トランプ政権は2025年8月「ウクライナへの長距離攻撃兵器=ERAM売却(最大3,350発)を承認した」と発表。ERAM(AGM-188AとRAACM)の発射母機はF-16とMiG-29で、初回納入は2026年10月に予定されており、F-16とAGM-188A ラスティ・ダガーの統合作業が順調に進んでいる。
参考:Test team rapidly expands F-16 readiness
参考:Zone5 Technologies
参考:CoAspire signs an MOU with MULTICUT of Denmark for RAACM Wings and Tails Production
参考:CoAspire’s RAACM Highlighted on Fox Business News with Mara Bartiromo on June 10, 2025
参考:CoAspire Ribbon Cutting at its New Production Facility in Manassas, Virginia
参考:America’s arsenal of tomorrow: Divergent 3D-prints cruise missiles
もう兵器生産というよりも製造アプローチ自体が根本的に刷新され、従来の常識では考えられないような生産上のコスト削減や時間の圧縮が可能になっている
米空軍は2024年に発行した長距離攻撃兵器=Extended Range Attack Munition(ERAM)の提案依頼書の中で「射程距離400kmのウクライナ向け弾薬」「2年以内に1,000発の生産が可能な設計」と要求していたが、米国務省は2025年8月「ウクライナ政府に対してERAM及び関連機器の売却を承認した」「最大3,350発のERAM、スプーフィング防止モジュール、YコードとMコードに対応したGPS、INS、EGIなど関連費用を含む売却総額は推定8.25億ドル」「これを購入するためウクライナはデンマーク、オランダ、ノルウェーからの資金と対外軍事融資を活用する」「請負業者はCoAspireとZone5 Technologiesだ」と議会に通知。
Janesの取材に応じたZone5も「ERAMはラスティ・ダガーベースのプラットフォームでエンジン始動に火薬を必要とせず、複数の発射オプション、亜音速飛行で926km以上の射程距離、自律的な地形追従能力、目標に最終突入する際の戦術的終端機動能力を備えている」と明かし、Aviation Weekも「入手した空軍の文書によればERAMの製造はCoAspireとZone5 Technologiesに分割される」「両社が供給するERAMの第1ロット=840発は2026年10月末までに納品される予定で、最初の10発は10月に納品される予定だ。ERAMはF-16とMiG-29で運用が可能であることを確認した」と報じた
ERAMの提案依頼書で要求された生産率(月平均42発)で3,350発を生産するには6年以上かかる計算だったが、ERAMの生産立ち上げは意外と早く、初回の引き渡しは10発と少ないものの「年840発」の供給を予定しているため生産率は月平均70発となり、3,350発の生産にかかる時間も4年以下だ。

出典:Eglin Air Force Base
Zone5のラスティ・ダガーはAGM-188Aに指定され、エグリン空軍基地は13日「2026年3月にF-16と懸架ラグ付きの低コスト大量生産型弾薬ファミリー=Family of Affordable Mass Munitions-Lugged(FAMM-L)との統合を極めて迅速に実行した」「この一連の試験には兵器の適合性および機能の確認、搭載手順の検証、そしてFAMM-LとF-16間の飛行適合性の確保が含まれ、この取り組みの集大成としてF-16でのFAMM-L携行および投下試験が実施された」と発表し、公開された写真にはAGM-188A ラスティ・ダガーを携行するF-16が映っている。
Zone5もLinkedInへの投稿の中で「エグリン射爆撃場で行われたERAMの実射試験において空軍を支援できたことを光栄に思う」「今回の試験成功によりラスティ・ダガーが備える成熟した次世代型の低コスト長距離攻撃能力が実証された」「これは重要技術を成熟させるために防衛産業界と空軍が緊密に連携した際、いかに大きな成果を達成できるかを示す明確な証だ」と述べており、ウクライナへの10月納入に向けてF-16への統合作業が順調に進んでいるようだ。
CoAspire製のRAACMも今年1月に実射試験を行っているものの正式な型式は指定されておらず、ウクライナ向けのERAMに選定されなかったAndurilのバラクーダ-500MはAGM-189A、LeidosのSCMはAGM-190Aに指定されている。
ただし、CoAspireは「バージニア州マナサスにある自社施設で本格的な量産を開始した」と述べており、今年1月には新生産施設(Andurilが建設しているアーセナル1のような大規模なものではない)のオープンも報告し、コロラド州ラブランドに進出したデンマーク企業のMulticutと主翼・尾翼の将来生産に関して覚書を締結しているため、RAACMも量産に向けた動きは止まっていない。
このような低コスト兵器の量産を支えているのはDivergentの3Dプリンティング技術で、同社を共同創業した31歳のルーカス・チンガー社長兼最高執行責任者は「米国は飛躍的な技術(リープフロッグ・テクノロジー)を導入することで世界トップの製造基盤を構築するチャンスがある」「一部の人々がすでに気づいていた現実に今や誰もが目覚めた」「今日、明日ではなく今すぐ大規模な弾薬の確保が必要であるというコンセンサスが国防総省内に形成され、それが我々のビジネスを加速させているのだ」と述べている。
DivergentのAIで制御された3Dプリンターは、アルミニウムと独自の特殊合金を積層して巡航ミサイルのエアフレームを製造でき、この技術で製造した新世代の巡航ミサイルは従来の巡航ミサイルの1/10の価格(20万ドルから50万ドル)を実現し、しかもDivergentの3Dプリンター1台で年間数百発分のエアフレームを製造できるという。
The Arsenal of Freedom Tour just visited Los Angeles, California.
Across the nation, we are moving with urgency to ensure our warfighters have the equipment to win — fully engaged, fully producing, and American-made. pic.twitter.com/8EuopD74WY
— Department of War 🇺🇸 (@DeptofWar) January 10, 2026
ヘグセス国防長官もDivergentの工場を訪れて「この国を愛する愛国者として、君たちがここで成功を収めなければ我々の兵士たちが勝利することはない」「革新、競争、規模、スピード、そして費用対効果、これらの全てが現代の戦場で勝つために我々が必要としているものだ」と述べ、CoAspire製のRAACMもDivergentの3Dプリンティング技術でエアフレームを製造している。
さらにDivergentもMach Industriesと提携し、飛行可能な自律型攻撃機ヴェノムのプロトタイプを「構想」から「飛行」までわずか71日で実現させて注目を集めている。
In partnership with @Mach_Industries, Venom moved from clean-sheet concept to flight hardware in just 71 days using the DAPS™ manufacturing platform.
This milestone demonstrates how software-defined manufacturing delivers deployment-ready hardware at a fundamentally different… pic.twitter.com/JuR3h8i4fO
— Divergent (@Divergent3D) February 17, 2026
Divergentはヴェノムの成功について「この画期的な成果はソフトウェア定義型製造が『実戦配備可能なレベルのハードウェア』を『従来とは根本的に次元の異なるスピード』で如何に提供し得るかを明確に実証している」と述べ、もう兵器生産というよりも製造アプローチ自体が根本的に刷新され、従来の常識では考えられないような生産上のコスト削減や時間の圧縮が可能になっており、こうした技術も何れはハイエンドの兵器生産にも活用されてくるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Eglin Air Force Base





















