米国関連

KNDS、米陸軍のM777後継需要はCAESARに大きなチャンスとなる

米陸軍の次期自走砲調達は取り組みは防衛産業界から大きな注目を集めており、KNDS FranceはLeonardoと提携してCAESARを提案する予定で、Defense Newsの取材に「防衛産業界は米陸軍がM777の後継システムとして約400輌の自走式榴弾砲を発注すると予想している」と述べた。

参考:KNDS sees ‘excellent’ chances to win US Army artillery competition

もう米陸軍の長距離火力戦略が出てこないと何もかもが憶測の域を出ない

米陸軍は大砲の射程拡張を目的にしたExtended Range Cannon Artillery=ERCAプログラムを立ち上げ、M109A7の車体、58口径155mm榴弾砲搭載の新型砲塔、射程延長弾の組み合わせで70km超の射程確保を狙っていたが、2025年度予算案の中で「ERCAの取り組みを停止した」と明かし、調達や兵站を担当するブッシュ陸軍次官補も「ERCAの試みは量産に移行できるほどの成果が得られなかったが、戦術射撃の徹底的な研究において射程を拡張したプラットホームの必要性が再確認されている」「そのため開発済みのプラットホームや弾薬に関する情報提供依頼書(RFI)をまもなく発行する」と言及。

出典:Photo by Staff Sgt. Robert Barney

米陸軍は先月29日に待望の提案依頼書を発行し、この中で「提案する自走砲の生産を米国内に移転する方法」「これを引き受ける米国内の製造拠点やサプライヤーの特定」「自走砲1門の納入に要する期間」「自走砲6門の納入に要する期間」に関する情報を要求していたが、Breaking Defenseは陸軍の内部文書を入手して「次期自走砲に求める重要な要件が判明した」と報じた。

この内容を端的にまとめると「自走砲と補給車両の両方が国内で生産されること」「米軍規格の弾薬を発射できること」「持続的な戦闘能力の保証と物流への負担とコストを削減する対策」「航空、海上、鉄道、道路輸送に対するモビリティ対策」「オンロード及びオフロードにおけるモビリティパフォーマンスがHIMARSに匹敵すること」「防御力がM109A7に匹敵すること」「制圧射撃の最大射程は58km」「精密射撃の最大射程は70km」「最小射程は4km」「最低でも3発以上のエクスカリバー砲弾を格納できること」「射撃速度は最低でも無誘導弾は分6発/誘導弾は分3発」となる。

出典:Hanwha Aerospace

Breaking Defenseは「これだけの重装甲と機動力を両立させるのは容易ではない」「伝統的に装輪車両は軽量でオンロードでの走行に適した構造で、逆に装軌車両はオフロードでの機動性に優れた重量級車両というイメージが強い」「陸軍はM109A7に匹敵する防御力を求めているため『改良型M109A7』や『装軌式の自走砲』を好んでいるのかもしれない」「現在までに提案され実績がある装軌式はK9だけ」「BAEは依然としてM109A7を生産している」と述べたものの、米陸軍の次期自走砲に関する状況は流動的だ。

米陸軍はTransformation in Contact(兵士が新しい技術に触れることで組織や認識の変革を加速させるラボベースではなくユーザー主導の取り組み)で提案された自走砲をテストする予定だが、これは競争入札の正式な選定ではなく次期自走砲に関する知見や情報を収集する目的で、次期自走砲に関する取り組みがM109A7の後継システムのみを対象にしているのか、牽引式のM777を自走式の榴弾砲に更新することも含まれているのか、M119の自走化も含む「砲兵戦力全体の近代化」を対象にしているのかよく分かっていない。

出典:U.S. Army photo by Spc. Zakia Gray

KNDS FranceはLeonardoと提携してCAESARを提案する予定で、同社のフォート氏はDefense Newsの取材に「防衛産業の関係者らは米陸軍がM777の後継システムとして約400輌の自走式榴弾砲を発注すると予想している」「米陸軍兵士はアフガニスタンとイラクで間近に見たCAESARを高く評価している」「CAESARはウクライナでの実戦から多くのフィードバックを受けて継続的な改良が行われている」「次回のコンテスト規模は前回よりも参加システムが絞られる」と述べている。

つまりKNDS FranceはM109ではなくM777の更新需要を狙ってCAESARを提案しているという意味で、この意図を乱暴に拡大解釈するとM109の更新需要にK9A2、RCH155-TRACKEDが、M777の更新需要にArcher、SIGMA、RCH155、CAESAR、K9A2MHが提案されている構図になるが、もう米陸軍の長距離火力戦略が出てこないと何もかもが憶測の域を出ない。

関連記事:米陸軍、次期自走砲にM109A7並な防御力とHIMARS並な機動力を要求
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関連記事:米陸軍がERCA開発を中止、市場で入手可能な自走砲導入に方針を転換

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

  • コメント (11)

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    • 無印
    • 2025年 10月 25日

    >「航空、海上、鉄道、道路輸送に対するモビリティ対策」
    空輸は「出来たら良いな」ぐらいで我慢しておいた方が良いんじゃ…
    空輸できる自走砲を開発するより、自走砲を空輸出来る新型輸送機を開発した方が早いって

    一番無難なのは、重量級自走砲と、空輸できる軽量級自走砲2種類採用するとかでしょうけど

    13
      • ドゥ素人
      • 2025年 10月 26日

      仮に(無茶ですが)空輸できたとして、空輸できる量や空港が限られそうな中、米軍はどこで使うことを想定してるんでしょうね…?

    • 名無し
    • 2025年 10月 25日

    名前が思い出せないんだけどブルータスだかなんだかトラックに榴弾砲くくりつけただけみたいな車両をアメリカでも作って実験してたが、あれはボツか?

    1
      • kitty
      • 2025年 10月 25日

      「ブルータス、お前も(ボツ)か」 

      3
      • バーナーキング
      • 2025年 10月 26日

      あれが現実解だった気がしますけどどうなったんですかねぇ。
      車両側の空輸は少しハードル高いけど必要なら空輸が容易なサイズ、重量の車両を新設計するのもそれほど難しい話ではないでしょうし。
      逆に防御力が不足だというなら車両は空輸諦めて大きい空港なり港なりから自走する前提で重装甲化したっていいし。

    • Mr.R
    • 2025年 10月 25日

    ウクライナ戦争の教訓でいうのなら彼の地で撃破が視覚的に確認された装備は牽引砲よりも自走砲の方が両軍共に多かった気が···
    牽引砲はデコイによる偽装もしやすいようですし(※最新のものではソーラーパネルとセットで砲身部分を温めてサーマルカメラでも見分けがつかないようにしたり、発煙させて本当に射撃しているように見せるデコイもあるんだとか)。
    従来品をアップデートするのは当然ですが、記事に有るような条件で有事に間に合うんですかね、どんな高性能機も現場に出られなければ存在しないのと同じです

    3
      • のー
      • 2025年 10月 26日

      牽引砲はほとんど動けませんから、射程外にいる敵を攻撃できません。
      自走砲はそういう敵を攻撃するために、前に出て射つために存在します。
      つまり自走砲は危険な運用をするために存在するのですから、結果的に損害が多いのは当然ではないでしょうか?
      更に装甲のある自走砲は、危険を承知でもっと前に出て撃つのが任務ですから、もちろん損害が多いのは覚悟の上でしょう。

    • あああ
    • 2025年 10月 25日

    肥大化した要求に国内メーカーが耐えられないからありもので済ませるために外国製を調達するという話だったはずが、早速要求の肥大化が始まった感じが・・・
    根本的な戦略が定まっていないから要求の足し算しか出来なくて引き算すべき箇所を決定できない。
    2000年代日本企業のダメなITプロジェクトを見ているようだ。

    10
    • hoge
    • 2025年 10月 25日

    そもそも米陸軍は今後どこで活躍する予定なのかがよくわからないからな
    南米か、中東か、アフリカか、ロシア(東欧)か、中国か……
    一番脅威度の高い中国相手に活躍の場がほぼ見当たらないのが陸軍や海兵隊なんだよね
    太平洋戦争みたいな島嶼戦になるならアレだけど、流石にマジで?って感じだし

      • 中村
      • 2025年 10月 25日

       今のアメリカ軍の縄張り区分だと、ぱとりおっと

      1
      • 中村
      • 2025年 10月 25日

       今のアメリカ軍の縄張り区分だとパトリオットも地上配備トマホークも陸軍ですからその辺りで戦うのでは?

       海兵隊はすでにハッキリその方向性です。

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