米国関連

LRDR完成が新型コロナの影響で再び遅延、日本も採用の可能性が高い「SPY-7」に影響も?

日本のイージス・システム搭載艦に採用するかもしれないロッキード・マーティン製の新型レーダー「SPY-7」に影響しそうな話題が米国で報じられている。

参考:Yearlong delay hits operational test of Alaska-based missile defense radar

LRDRの検証テストが新型コロナウイルスの影響で1年遅れるためSPY-7の開発にも影響を及ぼす?

ロッキード・マーティンはSPY-7の基盤となるLRDR(Long Range Discrimination Radar:長距離識別レーダー)のレーダー施設をクリアー空軍基地(アラスカ州)に建設中で、当初予定では2020年中に施設の建設を終えて能力の検証テストに着手するはずだったのだが新型コロナウイルスの影響で建設作業が一時中断、ウイルス拡散を防止する措置を講じて何とか建設再開に漕ぎ着けたものの工事の請負業者からウイルス陽性反応が確認され再び工事が中断されてしまう。

出典:Photo by John Budnik クリアー空軍基地で建設中のLRDR

結局、ウイルスに振り回されたLRDRの工事は遅れを取り戻すことができず2020年中の完成は流れたが、ミサイル防衛局は2021年2月に「クリアー空軍基地に建設中だったLRDRがほぼ完成して2021年中に初期運用の獲得に到達する」と発表したことを受けて政府説明責任局(GAO)は報告書の中で「2022年第4四半期までにLRDRが空軍に引き渡される」と触れていた。

しかし今度はLRDRの検証テストが新型コロナウイルスの影響で2022年第3四半期まで遅れることになり、空軍への引き渡しは2022年第4四半期→2023年第4四半期へと1年ずれ込みだろうと米メディアが報じられている。

今のところ検証テストの遅れは「技術的要因」ではなく「新型コロナウイルスの影響」なので仕方がないのだが、LRDRの開発が遅れれば基盤技術を共有するSPY-7の開発にも影響が出ることが予想されるため、イージス・システム搭載艦にSPY-7を採用するかもしれない日本にとっては気がかりなニュースだ。

仮に検証テスト中に技術者からウイルス陽性反応が出れば「2022年第3四半期」という設定自体も怪しくなるため、何とか無事に検証テストが済むことを祈るしかない。

関連記事:米ミサイル防衛局、SPY-7とイージスシステムの組み合わせが性能基準を満たしたと発表
関連記事:カナダ海軍の次期フリゲートが開発遅延で裁判沙汰、SPY-7を採用する日本の同じリスク?

告知:軍事関係や安全保障に関するニュースが急増して記事化できないものはTwitterの方で情報を発信します。興味のある方は@grandfleet_infoをフォローしてチェックしてみてください。

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 護衛艦まや

英空母クイーン・エリザベス、インド太平洋地域展開前の最終テストを行うため母港から出撃前のページ

インドの軽戦車調達に挑戦する韓国、ハンファディフェンスが軽戦車「K21-105」を提案次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米議会予算局、財政赤字削減のためF-35導入中止やF-22退役を提案

    米議会予算局(CBO)は今月10日、財政赤字を削減のため非常に大胆な国…

  2. 米国関連

    欠陥修正を断念した米国、F-35BとF-35Cの超音速飛行制限で対応

    マッハ1.3以上の超音速飛行状態を維持した場合にF-35BとF-35C…

  3. 米国関連

    米国、150km先を攻撃可能な長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援を発表

    バイデン政権は3日に総額21億7,500万ドルのウクライナ支援を発表、…

  4. 米国関連

    米軍のミリー統合参謀本部議長、ロシア軍の死傷者数は10万人を大幅に上回る

    米軍のミリー統合参謀本部議長はラムシュタイン会議後「ロシア軍の死傷者数…

  5. 米国関連

    世界中へ即展開、コンテナ1つでステルス無人戦闘機「XQ-58」の打ち上げ&回収可能

    低価格なステルス無人戦闘機「XQ-58ヴァルキリー」を開発している米国…

  6. 米国関連

    バイデン政権、ドイツに続き西側製防空システムをウクライナに提供か

    バイデン政権は新たなウクライナ支援パッケージを今週中に発表する予定で、…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 02日

    ロッキード「そうだ、全部コロナのせいにしよう」

    15
      • 匿名
      • 2021年 5月 02日

      ズムウォルト「せやせや!」

      11
      • 匿名
      • 2021年 5月 02日

      防衛省「なんで?」
      自衛隊「どうして間に合わないんですか?(現場猫)」

      11
        • 匿名
        • 2021年 5月 03日

        どうして?どうして?

        現場猫は悲しいなw

      • 匿名
      • 2021年 5月 02日

      防衛省「コロナのせいであって(懇願)」

      6
        • 匿名
        • 2021年 5月 03日

        現場猫「よし!」
        中国「よし!」

        4
    • 匿名
    • 2021年 5月 02日

    また国防族が騒ぐことになるのかな
    めんどい

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 02日

    レーダーの試験のためだけに画像みたいな広大な施設を作れるなんて
    アメリカ凄いな

    9
      • 匿名
      • 2021年 5月 02日

      チャイナも海のない奥地にコンクリート製の訓練用模擬空母を作れるしな、
      大国との格差はこういうとこだよ

      7
      • 匿名
      • 2021年 5月 03日

      画像のは試験施設ではなくクリア基地の実戦配備用のLRDR(予定)そのものです

      4
        • 匿名
        • 2021年 5月 03日

        本当だ
        間違えました
        ごめんなさい

        1
    • 匿名
    • 2021年 5月 03日

    最大の問題は専用のレーダー送受信モジュールが完成するかどうか。こいつの出来次第で日本のアショア計画が再開されるかどうかが決まる。あとはアクティブ方式だからECM等にどれだけ対処可能か。この二点がある程度解決されればイージス艦との統合も可能。

    窒化ガリウムが将来有望なレーダー素材として注目を浴びてから何十年経過したか?昭和末期に放映された資料映像等に度々登場していたのが懐かしい。

    • 匿名
    • 2021年 5月 03日

    新型コロナの影響での遅延、他に何があるのだろう?
    昨年度の米国の状況なら、色々と該当案件がありそうな気がするのですが。

      • 匿名
      • 2021年 5月 08日

      大半のものはコロナのせいで遅れてますね。空自のE-2DとかKC-46とかも納入遅れてるし、むしろ遅れないと言い張ってるものの方が何か隠してるんじゃないかと怪しいレベル。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP