米国関連

米海兵隊、水陸両用戦闘車や無人水上艇にイスラエル製のカミカゼドローンを統合

米海兵隊はイスラエル製の徘徊型UAV「Hero-120」を調達することに決定したと報じられており、水陸両用の歩兵戦闘車LAV-Mや開発を進めている長距離無人水上艇(LRUSV)などに統合されるらしい。

参考:USMC’s New USV To Deploy Loitering Munitions By UVision

米海兵隊がイスラエル製のカミカゼドローン「Hero-120」導入を決定、車輌だけでなく無人水上艦にも統合して運用

イスラエル企業のUvisionは米海兵隊にカミカゼドローンと呼ばれている徘徊型UAV「Hero-120」を供給する契約を獲得したと発表、この契約には米海兵隊が運用している水陸両用の歩兵戦闘車LAV-M、汎用軍用車両JLTVへの統合作業が含まれており、注目すべきは現在開発を進めている長距離無人水上艦(LRUSV)への統合も契約に含まれているという点だ。

※動画に登場する徘徊型UAVはHero-120よりもサイズが大きいHero-400ECだが運用方法はほぼ同じだ。

Uvisionが開発した徘徊型UAVのHeroシリーズはサイズ別に幾つもの種類があり、兵士が運搬して地上発射するものから車輌発射、艦艇発射、航空機による空中発射など様々な運用形態で使用することが可能で米海兵隊が調達を決定したHero-120は4.5kgの弾頭を搭載して約60分間飛行(飛行距離にすると約40km)することができる電動推進タイプの徘徊型UAVなのだが、米海兵隊はLAV-MやJLTVといった車輌だけでなく現在メタルシャークが開発を進めている長距離無人水上艦(LRUSV)にもHero-120を搭載するらしい。

このLRUSVは完全な自立運用(オプションで有人運用も可能)が可能なシステムを搭載した小型の無人水上艇で、搭載センサーを活用した任務以外にも複数の無人兵器運搬に活用することが出来ると言及されていたのだが「複数の無人兵器」が何を指しているのはこれまで明かされてこなった。

しかし今回の発表でLRUSVが運搬する複数の無人兵器の一つに徘徊型UAVのHero-120が含まれることが確定したという話で、海上作戦や水陸両用作戦における徘徊型UAVの使用は現実味を帯びてきたと言っても過言ではない。

出典:Meteksan Defense トルコが実用化に向けて開発を進めてい装甲無人水上艇「ULAQ」

さらに付け加えれば米海兵隊が開発を進めている「LRUSV」はトルコが実用化に向けて開発を進めている装甲無人水上艇「ULAQ」と非常に似たコンセプトでサイズ感も近く、この手の小型無人水上艇は英国や中国も開発を進めていることが確認されている。

恐らく太平洋のど真ん中で小型の無人水上艇を使用するのは難しいかもしれないが、沿岸海域や諸島周辺の海域に配備して徘徊させれば小型でも十分役に立つのかもしれない。

出典:Royal Navy / OGL v1.0 英国海軍が開発を進めている自立運行が可能な無人水上艇「MADFOX」

果たして小型の無人水上艇とカミカゼドローンの組み合わせは米海兵隊にどのような効果と新しい戦術を与えてくれるのか、非常に興味深い取り組みで今後も注視していく必要があるだろう。

関連記事:米海軍、水上艦艇にカミカゼドローンを用いたスウォーム攻撃が可能だと実証
関連記事:無人航空機で成功を収めたトルコ、武装した無人水上艇「ULAQ」の海上テストを開始

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※アイキャッチ画像の出典:Uvision

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    軍隊というものが、かつての国家間の総力戦よりも、小規模紛争対応やテロリスト相手を主体とする組織に変質したほうが現実的ということなんですかね
    オモチャに毛の生えたような安上がりな武器がトレンドになるとは

    7
      • 匿名
      • 2021年 6月 22日

      イエメン内戦やイスラエルの攻撃では、無人機やロケット弾の拠点を叩く事に注力しており、その際に行われるのは昔ながらの有人機による阻止攻撃で
      集積拠点や発射施設を叩いて仕舞えば後は散発的になるので、大規模な攻撃も重要かと