3Dプリンターで、軍用の物を製造できるのいいですね。
レイセオンのサプライチェーンに、中国企業が大量にあることが問題視されていました。
Andurilの日本企業着目は、中国の制裁によりサプライチェーンをどうするのかが影響したというのもありましたが、中国依存回避に3Dプリンター1つの大きな解決策になるかもしれませんね。
Stratasys・3D Systems・HP・GEの米国企業4社が、産業用3Dプリンターの世界シェア上位に食い込んでいるようですが、3Dプリンター産業クラスターがアメリカに複数あるため今後広がっていくのか注目したいと思います。
A-4ですかぁ。
こういう場面では未だ現役なんですね。
3Dプリンターは兵站に革命をもたらすのでペンタゴンも以前から関心があった
アメリカやイタリアには有力な工業用3Dプリンターメーカーがあって中々にすごいことになっている
テスラの製造ラインでは車体フレームをイタリア製3Dプリンターでボコボコ作っている
恐らく将来的には戦闘機用ジェットエンジンも3Dプリンターで製造する事になる
この技術は金属加工にも応用できるものの専用粉末冶金限定となるので3Dプリンティングに特化した材料開発と製品設計が必須になるので激しい開発競争が始まる(或いは既に始まっている)だろう
割と最近のロボットアニメでスーパーロボットが自分の強化パーツを3Dプリンターで自作するシーンがあってワロタ。
それでも生産月70発程度なんですね。撃つの半日もかからなそう。3Dプリンターで効率化になるなら、ライバルも同じことするからアドバンテージにはならない
人件費というライバル側のアドバンテージを圧縮できます。
ロシアがこんなのを簡単に真似できますかね?
でも、もし相手も同じことをできるなら、こちらも効率化を進めないと遅れを取ることになりますよ。
逆。既にロシアはゲラン5という低価格巡航ミサイルをバンバン実戦投入してて、ウクライナ側も追いつかないとまずいので導入しただけ。
ロシア相手にウクライナがアドバンテージを得るなど100年早い。アドバンテージを取りまくってるロシアに何とかして食らいつくためのERAM供与よ。
君の言うとおりならなぜロシア軍はずっと膠着しているんだ?
現実見よう
軍事用だけでなく民間向けでも、3Dプリンターの利用促進はキモになってくるなあ。
日本企業も頑張れ。
武器なんて、利用目的が明確かつ絞られてたら、あっという間に生産できるもんなんや。MRAPといっしょ。
いろいろやらせようとするから、コストと時間が掛かるの。
低コスト兵器、プラットフォームへのスピーディなマッチングも重要になってきますよね。
兵装側の開発、製造で時間短縮出来てもプラットフォーム側のシステム変更に莫大な予算と時間が掛かっては意味ないですから。
将来的にプラットフォーム側に大きな改修の必要のないマッチングフリーの兵器ってのも重要になってくるのかなと思います。
AIと3Dプリンタが進化すれば新型MSの開発も数ヶ月で出来るなんてガンダム界隈のネタもあながちネタじゃなくなってるかもしれませんな…
Geminiに聞いてみました。
>日本のミサイル開発で、キックモーターケースを積層技術で作るって話無かったっけ?
はい、その通りです。日本のミサイル開発において、ロケットモーターケース(エンジン外筒)を従来の製造法ではなく、「フィラメントワインディング(積層)技術」や「金属積層造形(3Dプリンター)技術」を用いて作る研究が進められています。
具体的には、以下のような動きがあります。
1. CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の積層技術
ミサイルやロケットのモーターケースを軽量化・高強度化するため、防衛省は「高耐熱性ケース技術」の研究を行っています。
フィラメントワインディング法: 炭素繊維(カーボン)に樹脂を染み込ませながら、芯材に何層も巻き付けて(積層して)成形する技術です。川崎重工業株式会社などの航空宇宙メーカーが、この技術を用いた大型CFRP部品の製造実績を持っています。
日本の防衛企業は宣伝しないのよね。
>発射母機はF-16とMiG-29
MiG-29と言う事はウクライナに現存する全てなのかスロバキア空軍のNATO規格改修型のみの対応なのか。それともコクピット内タブレットからのワイヤレスデータ転送で機体問わずなのかな。
やはり民間での生産技術やプラント建造技術が飛躍的に上昇したからこそ、軍需にも応用出来ているなと実感した