米国関連

米国、ウクライナが年内に反攻に必要な戦力を準備できる可能性は低い

米CNNは28日、ホワイトハウスの関係者は「ウクライナが2月24日以降に奪われた土地を全て取り戻すことが出来る」という確信を失いつつあると報じている。

参考:Biden officials privately doubt that Ukraine can win back all of its territory

奪われた土地を全て取り戻すのに必要な戦力をウクライナが年内に準備できる可能性は低い

初戦でロシア軍の侵攻を退けたウクライナ軍に武器を提供すれば「2月24日以降に奪われた土地を全て取り戻すことが出来る」と米国を含む西側諸国は信じていたが、ロシア軍は主要目標に掲げたドンバス地域に予想を上回る兵力と装備を投入、相変わらず大きな損失を被っているものの圧倒的な火力で抵抗拠点を破壊する戦術に切り替えてきたため、砲兵戦力で劣るウクライナ軍はロシア軍並な損失を被るようになり、抵抗拠点が破壊され後退→抗拠点が破壊され後退を繰り返し、ルハーンシク州の象徴的だったセベロドネツクまで失ってしまった。

出典:Сергій Гайдай ルハーンシク州の象徴的だったセベロドネツク

急速に状況が悪化した理由の一つは旧ソ連製の砲兵装備が弾薬不足に陥っている点で、米国や同盟国は世界中の備蓄弾薬から旧ソ連規格の152mm砲弾やロケット弾などをかき集めて引き渡してきたが、国防総省の関係者は「我々がアクセスできる国の備蓄の大半が投入済みで、この取り組みは事実上終わりを迎えている」と述べており、ロシア軍はウクライナ軍の旧ソ連製弾薬の備蓄量とNATO規格への兵器体系移行にかかるギャップを狙い撃ちしているとCNNは指摘している。

つまり西側諸国は旧ソ連製弾薬の枯渇を見越してNATO規格への移行を進めてきたが、ロシア軍が予想を上回る兵力と装備を投入をドンバス地域に投入してきたため「前線を支えていた旧ソ連製の砲兵装備の弾薬消費が早まり、ウクライナ軍の砲兵戦力に空白が生じてしまった」という意味で、ウクライナ軍兵士への訓練が行き渡り「大量の西側製兵器を受け入れる体制」が整う前に勝負を決めないとロシア軍は苦しくなるため、どれだけ損害を被って前進してウクライナ軍の弾薬備蓄を消耗させてきたのだろう。

出典:Сухопутні війська ЗС України

最大の誤算は「初戦で大きな人的被害を被ったロシア軍は総動員を発動しないかぎり兵力不足に陥る」という予測を覆して「大砲の餌」を戦場に供給し続けてきた点で、もし予測が的中していればウクライナ軍が保有する旧ソ連製砲兵装備の弾薬はまだ残っていたはずで、ここに西側諸国が提供した砲兵装備が加わることで「6月末の本格反抗」が実現していたのかもしれない。

米軍関係者と欧米の情報当局者も「奪われた土地を全て取り戻すのに必要な戦力をウクライナが年内に準備できる可能性は低い」という点で一致しており、ホワイトハウスの関係者はCNNに対して「ゼレンスキー大統領が定義するウクライナ勝利の条件を変更すべきか内部検討が始まっている」と明かしているが、これは戦争終結のために米国がウクライナに圧力をかけて「領土の一部をロシアに譲渡させる」という意味ではないとも述べている。

出典:President Of Ukraine

一体何を検討しているのかは謎だが「ウクライナが奪われた土地を全て取り戻すことが出来る」という確信を失いつつあるの事実で、もしバイデン政権が武器供給量を制限すればゼレンスキー大統領は半強制的に勝利条件の変更を余儀なくされるだろう。

因みにCNNは「価格の高騰でロシアの石油収入は膨らむばかりで、米国や同盟国はロシアが石油取引でこれ以上利益を得られないようにするため取引価格に上限を設けることを検討しているが、どの様な方法でいつ実施されるのか不明だ」とも指摘している。

関連記事:ロシア軍がゾロテ周辺の入植地を制圧、米国もセベロドネツクからの撤退を確認

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • もへもへ
    • 2022年 6月 28日

    ウクライナ人口が4400万だから根こそぎ動員すれば440万はいける。
    今までの損害なんてせいぜいたかが10万、20万なんだから人はまだまだいる。
    まだ400万以上の兵隊にできる人間がいるんだから、あとは武装させる兵器さえ渡せば東部2州とクリミア奪還は
    確実。
    どうせプーチンは言葉だけで核使う度胸なんてないんだから、核なんて気にする必要はない。

    人的資源で圧倒してるんだから、かつての中国軍のような人海戦術を行えば人がいないロシアなんて物の数ではない。

    ただまぁ今のウクライナ
    援助中毒になってるからそろそろ援助が切れてる多々けるように貧者の戦いをもうちょっと考えたほうがいいかもしれない。
    誘導砲弾やジャベリンをバカスカ打てる今が異常なだけで、本来はそんなのできないのだから。

    5
      • 名無し三等兵
      • 2022年 6月 28日

      >あとは武装させる兵器さえ渡せば
      この解決不可能な一番の難問をさらっと言わないで下さい
      それに根こそぎ動員となれば徴集兵士は全員ずぶの素人です
      それだけの頭数を揃えても訓練は誰がするのですか?
      400万人を教育するのにどれだけのプロの軍人が必要ですか?
      それだけの人数を前線から引き抜くのですか?、教育機関は?
      机上の空論です。

      >どうせプーチンは言葉だけで核使う度胸なんてないんだから、核なんて気にする必要はない。
      これは同意ですが、ならば欧米諸国の直接軍事介入、地上軍は
      派遣せずとも航空支援だけでも十分です

      38
      • マロリー
      • 2022年 6月 28日

      人が数が足りないんじゃなくて、兵器の数が足りないんだよ。無駄に増やしても、無駄に前線に送っても、無駄に兵站食うし、砲弾の的になるだけ、意味がない。
      最前線では、ウクライナ兵とロシア兵が肉薄して小銃やナイフ持って殴りあいしてると思うか?

      互いに敵の姿が見えないような遠くから、高射砲で砲弾を放り投げあってるだけだよ。 んで、地面がある程度更地になって、攻撃や来なくなると、機甲部隊を送って占領する。 大量の(素人)歩兵が突撃するような旧日本軍的人海戦術をするくらい、肉薄し切迫してる状況はほぼ死と同じ、意味ない。完全な無駄死に。

      プーチンは言葉だけ←マジで言ってる?あいつはわりとマジでどんな犠牲を払っても必ず目的は達成するというかなり強固な有限実行タイプだぞ。 それでロシアのトップに間上り詰めた人間だぞ。ましてや、今のプーチンは完全にイってるからマジで何をしでかすかわからん。

      15
      • ナイトアウル
      • 2022年 6月 29日

       まだ人が居るって、それこそ戦争で主力になる奴は戦後に国を立て直すための貴重な戦力でもある訳で過去の日本みたいに赤紙一枚ですりつぶして良いレベルの話じゃ無いだろ。

       似たような戦争?だと朝鮮戦争だと思うが韓国人口の10%以上は死んでいるし、そこから現状レベルまで行くのにどれくらいの期間を掛けているのか。終戦が来たとして国がボロボロで借金まみれの状態かつ、どこかの時点でEU加盟が果たされたら果たして国民はどれ位残るんだろうな。

      >人的資源で圧倒してるんだから、かつての中国軍のような人海戦術を行えば人がいないロシアなんて物の数で
       平原で人海戦術展開して貰えるならロシアとしても旧式装備の機関銃・グレネード・機関砲とかの有効活用出来るから有り難い事この上ないのでは?

