米国関連

米陸軍のミサイルや無人機と交戦可能な155mm防空砲、実射風景が登場

米陸軍は2024年12月「155mm自走砲と超高速砲弾を組み合わせた防空砲=マルチドメイン砲(MDAC)に関する契約をBAEシステムズと締結する」と発表、BAEシステムズはMDACの実射風景を3日に公開して「対地攻撃、巡航・弾道ミサイル迎撃、対水上戦に使用できる」とアピールした。

参考:Hypervelocity Projectile

本当に防空砲というコンセプトが21世紀に復活するのか興味深いところだ

米海軍はレールガン向けの専用砲弾として低抗力設計を取り入れたHyper Velocity Projectile=HVP(超高速発射体)を開発し、これを通常の大砲でも使用可能な高速多目的弾(装薬使用)として発展させ、開発元のBAEシステムズはHVPについて「レールガン、陸軍や海兵隊の155mm砲、海軍の5インチ(127mm)砲などで使用出来る次世代の低抗力誘導弾だ」「実行可能な任務はHVPを使用する大砲とプラットフォームによって異なるものの、水上艦艇で使用すれば弾道ミサイルや巡航ミサイルの迎撃、航行中の艦艇、地上目標の攻撃に活用できる」と説明。

出典:U.S. Navy photo by John F. Williams/Released HVP

HVPは通常の大砲で使用しても低抗力設計の効果で高速性、機動性、目標到達時間の短縮を実現、さらに標準砲弾の数倍以上とも噂される到達距離をロケットモーターのアシストなしで実現しており、米陸軍は2020年9月「M109A6がHVPを使用して巡航ミサイルの動きを模倣した標的機=BQM-167の迎撃に成功した」と発表。

この結果を受けて米陸軍は「155mm装輪式自走砲」と「HVP」を組み合わせたMulti-Domain Artillery Cannon=MDAC(マルチドメイン砲)に関する情報提供依頼書を2024年7月に発行、WarZoneは「MDACは弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆型無人機などから拠点を守る低コストの防空システムだ」「155mm榴弾砲を使用しているためMDACは必要に応じて防空以外の用途にも使用されるかもしれない」「MDACは単独で機能することを期待されておらず、既存の防空レイヤーに追加の保護レイヤーを提供する」と指摘していた。

米陸軍の迅速能力・重要技術局(RCCTO)は2024年12月「MDACのプロトタイプ契約をBAEシステムズと締結する予定だ」と発表し、RCCTOはMDACシステム一式について「マルチドメイン砲×8門、多機能精密レーダー×4基、戦闘管理システム×2基、HVP×144発で構成され、無人機、巡航ミサイル、固定翼機、回転翼機、高度な航空機やミサイルの脅威から固定及び半固定の地域を防御可能で、既存の対空迎撃やミサイル防衛を補完するもの」と説明し、BAEシステムズも2026年5月にMDACの実機写真を公開。

“Multi-Domain Artillery Cannon System=マルチドメイン砲システム(MDACS)は、素早く動き強力な打撃を叩き込むために設計された次世代の砲兵システムだ。航空輸送が可能で超高速弾=HVPを主武装とし、戦闘が要求する場所であればどこにでも瞬時に高連射の火力を叩き込むことができる。これは柔軟性に優れ、誰にも止められない「適応型砲兵」の未来そのものだ”

そして7月3日、MDACの実射風景を公開して「MDACは移動しながら圧倒的な火力を発揮する。大口径砲を搭載した車輪付きのMDACはHVP弾を高速発射でき空輸も可能だ。これは火力の概念を覆すものだ」とアピール。

HVPを紹介するページでも「HVPは海軍の5インチ砲、海軍、海兵隊、陸軍の155mm砲システム、将来の電磁レールガンといった多様な火砲システムにおいて複数任務を遂行可能な次世代型の低抗力設計を取り入れた誘導発射体で、遂行する任務は運用する火砲システムやプラットフォームに依存するものの、対地攻撃、巡航・弾道ミサイル迎撃、対水上戦など多岐にわたる」と言及している。

実射を行うMDACにはカモフラージュネットがかかっているため車体全体が確認できないが、それでもWarZoneが公開したMDACと異なり操縦席のような部分は見当たらず、HVPを紹介するページに埋め込まれたCG映像を見る限り、MDACは自動装填付きの155mm砲を搭載した無人車両に見え、巡航ミサイル、弾道ミサイル、自爆型無人機と交戦している。

米ディフェンスメディアもMDACに関する続報を報じていないため詳しい状況は不明だが、時期的には米陸軍がMDACに実射試験を開始していても不思議ではなく、本当に防空砲というコンセプトが21世紀に復活するのか興味深いところだ。

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※アイキャッチ画像の出典:BAE Systems

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コメント

  • コメント (17)

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    • AH-X
    • 2026年 7月 03日

    SAMはもともと高いですが近年はバカ高くなってますからね。無人機やヘリくらいなら対空砲で十分という考えもアリなんでしょう。

    6
      • 名無し
      • 2026年 7月 03日

      やってること考えると、SAMの推進剤を火薬に変えただけなのでは?(弾薬コストも。)これやって、SAMよりコストが下がる理由が分からない。
      むしろ発射時の強烈なGに電子機器が耐えなきゃならないから、SAMより高くなるんじゃないかと、ビビっております。

      6
        • nachteule
        • 2026年 7月 04日

         要っている事がよく分からないんですがミサイルの初速はそれ程までに遅くG値が低く、榴弾砲の初速はそれ程まで速くG値が高い物でしょうか?

