米陸軍は高価なパトリオット迎撃ミサイル=PAC-3 MSEを補完する低コスト迎撃ミサイルの開発に乗り出し、欧州でもPAC-3 MSEの代替品開発=FREYJA(フレイヤ)計画が正式化され、ロッキード・マーティンもPAC-3 MSEの廉価版=PAC-3 ACE開発を発表した。
参考:Lockheed to make cheaper Patriot interceptors as air defense demand soars
参考:Lockheed Martin Introduces PAC-3 ACE™ – A High-Performance, Low-Cost Interceptor
ロッキード・マーティンはPAC-3 MSEの廉価バージョンを供給することで弾道弾迎撃ミサイル分野での支配的な立場を守りたいのだろう
米陸軍は5月に発行した情報提供依頼書の中で「空中の脅威、巡航ミサイル、近距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルを迎撃可能な迎撃ミサイルおよび射撃管制のトータルソリューションを求めている」「提案するソリューションはM903発射装置と統合防空向け指揮統制システム(IBCS)に統合可能でなければならない。FY2026第4四半期までに実射を含む能力実証に耐えうる技術的成熟度を備えていることが必須で、プロトタイプまたは量産レベルにおける迎撃ミサイルの単価は100万ドル未満でなければならない」「迎撃ミサイルに搭載するシーカーや射撃管制装置のコストもそれぞれ25万ドル以内でなければならない」と言及。

出典:SAM.gov An official website of the U.S. General Services Administration
1発あたり100万ドル未満の低コスト迎撃ミサイルを実現させる秘訣は「低コスト迎撃ミサイルの全要素を主契約企業に丸投げする方法」を改め「低コスト迎撃ミサイルを構成する各要素(弾頭、ロケットモーター、シーカー、射撃管制装置など)に分解して専門サプライヤーに競争させる方法」を採用することで、最終的に各要素のモジュールはオープンシステムアプローチで迎撃ミサイルに統合される。
つまり「開発プログラムを受注するとプログラム全体を所有できて製造、運用、維持、アップグレードに関する作業を独占できてしまう調達の習慣」で低コスト迎撃ミサイルを調達すれば、主契約企業は迎撃ミサイルを構成する各要素を垂直統合方式で管理して各サプライヤーの利益を守ろうとするため、米陸軍が新たなサプライヤーを製造に参加させて生産能力を引き上げたいと考えても、これを主契約企業は拒否する権利があるため、各構成要素を分解して直接管理して競わせる=民間企業が競争市場を通じて部品コストを削減してきた手法を取り入れるという意味だ。
米陸軍は産業界向けに低コスト迎撃ミサイル=low-cost interceptor(LCI)の説明会を6月23日に開催し、ダン・ドリスコル陸軍長官「我々はペンタゴンでホワイトボードを囲み、恣意的な要求事項を練り上げるようなプロセスは取らない。代わりに『科学は何をしてくれるのか』『優れた開発者たちは何をしてくれるのか』と問いかける」「このLCIは既存の優れた防空システムを置き換えるものではない」「現在のシステムは素晴らしいものでもフェラーリのような製品で、これを補完する別の手段が必要だ」と言及。
LCIの価格についても「我々の念頭にあるのはジェットエンジン搭載型シャヘドのコストを考えた時『現在の我々は脅威の阻止にいくら払う用意があるのか』ということだ。もちろん米国人の命がかかっているなら必要なものを使うけれども、量産規模で考えた時『それらに対処するために我々はどれだけのコストを許容できるのか?』だ。 そして我々の頭にある具体的な課題から『25万ドル』という価格が導き出されたのだが、その価格に縛られるつもりはない。もし誰かが28万ドル、42万ドル、61万ドルで適切な答えを持ち込んできたなら我々はそれを買うだろう」と述べており、情報提供依頼書で言及した数字はあくまで目安だ。

出典:Lockheed Martin
米陸軍は7月にLCIの技術提案書募集を開始し、120日以内に実射を含む選定や評価を完了させ、2027会計年度が始まる10月1日に合わせて新規契約の予算を執行し、仮に提案された技術成熟度が実用化レベルであれば開発フェーズをスキップして即量産へと移行することも視野に入れており、LCIは官僚的レッドテープ(要求定義→設計→試作→評価→量産という一連の承認手続きの殺到)を回避して超短期調達を目指しているものの、これは「PAC-3 MSEと同等の迎撃ミサイルを100万ドル未満で作りたい」のではなく「PAC-3 MSEと補完関係になる持続可能な防衛手段としての迎撃ミサイルを100万ドル未満で作りたい」という意味だ。
欧州でもPAC-3 MSEの代替品となる低コスト弾道弾迎撃ミサイル=FP-7.xをコアにした防空システム=FREYJA(フレイヤ)計画が正式化され、これらの動きはPAC-3 MSEを製造するロッキード・マーティンの将来業績や防空市場での立場に影響を及ぼす可能性があり、ロッキード・マーティンも独自にPAC-3 MSEの廉価バージョン開発を発表した。

出典:Volodymyr Zelenskyy
ロッキード・マーティンのティム・ケイヒル氏はファーンボロー国際航空ショーで「米国および同盟国の作戦部隊は実戦で証明され、かつ費用対効果に優れたソリューションを必要としている」「新しいPAC-3 ACE(Adapted Capability Effector)の調達コストは既存のPAC-3 MSEの半分以下(200万ドル以下)になる」「初期生産は36ヶ月以内に開始される可能性があり、米国および欧州の産業パートナーと共同でPAC-3 ACEの開発・製造を行う計画だ」と述べている。
ロイターは「欧州諸国が米国依存を減らし、欧州防衛産業の生産能力を拡大しようと動いている中、ロッキード・マーティンがPAC-3 ACEの発表を欧州で行ったのは欧州再軍備計画の需要を取り込もうとする米企業の取り組みを浮き彫りにしている」と指摘し、自らPAC-3 MSEの廉価バージョンを供給することで弾道弾迎撃ミサイル分野での支配的な立場を守りたいのだろう。

出典:Denys Shtilierman
ちなみに、ケイヒル氏は「米国および同盟国の作戦部隊は実戦で証明され、かつ費用対効果に優れたソリューションを必要としている」と述べたが、米陸軍は主契約企業ではなく軍がプログラム全体を管理できるソリューションを、欧州も米国の技術に依存しない主権が確保できるソリューションを必要としており、まだPAC-3 ACEが正式計画として動き出すのかは分からない。
追記:ロッキード・マーティン公式のPAC-3 ACE発表に関するプレスリリースのリンクを追加。ロイターの報道内容と特に異差はないものの、PAC-3 ACEのレンダリング画像が公開されている。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin





















価格じゃないんよ
大統領の一声で輸出に待ったが掛かるのが問題であって
価格、増産努力、性能、全てにおいて今やロシアの後塵を拝してるからひとつでも改善しようという意思は尊い
その意思を貫徹できるかと言われると今までの陸海空新戦車新戦闘機の製作過程考えると厳しい現実はあるが
恐らく想定ほど低価格化が進まずお高いまま性能だけが落ちたものを売りつけるオチ
>価格、増産努力、性能、全てにおいて今やロシアの後塵を拝してる
少なくとも迎撃ミサイルの分野においてそれはない
営利企業だから
廉価版なんて本来作りたくないけど
新規参入が盛んになると最悪弾かれるもんな
価格より供給数だと思うんですけどね。PAC-3 MSEだって製造数増やせば量産効果である程度価格下げれるだろうし、PAC-3 ACEの新規の工場ラインを作るくらいならPAC-3 MSEの製造ラインを増やしてくれってのがユーザー国の本音じゃないでしょうか。
徐々にですが安い兵器には安い兵器で対応出来るようになってきましたからね。
NTTデータに丸投げするコストを嫌って、各中規模ベンダに直接発注して、分割発注でコストが下がったと目先で喜んでいる役所と、同じことをしている。
プロジェクト全体を統括できる能力と実績があるプロジェクトマネージャーの用意が無く、完全に管理できると断言できない状況下での分割発注は、必ず事故る。(予言)
Pac-3 criじゃだめなの?
Xperiaの廉価版にACEってありましたね。
現時点でも交換比率としては悪くないと思うんだけど。
2発で迎撃とかしなければ。
価格よりも供給量でしょ