      6
    • 名無し2
    • 2022年 6月 28日

    各国有権者がちょっとした贅沢を控えて増税に同意すればロシアなど簡単にひねりつぶせる計算ですがどうすれば贅沢を抑えて戦争に集中できるのか猛暑のせいで全く思いつきません。全部ロシアが悪い

    21
      • hiroさん
      • 2022年 6月 28日

      猛暑は関係無く何を言われているのか理解出来無いのですが?

      6
        • 名無し2
        • 2022年 6月 29日

        NATOとロシアの戦力比や経済力の差、正義のなさからしてロシアの勝利など最初からありえませんが、酷暑の北半球の電力需要が逼迫している中、ロシアへの経済制裁を行い戦争にお金を回す理由を有権者に対して説得するのに各国とも苦労してるように見えます。

        6
    • 黒丸
    • 2022年 6月 28日

    自国の兵士は有権者かその子供 という感覚が当たり前の
    西側諸国にはできない兵士の使い方。
    ロシアの強烈な異質さを感じる記事です。

    13
      • 名無し
      • 2022年 6月 28日

      異質さというよりは、古臭さかな。
      ロシア帝国やソ連の時代の戦い方を21世紀にやり続けられるとは思わなかった。

      38
    • ダヴー
    • 2022年 6月 28日

    何度も言われていることだけれど、
    ゼレンスキーが勝利の条件を変えても、プーチンが勝利を諦めない限りはこの戦争は終われない。
    そしてそれは戦場でロシアを敗北させる以外には無いことも変わっていない。

    50
      • hoge
      • 2022年 6月 28日

      これofこれ、ウクライナは受け身で対応しているだけなので、加害者側が何か行動を起こさないと何も変わらない。
      ウクライナ側から講話を申し出てロシアが受け入れても再侵攻までの時間稼ぎにしかならないと言われ続けているし、もっというと「戦争終結の条件」と「制裁解除の条件」は異なり、講話が結ばれても、違法な占領を続けるロシアへの制裁解除とはならないのでは。

      24
      •  
      • 2022年 6月 28日

      ロシア占領地の分離独立承認、ミンスク合意の条約化、ゼレンスキー政権の退陣あたり受け入れればロシアも停戦すると思うけどな

      5
    • tarota
    • 2022年 6月 28日

    考えてみたら資源国が有事を引き起こして資源価格高させるって最悪だな。
    通常戦争を避けるのは経済的に割りに合わないからだがこの場合戦争を躊躇わなくなる。

    36
      • 無無
      • 2022年 6月 28日

      今回ロシアを勝たせたら、次にロシアは何をやり始めるのか想像に難くない
      世界に悪しき前例を残さないためにもプーチンにはかならず敗北してもらわないと

      46
      • チェブラーシカ
      • 2022年 6月 28日

      ウクライナはソ連時代に建設されたパイプラインが何本も通っていて
      ハリコフやドニプロには戦車や弾道ミサイルの工場があり
      黒海沿岸のムコライウにはキエフ級や中国に売却したクズネツォフ級を建造した大型船の建造ができる造船所や
      中国に技術を売却した船舶用ガスタービンの工場があります
      ロシアにとっては多少無理をしても戦争する価値があるんですよ

      7
      • G
      • 2022年 6月 29日

      バイデン政権が覚悟を決めてシェールオイルの大幅増産し、意図的な供給過多による世界規模の石油の値下げを行えばロシアの収入もかなり減るはずであり、そのことは当のアメリカのわかっているはずなのですが、アメリカ国内ではこれに関する愚論はなされているのでしょうか

      4
        •  
        • 2022年 6月 29日

        そんな急にさあ増産とか出来るわけないでしょ
        それと原油先物の知識がなさすぎる

        3
        • けい2020
        • 2022年 6月 29日

        原油価格が80ドル下回った時点で多くのシェールオイル事業が破綻してしまって
        短期間では再稼働自体が不可能なのです

        ゲームのように、予算だけあてれば、次のターンに使用可能にならないので非現実的ですね

        2
        • Z1R
        • 2022年 6月 29日

        組閣されてから2年がたつバイデン政権ですが、この超インフレにもかかわらずエネルギー関係者とまともに話せる人物はだれ一人としていないそうですよ
        そもそも増産しろって言うなら、バイデン政権が潰したカナダとのパイプラインを先になんとかしろって話ですし

        そりゃエネルギー関係者からはそっぽ向かれても仕方いないかと

        1
    • NHG
    • 2022年 6月 28日

    自分的にはドンバス地域はロシア、クリミア以北はウクライナが落としどころかなと思う
    これは西側がウクライナにドンバス地位の割譲をさせるって話ではなく、ロシアが”当初からの目的”と言ってるドンバス地域の占領を終えないとロシアは満足しないだろうから、それまでにウクライナは南部で取り返せるだけ取り返せばそういう形になるはず

    開戦の2/24までの領土を取り戻すという理想は素晴らしいけど、もうドンバス地域の住民はロシア兵として徴兵(?)されロシア兵としてウクライナと戦ってるわけだから再びウクライナ編入はウクライナ側からしても多分無理筋だと思う

    5
      • 無明
      • 2022年 6月 28日

      ウクライナがクリミアへの給水を停止したのもロシアの侵攻の理由の1つなので
      むしろこっちの方がでかい可能性すらあるよ

      7
        • NHG
        • 2022年 6月 29日

        それはそのようですが、プーチンがロシア国民に宣言したのは「ドンバス地域の解放」なので政治的にドンバスが優先されると思います

        2
      • 匿名11号
      • 2022年 6月 28日

      ロシア編入の方が無理筋では?

      ロシア本国では反発が強いからと言って、ドンパス地域の住民を強制徴兵、砲兵の餌扱いにするようであれば離反されますがな。

      4
        •  
        • 2022年 6月 28日

        この記事でそういう風に悪し様に書かれてるけど今までの報道だとウクライナ砲兵は対砲兵戦で制圧されててロシア側はウクライナの攻撃を受けると即撤退して砲撃で反撃してくるって話だからこの記事がプロパガンダ的なだけだと思う

        2
          • ido
          • 2022年 6月 29日

          過去記事を読んでないであろうあなたには言われたくないですね。過去記事に同じようなことが乗っていますが。

          1
        • G
        • 2022年 6月 29日

        ロシア軍は占領した地域のウクライナ住民をロシア国内に強制避難(という名の拉致)してきていますので、一定期間以上占領された地域にはもはや離反したがる本来のウクライナ住民は存在していないかと……

        1
      • ナイトアウル
      • 2022年 6月 28日

       ロシアの体力がどこまで続くかだがここまで来れば14年に達成出来なかった「ノヴォロシア人民共和国連邦」に近い所までは実現したい所じゃないの?
       ロシアとして妥協するなら現状ライン+オデーサぐらい貰わないと難しいのでは無いかと思う。

       仮の話でホロドモールみたいな事したくて穀倉地帯も狙いたいなら現状のロシアの支配地域だけだと微妙で、ノヴォロシア人民共和国連邦の正式構成州ぐらい手に入れないと微妙だと思うのよね。

       

      1
      • WSO
      • 2022年 6月 28日

      黒海艦隊の根拠地セバストーポリ軍港に関しても検討されました?ロシアにとっては安定借地継続もしくは自身での領有が必須条件では?

    • NATTO
    • 2022年 6月 28日

    腰を据えてF16とか西側の戦車、重火器を渡して訓練するのが一番の早道。
    いろんな思惑が入り込むんだろうけど。

    20
      • koijima
      • 2022年 6月 28日

      ボーイングが暇してるんだからF-15Eを渡して代替としてF-15EXをしばらく配備するとか
      米軍仕様の装備を外す手間はあるだろうけど

      1
      • perorin
      • 2022年 6月 28日

      同感。

      米国は大変な支援をして偉いなぁ、やっぱ世界のリーダーだなぁ、とは思うのだけど
      米軍が湾岸戦争・イラク戦争で使った兵器の種類と量を、今回の一連の支援と比べれば
      ウクライナに殆ど武器を渡してないとも言えるわけで、こんな装備でロシア軍に勝てと言うのは酷。

