米国関連

戦闘機F-16は一体いつまで売れ続けるのか?新たにボツワナとチリが購入国として浮上

ロッキード・マーティンは今月21日に行われた決算説明会の場で、アフリカ、南米、東南アジアの国々が新たにF-16Vを購入候補に挙げ検討を行っていると明らかにした。

補足:Lockheed looking to sell additional F-16s to customers in Africa, South America

新たにF-16Vの購入候補に上がった3つの国、一体いつまでF-16は売れ続けるのか?

ロッキード・マーティンはは今月21日に行われた決算説明会の場で「F-35を購入することができない顧客にとってF-16Vは最高の第4世代戦闘機であり、F-16とF-35は市場で競合する存在ではなく互いに補完しあう関係」だと説明、さらに新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が大きいテキサス州で生産されているF-35は納期に影響が出始めているが、新型コロナの影響が比較的軽微なサウスカロライナ州で生産されているF-16の生産に遅れはなく、バーレーン空軍向けのF-16Vが順調に製造が進んでいることをアピールした。

さらにF-16Vの新規受注に関してロッキード・マーティンはアフリカ、南米、東南アジアの地域を挙げたが、航空分野に詳しいティールグループのアナリストはF-16V新規購入を検討している国はアフリカのボツワナ、南米のチリ、東南アジアのインドネシアだろうと予測し、中でもインドネシアへのF-16V販売は特に可能性が高いと言っている。

そもそもインドネシアへのF-16V販売はトランプ政権がロシアのSu-35や中国の哨戒艇購入を諦めさせる見返りとして提案したもので、昨年11月にはインドネシア空軍の参謀総長がF-16Vを2個飛行隊分(恐らく32機程度)購入したいと公式に表明するなど既に知られた購入候補国だが、残りのボツワナとチリは完全に新規で浮上したF-16V購入候補国だ。

出典:Bob Adam / CC BY-SA 2.0 ボツワナ空軍のCF-5A

恐らくロッキード・マーティンはボツワナとチリのF-5更新需要を狙っているのだろう。

ボツワナの場合はノースロップが開発した戦闘機F-5(正確にはカナダのカナディアがライセンス生産を行ったCF-5A)を10機運用中でチリ空軍も14機のF-5が更新時期を迎えており、さらにチリ空軍の場合は46機運用中のF-16(Block50相当)に対するアップグレード需要も見込めるため、仮に候補に上がった国がF-16Vを購入(約60機)すればロッキード・マーティンは38億ドル(約4,000億円)相当の契約を新たに獲得できる計算となる。

補足:ブルガリア空軍向けのF-16Vを受注したロッキード・マーティンの契約から逆算するとF-16Vの純粋な機体価格は約6,400万ドルとなる。

因みに、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でロッキード・マーティンは2020年の売上が最大25億ドル(約2,600億円)減少するかもしれないと明らかにしたが、同社が2020年に見込んでいる売上予測は642億ドル(約7兆円)であり、F-35とF-16の2機種のみで3,000機を超えるバックオーダーを抱えているため何の不安も抱いていないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:VanderWolf Images / stock.adobe.com

条約は不平等? 米国、中距離核戦力全廃条約に続きオープンスカイ条約からも脱退前のページ

本当に笑えない、米空母ジェラルド・R・フォードを苦しめるエレベーターの呪い次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    社会的要因、Block4製造、受注減が重なりF-35の調達コストは上昇に転じる

    どうやらF-35の調達コストは進行するインフレ調整費用、製造現場のCO…

  2. 米国関連

    怪しくなってきたF-35プログラム、米空軍が新しい非ステルス戦闘機の開発に言及

    米空軍は航空戦力の好ましい組み合わせについて研究を開始したと報じられて…

  3. 米国関連

    米海軍、開発を進めている無人機MQ-25がF/A-18Fへの空中給油に初成功

    米海軍は7日、開発を進めている無人航空機「MQ-25 スティングレイ」…

  4. 米国関連

    自滅する米海軍、1年あたり12万9,600時間をメンテンナス遅延で浪費

    米海軍は艦艇に対するメンテナンスサービスの遅れについて分析を行い、18…

  5. 米国関連

    米エイブラムスと独レオパルト2のウクライナ提供、早ければ今週中に発表か

    WSJ紙は「バイデン大統領が早ければ今週中にもエイブラムスのウクライナ…

  6. 米国関連

    米国、米日豪印によるクアッド同盟を発展させ「太平洋版NATO」設立を希望

    米国務省副長官のスティーブン・ビーガン氏は31日、クアッド(QUAD)…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    まあ名作だよね
    近代化改修で中露のなんちゃってGen5では無視できない戦力になってるし
    これからも売れるでしょ

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    元々ユーザーであるチリがF16V購入というのはそれなりに理解できるけれどボツワナが買って何するんだろう。
    機体整備等はLMの社員が請け負うんだろうけれど。
    結果的には「オーストリアのタイフーン」のようにならないのかな。
    難癖付けるわけじゃないけれど、維持できるだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 4月 23日

      適当にググった範囲では人口少ないけどダイヤモンド産出でわりと裕福な国のようだ
      内陸国だけど接する南アフリカがグリペン十数機しかないし他の国は旧式のミグばっかり
      ちょっと金出してF-16V買えば制空権は安泰かと

        • 匿名
        • 2020年 4月 24日

        そうですね。
        経済的には裕福で政治も安定していて教育水準も高くて。
        アフリカの優等生と言われているようですね。
        しかもエイズの影響は今だ足を引っ張っているようです。
        元々レッドチームとつながりが深いようです。
        (北朝鮮とは断行したようですが)
        となると、
        維持に高い技術と費用の戦闘機を購入→維持できない→助けを求める→中国が乗り込んでくる

        というのがアフリカの定番のように思われます。
        また偏見かもしれないけれど、どの画像見ても土埃っぽい。
        あれでは電子機器がやられてしまいそう。

          • 匿名
          • 2020年 4月 24日

          以下を訂正します。
          >しかもエイズの影響は今だ足を引っ張っているようです。
          しかしエイズの影響は今だ足を引っ張っているようです。
          の、記載間違いでした。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    全く色褪せない基本設計の確かさ
    過去数々の名機が生まれてきましたが、F-16は我々の世代ににとってまさに名機の代名詞

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    生産型のF-16は1978年初飛行だから新規生産50年を記録しそう。

    インドネシアが買うって事はAAM-120他の搭載ウエポンも当然購入する事になるけど、インドネシアが開発費用を分担していたどこぞが開発している戦闘機はアメリカのウエポンが使えない。

    どちらも採用するなら兵器の共用が出来ないからインドネシアはそれぞれに兵器を用意する必要が有るから大変だ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    f16だけでも中小国なら十分過ぎる上にf35導入出来る国でも数揃える為に使える。挙げ句の果てに両方共に能力の割に値段が安い。こりゃlmはしばらく安泰ですね。

      • 匿名
      • 2020年 4月 23日

      バックオーダーで3,000っていうのが凄ご過ぎですね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    韓国航空宇宙産業もT-50派生機を使って、この辺りの
    F-5後継機の需要を取り込む腹積もりだったのだろうけど
    まさか、T-50技術支援相手のロッキードさんのF-16と競合するとはね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    中途半端なAndroid買うくらいなら型落ちiPhoneの方を選ぶだろ。それと同じこと

      • 匿名
      • 2020年 4月 23日

      てかF-16VってまんまiPhoneSEだな

        • 匿名
        • 2020年 4月 24日

        うまい例えですね。

        • 匿名
        • 2020年 4月 24日

        手抜きアイポンとF-16Vを比べるのは、流石にF-16Vに失礼だわ

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    F-16が世に出て40数年、その後に米空軍が新規開発した戦闘機はたった2機種。

    防空も地上攻撃も何でもござれでリーズナブル、まだまだ売れるよ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 24日

    最初はリッタークラスのエンジン積んだ軽自動車みたいな始まりだったけど、今はちゃんと普通車でバリバリ現役みたいな?
    余裕ある設計って大事ですね
    みんなのワークホース、大好きな機体です。

    • 匿名
    • 2020年 4月 24日

    ブラジルはグリペンを買って、チリがF-16となると、アルゼンチンはFA-50なんて買っていられないのでは。選考やり直しになってよかったかも。しかし次の機種となると、フォークランドを考えるとイギリスが絡むユーロファイター、グリペンは無理だし、最近はフランスとも疎遠みたいだから、A-4の中古を買ったのに倣ってF-16の中古を近代化して、になるのかなぁ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 25日

    初期のF16と最新型では性能は段違いに上がってるのに価格はお手頃。
    日本に共同開発で培われたカーボン一体形成やレーダー技術が入ってるのかな?

    • 匿名
    • 2020年 4月 26日

    F-16に限らず米戦闘機に一次構造体への一体形成炭素繊維適用は行われていない。
    二次構造体への炭素繊維適用に一次構造体用炭素繊維適用技術は必要ない。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP