CCAの第1弾調達でAndurilとGeneral Atomicに敗れたLockheed Martinは「現行のCCAはサバイバビリティを重視しておらず、何れ財政的に破綻するだろう=実戦で使用すれば未帰還率が高くなり費用対効果が悪いという意味」と指摘した。
参考:Skunk Works’ Losing Loyal Wingman Drone Was Very Stealthy “Gold Plated” Design
Distributed Teamの概念こそ「CCAに相応しい」と考えているのかもしれない
国防総省が進めている自律型無人機の開発は大まかに空軍研究所=AFRL主導、空軍=USAF主導、国防高等研究計画局=DARPA主導の3つ分かれ、AFRLは2014年にLow Cost Attritable Aircraft Technology(LCAAT)を立ち上げ、これが2018年にLow-Cost Attritable Aircraft Platform Sharing(LCAAPS)に発展し、この過程でXQ-58Aが開発されたものの、LCAAPSはOff-Board Sensing Station drone program(OBSS)に発展してXQ-67Aが開発された。
USAFも戦闘機に随伴可能な無人機を開発するため2020年にSkyborg Programを、DARPAも複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型無人機を開発するため2021年にLongShot Programを開始、USAFのSkyborg Programは技術検証の意味合いが強く「実用機」の開発には至らなかったが、Skyborg Programを発展させた協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraft(CCA)の1回目調達にAndurilとGeneral Atomicが選定され、16日に開幕したAir Space&Cyber Conferenceで実物大モックアップが披露され注目を集めている。
特に興味深いのはCCA Increment1で敗れたLockheed Martinが「我々の提案は『空軍にとって本当に価値のあるもの作る』という信念から生まれ、空軍が提示した要件よりもレベルの高いステルス性を備えていた。しかし空軍はサバイバビリティを重視していなかったため、我々の提案は必要のない部分に金メッキを施したことになる」「現在のCCAは何れ財政的に破綻するだろう」と指摘している点だろう。
And here’s Anduril’s full scale model
Of its collaborative combat aircraft prototype here at #asc24 pic.twitter.com/wiiDAmxqr6— Valerie Insinna (@ValerieInsinna) September 16, 2024
General Atomicは採用されたXQ-67AベースのCCA(Avenger風味)について「適度なステルス性と他のシステムとの相互運用性がサバイバビリティを高めている」と述べ、Lockheed Martinも「サバイバビリティを高める方法はステルス以外にもある」と認めたが「EWシステムなど他の対抗手段は高度なステルスを補完するためのもので代替手段ではない」「空軍はCCAの調達に1機あたり1,500万ドル~2,000万ドルを費やす予定だが、運用分析の結果『80%以上が未帰還になる』というシナリオに直面すれば現行のCCAを精算する時が来るだろう」と指摘。
要するにLockheed Martinは「CCAのコンセプトが『消耗を前提にした安価なシステム』から『手頃な価格で消耗も可能なシステム』に変更され、調達コストもF-35の25%~50%になるのにサバイバビリティが軽視されているため、実戦で使用すれば未帰還率が高くなり費用対効果が悪い=財政的に赤字だ」と述べているのだ。
CCAのサバイバビリティを高めるためレベルの高いステルス設計が必要なれば「自分たちが有利になる」とも聞こえる内容だが、Lockheed Martinは「運用分析に基づいてそれが必要になると我々は強い信念を持っている」とも述べており、恐らく2022年に発表したDistributed Teamの概念こそ「CCAに相応しい」と考えているのかもしれない。
因みに予定されているCCA Increment2調達は「Increment1の発展型」ではなく「全く異なる要求要件になる可能性」も囁かれている。
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※アイキャッチ画像の出展:General Atomics Aeronautical Systems, Inc.
LM的には使い捨て機と高級機はキッチリ分けろ、中庸を狙うなということか
ウクライナでもほとんどミサイルと言うべき使い捨ての無人機と高価値の有人機が活躍する一方、あんだけ持ち上げられたバイラクタルはすっかり話を聞かなくなった
スカンクワークスはF-16のときに、信念に基づいて要求仕様に沿わない機体を作って採用されなかったが、伝統は続いているのかな。
要求仕様では燃料搭載量5000ポンドだったのだが、5000ポンドの燃料でベトナムに向かったら、たちまち燃料切れでパイロットはハノイ・ヒルトン・ホテルのお客になること間違いなしだといって、9000ポンドの搭載燃料で設計したとか。
ちなみにF-16が最終的に採用されたときには、7400ポンドの燃料搭載量になってたらしい。
Wikipediaによると、F-16C Block 50 and 52で7000ポンド。
軽量戦闘機計画(LWF)のRFPは未確認ですが、YF-16とYF-17の航続距離は2000nmiあるので、後から要件が書き換わったと見えないところですね。
CL-1200ランサーはF-104の発展型でLWF候補2機に比べて発展性も少なかったので、最初から負けだったと思います
有人機に随伴する無人機てのが無理有りますよね、戦場まで同じ距離飛んで同じように戦って同じ所に帰るとか。
燃料考えても有人機よりはるかに小さい想像図みたいのになるわけないですよ。帰り考えないならそれはミサイルで良いし。
「随伴」とはいうものの作戦中同じ空域にいればそれでいい訳で「最初から最後まで同じ様に飛んで、同じ様に戦う」必要はないでしょう。
先行してテレテレ亜音速で現地着いてそのまま同じ速度高度でセンサーなりミサイルキャリアなりやってりゃいいんだからそこにセッティング合わせとけば燃費は段違いですし、小型・低速(=着陸距離が短い。離陸距離も非力な分を簡易カタパルトやウィンチとかでアシストすれば短縮可)を活かして有人機より前線に近い小さい基地や農業用滑走路とかで運用することもできます。
あと「滞空」が前提な時点で通常の「ミサイル」は代わりにはならんでしょう(本邦の目標観測弾みたいなのをミサイルに含めるなら別ですが)。
問題はこーゆー機体に2000万ドルはいささか高過ぎる、という一点でしょう。
状況次第だと思うけど、戦略・戦術に縛りを作らないことを前提にしたら同じスペックが必要だと思う
亜音速で友人戦闘機に追随できないってことは、事前展開してた空域と違うところに急行する必要が出てきた場合に随伴機が脱落することになるから
それを避けるために随伴機をさらに大量配備となると、おそらく費用や運用コストの面で無理。なので下でkasugiさんが書いてるような有人機に先行して敵地にツッコむような任務にはステルスTB2のような戦闘機とはいえないドローン、有人戦闘機とほぼ互角の性能の無人戦闘機と有人戦闘機のハイローミックスという話になるんじゃないかな(有人機と先行用ドローンの間に、無人戦闘機を入れない)
「滞空」と「高速移動」はそれぞれコスト要因になる上に機体やエンジンの設計上トレードオフになる要素でもあるので「その両立」は更なる大幅なコスト要因になりますしサイズ・重量肥大にもつながりますから運用コスト・難易度も跳ね上げます。
コストを下げるには性能面での妥協はマストで「どこまで妥協するか」の問題だと思います。
コスパを考えれば遷音速の手前付近がボリュームゾーンになって、それ以上の高速機はかなりの高級品になるんじゃないでしょうかね。
それはそうなんですけどね
ウクライナのようなお互いにSAMで牽制しあってて戦闘機は自国領空から対地滑空ミサイルを落とすだけという戦場ではそれでよくても、いざ敵地に切り込むぞって時に不要な能力なんてほぼほぼ無いんじゃないかなと思うところ
>いざ敵地に切り込むぞって時に不要な能力なんてほぼほぼ無いんじゃないかな
低速での滞空能力は要らないでしょう。
そしてそれは遷音速(あるいは超音速)で敵地に斬り込むのが主用途のCCAにとっては大きな負担になります。
であればその両方を同じCCA1機で賄うより機能の異なる2機の方がコスト効率がいいでしょう。消耗を前提とするなら尚更。
でもロッキードマーティンの提案通り高度なステルス性、高い帰還率、その他付随してくる機能を盛り盛りにすればF-35の20%〜50%どころかF-35と同等のコストに仕上がっても何も不思議じゃないのが今の米軍の兵器調達だからなあ
そんなものを数揃えられるの?有人機に先んじて危険な領域に突入させられんの?という問題が出てくるんやろなあ
先んじて突っ込ませる目的としては、LM社は機体搭載型の使い捨て(帰還能力程度はあるかもしれませんが)無人機を提唱しています
それはそれとして、有人戦闘機に比肩する生存性を持つハイエンドな無人機も作れということで
つまり中途半端なハイローミックスはやらずに二極化させろと言っとるわけです
おっしゃる通りハイエンド無人機は有人機に迫るコストになるでしょうが、それでも量的側面に与えるメリットは大きいですよ
パイロットの体力を考えてローテーションを組まなければならない有人機と違い、無人機は給油さえしてやればぶっ通しで朝から晩まで飛び続けられますからね
CAPを維持するのに必要な機数が大幅に減るでしょう
>つまり中途半端なハイローミックスはやらずに二極化させろと言っとるわけです
? ハイロー「ミックス」の意味が違いません?
「(二極化した)ハイとローを組み合わせて運用する」のがハイローミックスだと思うのですが。
いえ、ハイローミックスは運用思想の極めて近い2つの兵器を、幾ばくかの費用差のみを根拠に混用するというコンセプトです
あまりに非合理的に思われるでしょうが、これはファイター•マフィアがF-15では叶わなかった自分たちの理想の戦闘機をどうにか空軍に作らせるためにでっち上げたものなので非合理も当然です
いや過去や由来はどうあれ半世紀経った現代で「ハイ/ローの差の少なさ」を表現するために「ハイローミックス」という言葉を持ち出す意味はないでしょう。
そもそも内心の意図はどうあれ実際に初期F-16の単価はF-15のほぼ半額でしたし、近年の飛行時間当たりの費用も半額から7割程度です。
CCAの開発・運用が求められてるのも結局はコスト(金)が問題なので、帰還率が低い=コストが高いという主張も理解はできます
ほぼ使い捨ての無人ミサイルランチャーとするのか、有人機の盾・囮もするけど基本的には生還を目指すのか、高性能化して高い生還率を目指すのか
まだ発展途上どころかまともに運用出来るものが無い段階なので、これから答えが出るまでは試行錯誤の繰り返しになるのでしょうね
あまり判りませんが。お金の話をしているのですよね。
ドンガラだけ先に作っては?国防総省のパテント買取で。
中身の魔改造は、ロックマートも他のメーカーも得意(笑)でしょうし。
何が正解かは実戦でないと実証できんのがな。
無人機のステルスにも気を配るとなると、それはそれで整備費用がかさむと思うんだが
F-35の25%で随伴型作れとかそらLMも匙を投げるよねと。本当に今の米軍兵器開発はどうしちゃってるんですかね?
いろんな計画がCCAで動いてますからね、Venom計画と言う、運用して無いF-16を無人機化する計画も有りますし。既存の一定以上のデータリンク機能を備えた退役する機体も無人機として運用する気が有るのかもしれません。