米国関連

ロッキードがHIMARS FLEXを発表、ロケット弾ポッド2基搭載や対空ミサイルに対応

欧州の多連装ロケットシステムに対する需要は非常に旺盛で、米国、イスラエル、韓国が激しい受注競争を繰り広げているのだが、ロッキード・マーティン・ヨーロッパはHIMARSランチャーのモジュラー進化版=HIMARS FLEXを16日に発表したものの、欧州市場で成功するための要素が見えない。

参考:HIMARS FLEX – Modernized for Mission Flexibility
参考:Lockheed Martin UK-led consortium unveils GBAD concept for NATO

ロッキード・マーティンの発表を額面通り受け取ればHIMARS FLEXのコンセプトは魅力的に見えるものの、欧州の懸念を何一つ解消していない

欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、自走砲や多連装ロケットシステムの新規取得や追加調達が相次いでいる。

欧州諸国の多連装ロケットシステムの導入動向(枠組み合意の数字も含む)
種類数量
ポーランドHIMARS506基
Chunmoo290基
エストニアHIMARS9基
Chunmoo9基
ラトビアHIMARS6基
リトアニアHIMARS8基
イタリアHIMARS21基
ルーマニアHIMARS54基
オランダPULS20基
ドイツPULS5基
 EuroPULS250基
デンマークPULS8基
ギリシャPULS36基
スペインPULS16基
ノルウェーChunmoo16基
フランスTHUNDART13基

砲兵システムに関しては欧州独自の選択肢とインフラが存在するものの、多連装ロケットシステムは米国製のM270 MLRSに依存してきたため使用するロケット弾の生産拠点もなく、この分野の選択肢は米国製のHIMARS、HIMARSの技術を流用してロケット弾ポッドを2基搭載したGMARS、イスラエル製のPULS、PULSの欧州バージョン=EuroPULS、韓国製のChunmooとなり、ロッキード・マーティンとラインメタルが共同開発したGMARSは潜在的な顧客が確保出来ず失速、逆にEuroPULSはドイツ軍が発注予定なので実用化がほぼ濃厚となっている。

フランスは15日に開幕した防衛見本市=ユーロサトリで「LRU=M270 MLRSの後継システムとしてサフラン-MBDAコンソーシアムが提案したTHUNDARTを選択した」と発表して注目を集めたが、ロッキード・マーティン・ヨーロッパは16日「HIMARSランチャーのモジュラー進化版、HIMARS FLEXを発表する」「全く新しいFLEXFiresテクノロジーエコシステムを活用したHIMARS FLEXは、新たな弾薬オプションと自律運用オプションを提供し、HIMARSがこれまで実現してきた精度と実績ある抑止力を維持しながら、より多くのミッション能力を実現する」と発表。

HIMARS FLEXは搭載するロケット弾ポッドのサイズを制限してきたランチャーケースを廃止し、PULSやEuroPULSと同じようにロケット弾ポッドを1基ではなく2基搭載でき、さらにランチャーケースが無くなったためパトリオットシステムの迎撃ミサイル=PAC-3やIFPC(米陸軍が開発中の低空域をカバーする短距離防空ミサイルシステム=Indirect Fire Protection Capability)といった迎撃ミサイルにもシームレスに対応できてC-130での輸送も可能だ。

MLRSやHIMARSで運用してきたロケット弾資産=GMLRS、GMLRS-ER、ATACMS、PrSMを引き継ぎ、ランチャーケースを廃止することで搭載するロケット弾ポッドのサイズ制限を無くし「ここに搭載できるものなら何でも発射できるようになる=HIMARSをマルチランチャー化したもの」というのがHIMARS FLEXの正体だが、これはPULSやEuroPULSと同じコンセプトであり、ラインメタルにとってはGMARSをより中途半端なシステムに追いやる可能性がある。

出典:Rheinmetall

ロッキード・マーティンの発表を額面通り受け取ればHIMARS FLEXのコンセプトは魅力的に見えるものの、米国製システムが拒否される要因=米国の対外有償軍事援助(FMS)のリスク、米国が課す運用や保守に対する制限、射程距離に起因したGMLRS、GMLRS-ER、ATACMS、PrSMの提供可否、ロケット弾のライセンス生産に関する技術移転の拒否、運用国の独自弾薬に対する統合要求の拒否といった部分が何も変わっていないため、欧州市場でHIMARS FLEXが受け入れられる可能性は相当低いだろう。

PAC-3やIFPCといった迎撃ミサイルへの対応も「HIMARS FLEX単体で運用できる」という意味ではなく、米陸軍が採用した統合防空向けの指揮統制システム=Integrated Air and Missile Defense Battle Command System(IBCS)への接続が必要になるはずで、IBCSを導入しないとHIMARS FLEXをPAC-3運用ランチャーとして活用するのは難しいかもしれない。

ちなみに欧州ではレオナルド主導のミケランジェロ・ドーム計画(全ドメインに対応するIBCSの欧州バージョン)が動き出しており、NATOもロッキード・マーティンUKが主導するコンソーシアム(レオナルド、MBDA、インドラ)が特定技術に依存しないデータ共有と相互運用性を可能にする「地上配備型防空ドメイン」に特化したプラグアンドプレイ型ネットワーク=モジュラー地上配備型防空(Modular GBAD)プログラムを進めている。

Modular GBADはIBCSやミケランジェロ・ドームとは別物で「NATO加盟国が保有する異なる地上配備型防空システム間で最低限の相互運用性を確保する共通基盤=標準化作業」であり、この計画にはルーマニア、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、スロベニア、スペイン、英国が参加し、米国は正式参加国ではなくオブザーバーの立場でしか参加していない。

関連記事:フランス、多連装ロケットシステムにHIMARSではなくTHUNDARTを選択
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin Europe

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コメント

  • コメント (5)

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    • せい
    • 2026年 6月 17日

    箱だけあっても撃つ弾が無いと意味ないよねぇ
    米国も技術を独占したいんなら、地球の裏側でも即日補充出来るくらいの生産力と政治的信頼性を保たなきゃ駄目って、何時になったら気付くかな?

    30
    • ブルーピーコック
    • 2026年 6月 17日

    ネメシスみたいな無人ランチャーシステムの方が需要ありそうだが。そういうのは欧州が独自で作るか。

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2026年 6月 17日

    でもお高いんでしょう?

    7
    • ななし
    • 2026年 6月 17日

    過積載感がすごい。

    • 名無し
    • 2026年 6月 18日

    可搬性良く小型なトラックでも積めますじゃなくてでっかい方を選ぶのか…
    まあ車体の運転操作の人が少なくて済むからこのほうがいいのかな…

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