USNI Newsが今月1日「ホワイトハウスと米海軍が新型艦艇として日本、韓国、トルコのフリゲート艦の設計案を検討している」と報じたため、米海軍向け新型フリゲート艦の受注を争う戦いが始まったかのように伝えられているが、これは設計やスペックを比べて「どれが新型フリゲート艦に相応しいのか」という話ではない。
参考:Japanese, South Korean, Turkish Warships Under Consideration for New U.S. Frigate Competition
参考:REBUILDING THE UNITED STATES NAVY AND AMERICA’S SHIPBUILDING INDUSTRIAL BASE
改もがみ型、忠南級、イスタンブール級のスペックを比べて「どれが当て馬だ」と議論するのは恐らく無意味
USNI Newsが今月1日「ホワイトハウスと米海軍が新型艦艇として日本、韓国、トルコのフリゲート艦の設計案を検討している」「情報筋3人によると検討中の国際的な設計案には三菱重工業の新型FFM(改もがみ型)輸出バージョン、韓国の複数の造船所が建造する忠南級フリゲートが含まれている。さらに7月のNATO首脳会談の際にトランプ大統領とエルドアン大統領が会談したことを受けてイスタンブール級フリゲートが検討候補に挙がっている」と報じたため、まるで米海軍向け新型フリゲート艦の受注を争う戦いが始まったかのように伝えられているが、これは現時点で正式な新型フリゲート艦入札ではないので安心してほしい。

出典:The White House
トランプ大統領が8月13日に署名した国家安全保障大統領覚書の中で「沿岸警備隊の中型砕氷船計画で初めて採用された成功事例=フィンランドモデルに基づき、米造船産業基盤への直接投資をさらに推進することを指示する」「海外の造船会社が米造船所に大規模かつ持続的な投資を行い、米国人労働者を雇用して育成するなら、一時的に最大2隻の海外建造を許可し、3隻目以降の船舶は活性化された米造船所で建造される」と明記。
この大統領覚書はフィンランドモデルを対潜・水上戦や護衛任務が行える水上戦闘艦、Ro-Ro型貨物船、洋上補給用の貨物・給油タンカーの調達に拡大することを指示し、その条件として「最初の2隻以外は新規に建設した米国内の造船所、所有権もしくは過半数の株式を取得した既存の米造船所で建造すること」「最初の2隻以外を建造するため米国人を雇用して訓練すること」「最初の2隻を建造した親会社の造船技術やテクノロジーのライセンスを米造船所に与えること」「最初の2隻以外を米国で建造する場合は必要な全てを米国のサプライチェーンから調達すること」を挙げ、この条件を満たすならバーンズ・トレフソン修正条項が免除される。

出典:Representative Jared Golden
この動きを簡単に端的に説明すると「海軍艦艇の国外建造(上部構造の主要部品製造も含む)はバーンズ・トレフソン修正条項で禁止されている」「米行政管理予算局(OMB)は海軍艦艇を同盟国の造船所で建造したい」「議会と造船所業界団体は雇用を守るため海軍艦艇の国内建造を守りたい」「ホワイトハウスは同盟国設計の艦艇を取得して国内建造させることで雇用と投資を生み出したい」となり、議会は2027会計年度の国防権限法案(歳出法で支出が決まった国防予算をどう使うのかを決める権限)の中で海軍艦艇の国外建造を制限する内容を盛り込んでいる。
そしてフィンランドモデルの正体はカナダ企業のデイヴィーが中型砕氷船5隻の建造を受注し、同社が所有するフィンランドのヘルシンキ造船所で最初の2隻を建造、その間に買収した米ガルフ・カッパー造船所で中型砕氷船を建造できるように準備を整え、残りの中型砕氷船を雇用した米国人労働者によって建造することを指しており、トランプ大統領の指示を受けてハン・カオ海軍長官代理が海軍に調査を命じたのは「フィンランドモデル適用で同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことの実現性」で「改もがみ型、忠南級、イスタンブール級のスペックを比べてどれが新型フリゲート艦に相応しいのか」ではない。

