャンビットでは