米国関連

潜水艦と無人機の連携、米海軍が原潜で使用する水中発射型UAVを120機導入

米海軍が攻撃型原潜で使用する水中発射型UAV「Blackwing(ブラックウィング)」を120機調達すると報じられて注目を集めている。

参考:US Navy plans to buy 120 submarine-launched Blackwing UAVs

米海軍は水中発射型UAV「Blackwing」の本格導入を開始、攻撃原潜がUAVを使用して戦場環境の認識力を強化

昨年末に米海軍が攻撃型原潜の戦場認識力を拡張するため水中発射型の無人航空機(UAV)を活用を進めていると報じられていたが、米海軍はエアロバイロメント製の水中発射型UAV「Blackwing(ブラックウィング)」を120機調達すると新たに報じられており、攻撃原潜とUAVの統合は実験や検証を終え実用段階に入っているのかもしれない。

米海軍は攻撃型原潜の主要兵器である魚雷、対艦ミサイル、巡航ミサイルの射程が飛躍的に拡張された結果、潜水艦が備えている伝統的な戦場環境の認識力(ソナーや水上捜索用レーダー)とギャップが生じている問題に対処するため2017年頃から無人航空機の活用研究に着手、2017年10月には徘徊型無人航空機「Switchblade300」ベースの水中発射型UAV「Blackwing」開発契約をエアロバイロメント社と締結した。

※4年前のBlackwing紹介動画:最新の紹介動画はエアロバイロメントのホームページで見ることが出来る

このBlackwingは非常に小型なためレーダーに捕捉される危険性が低く動力に電動モーターを採用しているので赤外線シグネチャの発生も微弱という特徴を備えており、GPSと慣性航法システムを活用して自律的に哨戒飛行を実施してEO/IRセンサーで収集した情報を戦術データリンクを通じて潜水艦に送信するという仕組みだ。

チューブ状のキャニスターに収められたBlackwingは潜望鏡深度からデコイ発射装置を使用して発射、海面に到達したキャニスターからBlackwingが空中に向けて射出されるのだが、原潜側はBlackwingの飛行を常時制御する必要がないので送信されてくるデータを受信するだけ=つまり原潜の位置がバレる可能性は非常に低いと思うが、データを受信するためには通信アンテナを海面上に露出させる必要があるので全くの「ノーリスク」だとは考えにくい。

しかし米海軍がBlackwingの本格導入を進めているということはリスクを容認(もしくはコントロール可能)できるほどのメリットがあるという意味なので非常に興味深い決断だ。

米海軍が発注した120機のBlackwingは2021年8月に初号機が引き渡され2023年5月までに全ての納品が完了する予定で、このような水中発射型の無人航空機は複数の防衛産業が実用化済みもしくは開発を進めているため米海軍以外にも採用(少なくともフランスは豪州のアタック級潜水艦に水中発射型UAVを盛り込んでいるのでフランス海軍の原潜にも採用されている可能性がある)してくることが予想される。

関連記事:米海軍、潜航中の攻撃型原潜からUAVを発射して敵艦を見つける

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Ashley Hedrick/Released

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    >データを受信するためには通信アンテナを海面上に露出させる必要があるので全くの「ノーリスク」だとは考えにくい。

    「コイツの電波が届く範囲内に原潜がいる」って狼煙上げてるようなもんだから返って発見が容易になるような…

    4
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      本文にもあるけど戦術データリンクを介するから衛星か管制機からの受信になりますよ

      9
        • 匿名
        • 2021年 3月 10日

        航続距離の問題もあるからどう頑張っても潜水艦の位置の目安にはなってしまうと思う

        3
          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          放出から起動まで時間を置けるようなので十分離れてから飛び立たせるんじゃない?

          3
          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          原潜自体は何ヶ月でも潜っていられるから有事において航続距離から位置を推定するのは無理。寄港歴とかなら役に立つかも

          1
            • 匿名
            • 2021年 3月 11日

            どう考えてもUAVの航続距離でしょ。

            9
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    海自でも実用化するなら、機体名はせいらんにして欲しい

    3
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      晴嵐は攻撃機だから、そこは水偵でしょ。

      10
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    基本使い捨ての偵察用ドローンになると思うけど
    衛星との通信ができるとなると相当お高くなると思うんだよね
    おいくら万円なんでしょうかね?

    7
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      このUAVで敵勢力下でも偵察が容易に行えるようになるのと、対艦ミサイルがより効果的に使用可能という点で評価出来ると思われるので価格の話は後で良いかと思います、衛星使うなら味方全体で情報共有出来るのでP-8からミサイル攻撃する時とかにも使えるようになってそうですね、サブハープーン(魚雷発射管から撃つ対艦ミサイル)登場以来の出来事の様な気がします、日本も密かに‥かな?