出典:Department of War Fiscal Year (FY) 2027 Budget Estimates Navy
海軍長官代理が命じた調査結果は2026年11月12日に提出される見込みだが、国防総省が2027会計年度の国防予算案に計上した「外国設計によるフリゲート艦と駆逐艦・巡洋艦の採用や同盟国の造船所における建造・部品製造を含む大規模研究」のための資金18.5億ドルは裁量的支出に基づく国防歳出法の1兆1,500億ドルではなく、成立がどんどん怪しくなっている義務的支出の3,500億ドルに含まれており、11月の中間選挙が終わるまで国防歳出法も国防権限法も義務的支出も成立する見込みは限りなくゼロだ。
もし民主党が中間選挙で勝利すれば義務的支出は高い確率で葬られると予想されている上、下院は国防権限法案の中に「海外の造船所で建造される艦艇調達契約を締結するのにFY2027の予算を一切使用してはならない条項」を、上院は「バーンズ・トレフソン修正条項をバイパスする大統領権限を大幅制限する条項」を盛り込んでいるため、これが両案を一本化した両院協議会報告書(カンファレンス・レポート)に残ると義務的支出が成立してもホワイトハウスと米海軍はフィンランドモデルを適用する権限と予算を失い、同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことが出来なくなる。

出典:U.S. Navy
建造が中止されたコンステレーション級フリゲートの後継計画=次期フリゲート艦もレジェンド級カッターベースで進めることに変更はなく、ホワイトハウスやOMBの計画に乗り気なのはどちらかというと海軍ではなく国防総省で、これまでのところ海軍作戦部長を含む海軍上層部から「同盟国設計のフリゲート艦が欲しい」という公の発言は存在しない。
結局のところ議会や造船業界が繰り返し訴えているのは「どんな素晴らしいアイデアでも国内雇用という利害を無視すれば実現しない」という点で、ホワイトハウス、議員、米海軍、造船所業界、労働者の全員が笑顔で握手するのは「外国の造船企業が米造船所業界に投資して国内の造船所を整備し、サプライチェーンを構築し、米国人を雇用してフリゲート艦を建造する」という方法だけだ。

出典:Hanwha
そのため実現性が一番高いのはハンファオーシャンが50億ドルを投資して「世界クラスの自動化とスマート造船技術を備えたデジタル対応の高効率造船所」に転換しようとしているハンファ・フィリー造船所でレジェンド級カッターベースの次期フリゲート艦を建造するか、ここで忠南級フリゲートを建造するかのどちらかだが、既にハンファ・フィリー造船所への投資はフィンランドモデルに関係なくハンファオーシャンの成長戦略として始まっているため、フィンランドモデルという面倒くさいことをせずレジェンド級カッターベースの次期フリゲート艦の建造をハンファ・フィリー造船所に担わせる方が簡単だろう。
ちなみに国家安全保障大統領覚書の中で「成熟したベース設計に対して反復的な設計変更を課してはならない」「行政管理予算局局長および国家安全保障担当大統領補佐官と協議の上、国防長官の承認なしにベース設計からのいかなる変更も行ってはならない」と明確に禁止しているため、どうせ採用されてもコンステレーション級フリゲートの二の舞い=米海軍が要求する設計変更で大変になるという懸念はない。

出典:The White House
繰り返しになるが、ホワイトハウスやOMBの計画は「フィンランドモデル適用で同盟国のフリゲート艦設計と造船能力を米国に持ち込むことの実現性」であって、改もがみ型、忠南級、イスタンブール級のスペックを比べて「どれが当て馬だ」と議論するのは恐らく無意味だ。
関連記事:米海軍による同盟国設計のフリゲート艦取得、韓国、日本、トルコ設計を検討中
関連記事:トランプ大統領が戦闘艦の海外建造を条件付きで容認、最有力候補は韓国設計
関連記事:トランプ大統領、フォード級空母への蒸気式カタパルト復活を正式に命令
関連記事:ハンファが狙う米海軍艦艇建造、豪オースタルの米国事業買収に動く
関連記事:米軍事委員会は海軍艦艇の海外建造を阻止、韓国資本の米造船所は建造を受注
関連記事:米下院が海軍艦艇の日韓建造を阻止する条項を可決、海外建造など言語道断
関連記事:米海軍艦艇の国外建造、国内雇用という利害を無視すれば実現しない
関連記事:Hanwhaの米市場進出が本格化、買収した米造船所に50億ドルを投資
関連記事:Hanwha Oceanが米造船所を1億ドルで買収、米海軍長官も買収を歓迎
関連記事:米海軍長官は艦艇建造に海外の造船所活用を希望、米造船業界は反対
関連記事:現代重工業が米造船所と提携、米海軍・沿岸警備隊向け艦艇建造・MRO事業に進出
関連記事:Andurilと現代重工業が提携、自立型海軍システムの設計と製造で協力
関連記事:現代重工業がGE AerospaceやL3Harrisと提携、豪海軍や加海軍の受注戦で協力
関連記事:韓国のHanwha、米軍プログラムの元請け参加が可能なAustal買収に動く
関連記事:造船への投資、米海軍長官がハンファオーシャンと現代重工業に米国進出を促す
関連記事:韓国のハンファオーシャン、米海軍需要を獲得するため米造船企業を買収か
関連記事:韓国企業が海軍艦艇向けのMRO事業に本腰、潜在的な顧客に米海軍が浮上
※アイキャッチ画像の出典:水上艦隊司令部





















