米国関連

高価過ぎたF-22、開発の終わらないF-35、この教訓を次世代戦闘機「FX」にどう活かす?

米空軍が現在、研究を行っている次世代戦闘機「FX」は、F-22ラプターと、F-15C/Dの後継となる制空戦闘機で、F-35Aを補完する存在として位置づけられている。

高価過ぎたF-22、永遠に開発の終わらないF-35で得た教訓を「FX」にどう活かす?

米空軍の「FX」は、接近阻止・領域拒否(A2/AD)の空域でも活動が可能なよう、高度なステルス性と、高度に進化したセンサー類を搭載し、長射程の空対空ミサイルと、指向性エネルギー兵器を搭載するだろうと言われている。

単座戦闘機パイロットは、自機の周囲をアナログな方法で常に監視、センサー類を駆使して近距離から遠距離まで監視、同じ飛行部隊の仲間と、支援すべき地上軍の指揮官と常に交信しながら、戦闘機を飛ばし続けているため、タスク飽和していると言われるほど忙しいが、「FX」に搭載されるAIは、この状況を改善する助けになるかもしれない。

そうでなければ、近い将来、無人戦闘機への航法指示、目標への兵器発射・投下の調整などが任務が追加されれば、そのタスク処理に追われ、敵機の接近に気づくことなく撃墜されるだろう。

ただし、AIが単独で「FX」を制御し、制空戦闘任務を行えるようになるのかは未知数だ。

今の所、「FX」が完全な無人機になるという話はないが、高度なステルス性を活かした偵察など、複雑でない任務の場合、AIの操縦による無人機として使用される可能性はある。

出典:US Air Force / Photo by: Staff Sgt. Kate Thornton

米空軍は「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」という戦略を実現するため、低観測性を重視しステルス機を開発してきたが、今後もこの方針は変わらないだろう。

しかし、中国やロシアの低周波を利用したレーダー開発や、各種センサー技術の進化によって、高周波に対するステルス技術だけでは、いずれステルス戦闘機は「ステルス」を無力化されてしまう可能性がある。

やはり、機体の形状制御で実現するステルスは、あとからのアップグレードが非常に難しく、逐次改良が加えられる地上配備型のレーダーに対して、長期間の優位を保つのは至難の業だ。

かといって、数年間隔で、新型機を開発し量産するのも現実的ではない。

このようなステルス機の弱点については、米空軍も承知なはずなので、如何にこの問題を克服し、「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」という戦略を実現・維持するのか非常に気になる点だ。

ただし、米空軍の「ステルス重視」は、米海軍にとっては必要のない能力と捉えているようで、海軍は独自に次世代戦闘機「F/A-XX」を研究している。

米空軍の「FX」も、米海軍の「F/A-XX」も、第6世代機として分類されているが、要求する性能に食い違いを見せており、米国や欧州の第6世代機に共通するのは、もはや無人機との連携、通信機能を強化しネットワークで繋がるという部分ぐらいだろう。

以前、「米海軍が第6世代戦闘機「F/A-XX」を単独開発する理由!第5世代戦闘機が犯した過ちとは?」という記事で言及したが、第6世代戦闘機を開発する国は、第5世代戦闘機が犯した過ちも避けなければならない。

第5世代戦闘機は、ステルス性能と、BVR(視界外戦闘)に重点を置いて開発されたため、WVR(視界内戦闘)のパフォーマンスと調達性(価格)を犠牲にするという過ちを犯した。一番重要なのは「手頃な価格」の実現であって、もし、購入するにも高価で、飛行させるにも高価で、開発が永遠に終わらないほど複雑なシステムを持つ第6世代戦闘機であれば意味がない。

余りにも高価過ぎたF-22、共同開発特有の仕様に対する要求の違いで開発が永遠に終わらないF-35で得た教訓を、米空軍は「FX」に、どの様に活かすのだろうか?

補足:開発が永遠に終わらないF-35とは、共同開発特有の仕様に対する要求の違い=F-35は出資金に応じて開発パートナー国が、F-35に自国で開発した兵器・使用したい兵器の統合(使用出来ように、火器管制システムに組み込む事)を要求し、ソフトウェアの開発に時間が掛かっている事を指している。米国が単独開発していれば、米国製兵器の統合だけで済んだという意味だ。F-35の欠陥について、開発が永遠に終わらないと言う意味ではない。

※6月22日20:30、補足を追加記述しました。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain F-22

米海軍が第6世代戦闘機「F/A-XX」に求めるのは、ステルス化したF-14トムキャット前のページ

AIM-120を超える長射程実現!米空軍、新型空対空ミサイル「AIM-260」公表次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国がHIMARS提供を正式発表、ドイツに続き英国もMLRS提供を表明

    予告していた通りバイデン政権は米国製の多連装ロケットシステム「HIMA…

  2. 米国関連

    パトリオットによるキンジャール迎撃成功、ロシア軍から確実な攻撃手段を奪う

    米国防当局者は「パトリオットシステムがロシア軍の極超音速ミサイルの迎撃…

  3. 米国関連

    サンタはソリではなくC-130でやって来る、米空軍が恒例のクリスマス・ドロップ作戦を実施

    米空軍は世界で最も遠い南太平洋上に点在する55以上の離島に物資を届ける…

  4. 米国関連

    米国で高まる嘘つき大統領への批判、リーダーシップの欠けたバイデン政権は敵へのギフトに過ぎない

    バイデン大統領は国民に対する演説の中で「アフガニスタンでの失敗にも関わ…

  5. 米国関連

    極超音速兵器開発で先行する露中への回答、米国、極超音速兵器「AGM-183A」のイメージを初公開

    米国のロッキード・マーティンは最近、極超音速兵器開発プログラム「AGM…

  6. 米国関連

    プーチンの狙い、冬の電力遮断でウクライナ人から妥協を引き出すこと

    ホワイトハウスのカービー報道官は「ロシア軍による大規模な都市攻撃は長い…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    日本人は「登場した時点で究極の完成品」でなければならないと思っている人が多いのですかね
    そんな人たちが「開発は永遠に終わらない、だから失敗作」といっている印象があります

    2
    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    日本はロシアや中国みたいにありもしないものをあると言ったりはしませんw
    プラズマステルスだのアンチステルスレーダーだのじゃなくて真っ当に技術試験機作って堅実に技術を蓄積しております

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    ステルスが無力化されればステルス機が死ぬという勘違いはいつになったら正されるのだろうか…
    高いステルス性をもった機体が落とされるなら、それより低いステルス性しか持たない機体などもっと早い段階で落とされる
    ステルスが死ぬときは航空機が死ぬ時だ

    1
    • イトーキン
    • 2019年 6月 22日

    アメリカが80年代に研究していたCCVやハイマットは復活しないのだろうか。

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    f16もf15も未だに改修が行われているもので、完成などしていないどころか、登場初期からの不具合解消もできてないものもあるのに、どこの世界に完成した機体があるんだろう?

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    あと、f35って有視界戦闘でもf15やf16相手に圧倒的な性能見せつけたのは専門家でなくても、レッドフラッグとかの演習での結果でよく知ってるはずだけどな

    2
    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    ステルス機なんて航空宇宙産業後進国の日本には無理な案件だから無駄なプロジェクトに税金は投入しない事だな
    これが一番利口な判断

    1
  1. 自衛隊の装備品の購入金額が高騰するのは単年度で購入する為で、まとめて発注すればかなり単価を下げられます。
    例えば海上自衛隊のあさひ型護衛艦の場合二隻同時に発注しただけで一隻当たり約50億円価格が下がったといわれています。
    F3の場合でもF2とF15近代改修型代替機を確定発注すればかなりの価格低下を見込めるはずです。
    ただF3の輸出は望めないでしょう。
    F3の開発意義は開発に成功すれば合衆国空軍の次期主力戦闘機の購入が可能になる可能性があるという事、
    本邦の航空機産業を維持、発展できるという点で十分安全保障上の利点があります。

    2
      • 匿名
      • 2019年 6月 23日

      > F3の開発意義は開発に成功すれば合衆国空軍の次期主力戦闘機の購入が可能になる可能性があるという事

      そんなモン買ったって喜ぶのはカタログミリヲタとプラモ大好きオジサン位なのでは?
      莫大な血税使ってカタログミリヲタ位しか喜ばれず国民に忌み嫌われる様な軍用機なんて、日本には不要です

      どっちみち新しいオモチャも操縦ミスでバタバタ墜落させるのがオチですし…

      2
    • 匿名
    • 2019年 6月 23日

    第6世代機の必須条件は“船頭多くして船山に登る”状態の解消
    国際共同開発の停止なんではなかろうか?
    要求性能も予算も仮想敵も全く違う国が集まってもいいもの出来ない
    今飛んでる航空機で開発で炎上しなかった機体って基本単独開発したモノばっかりだよね

    1
      • 匿名
      • 2019年 6月 25日

      軍用機の場合は旅客機のように、Working togetherは成立しないのでしょうね。

      2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP