韓国のハンファの米国法人=ハンファ・ディフェンスUSAは10日「オースタルUSA買収に向けた予備的な提案を行った」と声明を発表し、豪オースタルも価格が見合えばオースタルUSA売却に応じることを示唆したが、この買収提案はオーストラリアでのもがみ型護衛艦建造には一切関係がない。
参考:Hanwha Defense USA Statement on Offer to Austal
参考:Hanwha Defense USA seeks to acquire Austal USA in $1.2B potential deal
仮にオースタルUSAをハンファに売却してももがみ型護衛艦建造には一切関係がない
バイデン政権時代のデル・トロ米海軍長官は2023年9月「米国では日本や韓国を含む親密な同盟国の造船企業と提携する機が熟している」「世界で最も先進的な造船企業を誘致し、米国に子会社を設立させ投資させることで米造船産業の近代化や拡充を図り、より健全で競争力がある造船産業を創出する」と述べ、日本と韓国を訪問して佐世保重工業、三菱重工業、ジャパン・マリンユナイテッド、現代重工業、ハンファと会談、米国の商業造船や海軍造船施設への投資を呼びかけた。

出典:Photo courtesy of US Navy
これを受けてハンファはアケル・ソリューションズが所有していたフィリー造船所を1億ドルで買収、さらにオースタルUSAを手に入れるためオーストラリアのオースタルに買収(6億6,200万ドル)を提案したが、これを拒否されたため発行済のオースタル株を9.9%取得し、トータル・リターン・スワップを通じた株取得(9.9%)で筆頭株主の地位を手に入れていたが、ハンファの米国法人=ハンファ・ディフェンスUSAは10日「オースタルUSA買収に向けた予備的な提案を行った」と声明を発表。
オースタルも「当社の取締役会とアドバイザーは本提案を慎重に評価した結果、さらなる検討を行うに値すると判断し、提案の確実性を高めるためにハンファがオースタルUSAに関するデューデリジェンス(適正評価手続き)実施を承認した」と表明し、事実上「価格が見合えば米国事業部門=オースタルUSAを売却(予想価格10.5億ドル~12億ドル)する意思がある」と示唆した格好だ。

出典:Hanwha
ハンファは買収したフィリー造船所に50億ドルを投資し、世界クラスの自動化とスマート造船技術を備えたデジタル対応の高効率造船所に転換中で、これが計画通りに進めばフィリー造船所の年間建造能力は2隻未満から最大20隻へと引き上げられ、2026年7月には米海軍のミサイル観測艦=ゴールデン・ディフェンダー建造を受注することにも成功している。
ハンファはインディペンデンス級沿海域戦闘艦、スピアヘッド級遠征高速輸送艦、ヘリテージ級カッターなどの建造、バージニア級原潜やコロンビア級原潜のモジュール製造を請け負うオースタルUSAも買収し、米造船業界における立場とシェアを引き上げていきたいのだろう。

出典:Commander, U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. 6th Fleet
ちなみにハンファがオースタル買収やオースタル株取得に動いたのは2024年以降で、日本政府は2025年8月にもがみ型護衛艦が選定された後「ハンファがオースタルの筆頭株主になりそうだ」と驚き、豪国防省に懸念を2度訴え、鈴木大使もナショナルプレス・クラブの講演会に出席した際に懸念を表明したが、防衛産業界ではオーストラリアでの現地建造を担当するのはオースタルになるだろうと、ハンファがオースタル買収や株式取得に動いていること、その目的が「米国防総省のプログラムに元請けとして参加する資格をもつオースタルUSAへの関与」だと誰もが知っていた。
オースタルのグレッグ最高経営責任者も「企業視点で三菱重工業が自社の知的財産保護に神経を尖らせるのは当然だと理解しているが、同じプライムとして当社にも高度な情報保護システムがあり、三菱重工業の知的財産にリスクが生じないことを確信している」「そもそも会社の20%を所有したところでオースタルの技術データや社内システムへのアクセス権は得られない」「オースタルと三菱重工業の提携は三菱重工業の企業秘密に何もリスクをもたらさない」と述べ、豪州のチャーマーズ財務相は2025年12月「オースタル株に対するハンファの持分比率引き上げを承認する」と発表。

出典:海上自衛隊
ハンファも「今回の決定は非常に喜ばしいもので、オーストラリア政府の期待に応えられたことを嬉しく思う。我々も持分比率引き上げ条件(社内機密に対するアクセスや取締役就任への制限)を尊重しており、今後も全面的に尊重していく」と声明を発表し、韓国メディアも「ハンファの動きに巻き込まれて日本初の大規模な艦艇輸出は複雑な状況に直面しているが、フィリー造船所に加えてオースタルUSAまで確保できれば東海岸と西海岸の両方に建造拠点を構築することができる。この買収にハンファに社運を懸けて挑戦している」と報じ、ハンファは護衛艦の技術を盗むという小さな目的のために大金をオースタルに投資しているわけではない。
オースタルもハンファによるオースタルUSA買収提案に関連して「買収提案にはオースタル株の取得やオースタルの主力事業(オーストララシア=豪州や周辺地域)は含まれていない」「オースタルが担う主権的造船任務と高い業績を上げるオーストララシア事業は完全に維持され、今後も株主に価値をもたらし続けることが保証される」と述べ、仮にオースタルUSAをハンファに売却しても「オーストラリア本土周辺での事業=もがみ型護衛艦建造には一切関係がない」という意味だ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Christopher A. Veloicaza





















ハンファはフィリー造船所に50億ドルを投資し、世界クラスの自動化とスマート造船技術を備えたデジタル対応の高効率造船所に転換中で、
これが計画通りに進めばフィリー造船所の年間建造能力は2隻未満から最大20隻へと引き上げ
日本製鉄によるUSスチール買収は当初想定以上の利益が出そうですが
造船業が他産業と熟練工の奪い合いになるのではなく、自動化とスマート化で効率向上に成功するのなら
ハンファによる米造船業買収でも同じことが起こるのかも
元の数値が小さく効率が良くなかったとは言え2隻未満から20隻だと10倍以上で流石に数値を疑う。しかも何ヶ月単位で作る大型な物でそれを達成出来るのか、効率上がりすぎて詐欺だと感じるレベル。
USスチールに関しては主に外国製品排除の為の関税影響が大きいと思うし、設備が古過ぎるのと製品の規格設定がおかしくて上流ではなく下流まで流れて不良で落ちる率が高く不良率が50%レベルとかとんでもない状況だったのでフィリーには同じ事は起きないと思います。輸入排除は条件的に似た感じですがUSスチールはレイオフした500人ぐらい戻し大規模な設備更新はこれからですから同じ事が起きるかと言えば疑問です。
>ハンファは護衛艦の技術を盗むという小さな目的のために
要するに、日本ごときは眼中にないということですね。w
ちなみに、世界の造船シェアは中国が約71%、韓国が約14%、日本が約8%と中韓が圧倒的なシェアを持っており、日本はもはや「その他」に過ぎません。
その中で、2025年の企業別造船シェアは、ハンファ・オーシャンが5位(5.19%)で韓国では2位のシェアを持っています。
日本で最も大きいのは、今治造船で9位(2.52%)です。ハンファ・オーシャンが積極的に規模を拡大しているときに日本の造船会社は世界へ出ていく体力も気力もないようで、半導体の二の舞になるのでしょうね(既になっている?)。
>世界の造船シェアは中国が約71%、韓国が約14%、日本が約8%と中韓が圧倒的なシェアを持っており、日本はもはや「その他」に過ぎません。
それは商船のシェアに過ぎず、軍艦とは別問題です
米国造船所の世界シェアは日本より更に少ないですが、正規空母や原潜を自力建造しており、イージスのような戦闘システムも自力開発しています。
また、戦闘艦艇の建造数を韓国と米国を比較するとどうなりますか?
商船のシェアでは無く戦闘艦艇のシェアを比較しないと意味が無いと思いますよ。
そういう発想だから滅ぶんだよ
製造業を捨てても防衛産業を防衛産業だけで維持できると思い込むから
けど実際は兵器産業も中間投入される財や技術は軍需と民需がオーバーラップしてるから民需を捨てて防衛需要だけで維持するのは無理
中国はそれを分かってるからフルセットの工業を構築して準戦時経済体制を維持しようとしてる
日本は別に製造業捨ててるわけじゃないですが。官民一体となって2035年(2035年好きだね日本は)までに造船受注を倍に増やすための1兆円投資が決まったばかりです。
ハンファの動きは韓国企業らしいダイナミックな物ですが商業面よりアメリカに対する韓国のプレゼンスを上げる為の政治的な動きにも見えます。
欧州から米軍が引きつつある状況見て次は在韓米軍ではという恐怖感はあると思います。
中国のエネルギーも食料も輸入してる状況を準戦時経済体制と言っていいものか疑問ですが。台湾有事は軍事面で語られる事多いですが今の輸出だよりの中国経済が台湾侵攻後に行われるロシア並みの経済制裁に耐えられるんですかね。
製造業を捨ててってのはアメリカの話
>中国のエネルギーも食料も輸入してる状況を準戦時経済体制と言っていいものか疑問ですが
だから可能な限り自給率を上げようと努力してる
当たり前だけどたとえ100%じゃなくても可能な限り依存を減らすことには意味があるからね
昔は韓国のシェア40%位あったのに随分落ちたね
そっちのほうが驚いた
結局日本と同じように衰退は避けられないから軍艦に掛けないとジリ貧なんだな
軍用艦艇なんかは量が少ないから取れてもたかが知れてるけど
川崎は中国でフネを造ってます(南通中遠海運川崎船舶工程)。当然、国別では中国にカウントされます。
結局、建設業並に労働集約型産業で、建設業と違って国際競争に晒される訳ですから、本質的には途上国が有利なんです。
で、先進国は利幅の大きい軍艦と客船に群がると言う構図です。
中国で商船を造るのも、アメリカで軍艦を受注するのも、企業の経営判断としては正しいのでしょうが、、政策としてどうかと言われると疑問に思います。
設備投資で2隻から20隻にできるならアメリカと中国の1対500もあながち誇張じゃなさそう
造船には超大型切削機が必須だから日本企業が主導してれば苦境にある日本の超大型工作機械メーカー(新日本工機は台湾企業に買収されたから実質本間と芝浦機械の2社)の助けになっただろうけど韓国企業主導じゃ日本企業に発注は来ないだろうな韓国も超大型機メーカーを育成したいだろうし(アメリカにもかつてはシンシナティ・ミラクロンという世界的名門企業があったけどレーガンのせいで潰れた
というか、日本も造船を本気でテコ入れするなら超大型切削機のメーカーにも目を配ったほうがいい
新日本工機はいつの間にか台湾企業に買収されてるし本間は中国企業に代金踏み倒されて一回倒産したし東芝機械(芝浦機械)も村上ファンドに株買い占められたし
本来なら東芝機械なんて国家的資産でマネーゲームの対象にしていい企業じゃない
このままじゃシンシナティミラクロンを潰したアメリカやシンシナティミラクロンと同じく超大型切削機の世界的名門だったシースを中国に売っ払ったドイツと同じ轍踏むよ
>>ハンファは護衛艦の技術を盗むという小さな目的のために大金をオースタルに投資しているわけではない
護衛艦の建造技術の流出は決して小さな問題ではないと思います。
日韓の立場が逆だったとしても、建艦能力で圧等してるから
日本に技術が流出するのは小さな問題だとはならないでしょう
造船能力と建艦技術とは大小で比較できる問題ではないと思います
シェアが無いから大した技術も持ってないとか上から目線で語る人がいるから益々技術が低下するんだろうなあ
実際に造船に携わってる訳でもないのによく偉そうに語れるよ音
確かに、オスタルUSAを買収するのは別に護衛艦技術を盗むためじゃないでしょうが、
結果的にオスタルの大株主になってその誘惑に駆られないと考えるのはあまりにお人よし過ぎるというものでしょう。
くぎを刺しておくのが正解というものですね。
>ハンファはインディペンデンス級沿海域戦闘艦、スピアヘッド級遠征高速輸送艦、ヘリテージ級カッターなどの建造、バージニア級原潜やコロンビア級原潜のモジュール製造を請け負うオースタルUSAも買収
原潜の自国建造を狙っている韓国としては寧ろ本丸はこちらでしょう。ただトランプ政権下のアメリカでもコア部分の軍事用原子力技術については韓国に容易にアクセスはさせないだろう。かつてのウェスティング・ハウスの事業売却で東芝が買収したのは民間の商用原子力部門であり、原潜や原子力空母等の加圧水型原子炉を扱う防衛産業部門は米企業であるノースロップ・グラマンに売却された。
ハンファの米本土進出と拠点整備の話は、
米製造業全般が極めて非効率で収益性の悪い事業形態だった中でUSスチールは濡れ雑巾を絞るようだと言われるくらい短期間に収益が改善したことと重なるように感じます。
市場原理主義・金融第一主義がまかり通るアメリカでは足元の設備投資が疎かになるのはある種しかないにしても、産業基盤がグラつきその結果国防すら揺らぐ程の金融偏向は是正されるべきなのでは?と思ってしまいました
そもそもハンファが軍艦建造を通してアメリカの海軍技術を入手する可能性が高いという状況で
日本の水上艦艇技術はそんなに価値があるのでしょうかね?
ひょっとして皆様は日本の軍事技術はアメリカと同等以上だと評価しているのですか?
アメリカの技術が開示されるなんて話初めて聞いたけどソースどこです?
現状の米韓の艦船を見る限り、まんざらでも無いと思いますが。そも豪にもがみ型を選択させた状況が一つの答えでは。
日本の軍事技術がどこ国と同等以上・以下関係なく第3国に入手されてよいものではないですよ。
ハンファのオースタル買収や株式取得の件が改もがみ型の情報流出にはつながらないってのは、前にもここの記事になってるので、ここ読んでる人で誤解してる人は少ないと思いますけどね。
予想価格10.5億ドル~12億ドル?
イージス艦一隻より安いのに驚きますね
スピアヘッド級遠征高速輸送艦のデザインが近未来的過ぎて本当に好き❤️