普通に大人しくFF(X)を進めてもらいたいですはい
余計なことを考えないで、アーレイ・バーク級を改良して下さい。
アムラームまで撃てるよう魔改造した西ドイツのF-4並みにアーレイ・バーク級はもういっぱいいっぱいなのでフライトIIIの後は流石に新規計画艦にならざるを得ないのではなかろうか
新規設計コケたからアーレイバーク級作り続けるってのも、艦体に拡張性の余裕がないなら単純に艦を一回り拡大するわけにはいかないんですかねえ
アーレイバーク級では運用コストが高いから新規のフリゲート艦を欲しているのに、船体を一回り大きくして運用コストを上げるのは本末転倒では?
アーレイ・バーク級は単純に艦の大きさだけの問題では無くて、発電能力やら色々と旧式化しているので、艦を一回り大きくするだけでは問題が解決しないのですよ。
新型艦の導入は待った無しだと思います。
対米投資でアメリカの造船力強化に異論は無い
特に日韓が得意とする所だろう
懸念があるなら全艦アメリカ建造で良い
だが…!設計変更だけはやめて…!ホントにやめて…!!
もがみ型を採用したいと言われた場合に、輸出の自由を守る為にもがみとアメリカ向けの設計に切り分けた方がいい
今からでも日本はアメリカ側の要望を聞きまわるロビー活動を始めた方がいいのではないか
アメリカ軍に採用された場合、日本製のレーダーなどをそのまま渡してしまうと、知財が日本側にあってもアメリカ議会の輸出許可を取らなければいけなくなってしまう
もがみ級を守る為になるべく早くアメリカによく見えるコンセプトアートを見せて、できるだけダメージコントロールをするべきだ
移民を増やさないと、工員が確保できないだろうな。
建造はアメリカって話なので、移民問題は関係無いです
そのアメリカも工員が確保できないって話では?
日本の造船会社は政府の援助を受けて国内での建造力を強化するみたいですが米国での造船事業立ち上げ余力はあるのでしょうか
既に米国に製造拠点を持つ韓国にお任せしておけと思いますが
なんだろう・・・新型FFMの海外進出拡大の可能性は嬉しいんだがこの案件に関しては関わらない方が良い様な気がする。
同感ですが・・・仮に選ばれてしまったとして、日本は断れますかね?
断れば少なからず同盟関係に波風が立つし米海軍の衰退は日本の安全保障に直結する問題でもあるので非常に断り難いのも事実。
投資や買収に関して金を出すのはまぁ仕方ないとして、米造船所の再生をやらされるのがこの件の一番まずい部分なのでそこさえ回避できればなんとか・・・。
えっ?
日本が選ばれる要素がどこにあるの?
仮にこの計画(?)が実現するとしても韓国一択じゃないかな。
条件を満たす相手を選ぶのではなく、選んでから『条件を満たせ』って言ってきそうで怖いのよ。
トランプならやりそうでしょ?
大型対米投資そのものが容易ではない
かつて、東芝もウェスチングハウスに投資しているいるが成功したとは言い難い
上記のフィリー造船所も東芝の二の舞と言う可能性もある
関連事業は現時点で韓国政府主導の対米年間投資計画は既に予算オーバーしたとも言われてる
国防総省の明日から本気出す的な言葉も既に何度も繰り返されており、大統領令があれば大丈夫と思うのも余り説得力があるかどうか不明
フィリー造船所、周辺にヤク中しかいなくて一向にまともな労働者が集まらないから、ハンファは自社で数年掛けて育てることにしたそうですね……
米国の熟練労働者不足を考えると
最新鋭の造船所をゼロベースで作ることができても、移民政策をきちんと機能させてもらえないと
新人労働者への最低限の技能伝授すらままならないかと
いっそ日本型高等専門学校の教育制度の海外展開を米国に提案したほうがいいのでは
????大統領「そこまで日本が無料でやってくれるとは、ありがたい。」
オーストラリア、アメリカに同時に技術移転なんて人的リソース的に見てそもそも無理ゲーだし、ましてアメリカの場合は業つくな資本家・経営者と、自身の議席にしか興味の無い議員連中というおまけもついてくるので、関わらないのが吉。
>東芝もウェスチングハウスに投資しているいるが成功したとは言い難い
イヤイヤ、大失敗ですがな。ウェスチングハウスに関わったために東芝本体がボロボロになったのは、ご存じの通り。結局、ウェスチングハウスの株式をカナダの投資会社に売ってしまい、何ら利益を得られないまま東芝本体の経営危機を招いただけでした。
>レジェンド級カッターベースの次期フリゲート艦の建造をハンファ・フィリー造船所に担わせる方が簡単だろう。
実際は、このように現行計画のFF(X)をフィリー造船所で建造する事になるのではないですかね?
米国造船所の近代化工事も米国人労働者を使う事が要求されそうですし、米国人労働者の人件費は高額ですから、必要な投資額もハンファの見積を大幅に超過するのではないかと…
投資額も含めると採算は赤字になるのでは?
アメリカの雇用は強く(雇用統計8月)、AIによる失業の影響も限定的という分析もあるわけで。
アメリカの人手不足が続いているのであれば、造船関連の人材育成やっていくのも大変でしょうし、かなりの賃金を払っていく必要もあります。
ブルーカラーミリオネアと言われていて、AI関連の電気技師・配管工などを中心に、年収10万ドル超えが普通になってきているという話しもあるみたいですからね…。
偉大なアメリカ海軍の艦船を製造させてやるからアメリカの造船業に投資しろってこと?
企業としては絶対に関わりたくないでしょ
そもそも設計をそのまま使う気は無くて、米国の造船業に投資すれば、その施設で建造させてやるってことだけ決まってるというっ話ですかね。
それでも、韓国先行は間違いないでしょうが、相変わらずアメリカの殿様商売ですね。
整備もままならないのに建造なんて余裕あるのかね?
それこそ躯体は同盟国に任せて、それ以外の軍需産業にリソースを割り振った方がいいんじゃないか?
元々リストラ上等みたいな国なんだし、他の軍需産業は慢性的に納期遅延が発生しているし、人的リソースが必要な産業に流れていくと思うんだが。
>整備もままならないのに建造なんて余裕あるのかね?
だから、造船所の新設か既存の造船所の買収がセットになっているのでしょう。
国内の雇用ばかり気にしてるけど、製造業に全然投資してない事を棚上げにされても。
ブルーカラーの環境悪化されまくったせいで、ヤク中ばかりで人員確保もままならないって話だし。
上から下まで艦船製造が倒壊しかけてる所に上から目線じゃね……。
現実が見えてないから、造船業も軍も悲惨なことになってる訳で。
フィンランド方式も焼け石に水かもね。
日本の作り方を技術移転されて、アメリカ人の造船技術者が、その通りやれるのか、やり続けられるのか、が問題な気がする。
韓国人の作り方のほうが合ってるんじゃないか?
日本企業の自動車工場並みに、仕込むんなら別かも知れないが
韓国も一生懸命?やってるのになかなか不当な扱いを受けてますから…
米に呼ばれて技術者派遣したのに、ビザの厳格運用で不法就労の移民扱いされて工場立ち上げがスムーズにいかなかったり
現地の技術者が求めるレベルじゃなかったりいろいろと大変なようでしたよね
トランプさんはもう次は憲法変えない限りないわけだし、あと2年なんとか躱したりやり過ごして次の大統領とお付き合いしたほうがいい気がします
正直この件に日本が関わって欲しくないです。
アメリカが自国の製造業を衰退させて、人の金と技術で復興させて欲しいなんて都合良すぎかな、と。
そんな他力本願で立ち直れるんだろうか? 多分余計ないちゃもん付けてくるでしょうし。
自助努力で頑張って欲しい。流石に超大国のつもりなら、本気でそこは自分らで頑張るべきです。
まぁ、この顛末がどう転ぶかわかりませんが、改もがみ型にとってはアメリカ海軍の検討の俎上に上がったという、セールスバリューは出来たんじゃないでしょうか。
オーストラリア海軍の採用実績+アメリカ海軍が検討は、なかなか箔がついたのでは。他国へのセールスにも弾みがつくと良いですね。
上院は頑張ってNDAA2027を可決してくれー。(応援してます)
”既製品調達計画”とは何ぞや?
製造能力も問題なんですが、一番の問題はいつまでも設計変更し続ける事なのでは?
昔、三菱重工が久しぶりに豪華客船を受注。もう備え付け済みの物品でも変更に次ぐ変更で大赤字になって撤退したことを思い出した。
当時の雑誌では「これは海外では常識だ」と書かれた筈。
アメリカで作ると高くなるし、エンジニアの質も低いという