国防総省が提出した2026会計年度予算案の中には「低コスト巡航ミサイルを3,010発調達するため資金」として6.5億ドルが計上されており、AviationWeekは16日「今後の空中発射兵器の主流は手頃な価格の巡航ミサイルになるだろう」と予想した。
参考:Affordable Cruise Missiles Move Into The Mainstream
高性能な巡航ミサイルのみによる攻撃アプローチでは大規模戦争のニーズに対応できない
米空軍研究所は2024年1月「イノベーションを促進する空軍プログラム=AFWERXが先端兵器の技術開発を目的にしたデザインスプリント・アンド・チャレンジイニシアチブを開始した」「最初の目標は将来の低コスト巡航ミサイルに関するプロトタイプ設計(射程926km、亜音速飛行、目標コスト15万ドル)だ」「このチャレンジに参加するチームは兵器能力の強化と同時に手頃な価格での大量供給も考慮しなければならず、この課題に対する解決策は拡張可能でパートナー国や同盟国が利用出来るものでなければならない」と発表。

出典:Defense Innovation Unit
この取り組みがどうなったかは不明だが、米空軍と防衛イノベーションユニット(DIU)は2024年6月「既存の入手可能な部品や材料を使用し、迅速かつ高効率で生産可能なエンタープライズ試験機= Enterprise Test Vehicleを開発する」「2024年後半の飛行試験向けプロトタイプソリューションの開発契約をAnduril、IS4S、Dynetics、Zone 5 Technologiesが獲得した」「この4社は100を超える応募の中から選ばれた」と発表。
DIUはETV契約授与の発表に際し、IS4S、Dynetics、Zone5 TechnologiesのETVイメージを公開、さらにAndurilも2024年9月に大規模生産と大量使用を前提にしたBarracudaを発表しているため、ETVが低コスト巡航ミサイルに関連しているのは明白なものの、空軍と海軍はETVと趣旨が良く似たRapidly Adaptable Affordable Cruise Missile=RAACM(迅速適応型低価格巡航ミサイル)にも資金供給を開始している。
このプロジェクトの主契約者=CoAspireはSea Air Space2025で「RAACMは手頃な価格で長距離兵器を提供するのが目的だ」「Divergent Technologiesの積層造形技術を活用してコストを削減し、巡航ミサイルとしての性能を最適化した」「(高価な巡航ミサイルに比べて能力は限定的だが)最近の戦争で見られたように、安価な兵器でも一部が目標に到達している」「これこそが独自の能力を生み出す」と言及し、3月に実施したRAACMの空中投下テスト(母機はA-4)も公開した。
要するにRAACMは「敵の防衛を最新のテクノロジーで克服して目標に到達する高価な巡航ミサイル」ではなく「敵の防衛を量と戦術的工夫(目標へのアプローチが異なる無人機や弾道ミサイル、敵のセンサーを混乱させる安価なデコイとの併用など)で目標到達の可能性を高める安価な巡航ミサイル」で、この戦術の有効性はウクライナ軍側でもロシア軍側も確認されており、目標を破壊するという以外にも「敵の防空能力を消耗させる」という効果も期待でき、米軍は質のみの追求から「質と量」をカバーする方針に転換したのは明らかだ。

出典:CoAspire
2026会計年度予算案の中でもFamily of Affordable Mass Missilesという新しい項目が登場し、低コスト巡航ミサイルを3,010発調達するため6.5億ドルの資金が要求されており、AviationWeekは16日「米空軍の空中発射兵器に加わる低コスト巡航ミサイルは亜音速飛行、ネットワーク化、長射程という3つの能力を備えているが、従来型の巡航ミサイルとFAMMの違いは投射量と運搬するプラットフォームの種類にある」と報じている。
“2026会計年度予算案が原案通り承認されれば、米空軍は生産初年度となる2026年度だけで3,010発ものFAMMを取得する。類似した能力をもつJASSMは数十年に渡る運用期間中に5,569発の取得が見込まれているが、FAMMは2026会計年度だけでJASSM取得量の半分以上に到達する。この契約の受注を争っているAndurilのミラノ氏は「昨年2月時点でFAMMは存在していない計画だった」「それが2026会計年度に3,010発の調達を見込んでいる」「伝統的な調達方法からすればFAMMの調達は馬鹿げているように見えるだろう」と言う”

出典:Zone5 Technologies Rusty Dagger
“これだけのFAMMを調達するため空軍は伝統的な防衛産業以外に目を向けており、AndurilのBarracuda500とZone5 TechnologiesのRusty DaggerはFAMM初年度生産契約の最終候補となっている。これらの新規参入者は伝統的な防衛産業に欠けている能力を提供しようとしている。ミラノ氏は「たった1年で存在しなかった設計から3,000発以上も製造できるようになった事自体、私の経験からすれば信じられないが、これは私が過ごしてきた18ヶ月間の体験と完全に一致している」と述べ、Andurilはオハイオ州に建設中の巨大な弾薬工場でBarracuda500の生産を開始する予定だ”
“FAMMは運搬するプラットフォームについても新たなアプローチを提供する予定で、空中投下に対応したパレット化によってFAMMは爆撃機以外のプラットフォーム=C-17やC-130からも運用され、このアプローチはプラットフォームに対する兵器統合も簡略するだろう。さらにパレット化の利点にはシンプルさコストの追求にも有利だ。従来の巡航ミサイルはプラットフォームの外部パイロンに搭載されるため激しい振動や高温にさらされるが、FAMMは空中投下される瞬間まで輸送機の貨物室にあるため設計や素材に余裕が生まれ、空軍はFAMMのコストを平均約22万ドルと見込んでいる”

出典:Anduril Barracuda-500
ETVやRAACMがFAMMに1本化されたのかどうかは不明だが、AviationWeekは「今後の空中発射兵器の主流は手頃な価格の巡航ミサイルになる」と予想しており、従来の感覚から言えば「1年で3,000発以上もの巡航ミサイルを生産するなんて不可能だ」と思ってしまうものの、Barracudaは超大量生産を前提に設計されてるので夢物語ではない。
“我々がBarracudaでやろうとしていることは伝統的な防衛部門とは正反対で、従来の武器生産は高度に専門化された労働力、防衛産業へ特化した特定のサプライチェーン、手作業による製造手法に依存し、非常に複雑で精巧なシステムを要求されるためプログラム全体の拡張性が制限され、このような生産方法で軍が要求している数を揃えるのは不可能に近い。Barracudaはガレージにあるようなツール、つまりドライバーやペンチで組み立てられるシステムで、高度なツールも生産プロセスも必要なく、高度に専門化された労働力による生産上の制限もうけない”

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Spencer Perkins
“基本的なアプローチは商用向けのサプライチェーンを可能な限り活用することで、システムの製造と組み立てを可能な限りシンプルにし、利用可能な労働力の幅を増やして生産拡大を容易にすることだ。この考え方はシステムを低コストで大量に生産するだけではなく、戦争が長期化した場合に高い生産効率を長期間維持するのに役立つ。Barracudaの生産時間は既存の競合するシステムに比べて50%減、必要な生産ツールは95%減、部品点数は50%減、価格も他のシステムより平均して30%ほど安い”
Barracudaの組み立てに必要な工具は「10個以下」というシンプルさで、使用される6つの共通サブシステムも専用設計ではなく「入手性が優れている商用コンポーネント」を採用しており、Barracudaのオープン・システム・アーキテクチャは「商用向けのサブコンポーネント技術を迅速に統合してテストすること」に重点を置いている。

出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
BarracudaはJASSMの高度な能力には及ばないものの「量」という質を実現し、従来の攻撃アプローチに欠けていた能力を補完する存在なので「高性能な巡航ミサイルが不要になった」という意味ではないが、高性能な巡航ミサイルのみによる攻撃アプローチでは大規模戦争のニーズに対応できない。
因みに米軍はShahed-136の類似品=LUCASも調達する見込みで、ヘグゼス国防長官は16日にSpektreWorksが開発した自爆型ドローンを視察している。
関連記事:米空軍が予算案の中で低コスト巡航ミサイルを3,000発要求、1発21万ドル
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関連記事:Anduril、超大規模生産と大量使用を前提にした巡航ミサイルを発表
※アイキャッチ画像の出典:Anduril





















やれることはやればいいけどドローンにしろ簡易巡航ミサイルにしろ問題は中国はどんなものであれアメリカよりさらにはるかに安く大量に作れるってことだな
生産力で負けてるから生産量と低コストで競争したら絶対に勝てない
その上なんなら技術でも負けつつある
22万ドルてすでに取得金額が一発当たり先月の記事より1万ドル増えてる・・出来上がった時には幾らになっているのやら、2倍くらいで済まないとまたお蔵入りに。そもそもの目標コストが15万ドルだったはずなのに。
別にいいんじゃないですか?
昨今の情勢考えても物を作るのに価格が上がる要素はあっても下がる要素なんて無い。エネルギーは高止まり兵器を作るのに不法移民みたいな安価な労働力を使うのはセキュリティ上は無理だろうし、兵器を構成する部品に関して関税はどうなっているか分からないけど輸入する部品が有るなら自分達が決めたルールに従って関税が掛かった部品を買うしかない。
ライン構築だって将来を見据えてロボットを入れるなら初期投資はどうしても増えるし、人でやるなら初期投資は抑えられても長い目で見たら作業時間や給料面でプラスになるかは疑問。
F-35みたいな複雑な物じゃなくなるべく有り物の部品でシンプルな完成品を作るならライン構築さえして初期トラブル対応しまえばどうしようもない外部要因が無いなら現状維持か下がる方向にはなる。
GBU53(20万ドル。射程100km)の2-3倍まで高くなってもトマホーク(今は100万ドルくらい?)くらいの射程得られるなら十分価値があるし…
「商用向けのサブコンポーネント技術を迅速に統合してテストすること」
民間品ではその代わりEOL(エンド オフ ライフ)で突然の供給途絶があります。
EOLした部品を代替品に置き換えテストし直すというのを、ずっと続けなければなりません。
もちろん、たくさん買うといえば、生産延長してもらえる場合もあるけど3,000個程度では難しいでしょう。
意外とコストかかるよ。
まあシャヘドとガーベラを囮にカリブルをドーンという戦術は有効性があった
から米軍も取り入れていきたい所だろうね。
ただ宇露双方ともフツーのマンションとか攻撃してることがあって目標選定は
どうなってんの?って思うことがあった。
最近はピンポイントに徴兵事務局とか変電所とかコスパがいい所狙ってて改善
されてるが…目標選定なら米軍はこの二者なんか比較にならないくらい上手いはず
だからちゃんと機能すれば鬼に金棒だろう。
でもガレージで作れて高度な手作業はいらないから労働力の幅が増えるってなんか
Andurilの言ってることはよく分らんな。
ミサイルって大抵白衣きた医者みたいな人が手作業してるけど、あれをトヨタの
期間工みたいにやってもらうってことか…?
機密とかはまあ民間の品使いまくってるからええわということかしら。
民間施設に陣地や軍事施設を置くのはどっちも割とやるらしい