      12
    • くらうん
    • 2022年 6月 28日

    これからは砲弾の提供より、砲弾はじめ消耗品の生産拠点の整備支援に注力した方がいいと思う。
    どのくらいの砲弾生産能力にどれだけの規模の工場が必要なのかは知らないんだけど、製造拠点を分散配置して消耗品は自給できるようにしないと、いつまでも供与じゃ長期戦は厳しいんじゃないかな。

    6
      • NATTO
      • 2022年 6月 28日

      歴史的にウクライナにも砲弾の大きい工場位はあったんじゃないかと思います。
      ただ、場所や能力はロシアも把握してたので破壊されてる可能性はあります。

      7
        • くらうん
        • 2022年 6月 28日

        ハルキウなどソ連時代からある工場は当然ロシアも把握しているでしょうね。
        新規は一点集中よりも奥地に分散して冗長化した方が良さそうです。

        1
      • チェブラーシカ
      • 2022年 6月 28日

      ウクライナの工業地帯は今現在戦場になってるドンバス地帯だからね
      第二の都市ハリコフにはハリコフ設計局というソ連の名門戦車設計局があってT34のような有名なやつから
      T80のような冷戦末期の高性能なやつまで幅広く開発してた
      貧乏なウクライナは工場の疎開なんてしてないだろうしもうあらかた壊されたか接収されたんじゃないかな

      16
    • 鳥刺
    • 2022年 6月 28日

    旧ソ連規格の弾薬の枯渇は、西側からの火砲の供給数がウクライナ軍の装備を置き換えられる数量ではない以上、深刻な問題となりますね。

    サミットでのゼレンスキー大統領の「冬までには終結したい」発言と併せて考えると、社会的な継戦能力の問題も含めて、現接触線をそこそこ押し下げて「停戦」、も選択肢の一つとして検討の俎上に登っている気配はしますが、ロシア側の方もプーチンには、どれだけの血と鉄を注ぎ込もうとも行政区画上のドンバス全域と南部海岸線総て+奪れるだけ奪る、かつ再侵略前提のウクライナ非武装化・体制脆弱化、といった目標を下げる気が無さそうなんで、戦争が終結できるかどうかは結局倉庫の底と戦場の均衡次第です。

    >「大砲の餌」を戦場に供給し続けてきた点
    属国からの徴集兵の死体の山など気にもしない権威主義体制の「強味(…)」ですかね。

    >米軍関係者と欧米の情報当局者も「奪われた土地を全て取り戻すのに必要な戦力を
    >ウクライナが年内に準備できる可能性は低い」という点で一致しており
    ウクライナ軍の戦力醸成は一に西側からの装備の供給にかかっていますから、その不足
    (絶対量ではなく対ロシアとしての必要量)と戦車と歩兵戦闘車・広域防空システムの供与を渋っている状態では当然ではあるんですが。「当初の見積もりではこれで足りた」という見立ては、結局政策立案者の当初見積もり自体が巧緻過ぎるというか甘かったという事にもなります。まあ、プーチンロシアの消耗を顧みぬ絶滅征服戦思考は常識の範疇ではありませんが。

    5
    • AAA
    • 2022年 6月 28日

    ロシアとしても制裁のブローが効いてきて原油やガス採掘に影響出てくるので
    プーチンの面目がたつドンバスを制圧したあたりで作成成功を宣言して交渉フェイズに入るんじゃなかろうか

    1
    • TKT
    • 2022年 6月 28日

    とにかくアメリカ国防総省や、イギリス国防省、NATO軍の参謀の予測や、読み、予想が何もかも甘くて楽観的に過ぎたということに尽きるのではないだろうか。

    そもそもNATO軍の情報収集。情報活動というのは、旧・ドイツ国防軍の参謀を使ったゲーレン機関の時代から、いろいろと大きく間違っていたといわれ、ドイツ国防軍がバルサロッサ作戦に失敗し、その後のブラウ作戦、チタデレ作戦、バグラチオン作戦・・と敗退を重ねたのも、常にソ連軍の兵力、国力を過小視し、パンターのような戦車だとか、エレファントのような駆逐戦車の威力を過大視していたためだった。

