米国関連

RQ-7B後継機選定の前哨戦にJump20が勝利、革命を起こすと評されたV-Batは敗退

RQ-7Bの後継機選定の前哨戦に勝利したのは「戦術的な無人航空機の運用に革命を起こす」とまで評されたV-Batではなく、AeroVironment製のJump20だったため驚きが広がっている。

参考:Army taps AeroVironment’s Jump 20 to replace Shadow UAS

MartinUAVはIncrement2にV-Batの改良型を提案する述べており、まだRQ-7Bの後継機選定は決着していない

米陸軍は旅団レベルの戦場認識力を拡張するためTextron製の戦術無人偵察機「RQ-7Bシャドー」を2000年頃から導入、何度かのバージョンアップやアップグレードを経て米陸軍は500機以上(正確な数は不明)のRQ-7B BlockIIを保有、ただ同機は雨天時の運用を想定して設計されておらず搭載センサーも雲で遮られた場所を観測できないなど制限が多い。

出典:public domain RQ-7B

そこで米陸軍は雨天時の運用能力を強化、新たにL3Wescam製のMX-10(TB2が採用したEO/IRセンサーと同じもの)を搭載したRQ-7 BlockIIIの開発、保有する全てのBlockIIをBlockIIIにアップグレードするため約661億円を投資している最中だが、RQ-7Bの後継機選定も進めている最中でMartinUAV製のV-Bat、Textron製のAerosondeHQ、L3Harris製のFVR-90、AeroVironment製のJump20の4機種が後継機の座を巡って争っていた。

前評判では「戦術的な無人航空機の運用に革命を起こす」とまで評されたV-Batに注目が集まっていたたものの、18日に米陸軍が発表した勝者はAeroVironment製のJump20だったため驚きが広がっている。

ただRQ-7Bの後継機選定はIncrement1とIncrement2に分かれており、Increment1の目的は「異なる要求要件の下で実施されるIncrement2の要件を開発するためのもの」と説明されているため、RQ-7Bの後継機選定はIncrement2からが本番なのかもしれない。

MartinUAVは「Increment2にV-Batの改良型を提案する」と述べており、VolansiやSierra Nevadaといった新たな企業も「Increment2に参加する」と発表しているためRQ-7Bの後継機選定は益々競争が激しくなる見込みだ。

因みにIncrement1の勝者であるAeroVironmentには6機のJump20で構成された1個旅団分のシステムが発注(800万ドル相当)されており、最終的にJump20をどの程度調達するのかは分かっていない。

関連記事:米陸軍が力を入れる戦場の認識力拡張、RQ-7Bの能力向上に600億円以上投資
関連記事:米海軍のコンテストで異色の垂直離着陸「V-Bat」が勝利、米陸軍やポーランド採用にも弾み

 

※アイキャッチ画像の出典:MartinUAV

8月だけで3回目、米国が19番目のウクライナ支援パッケージをまもなく発表前のページ

大韓航空、韓国軍から有人機とチーミング可能な無人戦闘機の開発を受注次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    トランプ大統領が原因? 米国の国防予算成立は「歴史的な遅れ」に直面する可能性が浮上

    米国の国防予算成立が「歴史的な遅れ」に直面する可能性が浮上しており、国…

  2. 米国関連

    ステルス処理されたキャノピー不足が原因? 米軍、F-35の稼働率「80%達成」ならず

    7月16日、上院軍事委員会で開かれた公聴会で、次期国防長官に指名された…

  3. 米国関連

    米空軍がU-2とRQ-4 Block40の退役を要求、高高度偵察機が姿を消す?

    米空軍は2024年度予算の中でRQ-4 Block40とU-2の退役を…

  4. 米国関連

    米海軍研究所、火災の危険性がつきまとうリチウムイオン電池の代わりに亜鉛電池を研究

    艦艇や潜水艦で使用する再利用可能な電池を研究している米海軍研究所は最近…

  5. 米国関連

    米軍もお手上げ、メキシコ国境から毎月1,000機以上のドローンが侵入

    北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のギロット空軍大将は「毎月1,00…

  6. 米国関連

    米空軍長官、A-10退役が進まないのは選挙区の雇用を心配する議員が原因

    レーガン国防フォーラムが主催したカンファレンスに出席したケンドール米空…

コメント

    • お腹がポンポコリン
    • 2022年 8月 19日

    V-Batが負けただと!
    大阪桐蔭も負けたしな…

    3
    • ごめんなすって。
    • 2022年 8月 19日

    管理人さん、関連記事のリンクが2つとも同じになってます。

    「米海軍のコンテストで異色の垂直離着陸「V-Bat」が勝利、米陸軍やポーランド採用にも弾み」の方のリンクが誤っている様ですよ。

    取り急ぎ、ご連絡まで。

    (いつも、詳しい記事を有り難うございます。)

    11
    • マモっちゃん
    • 2022年 8月 19日

    やっぱりV-Batを見るとトリープフリューゲルを思い浮かべちゃうな。
    あれよりは垂直離着陸の原理が明解で見たときの精神的衝撃は少ないけど。

    選定落ちした理由は旅団レベルなら最低でも建設工兵の中隊が居るから垂直離着陸の利点が薄いからでは?
    連隊以下なら垂直離着陸できてこれだけの警戒監視能力があるなら是が非でも導入したくなるが。

    3
      • zerotester
      • 2022年 8月 19日

      トリープフリューゲルやXFV-1のようなテイルシッター型のVTOL機は着陸時の視界が悪いという欠点で廃れましたが、無人機なら問題無いわけですよね。

      競争に勝ったJump20もVTOLのようなので(無難なマルチコプター式)、そこは要求仕様ではないでしょうか。

      1
      • ナイトアウル
      • 2022年 8月 19日

       ?垂直離着陸の利点が薄いって言っている時点でこのRQ-7B後継の機体に関して何も分かってないのが分かる。一度全部の機体調べてからコメントした方が良いよ。勘違いする人出たらどうするんだ。

      1
    • くらうん
    • 2022年 8月 19日

    V-BaT採用の芽もまだありそうで何より。

    それにしてもUAV導入プロジェクト一つの応札に6社かあ。
    やはり競争原理が働いているからこそ先進的な機体が出てくるもんだね。

    4
    • ブルーピーコック
    • 2022年 8月 19日

    動画見たけど、Jump20はその見た目でそんな動きできるのかとびっくりした。でも面白そうな機体だな。

    2
    • ナイトアウル
    • 2022年 8月 19日

     さらっと候補機の性能を見た限りでJump20が優れている点を上げるとすればペイロードと滞空時間(条件によって変わる可能性有り)の2つの項目。ただネットで転がっているようなデータではなく価格やメンテナンス性とか頑丈さと様々な要因があるだろうから、正直何が決め手だったかは良く分からない。

     速度や機体サイズはそこまで重視されず。旅団戦闘団が装備する榴弾砲の最大射程までを上限として長時間の認識能力向上考えている可能性はある。遠方は上位組織が性能が高いUAV等使って情報を共有する感じじゃないだろうか。

     スペックシート上ではV-Batが一番性能バランスが取れていたので、速度や木々などの障害物が多い所、狭い場所での運用を考えるならばまだ目はあると思われる。

    3
      • 無無
      • 2022年 8月 20日

      ですね、
      結果を意外に感じましたが、僅差だったり要求されてるポイントの微妙な違いかな
      小さい単位での運用ならば離着陸の制限の少ないほど戦場での柔軟性が高まりますから、
      今回はたまたまご縁がありませんでしたの程度で

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP