米陸軍はトランプ政権の方針によって保留扱いになっていた次期自走砲の調達に動きだし、この需要を狙うKNDS Deutschlandは13日に開幕したAUSAのイベントでRCH155-TRACKEDを発表した。オリジナルのRCH155と異なるのはBoxerの装軌バージョンを採用している点だ。
参考:KNDS Deutschland zeigt die „Ketten RCH 155“
時代遅れで近代化が急務となっているM109A7にとってRCH155-TRACKEDは潜在的な解決策
米陸軍は大砲の射程拡張を目的にしたExtended Range Cannon Artillery=ERCAプログラムを立ち上げ、M109A7の車体、58口径155mm榴弾砲搭載の新型砲塔、射程延長弾の組み合わせで70km超の射程確保を狙っていたが、2025年度予算案の中で「ERCAの取り組みを停止した」と明かし、調達や兵站を担当するブッシュ陸軍次官補も「ERCAの試みは量産に移行できるほどの成果が得られなかったが、戦術射撃の徹底的な研究において射程を拡張したプラットホームの必要性が再確認されている」「そのため開発済みのプラットホームや弾薬に関する情報提供依頼書(RFI)をまもなく発行する」と言及。

出典:Ministerie van Defensie
陸軍近代化を担当するレイニー大将も2023年「砲兵戦略をウクライナの教訓と米太平洋陸軍の要求の両方に対応させる必要がある」「ウクライナで最も多くの敵を破壊しているのは通常砲だ」「まもなく発表する通常火力戦略には戦場での通常射撃を強化する施策(射程延長や自動装填装置の採用など)が含まれている」「NATO加盟国の中には我々の関心を引く装備がある」と、ブッシュ次官補も「新しいものを開発するのではなく、内外で入手可能なものを使って(火力投射の)範囲と量を確保する方向に移行する」と述べているため、入手可能で実績のある自走砲をテストして購入すると意味だ。
この取り組みはトランプ政権の方針によって保留扱いになっていたが、米陸軍は自走砲調達に関する提案依頼書を29日に発行し「包括的な分析の結果、陸軍にとって155mm自走砲が重要であると確認された」と述べ、陸軍改革のテストに参加している旅団への自走砲(6門)提供を想定した情報提供を求めている。
このデモンストレーションに参加する可能性が高いKNDS Deutschlandは13日に開幕したAUSAのイベントでRCH155-TRACKED()を発表、オリジナルのRCH155はBoxerの装輪バージョン(重量25トン)にPzH2000の技術を流用して開発したモジュール式砲塔システム=AGMを搭載していたが、RCH155-TRACKEDはAGMをBoxerの装軌バージョン(重量28トン)に搭載しており、このプラットフォームは最大重量45トンまでの拡張が可能なため装輪バージョンよりも設計上の余裕がある。
つまり顧客のニーズに合わせてAGMの能力を強化したり、システム全体の防御力=装甲やRWSを追加したり、将来のアップグレードを受け入れる余地が大きいという意味だが、RCH155とRCH155-TRACKEDは自走砲としての能力自体に大きな違いはなく、顧客にとってRCH155-TRACKEDが価値は「AGMを搭載するプラットフォームに選択肢を与えてくれる」と言ったところだろう。

出典:Photo by Staff Sgt. Robert Barney
因みにAUSAでRCH155-TRACKEDを発表したのは米陸軍の関心を引くためで、独ディフェンスメディアのhartpunktも「時代遅れで近代化が急務となっているM109A7にとってRCH155-TRACKEDは潜在的な解決策だ」と報じている。
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※アイキャッチ画像の出典:KNDS Deutschland





