最近職場で購入が決まった高額機器なんですが、DSP部分にAIが導入され、従来の半分のアナログ出力で同じS/Nを実現しているのだとか。それでアナログ出力のパワー系実装のコストが下がったという。
地形照合のNOEとか今まではミリタリーグレードの情報システムでやっていたのが、COTS部品で、旧式システムより高性能なものを組めるのかもしれませんね。
光学機器の間違いだったりしますか?
光学系はそこまで値段が変わらないでしょう。
価格が違うのは情報処理系じゃないのかな。
レーザー距離計やカメラ、演算チップなんかは民生品でいくらでもカバーできるだろうけど
何が手間とコストかかるかと言えば爆薬やらターボジェットみたいな需要がない部品と
数が出ないせいで機械化できない製造や組み立てコストじゃないかなって…
”因みに米軍はShahed-136の類似品=LUCASも調達する見込みで、
ヘグゼス国防長官は16日にSpektreWorksが開発した自爆型ドローンを視察している。”
この機材も航空機から運用するのかな。効率が悪そうな気がしますが。
艦上から運用するにしても、場所塞ぎに思えます。
ひょっとして、いくつか前の記事でトランプ大統領の言っていた
”モスクワを含むロシア奥深くに届く長距離攻撃ミサイル” とはこれなのかな。
素人は、ウクライナ製のミサイルドローンを採用するのか、と思っていたけれど。
ロシアはShahed-136を地産地消してるから国内インフラを利用して大量輸送大量使用が出来るわけで、外征軍のアメリカ軍は兵站の負担が相当大きくなると思うのですが、一体どんな運用をするつもりなんでしょうね
Barracudaの方じゃない別の小型巡航ミサイルみたけど、アムトラック炎上させるレベル(多分反対側に人いても爆音以外のダメージ受け無さそう)のミサイルって何に使うんだろうか
いや多分地上目標の飽和攻撃に使うんだろうけど、射程900km超だと発射母機が戦闘機ならともかく大型輸送機だと厳しくないか
そこは圧倒的な空軍力でカバーするんじゃない?
AWACSみたいにずっと空域に留まるわけじゃないし、発射即離脱なら特に問題は無いと思う
輸送機に積んでパレットに複数積まれた巡航ミサイルだったかを、後部ハッチから落として発射させるという話を昨年だかの記事で見た怯えがありますがここまで実用化が近いとはびっくり.
冷静に考えれば、スマホ動かせるチップが溢れてるのに軍用品だけ異様に高く、生産も遅い方がおかしかった
動作環境だけとっても全然違いますから…
この手の装備はその辺妥協して、数%や何なら数割まともに動かなくてもしゃーなし、と割り切ってるからできる選択でしょう。
文中にもありましたが、発射まで機内で温存されて極環境に曝されないバレット運用というのは民生品採用ができる利点でしょうね。
高度10000m近くの氷点下数十℃やら1/3気圧やらに遷音速やその手前に時間単位で曝されることがないのはもちろん大きいんですが、
それでも長射程の巡航ミサイルとして運用される以上、高度数千mやら冬場のウクライナやらで使われれば氷点下で数十分は当たり前な訳で、
スマホみたいに「0〜35℃、ただし結露せぬこと」なんつー生温い動作環境は望めないかと。
意外と知られてませんがコンシューマ向けの製品が異様に安いだけで、産業向けの電子部品は信頼性も耐久性も段違いなので滅茶苦茶高価ですよ
普通に数倍~10倍くらいの価格です
あと単純に「スマホ動かせるチップが溢れてるのに軍用品だけ異様に高い」のではなく、その軍用品を開発してたころはそれが普通だっただけです(10数年前は40GBの民生品SSDすら10万円以上)
開発・生産プロセスが複雑すぎてコストだけが膨れ上がり数が揃わない、が伝統の米国では信じ難いほど驚異的な速さです。コストは22万ドルと当初目的を大きく超えていますし尚膨れ上がるでしょうが、米国がそれを許容範囲と出来るならば21世紀以降の米国で類を見ない迅速な大量調達の実現となるでしょう。
日本のダンボールドローン作ってる企業があるけど、あれ巡行ミサイル級にもいけるだろうか
表面プラシートコーティングすればワンチャンいける?