    朝鮮戦争でアメリカ軍を中心とする国連軍が、鴨緑江から総退却を余儀なくされたのも、やはり情報活動の失敗と言え、南ベトナム軍が崩壊しまったのも、北ベトナム軍の兵力を過小視し、アメリカ製の兵器を供与された南ベトナム軍を過剰に評価していたためだった。

    デイビッド・ハルバースタムが書いた本、
    「ベスト・アンド・ブライテスト」
    に、なぜホワイトハウスやペンタゴンが状況判断を誤ったのかが詳しく書かれているが、今回のアメリカ国防総省や、NATO軍の情報収集も同じような失敗を繰り返してしまったのではないか?

    あるいは日本の歴史でいえば、ノモンハン事変の辻政信などとまったく同じような失敗や誤りをしてしまったのではないか?

    このままでは年内に反攻とかいう以前に、年末までウクライナ軍やウクライナ政府が持つという保証さえもない。すでにウクライナ軍の主力がただの一般市民で編成した領土防衛隊になっていてもおかしくはない。

    外国人義勇兵を募集しても、衣食住が全部自腹で、自己資金が尽きればすぐに帰国してしまうとも言われまったく当てにならない。ドネツク州はガスも電気も停まっていると言われ、たとえ金があっても物が買えるかわからない。そもそも衣食住全部自腹の義勇兵を募集すること自体が無責任すぎる。

    14
      • 2022年 6月 28日

      >とにかくアメリカ国防総省や、イギリス国防省、NATO軍の参謀の予測や、読み、予想が何もかも甘くて楽観的に過ぎたということに尽きるのではないだろうか。

      米英の読みが甘いとしたら、侵略開始数日でキーウを陥落できるつもりだったロシアの読みの甘さは何なのだろうね?

      9
      • ダヴー
      • 2022年 6月 28日

      日本人で義勇兵として参加されていると言われている方によると、自衛隊の時より装備の支給は良く、むしろ優遇されているのでは、と話されていますね。
      ただ服のサイズだけは合わないとのことですが。

      4
      • hiroさん
      • 2022年 6月 28日

      米英がロシアのウクライナ侵攻を正確に予測していたのは全無視ですか?
      WW2の独ソ戦の顛末もソ連を過小評価したというよりは、戦略的転換点を経てドイツが守勢に回った結果ですし、朝鮮戦争の中国「義勇軍」の投入など誰にも予測出来なかったでしょう。
      ついでに言えば、ノモンハンの日本軍惨敗も実態は異なっていたと顕正されていますし、南ベトナム崩壊も米国が作戦指揮権を手放した後の北ベトナム攻勢に対し、南ベトナム軍が中部地域からの撤退という戦略ミスを選択したからと評価されています。
      歴史を捻じ曲げて何を主張されたいのでしょう?

      9
    • あばばばば
    • 2022年 6月 28日

    ウクライナがベトナム平和協定以後の南ベトナムのようになるのも時間の問題か
    昨年のアフガンのように、米軍がいきなり撤収を決めて、他の国も混乱の中に放り込まれるのが目に見える

    5
    • もきゅ
    • 2022年 6月 28日

    ウクライナはあと5ヶ月も耐えれるか?
    兵員尽きつつある中で武器弾薬も無い。
    一方的に蹂躙されるだけではないか…

    8
    • 虹色ワセリン
    • 2022年 6月 28日

    ウクライナが反攻用の兵器を揃えられないとなるとロシアの弾薬の枯渇や制裁による継戦能力の損失に期待するしかない気が致します。
    しかし西側諸国のインフレ率や内政問題が顕著化していることからも有効な制裁を継続し続けられるかとても不安になりますね。

    1
    • shkk
    • 2022年 6月 29日

    政治的目標達成のための無駄な攻撃かと思ったら
    防衛戦のせいで攻撃に必要な砲弾を使い果たしてしまったと…

    初めから全力でウクライナに砲弾とか対空兵器おくっときゃよかったという結果論だが
    泥沼化して困るのは世界みんなそうなわけだしもっと支援を急ぐべきだったんだな…

    2
    • 浅見真規
    • 2022年 6月 29日

    敗因はウクライナに侵攻してきたロシアが軍事大国である事だけでなく、ウクライナが欧米諸国の軍事支援によって2月23日以前に達成できなかった事を目標にし無理な作戦を実施し大損害を出し、不誠実な対応をして欧米諸国の本格的支援が得られず、支援予測ができない事も大きな敗因である。不誠実な対応によりNATO諸国だけでなく自国民の信頼を失う危険もある。

    よって、以下の対策を実施すべきである。

    (1)まず、ウクライナに「2月24日以降に奪われた土地を全て取り戻す」事に目標を設定させ、それ以上は軍事的に望まない事を誓約させ、今月半ばに「クリミアを含む全ての領土を占領者から解放する」と公言したレズニコフ国防相に発言の撤回させるか解任するべきである。

    (2)ウクライナ西部の領土の確実な保全のためドニエプル川を絶対防衛ラインにすべきで、ドニエプル川右岸のヘルソンに侵入したロシア軍の補給路を断つためヘルソン周辺でロシア軍に占領されているドニエプル川の3本の橋を破壊すべき。(ただし、上流のダム湖の堰に並走する自動車橋の破壊では堰を破壊しないよう十分な注意が必要。)

    (3)ドニエプル川左岸を軍事的に無理に奪回しようとせず、イジューム市内の車両用の橋2本を破壊すべき。

    (4)軍の在庫をアメリカやNATO主要国に正直に公開すべき。(情報をロシアに漏洩する危険のあるハンガリーには秘匿)

    (5)ウクライナ軍はロシア軍の補給路遮断を優先する。補給できねばロシア軍も大量の砲弾による砲撃はできない。

    (6)アメリカ等のNATO諸国は、正確な情報を基に、ウクライナのドネツ川右岸(西岸)全部を11月末までに奪回しうる軍事支援をする。(アメリカは補給路遮断のため必要に応じて射程の長いHIMARS用ミサイルを供給する。)

    1
      • 浅見真規
      • 2022年 6月 29日

      訂正・補足します。

      (誤)(3)ドニエプル川左岸を軍事的に無理に奪回しようとせず、イジューム市内の車両用の橋2本を破壊すべき。
      (正)(3)ドネツ川左岸を軍事的に無理に奪回しようとせず、イジューム市内の車両用の橋2本を破壊すべき。尚、ドネツ川右岸のウクライナ部分全体を奪回すれば、そのうちから2月23日以前の親ロシア支配地だった地域とドネツ川左岸のロシア軍占領地域を交換する。

      • 浅見真規
      • 2022年 6月 29日

      以下の補足を追加する。

      (7)三方をロシア軍に囲まれた場所を主戦場にしない。三方をロシア軍に囲まれたリシチャンシクからは20km以上後方のSivers’kに撤退する。当初から東部戦線に固執すると三方をロシア軍に囲まれた場所が主戦場になりやすいので、南部やヘルソン奪回を優先する。

      (8)軍事的合理性を無視した政治的判断は控える。

      (9)強制的な徴兵は公平に行う。

      (10)欧米から支援を受けた装備は正規軍が受け取り、効率的に配備し、配備を固定化せず機動的運用を心掛ける。

      (11)軍制改革を行い軍に民主的シビリアンコントロールを徹底させ、国家親衛隊は廃止する。

      (12)11月末時点で反攻の確たる成果が得られない場合は、12月初旬の現状でクリスマス停戦し、その停戦を恒久化する。

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