      5
      • 匿名
      • 2021年 6月 22日

      オモチャに毛の生えたような兵器は所詮それなりだけどな
      言うなればIEDのようなポジション

      UAVによる戦場の変革はそういうところのものとは別だと思う

      4
      • 匿名
      • 2021年 6月 23日

      いや、先日アルメニアの主力の防空・機甲部隊がドローンに全滅させられただろ。立派に国家間の戦いの為だよ。ドイツ軍の試算だと現状のドイツ装甲部隊はあの手の攻撃に対処不可能なんだってさ。

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    軍旗とか掲げないのかな?
    密漁の監視とかにも広く使えそう。

    15
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    上陸作戦の露払いには良さそうだな。水平線に邪魔されてUAV程ほど索敵範囲は広くはないが重量物が運べるからドローンキャリアとしては十分使えるだろう。

    10
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    ペルシャ湾で荒ぶるイラン小型船舶に対しての警備活動に使えそう
    …簡単に鹵獲されそうでもあるが

    逆にイランなどが使用し始めたら面倒くさいな
    すでにハマスは自動操縦船舶でのイスラエルへの攻撃を試みており
    先のガザロケット弾騒動の陰では、これの拠点攻撃をイスラエルが行なった

    15
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    日本も開発中のMPMS改と同じ様なのだよなぁ。
    双方、滞空時間とかどうなんだろうかが気になる。

    • Hero 30~90
      行動半径 40km~250km
      滞空能力 30分~7時間

      MPMS 一発あたりの価格は約5,000万円
      射程は非公開ながら10km以上

      有線誘導の優位性はあるが、10km程度じゃIRセンサーですぐ狩られる

      1
        • 匿名
        • 2021年 6月 22日

        流石に優先誘導のままで抜本的な射程延伸はできないので、MPMS(改)では無線誘導を採用すると思う
        ただ、着上陸対処用なのと捜索評定装置(ミリ波レーダ?)の見通し線を考えると40kmはなさそう

        1
      • 匿名
      • 2021年 6月 23日

      全然違うでしょ、滞空前提でいざとなれば突っ込むheroと最初から狙うべきターゲットが決まっていて発射するMPMSなんだし。そもそも速度が違うから、最大射程で敵を視認してからhero発射すると間に合わない可能性の方が高い。

      MPMS改はイスラエルのスパイクと同じ感じじゃないの?

      3
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    イタチの最後っ屁じゃないけど、逃げ出す時や沈んでしまうときにHeroを発射してばらまいたら
    追撃防止になって時間稼ぎと味方の援護になりそう。

    9
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    アイキャッチ画像が羽ばたきながら飛んでいくドローンに見えて、ちょっとクスっときた

    3
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    見た目完全にミサイルだけど、UAVのミサイルの違いってなんだろう
    徘徊するかどうかが要件の一つならLRASMはUAVか?っていう

    作る側がどう定義するか次第なの?
    巡洋艦(タイコンデロガ)よりデカい駆逐艦(ズムウォルト)とか、重航空巡洋艦とかみたく

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 22日

      個人的には明確な攻撃目標をもって撃つかどうかかとは思ってます。
      LRASMにしてもトマホークにしても前提として攻撃目標が定まっていて、アップリンク出来なくなった時点で最良の攻撃目標へ自己判断で攻撃できるのであって、最初から徘徊前提で発射するものでは無いからミサイルみたいな。

      4
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    此れってIFFに対応出来るの?
    バラ蒔いたら最後味方も近づけないのか?

    1
    • 匿名
    • 2021年 6月 22日

    LAV-Mってことは軽装甲偵察の迫撃砲部隊で運用なのか?
    LATV車載型のは部隊区分で対戦車運用って話だったけど?

    • 匿名
    • 2021年 6月 23日

    海保の人手不足解消に最適だと思うがまあ無理だろうな(中韓朝露のすべてに24時間体制で貼り付けられるぞ)
    中国に先に尖閣に送り込まれなければいいが

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