KC-46Aは競合するA330MRTTに「信頼性」と「将来性」で大きな差をつけられており、Boeingは一刻も早く不具合を解消して信頼を取り戻さなければならないのに新たなカテゴリー1=飛行の安全性やミッション達成を阻害する欠陥が見つかってしまった。
参考:Boeing’s KC-46 has a new top-tier deficiency
Boeingにとっては目を覆いたくなる状況
KC-46Aの空中給油システムは信頼性が高いKC-10のものを使用するはずだったのだが、米空軍は予備設計後にシステムの制御をアナログからデジタルに変更するよう要求、未検証の技術で構築されたリモートビジョンシステム(RVS1.0)は新規設計と呼ぶに相応しいものだったにも関わらず、予備設計の審査を簡略化して初期設計に移行し、プロトタイプのテスト中に報告された不具合も軽視し調達を強行した結果、RVS1.0の不具合で空中給油能力が制限される事態に直面。

出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Colby L. Hardin 3Dメガネを装着してRVSを操作する様子
この不具合は小手先の修正で何とかなる問題ではないと判明し、米空軍とBoeingはRVS2.0開発を決定して「2024年3月から交換作業に入る」と発表したものの、1から作り直すRVS2.0には未検証の新技術(自動空中給油システムなど)が含まれており、これを標準的な手順で検証すればリリースは2026年頃になると予想されていた。
米空軍とBoeingはスケジュールを守るため再び予備設計の審査を簡略化したが、両者は2022年10月「RVS2.0のリリースが2025年10月にずれ込む」と、ハンター空軍次官補は2024年3月「RVS2.0のリリースが2026年にずれ込む」と明かし、海外市場でもA330MRTTと競合した全ての入札(カナダ、韓国、ポーランド、アラブ首長国連邦、インドネシア)で敗れ、遂にKC-46Aの取得を表明していイタリアまで取得計画を中止してしまう。

出典:U.S. Air Force photo by Joshua J. Seybert
開発を固定金額=49億ドルで請け負ったKC-46Aプログラムは既に70億ドル以上の赤字が発生しており、この状況から抜け出すには一刻も早く不具合を解消して潜在的顧客の信頼を取り戻す必要があるのだが、Defense Newsは31日「新たなカテゴリー1=飛行の安全性やミッション達成を阻害する欠陥が見つかった」「米空軍とBoeingは燃料ポンプの振動がブリードエアシステムのエアダクトを破損させているのに気がついた」「Boeingは損傷したエアダクトの修理と問題の緩和策を検証している」と報じている。
Boeingは記者会見で「問題の緩和策は燃料ポンプの振動によるダメージを最小限に抑え込むよう設計されている」「この措置が上手く機能すれば同欠陥のカテゴリーは格下げされるかもしれない」と述べたが、KC-46Aはカテゴリー1の欠陥を7つ(恐らくRVSとフライングブームに関する欠陥、燃料システムに関連した欠陥、給油燃料タンクに設置された排水チューブの欠陥、飛行管理システムのソフトウェアに関連した欠陥)も抱えた状態で、その内の3つが解決に近づいているらしい。

出典:U.S. Air Force photo by Chustine Minoda
つまり燃料システムに関連した欠陥が2つに増え「カテゴリー1の欠陥が8つに増えた」という意味で、Boeingにとっては目を覆いたくなる状況と言えるだろう。
因みに海外市場で競合するA330MRTTは夜間の自動空中給油(A3R)に成功、ファーンボロー国際航空ショーでもAirbusは「燃料消費量の削減と航続距離の増加が見込める第2世代のA330MRTT=A330MRTT+計画を開始する」「既に同機には顧客からの強い関心が寄せられている」「A330MRTT+の後続距離はKC-46Aよりも33%も長いため能力的優位性の獲得に繋がる」「イタリアがKC-46A調達を中止したためA330MRTTは新たな発注を確保できるかもしれない」と述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Abigail Klein
ボーイングは、トラブル続きで、株価が数年単位でダメですからね。
アメリカ企業あるあるのリストラになり、28000人を退職させたため、新入社員・勤続年数の浅い人間だらけになっています。
設計が問題視されてきただけでなく、労働者の構成にも問題が指摘されており、ものづくりの根本が大丈夫かなあと心配になりますね。
(2024.02.25 航空大手ボーイングが直面する「熟練工の消滅」とトラブル頻発の関係 Forbes)
エアバスのターンが終わって、ボーイングはどんなカードを出すかと思ったら「トラブルのカードをさらに追加!」とか
ここまで両社の進捗が極端だと、いっそボーイングにはぼろ負けしてもらった方が、日本としても「ボーイングがダメダメだからエアバスに軸足を少しづつ移す」ってやれていい(?)のかもしれない
ボーイングは「更なるリストラ」で悪循環に沈みそうですが
C-2にA330MRTTのシステムつみたいわ(白目)
無理なら規模的に同規模なA310に搭載したの発注したい。
これもはや自衛隊もエアバスの経運用験がないとかそういうの込みにしてもA330にした方が結果的に良かったってなりそうだな…
次期練習機開発でボーイングと絡むの怖いよぉ
スターライナーの方でもやらかしてますし
帰還ロケットの欠陥でスペースステーションに置き捨てられたアメリカ宇宙飛行士の滞在が90日目を迎えました。
”やることがいっぱいある。身の回りの状況把握に努めてい!” インタビューが泣ける。それは宇宙へ行ってやることじゃねぇだろと。
ボーイングは無人機の開発でウクライナのアントノフと提携するなど、ある意味、「絶好調」ですね…。
カテゴリー1の欠陥は今まで7件が確認されており、うち2件は対策済み、5件が運用で回避可能。
今回の1件が追加されれば、合計8件、うち2件が対策済み、5件が運用で回避可能、1件が回避不可能、となる。
1 パレットロック 対策済み
2 燃料配管 対策済み
3 給油ブーム 低推力の機体への不適合→日本に該当機(A10など)なし
4 給油カメラ 太陽の位置により不鮮明になる→太陽の方向を踏まえて航行すれば大丈夫
5 給油カメラ 上記4になった場合にブームが勝手に動く→上記4を防げば大丈夫
6 受油口ドレイン ドレインに水が残った状態で氷点下になるとドレインが破壊される→氷点下の露天駐機を避ける、避けられない場合は斜度をつければ大丈夫
7 自動操縦 主導操縦に切り替えれば大丈夫
8 燃料ポンプ 振動がブリードエアダクトを破壊する ← new
運用回避が増えていくとどこかで事故るんですよね
根本的な改修をできないのかする気がないのか
改修案を出すたびに、何故か新しい機能の追加を要求されるので…
この対策を考えた奴は実際に現場で運用してない説
機体を運用しなければ全部回避できますね(錯乱)
検証を飛ばして設計したり両者とも何を焦ってるんだろう
あまり詳しくないんだけど大本の問題は米軍の無理な仕様変更でさすがにこの件でボーイングを責めるのはかわいそうじゃないかなって
具体的な欠陥内容とその対応を見ていると、グダグダを続けることによってブリッジタンカーそのものを亡きものにしようとしているのでは?(KC46の改修で安く済ませよう)と穿った見方をしてしまう。
そもそもブリッジタンカーは実戦に使用することを想定しておらず、運用は民間に委託する前提なので、ブリッジタンカー用に限定するのであれば、現状(実戦への使用禁止)でも運用上の問題はなかったりする…
割を食うのがボーイングで、他の市場をエアバスに喰われている。
まあ民間機部門でも散々やらかしているので、それとは別の問題が多々あるとは思うけど。
デジタルとか自動化とか関係ない問題も複数あり、そこは米空軍の無理難題も関係なく、
仰る通りわざとやっとるんか感はあるけど、まあそれが今のボーイングの実力なんでしょうなぁ…
今後の開発はともかく、既存品のメンテナンス能力くらいは維持してくれ、としか…
なんなら部品単位で日本でのライセンス生産を認めてくれればそれだけでもいい。
利益が出ない条件でも、交換部品待ちの時間が減るだけで日本には大きなメリットがある。
絶対買わされる日本としても目を覆いたくなりますな・・・。
ん?ブリードエアのダクトを破壊するってことは、これ空中給油のポンプじゃなくて自機のエンジンの燃料ポンプだよな?
767や777や、なんならA300系列でも実績のあるPW4000が何故?
ファンの直径やらコンプレッサーの段数が異なる亜種が複数あるみたいだけど、PW4062なら普通に767でも使われているはず?
軍用に一部変更?推力増すために燃料ポンプを強化した?いや、設計強度超えるんじゃね?
相変わらず、不透明すぎる…
多分ベース機の設計意図を知らずにor無視していじくった現場猫案件とかじゃないかなぁ。振動抑制とかまで考慮されてた取り回しを追加で機器を設置する時にこうチョチョイっと。
なんせその辺把握してる人バサバサ切っちゃったぽいですからね…
いや、流石にボーイングがPWのエンジンをいじる事はないんじゃ?
エンジンに変更加えるとしたら、レイセイオンでは?
可能性としては、エンジンの機体への搭載方法や固定方法を変更したとか?
うん、やっぱり分からん。
ボーイング767の設計は1970年代、初飛行と就役は1980年代初頭で現在も貨物型や軍用機の製造ラインがあるので当初設計した人たちは引退していてもやれそうに見えるのが困りますね。
本来なら初飛行から20年くらいの時期に空中給油機化する予定だったのかスキャンダルで10年以上延期したのと、ボーイング787の納期遅延と複数インシデントでボーイングの設計能力、インテグレーション能力に疑問が出てきたのと一致していて、MDの亡霊にでも取り憑かれているのではないかと
バイアメリカンを強力政策を進めるトランプ前大統領が再任せんとあかんな、でも現状遅すぎるが…
そうなると日本はたまらんが、対トランプへの寝技使いの故安部氏が生存していても小技しか出せなさそうな状況ですし
この件に関しては他スレで書かれている人も多数いますがエアバスのシステムを売ってくれないかなーを妄想し現実逃避をしてしまいます…
最初からイタリア仕様のKC-767(B767+KDC-10の空中給油システム改良型)のまま出せてれば、とは思いますが、リース関連の裏取引がバレてこの有様なので、ボーイングがマクドネル・ダグラスを買収した時点で既に破滅フラグが立ってたのかもですね。
>米空軍は予備設計後にシステムの制御をアナログからデジタルに変更するよう要求
工学と製造現場、開発現場を知らないとこうなる。第二次世界大戦の時の工業力と勘違いしている世代に見える。