米国関連

貫通型のステルス爆撃機を7倍に増やす米国、新空軍長官が145機のB-21取得支持を表明

米空軍の長官に指名されたフランク・ケンドール氏は上院の公聴会で「今後数年間で少なくとも145機のB-21を取得を計画している空軍を支持する」と述べて注目を集めている。

参考:Plan To Buy 145 B-21 Raider Bombers Gets Endorsement From Biden Air Force Nominee

貫通型のステルス爆撃機を現行の7倍に増加させるB-21の145機を空軍長官に指名されたフランク・ケンドール氏が支持

ノースロップ・グラマンが極秘裏に開発を進めているステルス爆撃機「B-21レイダー」はB-1やB-2の後継機で当初計画では同機を100機調達する予定だったのだが、空軍は中国の脅威に対抗するためには圧倒的に爆撃機と空中給油機が不足していると主張して312個飛行隊を今後10年間で386個飛行隊まで増やす=つまり空軍全体のサイズを大きくすることを議会に働きかけている。

出典:US Air Force

補足:新設される飛行隊の主な内訳(2018年に提案された内容)は戦闘機を装備する飛行隊を現行55から62(+7個飛行隊)、爆撃機を装備する飛行隊を現行9から14(+5個飛行隊)、空中給油機を装備する飛行隊を現行40から54(+14個飛行隊)、無人偵察機を装備する飛行隊を現行25から27(+2個飛行隊)、これに伴い4万人の人員も新たに必要とされる。

このような状況を反映して2020年にゴールドファイン空軍参謀総長(当時)は議会の公聴会で初めて「145機のB-21を取得を計画している」と明かし、爆撃機の運用を担当する空軍の地球規模攻撃軍団(AFGSC)司令部も爆撃機戦力が現行の158機(現在はB-1が退役を始めたためこれより少ない)から220機へと増加(75機のB-52Hと145機のB-21)することになると述べるなどB-21の調達拡大を後押していたが、新しく空軍長官に指名されたフランク・ケンドール氏も空軍内部の方針を支持したためB-21調達拡大への動きはさらに加速するはずだ。

勿論、この方針は議会の承認を受ける必要があるので最終的なB-21調達数は未だ流動的だが、議会の中にも爆撃機戦力の増強を訴える議員が少なくないためB-21調達拡大の見通しは暗くない。

出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman

仮に145機のB-21を調達すると米空軍が保有する貫通型(高度な防空システムに守れた空域に侵入可能という意味で20機のB-2がコレに該当する)のステルス爆撃機は現行の7倍に増加するため、第1列島線内の守りを固める中国に対抗する観点から見ればB-21の調達拡大は非常に大きな意味を持っている。

因みにB-21の性能やプログラムに関する詳細は極秘扱いで公開されていないがプログラムコストに関してだけは米議会予算局(CBO)が見積もりを公開しており、B-21を100機調達するのに800億ドル(2016年時点の数字で2021年のドル換算では890億ドルになる)かかるらしい。

つまりB-21の調達コストは1機あたり8.9億ドル/977億円なので145機調達すると1,290億ドル/約14兆円の資金が必要になるという意味で、B-52HやB-21に搭載するAGM-86の後継巡航ミサイル「LRSO(開発中)」も非常に高価で爆撃機パッケージを構築して維持していく費用は相当高価だ。

出典:Public Domain AGM-86

CBOの試算結果によればLRSO(Long Range Stand-Off)巡航ミサイルの調達コストは1発あたり約5,000万ドル/約54億円で、1機分のB-21に搭載するLRSOを用意するには約5億ドル/約550億円(2発の予備を含む)が必要で毎年4,000万ドルの維持コストが必要になると指摘している。

補足:このLRSOはB-21だけでなくB-52Hにも統合されるので最終的な調達量は不明だが、第二次戦略兵器削減条約(STARTII)の制限があるので調達されるLRSOの全てが核弾頭搭載に対応したモデルになる訳ではない。

果たして米空軍は本当に厳しい国防予算の中でB-21の調達拡大を実行に移せるだろうか?

問題は高価なB-21パッケージの調達を拡大すれば必然的に他のプログラムが影響を受けることになるため、他の調達に関連する利害関係の調整がネックになるかもしれない。

関連記事:2機目の製造も開始、初飛行に向けて順調な開発が続く米空軍のB-21

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Courtesy graphic by Northrop Grumman

レガシーなMQ-9は不要と主張する米空軍、来年以降の調達中止を議会に提案前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    対テロ戦争中は遠隔操縦のUAVから爆弾を落っことす仕事ばかり増えて花形のパイロットや爆撃機の仕事が減ってた中で、空軍の制服組トップらは内心では嬉しくてしょうがないんだろうなぁ…。
    とはいえB-21も中国のH-6やH-20同様長距離巡航ミサイルのキャリアでしかないのだから、グアムかフィリピンあたりを起点に中国の防空網の外側から戦力を攻撃する分には高度なステルス性はいらないんじゃないか。

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      中国相手はともかく「爆撃」も仕事だからステルス性能は必要でしょう

      18
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      私はB-52が現役を続けるほうに魂消てますが、それがミサイルキャリアとしての活路かと。
      B-21のように脅威度の高い領域に遠距離から踏み込んで強襲的ミッションを完遂・帰還できる可能性の高い軍用機は敵にとって脅威だと思います。
      例えばASMも発射位置が目標に接近するほど対応時間が短くなり迎撃の難度が上がります。
      高ステルス性の意義はそこにあるのかと。

      13
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    中国とロシアが米国債を減らしてる以上、最後は穴埋めを日本がやらされる。売るに売れない米国債を大量保有しても日本人は豊かにならず、米軍はカッコいい最新兵器に囲まれる。

    8
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    高過ぎて草

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      それでも機体調達単価は21機に終ったB-2の半分。恐らく維持費も低減されているんでしょう。
      将来的に維持できないんじゃ話しにならないんで、当初予定の100機を越えて配備しようてのには予算上の合理的説明が無いと議会を納得させられないですよね。

      23
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    中国「145機のB-21?ならばこちらは200機のH-20だ」

    なんて事になりませんように…

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      それをさせるのも米国の狙いだから
      高性能の米国製兵器に対抗するために、量を優先すれば当然維持費(お金だけではなく人的資源も含めて)がかかる
      近代縮小化という現代の軍事戦略と逆行することになるため、それは近代国家を運営するには大きな負担

      22
        • 匿名
        • 2021年 5月 28日

        中国の場合町工場がちょっと少なくなってきたとかどっかの記事で見たんで地味ーにB-21より製造コストと維持コストがかかりそうだな
        しかも可能性としてこのステルス爆撃機輸出されるかもしれんでしょ?

          • 匿名
          • 2021年 5月 28日

          さすがに輸出は無いでしょう。対中国の切り札と言えるほどの最新鋭兵器ですよ。

          7
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    世界が大きく動く時はステルスを容易に看破するカウンターステルスが出来た時なのかねぇ
    そんなもんが出来るかは分からんけどさ

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    戦力としては非常に有望
    B-21を第五世代戦闘機といった各種ノード機からの情報を元に
    対空、対艦、対地、あらゆるミサイルを後方から撃ちまくる空中巡洋艦と見立てれば、その搭載量からくる攻撃力は絶大

    10
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    爆撃機の優位性がよく分からない。
    長射程なのだから陸上や海上・海中からではダメなのだろうか?
    日本だとC-2やP-1でいいのでは と思う。

      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      いつどこから発射するかわからないミサイルキャリアーって十分脅威になると思いますよ。

      19
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      巡航ミサイルはイラクやリビア等の格下相手なら有効だけど、中国やロシアは強力な防空システムを有していて、なおかつ軍事基地等の攻撃目標が無数に存在するから、巡航ミサイルだとコスパが悪すぎてアメリカでも戦争を継続できなくなる。
      なので、ミサイルではなく安価な誘導爆弾を運用するために、アメリカ軍はB-2やB-21のようなステルス爆撃機を多数求めるようになった。

      18
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      下から上へ打ち上げることはかなりの燃料を消費することになるのでミサイルも大きくなる
      空中から投下してしまえば同じ量の燃料の場合は航続距離が延びるし、距離が同じ場合はミサイルを小さくしてコスト低下やステルス性を上げることもできる
      なおP-1は現在でも爆撃任務を遂行できる性能がある

      13
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      真上から突然落とされるのと海中や遠距離の大地から発射されるのでは防衛側の対処時間が全く変わりますし、その差を埋めるために極超音速にすれば一発一発のコストがどんどん上がりますが、埋めるには至りません。

      1
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      飛び立ってから攻撃目標の変更や中止が行えるという柔軟性が弾道ミサイルなどに比べて高い

      1
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    オーストラリアもF/A-18Fの後継にB-21を買おうなんて話があるくらいだしね
    オーストラリア以外の同盟国にも購入の動きが広がるかもしれないし、ひょっとしたら日本も導入するかも

    将来のAWACSも無人機のチーミングレーダーが主流になれば、無理にレーダーを背負う必要もないし、
    そうなればB-21の派生機になったり、こういう攻撃機なんかと統合されるかも

      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      B-21はどこの国にも売らないと思いますよ

      11
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      これは対中国のみならず、全ての国に対してのアメリカの優位性を担保するような兵器ですから、同盟国といえども門外不出でしょう。

      7
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    日本にも爆撃機欲しいけどなぁ…

    6
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      金がないし人もいないし仮に金と人が何とかなっても今度は基地がなくその次は戦力を有効に活用する国の体制がないって寸法よ
      失礼自衛隊は戦力じゃありませんでしたな

      12
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      本邦は戦闘機飛行隊を増勢した方がいいのでは
      偵察飛行隊の改編からではなく純増でもう1、2個

      9
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      日本本土から数千kmも離れたどこを爆撃するつもりなんすか?

      1
        • 匿名
        • 2021年 5月 28日

        核でも搭載してモスクワあたり狙うんじゃなかろか(適当)

        4
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      ブラフで欲しいんならアメさんにちょっと出張ってもらえば安上がりでよろしいですな。

      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      一応、P-1が事実上の攻撃爆撃機みたいな装備をしようとしてる

      11
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    巡航ミサイルいくらなんでも高杉晋作と思ったら核弾頭対応だからか
    それでも高いよなあ

    8
    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    B21をオーストラリアが望んでいるからとか、日本にも欲しいと言っている奴が居るが
    アメリカは爆撃機をB29製造以来、一切他国に輸出したことはない
    爆撃機は長距離を飛んで爆弾落とすだけだと思っているのは改めた方がいい

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      そもそも、爆撃機を欲しがった同盟国がいままでなかった。
      ただ、爆撃機も攻撃機の側面も強くなってきたのと、米国の海洋戦略が米国一国での運用から、多国間運用に舵をきったので、かつてとは状況が変わってる
      売る可能性は全然あるよ

      1
        • 匿名
        • 2021年 5月 28日

        F22と同じでこいつは虎の子
        絶対に売らないね

        5
        • 匿名
        • 2021年 5月 28日

        最初から、一切、他国に売るつもりは無い
        それを情勢が変わったからといって
        他国に売るほど簡単な話ではない

        7
        • 匿名
        • 2021年 5月 28日

        ICBM、SLBM、原子力潜水艦、戦略爆撃機等の戦略兵器は門外不出ですよ
        ラプター販売よりもハードル高いっす

        4
          • 匿名
          • 2021年 5月 28日

          >SLBM
          トライデントはイギリスに売っているがね。核弾頭はイギリス製だが

          5
          • 匿名
          • 2021年 5月 28日

          核爆弾の作り方も実質的に指導してたりしましたよ。

          1
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      多分電子戦機並みの装備を・・・

    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    空中給油機部隊も拡充するのであれば、B-21の空中給油機型も開発すれば?
    中露はステルス機や長射程対空ミサイルで接近拒否を図ってくるのだから、拡充される空中給油機もステルス化しないと効果が小さいのではと

    1
    • 名無しの権兵衛
    • 2021年 5月 28日

    爆撃機増やすのは良いんだけど、(護衛する)戦闘機って足りるのかな??
    F35はドッグファイト向けでは無いし、F22は今後十数年間で陳腐化するんでしょ?(最強戦闘機F22が陳腐化するってのがイマイチ理解出来んのだが…中露のJ20Su57はF22よりも優れてるん?)
    米空軍のデジタルセンチュリーとやら第6世代戦闘機は開発間に合うのかな?
    (各新型機の調達スケジュールを正確には記憶していないので、何とも言えないが)

      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      F-22って運用開始から20年以上経っていますからね。
      F-22のステルスやエンジン性能は世界最高レベルでも、レーダーやアビオニクス類はJ-20やSu-57のほうが新しい。
      さらに、十数年後の中国・ロシア戦闘機は、ステルスやエンジン性能も向上している可能性が高い。
      2030年半ばに、中国は第6世代戦闘機を運用開始予定なので、生産数が少なく運用コストの高いF-22は邪魔になると思います。

      3
      • 匿名
      • 2021年 5月 28日

      いやなんで護衛機はドッグファイトをしなければならんのよ。寧ろfirstlook,firstshootで近寄らせたらダメだろ

      4
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