         そしてミサイルの推進部分は最高で総コストの1/3とも言われる事があります。極端な話ですが製造数が限られるミーティアみたいな推進部といくら作ろうが幾らでも消費され単純に量を調整する装薬とではコスト面では天と地の差でしょう。
         そして普通のミサイルは推進部分と言うデッドウェイトを最初から最後まで抱える物が大半です、推進剤と充填部と言う飛翔する為に必要な物を含めて加速する為に余計なエネルギーが必要になってくる。推進の殆どが外部エネルギーである砲弾とは条件が全然違うでしょう。

         適当に[PAC-3 MSE]と[BAEのHypervelocity Projectiles]を比較するなら重量は推定320kg:約13kg、長さは約5.3m:約66cm、直径は29cm:15cm以下。姿勢に関わる装備はMSEが前部から150以上の姿勢制御用モーター+安定翼+折り畳み式操舵翼、HVPは小型軽量故に後部のカナードだけ(恐らく)。推進部分だとMSEはその射程の大半でマッハ6を出す為の大型デュアルパルス・ソリッドロケットモーター:HVPは汎用の外部装薬のみの筈。

         SAMは重厚長大でお金の掛かる部品が多い、HVPは小型軽量で割とシンプルな構造と言う差がある。差があるのに金額に差が出ませんと言うのは無理があると思う。HVPは元から高価で高い命中率を狙う物ではなく低い命中率を低価格の砲弾の数で補うのがコンセプトで低コスト迎撃ミサイルに近い考え方。

        1
      • 名無し
      • 2026年 7月 03日

      やってること考えると、SAMの推進剤を火薬に変えただけなのでは?(弾薬コストも。)これやって、SAMよりコストが下がる理由が分からない。

      • 名無し
      • 2026年 7月 03日

      やってること考えると、SAMの推進剤を火薬に変えただけなのでは?(弾薬コストも。)これやって、SAMよりコストが下がる理由が分からない。

      2
    • Mr.R
    • 2026年 7月 03日

    でもお高いんでしょう?
    今なら大特価! 〇〇とセットでお買い上げのお客様は税込み〇〇ドル!

    3
      • 他人事では無い
      • 2026年 7月 03日

      お支払いは今直ぐ、納期未定です。(納品するとは言っていない)

      13
      • Whiskey Dick
      • 2026年 7月 03日

      ズムウォルト級の艦載砲専用砲弾2発でトマホーク1発買えた。
      世界中でこの類の兵器が流行すれば砲弾価格は低下するだろうけど。

      4
    • gobu
    • 2026年 7月 03日

    艦船の砲でも撃てるのか
    旧海軍の3式弾かな

    1
    • 2026年 7月 03日

    運搬しやすいようにもう少し口径を小さくしよう。88ミリとあどうかな

    4
      • Mr.R
      • 2026年 7月 03日

      そいつは素敵だ! 大好きだ!!

      8
    • 黒丸
    • 2026年 7月 03日

    ズムウォルト級にこれが載せられれば良いのに、もう手遅れですね。
    もしかするとトランプ級戦艦に採用されるかも。と思いたいですが、
    今の米海軍だと揚陸艦の上に155㎜女装砲載せてそこから撃ちそうです。

    1
    • 中村
    • 2026年 7月 03日

     155mmL52、最大仰角70度、任意角装填、発射率毎分6発。戦史ヲタなら高角砲って思いますよね。実際は現代の一般的な自走榴弾砲なんですけど。

     フラミンゴやゲラン5辺りまでなら普通の榴弾砲に普通の榴弾込めても通用するんしゃないでしようか?

    2
    • ななし
    • 2026年 7月 03日

    ただの砲弾ならともかく、推進機以上に誘導装置が高価なんだから「誘導」砲弾ならミサイルより大幅に安価ってわけではないだろうし
    捜索は別なレーダーにまかせるにしても、誘導が必要ってことは母機側は目標をトラッキングするレーダーや、照準レーザーとかライドビーム発生装置を持ってないとならないわけで
    実質「弾の推進機が貧弱になっただけのSAM」だよなこれ

    5
      • SB
      • 2026年 7月 04日

      逆逆
      誘導を母機側のイルミネーターで行うから、その分砲弾側に高価なセンサーを乗せなくて良いからミサイルと比べるとその分安価(になる予定)なのよ
      あとミサイルと違ってたくさん弾を用意できる

      3
    • あうあうあー
    • 2026年 7月 04日

    イタリア海軍のDART誘導砲弾の発展型みたいな感じなんでしょうか?

    • TOW
    • 2026年 7月 04日

    ここ暫く155㎜砲弾がローラーコンベアの上に乗っている写真が見られなくなって少し寂しい…

    155mmM107砲弾の購入をウクライナが中止したそうですね。

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