      1
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      遠からず徘徊型自爆ドローンの水中版も実用化されそうだよな。アメリカ・ロシア・中国・トルコ・イスラエルetc.と、何処の国が最初に出すかはわからないけど。

      2
        • 匿名
        • 2021年 3月 10日

        徘徊型水中自爆ドローンが量産化された暁には強襲上陸作戦なぞ不可能になり結果的に世界が平和になりそう

        2
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      現在は使い捨て常識のソノブイも、当初はけっこう高価だったので、そこを惜しんだ海自は着水探知哨戒機PS1という方向を後押ししてしまったが、完成のあかつきにはソノブイが先に価格破壊されてしまい、存在意義が問われる失策を犯した。
      今は高そうな無人機も、案ずるより産むが易し

      1
        • 匿名
        • 2021年 3月 11日

        PS-1は殆ど役に立たなかったそうですね。
        今ではソノブイの効果も厳しく、ヘリから吊り下げるソナーが有効だそうです。

        3
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    潜水艦でも徘徊型の自爆ドローンって運用出来ないのかな?
    潜水艦が海中で放出後に海面に浮上してから舞い上がり目標の敵艦を攻撃する。
    与える損害が小さくても敵艦隊の行動を止めることが出来れば、その間に防衛体制の強化とかが出来ますからね。
    日本の離島防衛でドローンは無関係なわけがありません。

    1
      • ソソソナス
      • 2021年 3月 10日

      91式機雷が似てると思います。

      1
      • 匿名
      • 2021年 3月 10日

      いちいち水面に出なくても船底か特にスクリュー目掛けて突っ込めばいい

      1
      • 匿名
      • 2021年 3月 12日

      うーん、それ機雷でしょ

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    最近米海軍金ない金ない言ってたけどUAVも買わなきゃいかんし原潜も買わなきゃいかんし大変だなあ

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    本当に同じ時代の軍隊なのか?
    って疑いたくなるくらい本邦自衛隊との差が激し過ぎて泣ける

    2
      • 匿名
      • 2021年 3月 11日

      はい、本当に同じ時代の軍隊ですよ。答え合わせができて満足しました?

      9
        • 匿名
        • 2021年 3月 11日

        親切に教えて頂きありがとうございます
        今や名前を聞いたことも無い発展途上国ですら無人攻撃機で戦争してる時代だから
        自衛隊の周りだけ時空が歪んで50年くらい前に取り残されているのかと思いましたよ

        2
          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          UAVの方が自衛隊の主力装備のほとんどより安価だからこそ途上国で導入されているわけですが、現時点では自衛隊の装備の方が火力も性能も格段に上です。ただしその力関係は将来的には覆る可能性が高いので投資すべきですね。

          5
          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          今のUAVの普及はかつての地雷の普及と同一だと考えればわかりやすいのでは。

          1
          • 匿名
          • 2021年 3月 11日

          多分あなたの周りの空間(あなたの言うところの「本邦」)が歪んでるだけだと思いますよ。

          4
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    リムファクシかな?

    4
      • 匿名
      • 2021年 3月 11日

      無人機出し尽くした後をボコボコにしてやった思い出

    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    通信アンテナをファイバーケーブルで数キロ曳航すれば艦の位置特定に時間が掛かるし毎回長さを変えればナオよろし。

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    これが全長49.5㎝ 翼幅68.6㎝ 重さ約1.8㎏
    電動ゼロ戦のラジコンが・ 全長78.5㎝ 翼幅104㎝ 重さ900g
    リンク

    周囲に対潜ヘリがいないかとか、エンジン止めて聴音している他の艦がいないかとか
    魚雷攻撃や巡航ミサイル発射前の偵察用かな

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 11日

    低速でいいから自力で航行できる有線UUVからアンテナ出すのはどうですかね。

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 11日

    時限式で始動するようにして、潜水艦はさっさと離脱。
    後はUAVによる観測データーを元に長距離ミサイルによる
    アウトレンジ攻撃の嵐とか。

    1
    • 名無し
    • 2021年 3月 11日

    潜水空母の復権きそうですか?

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 11日

    通信受けるのは光ファイバー曳いたUUVの方がよさげ、それでもケーブルが短ければまだマシレベルという話でしか無い。安全性考えたら長いにこした事は無いけど強度とか絡まり考えるとどこまでが現実的なんだろうか。

      • 匿名
      • 2021年 3月 11日

      有線魚雷が10数kmとか行けてるから、遅い&通常は回収が前提のUUVならもうちょい行けそう。

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 11日

    空中に浮かべるより水中水上漂わせるのはほぼ電力も燃料も使わないから有線にしろ有利な材料しかないよね 機雷というより積極的な空中地雷兼センサー そのうち安くなると思うけどかなり効果が上がるからまぁまぁ高くても導入するわ 衛星経由でデータリンクの目も兼ねられて艦隊や高い新鋭機リスクを犯して前に出さなくても潜水艦だけでカバーしちゃうし
    かなり守る側有利なシステムだから封鎖をなんとか突破して大洋に出たい側は嫌だろうなぁ

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