米国関連

自動空中給油に対応、ロッキード・マーティンが米空軍に提案する空中給油機「LMXT」を発表

ロッキード・マーティンは17日、米空軍が調達を予定しているブリッジタンカー(KC-Y)に対応したLMXTの詳細を発表した。

参考:LMXT: Built in America.By Americans. For Americans. 
参考:Lockheed Martin Unveils KC-Y Tanker Contender

ロッキード・マーティンはステルス機への空中給油が可能で自動空中給油システム「A3R」を搭載したLMXTを発表

米空軍はボーイングが開発したKC-46Aを2027年までに179機調達する予定だがKC-135の更新需要を全てカバーしている訳ではなく、それまでに研究が進められている次世代空中給油機「KC-Z」の開発や実用化も間に合わないためKC-46AとKC-Zの間にはギャップが存在する。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Abigail Klein

このギャップを埋める最もシンプルな方法は米空軍がボーイングに新たな契約を与えてKC-46Aを追加発注すれば良いのだが、同機は複数の不具合に悩まされボーイングは空中給油機の主要機能を自社資金によって「再開発」する事態に陥っており、少なくとも2024年まではF-22、F-35A、B-2といったステルス機やA-10への空中給油が制限される見込みで空軍や議会もKC-46Aの調達継続には批判が多く、この問題が影響したのかは不明だが米空軍はKC-46AとKC-Zとの間のギャップを埋めるブリッジタンカー(KC-Y)を新たに選定する方針を今年6月に発表した。

米空軍がブリッジタンカーに求める要件に「2029年から納入可能な非開発の空中給油機」を挙げているため、ボーイングのKC-46AとエアバスのA330MRTTが再び受注を争うことになると複数の米メディアが予想しており、ボーイングの担当者とエアバスと組んでいるロッキード・マーティンの担当者は米空軍のブリッジタンカーに挑戦する意向を表明していたが、ロッキード・マーティンはブリッジタンカーに対応したLMXTの詳細を17日に発表して注目を集めている。

予想通りロッキード・マーティンはエアバス製のA330MRTTを米軍仕様に改造したLMXTを提案すると発表、特に強調しているのはKC-46Aが現在制限を受けているF-22、F-35A、A-10への空中給油が承認済み(B-2へのA330MRTTによる空中給油は新たに承認を取得する必要がある)な点とKC-46Aでは当分実用化が難しい自動空中給油システム「A3R」を搭載している点で、今だにKC-46Aの不具合と戦っているボーイングにすれば非常に厳しい戦いになるだろう。

ロッキード・マーティンはLMXTの製造について「全て国内でアメリカ人の労働者が製造する」と説明しているので国内産業や雇用の面でKC-46Aの採用を訴えるのも難しく、A330MRTT採用の障害となっていた米国とEUの補助金に関する報復関税も解消されているためKC-46Aをブリッジタンカーに提案すると見られるボーイングはお手上げかもしれない。

因みにKC-46Aは今年6月にも新たなカテゴリー1の欠陥が発覚しており、既存のKC-46A調達契約を見直してA330MRTT調達に切り替えることを主張している共和党のロブ・​ウィットマン議員は「KC-46Aの欠陥に関する報告を毎月耳にして私はイライラしている」と激おこだ。

果たして手負いのKC-46Aで自動空中給油システム「A3R」を搭載したLMXTに対抗することは可能なのだろうか?

関連記事:米空軍が新しい空中給油機の調達方針を発表、KC-46AとA330MRTTが再び競合か
関連記事:KC-46Aに新しいカテゴリー1の欠陥が発覚、ボーイングの累計負担額は5,500億円を突破
関連記事:自動空中給油システムの開発が完了したA330MRTT、欠陥の修正に忙しいKC-46A

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    LMの存在感ばかり上がってるのがね
    正面装備の多くをLMが握れば、当然ボーイングの低迷は必至

    日本の事情から、国内キャリアは、A330どころかエアバス機自体が殆ど採用されてない状況じゃ、
    整備・育成を国内キャリアに依存する給油機は、KC-46以外の採用はコストには見合わなかったのは仕方がない。
    とはいっても、日本としては手をこまねいているのではなく、政府与党系に近いANAがエアバス機の採用を増やし始めてるので、
    エアバスとの関係の醸成、エアバス機の運用経験の蓄積は図りはじめてるとは思う。
    将来的には、空自へのLMXTみたいなエアバス機採用はありえつつある

    12
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      JAL「あの…俺がB777の後継機としてA350の導入を進めている件はスルーなの?」

      4
        • 匿名
        • 2021年 9月 18日

        JALは政府与党系とは、関係がほぼ切れてる

        1
          • 匿名
          • 2021年 9月 18日

          前の日のJALが与党政治家と役人ども食い潰された経緯を稲森さんはよく知ってるからね

          2
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      ANAはA320、321を、JALはA350を多数導入してるし運用の基盤は出来上がりつつある
      というかボーイングが新型を全く作る気配がないんで遠からぬうちに787、777X以外は淘汰されそうな勢いだし、むしろ空自もエアバス入れないと逆に大変かもしれない

      6
      • 匿名
      • 2021年 9月 19日

      ANAがA380、JALがA350-900/1000(A350WXB)を運行していますし、日本国内のLCCはB737NGかA320系を選定しているところが多いので、旅客機についてはエアバス機も決して少数派とは言えなくなってきましたね。
      とは言え、空自の空中給油機、AWACS(&政府専用機)は全てボーイング機なので、エアバス機を採用するなら「導入時期の問題でアメリカが採用するならやむを得ず」って感じでしょうか。

    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    ボーイングを容赦なく追い撃つLM。

    LMって今は旅客機作ってませんよね?
    座席の窓付き機体の設計からやるんでしょうかね。
    トライスター思い出した。

    ボーイングは既にコスト削減策がコスト増につながる悪循環に入っているっぽいので、既存機体流用するよりうまくいきそうな感じ。

    1
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      いや、普通にライセンス生産のこと。エアバスがLMの敷地に設備一式を持ってくるだけ。

      13
        • 匿名
        • 2021年 9月 18日

        ああ、エアバスと組んでるって書いてましたね。

        1
    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    もうKC-46への信頼度はほぼ無いから正直使いたくは無いけどLM一辺倒に拍車が掛るのも好ましくないし部品はなるべく複雑化したくない
    どうするんでしょうねー

    7
    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    と思って、トライスターをググってみたら、まだあちこちで現役で残ってんですねぇ。例えば、

    アメリカ宇宙軍、ロケット母機トライスターから打ち上げ成功
    リンク
    母機のトライスターの所有者はノースロップグラマンという、よくわからない状態。

    オッサンにしかわからんかな。

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      おっさんはトライスターの名をファントム無頼で覚える

      5
        • 匿名
        • 2021年 9月 18日

        三星ちゃんだっけ?

        3
    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    王手をかけられたボーイング
    もう長考してる時間もないぞ
    下手したらKC46の調達も減らされて
    参りました、なる

    2
    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    ボーイングは民間部門でも737MAXでやらかしたし、軍事部門でも先日の空中給油機の欠陥を追加予算なしで自腹で直す契約してたから利益低下or赤字確定状態だし、このままだと本気でやばくないだろうか

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      最大の危機は去ったと思う。
      737MAXは復活しつつあるし、旅客需要も急速に回復、22年にはキャッシュフローがプラスになる見通し。次期中型機も動き始めてる。
      787など品質管理が依然として課題だけどかなり持ち直してきてるよ。

      2
    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    ここは反日サイトなので日本が導入するF-35やKC-46に批判的なことしか取り上げないから、真に受けては駄目ですよ。

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      はいはい、ガ○ジはツイッターにでもこもっててねー

      19
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      ハア?F-35やKC-46の問題は米国政府や米空軍も認めているのに、何故その話をフェイクニュース扱いするんだ?
      そう言う事を言いたければ、韓国板にでも行ってくれw

      14
        • 匿名
        • 2021年 9月 18日

        問題があっても何度も何度もしつこく取り上げて問題を大きく見せようとしてるのが反日の根拠、そんな下らない記事を量産するよりF-35やKC-46のポジティブな面を取り上げたり、自衛隊の良い面をもっと広めるほうが日本のためになると思いませんか?

        2
          • 匿名
          • 2021年 9月 18日

          それって臭い物に蓋をするということでいいんですね?
          ポジティブなことばかり取り上げるとか、エセ愛国者が嫌いな、都合が悪いことは報道しないメディアと同じじゃん。

          13
            • 匿名
            • 2021年 9月 18日

            人によって国の愛し方は違っていいと思う
            …だけど問題点から目を逸らし良いところだけ見続けるって言うのは決してその国や組織にとって幸福な事じゃないよ

            ここは軍事情報を扱うサイトであって、「愛国ポルノ」を探してるなら他所でお探し

            16
          • 匿名
          • 2021年 9月 18日

          KC-46はホントにトラブル続きなんですが…
          F-35やオスプレイの欠陥機論とはレベルが違う、F-35やオスプレイを肯定している私でさえ心配になるぐらい。

          5
          • 匿名
          • 2021年 9月 18日

          臭い物に蓋をするのが、日本の為か?
          最新の技術で出来た兵器にトラブルは当然。
          それをどう克服するかを注視しているのだ。
          ボーイングは名門で、すでにエアバスがお手本を作った。
          必ず修正はできるだろう。
          F35もいずれ歴史に残る名機となるだろう。
          ただそれが今ではないだけだ。
          安易なレッテル貼りは偏見の入口でしかない。

          9
            • 匿名
            • 2021年 9月 18日

            歴史的には名門企業が呆気無く潰れるケースはゴマンとあるし、エアバスだってその歴史を見れば順風満帆じゃ無かったのを忘れないでね
            後、F-35は米国内でも代替機(MR-X)を作ろうって話が出る位の困ったちゃんに成り果てているんだけど(KC-46はそれ以下)…まあ、将来どうなるかは見物だね
            なので、レッテル=偏見と断じるのも偏見の入り口だって言う事を忠告して置く

            1
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      信用されないね君(笑)

    • 匿名
    • 2021年 9月 18日

    給油機なんてこれからはAWACSと同じく長射程ミサイルに狙われるから
    B21でも給油機に改造するべき

      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      プローブ出した時点でステルス性能一気に落ちて的になるだけでは

      4
      • 匿名
      • 2021年 9月 18日

      どう考えてもコスト的に引き合わんし、意味判らん

      5
      • 匿名
      • 2021年 9月 19日

      LM開発中のKC-Zがそういうステルス給油機なんだよ。既にそういう方向。

      1
    • 匿名
    • 2021年 9月 19日

    もともとKC-Xプログラムでノースロップ・グラマン&エアバスが提案したA330 MRTT(=KC-45)を選定していながら、ボーイングの申し立てでKC-767AT(=KC-46A)が選定され直した経緯があるので、「逆戻りしてどうする」というのはありますね。
    しかもノースロップ・グラマンは今回エアバスを提案できなくなるでしょうから、ロッキード・マーティンがKC-Yを勝ち取る事になれば「LWF, ATFに続いてまたLM(+GD)に案件掻っ攫われた」事例になってしまいます。

      • 匿名
      • 2021年 9月 19日

      ウクライナのO・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体からAN-225引き取ってライセンス生産した上でタンカー改修?>選択肢

      • 匿名
      • 2021年 9月 19日

      今回のはボーイングの自爆にノースロップが巻き込まれただけだからノーカンだよ。
      予算超過より機能未達の方が政府が困る。予算を際限なく政府が出さない案件には関わらない等を徹底して、しばらく目立たなかったLMの時代が来ただけ。
      採用された軍用機の数が減ってボーイングがこまったとしても、20年後ぐらいか。たいした変化じゃない。

    • 匿名
    • 2021年 9月 19日

    どこで組み立てするか書いてないが、A320のラインがあるアラバマ州モービルとC130とC5のラインがあるジョージア州マリエッタのどちらで組み立てるにしてもどちらの州も共和党が地盤の州で、逆にKC46のラインがあるエバレットは民主党の地盤でしかも787のラインが閉じられてがら空き状態だから、今回もKC46が選定されそうだな。バイデン政権が性能を無視して決めるならだが。

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