構造上しょうがないけど装軌式なのか…長距離機動はあまり意識しないのね
アメリカさんは戦車トランスポーター豊富に持ってますから大丈夫との判断なんでしょう
この手の輸送機材が充実している国が羨ましい…
それでも遠征が基本の軍隊なのに現地移動は内陸部よりも沿岸部や空港などの要衝を守れれば良しって考えなのかと、ちょっと意外でしたね。まぁ確かに攻勢に出るより防御に回るほうが今後は多そうですけど。
2025年1月にドイツ駐ウクライナ大使館副防衛武官が、ザクセン州のデーリッツ陸軍士官学校で行った演説によればウクライナ戦線でのPZH2000の稼働率は25から30%台だったとのこと
ドイツが誇る最新陸戦兵器は軒並み低い評価を受ける結果
ワシントン州のヤキマ演習場での99式自走榴弾砲の演習結果は良好だったらしいので自走砲そのものの需要はあるだろう
ドイツの自動車も、「故障しにくいとはいいものの、それは毎日点検整備してるのが前提」なんて話もありますし…
武人の蛮勇に耐えるには少しだけ繊細なのかも?
Pzh2000稼働率低いという海外からの指摘について、過去コメント欄1年前くらいに何度か書いたら、避難轟轟だったんですよね。
一周回って、冷静な議論・情報交換ができるようになってよかったなと。
(1:50~)消耗戦に弱かったり、砲身の量産が足りてなかったり、重すぎる点もそうですが、高コストなのにも関わらず問題が多いなと感じています。
(2025/08/08 ウクライナで通用しなかったドイツ製兵器!評価されたのは冷戦時代の旧式 ミリレポ Youtube)
>99式自走榴弾砲の演習結果は良好
そりゃ、精鋭の真面目な陸自の整備兵が運用する演習時の性能が素晴らしいのは当然です。
実戦に使われるように担ったら、どれだけの稼働率を維持できるモノやら。
動画をみましたがドローン対策上必要なんでしょうけど自走砲が行進間射撃をかます時代が来ようとは
俺には対策になると思えない。
トールだって移動中交戦可能だって話だし実際やってたけどドローンは直撃してた。
車が走った程度の速度ではオペレーターの操作で直撃させられる。
一番現実的なのは掩体を構築し砲を出したり引っ込めたり繰り返すことじゃないかな。
まあ究極の陣地転換時間短縮方法だとは思うんですよねえ
どの車両であっても行進間射撃は位置バレしている無誘導射撃か終末段階での目標の細かい動きに追従するのが難しい旧式な無線誘導や有線誘導方式への対策であってドローン対策だけの話ではない。基本榴弾砲が行進間射撃をするのはレーダーやUAVとかで位置バレして榴弾砲やロケットで攻撃された時の対策。
恐竜進化のようになって、コストパフォーマンスが忘れられかけてましたからね。
ウクライナ戦争・近々の紛争を契機に、何が必要なのかを見直す流れになるのは正常化している気もしますね。
榴弾砲はとんでもない兵器だが実は消耗戦向きでは無いよね。
ドローンの欠点の一つとして火力の時間当たり投射は低いという点がある、
一機につきオペレーターが一人いるし周波数も取り合うからだけど、
逆にいえば砲は一瞬で備蓄を使い果たしてしまえる。
ロシアは割とマシだけど砲弾は無くなったからドローンである程度代える、
という現象が実戦部隊ではほぼ起きる。
じゃあ最初から全てドローンでいいだろと個人的には思ってしまう…少なくとも
砲弾の数を心配しなくてよくなるまでは、撃つプラットフォームを更新するのに
金を掛けなくていいんじゃないのかな。
それにしてもトップ画像の自走砲
漂う戦時急造感の見た目、もうちょっとどうにかならんかったのか。
モジュール砲塔と既存装軌車の組み合わせだから、仕方ないのかもしれんが。
こう言っちゃ難ですが、ヴァッフェントレーガーの臭いがしますね。
大騒ぎした挙げ句BAEのM109砲身延長案に落ち着きそうな気配が強い
M109にAGMを載せたりして。
資料によって違うかも知れないけどPzH2000が約30億円位でRCH155がそれよりざっくりで10億円安いだけ。RCH155-TRACKEDはその間位なのかPzH2000近いのかそれ以上になるかも分からない。米国の大量導入があったとて、どれ位のスケールメリットを発揮出来るのか。性能は高いが米軍の食指が動くほどの価格が提示出来るかも怪しい。