米国はロシアや中国が実用化した極超音速滑空体に対抗するため専用迎撃弾=GPI開発(完全運用能力を2032年末までに獲得予定)を決定し、日本も開発参加することが決まっているが、米ミサイル防衛局は「資金と産業能力の不足によってGPI計画は3年遅れるかもしれない」と明かした。
参考:Reduced funding slows MDA’s hypersonic interceptor development
GPIは資金と開発リソースの優先順位でNGIやGolden Domeに押し出されているかもしれない
ロシアや中国が実用化した極超音速滑空体(HGV)は飛行コースを複雑に変更しながら大気圏上層をマッハ5.0以上で飛んでくるため、既存の迎撃弾や単体のセンサーレンジだけ対処するのが困難と言われており、米国は地球低軌道上に赤外線センサーを搭載した小型衛星の配備と専用迎撃弾を開発を進めている最中で、国防総省はLockheed Martin、Northrop Grumman、RTXの3社にGlide Phase Interceptor=GPIの予備設計契約を授与。

出典:防衛省
最終的にLockheed Martin案は除外され、GPI開発はNorthrop GrummanとRTXの間で争われていたが、米ミサイル防衛局(MDA)のコリンズ中将は2024年9月「Northrop Grumman案を採用してGPIの開発を継続する」と発表、日本も当時のバイデン政権とGPI開発参加で合意していたため、防衛省は同年11月「日本が開発を担当する部位(第2段ロケットモーター、第3段姿勢制御装置、キルビークルのロケットモーター、操舵装置、シーカーウインドウ)について三菱重工業に契約を授与した」と発表したが、GPIの実用化は予定よりも3年ほど遅れるらしい。
2024会計年度の国防権限法はMDAに対して「2029年末までにテスト用のGPI×12基以上の供給」「2032年末までにGPIの完全運用能力獲得」を義務付けているものの、MDAはDefense Newsの取材に「GPIが直面している主な問題は資金調達だ。今後3年から5年の間に解決しなければならない技術課題もあるが、そのために必要な(産業界の)リソース調整の問題ある。我々は計画全体のリスクを増加させることなく、開発スケジュールを2032年まで回復させることが出来ると信じているが、これはMDAが出来る最速のペースだ」と述べ、GPI実用化は資金と産業能力の不足によって3年遅れるかもしれしないと示唆した。
GPIはICBMを迎撃する地上配備型迎撃ミサイルの後継システム=Next-Generation Interceptorと開発期間が重複している上、このシステムは「トランプ政権が主導するGolden Domeで重要な役割を果たす」と考えられており、軍事委員会も国防分野への1,500億ドル追加支出を提案し、次世代ミサイル防衛技術分野に247億ドルもの資金を割り当てているのに「GPIは資金不足」とMDAは言っているため、資金と開発リソースの優先順位でNGIやGolden Domeに押し出されているいう意味だろう。
MDAは開発スケジュールを当初予定に復帰させる具体的な方法について「他プログラムから流用できる技術を検討している」と述べているものの、米軍の大規模開発は計画遅延と開発コストの高騰が日常化しているため、GPI計画の3年遅れなど米国基準で見れば遅れた部類に入らいないかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman
…..3年遅れか、完成するなら仕方ないね♪
完成するなら……
延期→価格上昇→数量減 皆んなハッピーまで読めた
日本は確かHGV対処用誘導弾を単独で研究中なんで、下手するとそちらの方が実を結ぶ可能性すらありますね。確かHGV対処用誘導弾の研究は島嶼防衛高速滑空弾の第一ブースターを使う事になってましたし。
日本は日本で開発して、必要部分だけアメリカに渡せばいいんでないの。シーカー以外でアメリカ製じゃないとダメな所はどこだか知らないけど。
あるいはNECに頑張ってシーカーを作ってもらうかだけど。F-3の兵装にも役立つだろうし。
極超音速ミサイルに対応する03式中SAM(改)能力向上型の取得予定が29個射撃単位(およそ7セット?)で予想より結構多くて驚いたんですけど、GPIの開発遅延も想定してなんですかね。
「03式中SAM(改)能力向上型」はHGVを含む経空脅威に対処可能な中距離SAMであり、「GPI」はHGV対処能力を有し「将来の総合ミサイル防空システムに必要な機能を有する」エリア防空用SAMで、カバー範囲が異なります。
所謂GPIは、事前の事業評価書で「ミサイルシステム HGV対処用誘導弾システムの研究」となっている通り、防衛省では2031年度に完了予定の「研究開発事業」です。装備化は次の「国家防衛戦略(2033年以降)」で計画していたと思います。それが日米共同開発になったわけですが、2035年までに開発完了できるなら御の字じゃないですかね。
防衛省お知らせ(令和6年9月26日)「GPI共同開発に係る開発コンセプトの決定について」には
>今後、日米両国は、同コンセプトに基づき、2030年代の開発完了を目指してGPI日米共同開発を進めてまいります。
と述べられています。
>プロジェクト管理対象装備品等の現状について(取得プログラムの分析及び評価の結果の概要等)(令和7年4月17日)
には「HGV対処用誘導弾」が掲載されていてオンスケとなってますね。
というか防衛装備庁のシンポジウムでは「SM-3ブロック2Aのロケットモーターの数倍」って話でしたしロジックモデル見る限り地発型前提なので艦発型のGPIに統合するのは無理では…
ご指摘ありがとうございます。令和7年度版「プロジェクト管理対象装備品等の現状について」は未見でした。
まず、事業実施期間が「令和5年度~令和13年度」から「令和5年度~令和16年度(2034)」に変更されてるんですね。
CBS総括表が併載され「HGV対処用誘導弾システムの研究試作」事業がライフサイクルにおける「構想段階、研究・開発段階」とされているで、その後の装備化が計画されていると解釈できそうです。
とすれば「GPI」に技術共用はあるでしょうが、おっしゃる通り別事業とするのが正解のようですね。
〜R13だったのは「HGV対処用誘導弾システムの『研究』」で今回の〜R16は「研究・『開発』」なんですよね。
まあどっちにせよ仰る通り早くて2034とかなんで「GPIの遅延の保険」にはならない感じではありますが。
03式中SAM改能力向上型の「早期研究開発分」はソフトウェア改修のみで、既存の中SAM改に適用可能とのことなのでそれを含めてるのでは。
計画自体が有望であるなら。
近頃の米国に多い計画倒れ?でないならば。
日本側が、米国側の資金と技術者の一部を肩代わりしても良いのでは?。
3年間足踏みをしている間にも、”脅威は増す”でしょうし。
03式中SAMのソフトウェア改修により極超音速滑空ミサイルや短距離弾道ミサイルにも対応可能にする改良計画(約170億円/1個高射中隊(新規) 約40億円/式(改修)の早期研究開発分と約1100億円/式の新規研究開発分)があるがこれはGPIの遅延や開発中止に備えた保険なのかもしれない。
ぶっちゃけソフトウェア改修だけじゃ対応しきれないから新規でサイドスラスターなり高軌道対応するんじゃないかな。
個人的にはGPIなんて関係無くて日本の独自裁量があるミサイルのアップデートだと思うし、性能は未知数だけど価格面で米国製/共同開発製よりは安く上げられる可能性はあると思う。なんなら23式艦対空誘導弾のアップデートでSM−6の短射程版みたいなファミリー化構想あるんじゃないの?
早期研究開発分がソフトウェア改修のみで、既存の中SAMにも適用可能。
新規研究開発分はハードウェアも改修。ただ「達成すべき目標」にサイドスラスタ技術や大型ロケットモーター技術とかあるけど、サイドスラスタ搭載の予定はないとかロケットモーターは中SAM改ベース、とかで結局どうなるのかまだ謎な感じですね。
まあ早期研究開発分だけでもSRBMやHGVに対処できると言ってるんで、翼や動翼の改修で揚抗比や高高度飛行性能ちょっと改善するだけで十分なのかもしれませんが…
アメリカ軍需産業を見てると、納期に間に合わないし、開発費も高騰するのかなあと。
日本側が、日本の分担部分を期限通りできたとしても、アメリカが間に合わなければ完成しないなと…
攻撃側が、何れにしても有利なわけですから、限られた予算をどのようにするのか議論すべきかもしれませんね。
Zガンダム
ガノタとして反応したくてもどう関係するのかさっぱりわからず困惑。
ウェーブライダーだから?!
日本は共同開発は安上がりという幻想から早く目覚めるべき。